中南米における米国通商政策による影響-ビジネス機会と脅威対米外交の混乱を受け、市場多角化を掲げる(コロンビア)
2026年1月26日
2025年初頭から続くコロンビアと米国の対立により、コロンビア政府は輸出先や輸出品の多様化を図っている。本稿では、両国の経済関係や二国間の対立の経緯を振り返るとともに、コロンビア政府が取り組む貿易多角化の取り組みを紹介する。
経済的に結びつきの強いコロンビアと米国
歴史的に、米国はコロンビアの主要な貿易相手国であり、2006年に自由貿易協定(FTA)が署名され、2012年に発効して以来、米国は同国の対外貿易における重要なパートナーとしての地位を確立してきた。2024年、コロンビアの対米輸出は輸出金額全体の29%を占めた。特筆すべきは、米国が非鉱物・エネルギー製品の主要な輸出先であることだ。コロンビアは鉱物資源の輸出が依然として主力である一方、非鉱物・エネルギー製品の輸出は近年、大幅に増加しており、その生産連鎖により雇用、産業生産性、税収に好影響を与えている。
コロンビアは、米国からの輸入が輸出を上回っており、貿易収支は依然として赤字である。石油派生品、トウモロコシ、航空機、スマートフォン、医薬品、データ分析機器、乗用車などの高付加価値製品が主な輸入品であり、米国が消費財だけでなく資本財や原材料の供給国であることを示している。
大統領間の対立で二国間関係が不安定化
良好な貿易関係が続いていたにもかかわらず、両国の大統領間の発言や対立により、企業の間で不安が高まっている。最初の対立は2025年1月、米国からコロンビアへの強制送還者を乗せた軍用機2機が送還者らを不適切に扱ったとして、コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領が入国を拒否したことに端を発した。この対応に対し、ドナルド・トランプ大統領は報復としてコロンビアからの全製品に25%の関税を課すと発表し、その後50%に引き上げると宣言。ペトロ大統領も対抗して報復関税を発表した。24時間以内の外交交渉でこの危機は収束したが、トランプ政権下での今後の関係に対する警戒感が企業に広がった。
2025年1月の送還者問題から始まり、9月までに二国間の緊張はさらに高まった。米国はコロンビアが麻薬対策における取り決めを履行しなかったとして、麻薬対策の同盟国としての認証を取り消した。さらに9月末、ペトロ大統領が国連本部前でパレスチナ解放を呼びかけた際、米兵に命令不服従を促したとし、米国はペトロ大統領のビザを取り消した。10月末には、ペトロ大統領、妻のベロニカ・アルコセル氏、長男ニコラス・ペトロ・ブルゴス氏、アルマンド・ベネデッティ内相が「クリントン・リスト」と呼ばれる金融制裁リストに追加された。米国財務省外国資産管理局(OFAC)は「ペトロ政権下でコカイン生産が記録的に増加し、麻薬テロ組織に利益を与えている。われわれは米国民を毒する麻薬取引を容認しない」と声明を出した。ペトロ大統領は、この制裁リストに載った初のコロンビア大統領となった。
現在、トランプ大統領がコロンビアに対し実施している関税措置は、2025年4月に導入された10%のベースライン関税である。その後11月には、米国で生産されない、または生産が不十分な製品(コーヒー、紅茶、熱帯果実、カカオなど)について、この関税を撤廃した。この結果、コロンビアから米国に輸出される品目の72%が関税免除となり、追加関税措置によるダメージは比較的少ない。
輸出先や輸出品の多様化をはかる
一方で、最初の危機以来、コロンビア政府は輸出先の多様化を明確に指示している。ペトロ大統領は2025年1月25日、X(旧:Twitter)で「米国以外の全世界に輸出を促進するよう協力せよ」と投稿した。4月には、ダニエル・アビラ元外務副大臣が、アジア、欧州、アフリカ市場との関係強化に注力していると発言した。
また、商工・観光省と外務省は2025年4月3日の共同声明で、輸出先の新規開拓と強化に向けた包括的な戦略を主導していることを発表した。「この措置は、輸出能力の強化を継続することの重要性をあらためて示しており、市場多様化戦略の推進に向けた勢いをさらに強めるものだ。コロンビアの企業家たちとともに、安定性、競争力、生産者の福祉を保証する技術的で持続可能な、付加価値のある基準に基づき、輸出先と製品の拡大を続けていく」と、シエロ・ルシンケ商工観光相代行(当時)は述べた。
国家開発庁(DNP)は、米州開発銀行(IDB)の支援を得て、衛生適格性計画(PAS)の更新に向けた提案をしている。これは、国内生産を優先し、世界の市場が要求する技術的、衛生的、植物検疫上の要件を満たした輸出可能な供給品を準備することで、国際市場へのアクセスを管理することを目的としている。
ディアナ・モラレス商工・観光相は、2025年11月2日に米国衛生当局がコロンビア産殻付き卵の工業加工用目的での輸入を認可したと発表した。「この決定は、産業の発展や輸出製品の多様化という観点から、コロンビアにとって大きな朗報であり、ペトロ大統領の主要な政策の1つである」と同氏は説明した。
民間部門は対米関係の改善を求める
企業側も、この多様化をある程度支持しているが、引き続き対米関係改善への要望の声は大きい。コロンビア全国産業連盟(ANDI)は、政府に対し、米国との関係を真剣かつ責任あるかたちで維持するよう要請した。「コロンビア政府には、国際関係、特にわれわれの歴史的な主要同盟国である米国との関係を、責任を持って慎重に扱うことを求める」と、ANDIのブルース・マクマスター会長は述べた。さらに、同氏は「経済は相互に結びついており、このような貿易障壁は全てに悪影響を及ぼす。われわれは孤立することも、単一市場に依存もできない」と強調した。全国貿易協会(Analdex)も、現状を懸念し、政府に対して外交における慎重さを求めている。「(米国による)制裁や貿易制限措置は合法な経済に打撃を与え、雇用や収入の創出に悪影響を与える一方で、違法な経済を後押しする恐れがある」と警告し、政府に対し、外務省や大使館間の対話チャンネルを活性化し、経済と対外貿易に有利な解決策を模索するよう呼びかけた。
現時点では、輸出業者向けの明確な戦略はないが、Analdexは市場多様化を支持している。しかし、貿易については厳しい状況が予想される。Analdexのハビエル・ディアス・モリナ会長は「2025年のコロンビアの輸出額は500億ドルを下回る見込みであり(注)、2026年はさらに減少する可能性がある。複数の要因が最終結果に影響を及ぼす。2026年には500億ドルを超えたいところだが、容易なことではない。2026年も政府のエネルギー転換政策により、鉱物・エネルギー輸出の減少が続く。さらに、2025年が記録的な生産であったコーヒーも生産量が減少し、国際価格の下落も予想されている」とコメントした。
- 注:
- 2024年の輸出額は495億ドル。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ボゴタ事務所
アンドレス・ゴンザレス - 2011年、ジェトロ入構。ジェトロ・ボゴタ事務所で調査を担当。




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