インドネシアに浸透する日本食レストランの現状

2026年6月4日

農林水産物・食品の輸出を伸ばす上でカギとなるのが、日本食レストランなど、日本産食材を扱う販路の拡大だ。農林水産省の「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略(2025年5月改訂)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(952KB)」でも、食品産業の海外展開などにより日本食・食文化の理解促進を図り、海外の日本食ファンを増やすことを通じて、輸出拡大との相乗効果を発揮すると言及されている。

近年、食品関連企業の輸出・進出先の1つとして注目されるのがインドネシアだ。同国では人口が増加しているほか、日本食レストラン数の増加も顕著で、日本食人気が高まっている。本稿では、インドネシアにおける外食産業の展開状況や、現地での日本食の浸透状況についてまとめる(取材日:2026年2月10~11日)。

インドネシアにおける日本食レストラン数は増加

農林水産省が外務省と協力して、隔年で調査している「海外における日本食レストラン数(2025年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、海外で「日本食レストラン」として扱われている店舗数は18万1,000店となった(注1)

農林水産省の調査によると、国・地域別の上位では、中国(6万3,500店)、米国(2万6,360店)、韓国(1万9,800店)、メキシコ(7,430店)、台湾(7,100店)となっている。

とりわけ、インドネシアは増加幅が際立っている。中国での経済停滞などによる大幅な減少などを受け、前回2023年の調査時より世界全体では約6,000店の減少となる中、インドネシアは2,580店増の6,580店で、調査対象国・地域の中でも最大の増加数となっている。日系チェーンも多く進出しており、近年ではやよい軒、いきなり!ステーキ、スシロー、てんや、後述する物語コーポレーションなどが出店している。

インドネシア向け食品輸出は水産物が上位

外食産業が展開し、日本食が現地で浸透することで、日本からの食品輸出も増加するという相乗効果が期待される。

2025年のインドネシア向け農林水産物・食品の輸出額は前年比35.5%増の172億5,599万円だった(図参照)。近年は加工食品や水産物の伸びが顕著で、品目別では、いわし、ホタテ貝(生鮮など)、錦鯉(ニシキゴイ)などが上位となっている(表参照)。

図:インドネシア向け農林水産物・食品の輸出額推移(2015~2025年)
2015年は64億円、2016年は61億円、2017年は65億円、2018年は67億円、2019年は69億円と推移している。2020年は78億円に増加し、2021年は109億円と大きく伸びている。2022年は106億円、2023年は99億円とやや減少するが、2024年は127億円、2025年は173億円となり、期間中で 最も高くなっている。全体として輸出額が増加している傾向が読み取れる。

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

表:日本からインドネシアへ輸出される主な農林水産物・食品(単位:1,000円)(△はマイナス値、-は値なし)
品目 単位 2024年
(金額)
2025年
(金額)
増減率
(金額)
農林水産物計 12,738,642 17,255,993 35.5%
いわし KG 158,401 3,232,988 1941.0%
ホタテ貝 KG 931,053 1,465,550 57.4%
錦鯉(ニシキゴイ) KG 530,680 830,849 56.6%
緑茶 KG 444,423 808,091 81.8%
牛肉 KG 448,264 677,859 51.2%
たら(すけとう除く) KG 281,538 588,340 109.0%
ソース混合調味料 KG 460,507 457,383 △0.7%
綿 KG 158,552 364,297 129.8%
かに(冷凍) KG 155,250 346,245 123.0%
配合調製飼料 MT 355,847 313,824 △11.8%
かつお・まぐろ類 KG 379,669 238,560 △37.2%
さば KG 128,452 233,964 82.1%
その他 8,306,006 7,698,043 △7.3%

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

日本食レストランがショッピングモールに多数進出

日本食レストランの増加が示すように、インドネシアには既に日系企業も多く進出している。ここからは、実際に現地でヒアリングした事業者の取り組みについて紹介する。

ジャカルタ近郊のショッピングモールには、日本から進出した多数の日本食レストランが出店している。

ジャカルタのビジネス街エリア近くに位置するショッピングモール「Gandaria City Mall(ガンダリア・シティモール)」では、カレー、ラーメン、うどん、牛丼、天ぷら、寿司(すし)など、多種多様な日本食を提供する店舗が入居する。 その1つが日本国内で「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションだ。カルビ丼を中心に提供する「Yakitate KALBI(焼きたてのかるび)」の店舗も同モールに出店する。

コロナ禍を経て、共用のカウンターから食材を取る食べ放題形式に抵抗を持つ消費者も出てくるなど、消費スタイルの変化を受け、同社ではファストフード業態でカルビ牛丼などを提供する「Yakitate KALBI」や、カウンターでの個食スタイルのハンバーグ専門店「肉肉大米」をインドネシアなどのアジアを中心に展開してきた。

訪問した同モールの店舗では、店頭で肉をスライスすることで客に安心感を与えるよう工夫されており、他の丼チェーンなどとの差別化を目指していた。


ガンダリア・シティモールに出店する「Yakitate KALBI」の店舗(ジェトロ撮影)

Yakitate KALBIにて目の前で調理される牛肉
(ジェトロ撮影)

現地発で日本食を提供するレストランも

日本からの進出のほか、現地発で日本食を提供しているケースもある。

ジャカルタのビジネス街に構える日本食レストラン「美卯」は、前身となる日本食料理店を約35年前に開店した。日本料理だけでなく、サテなどのインドネシア料理も提供し、日本からの出張者のニーズにも応えているほか、コロナ禍に始めたお弁当のサービスも続けている。


美卯の店舗外観(ジェトロ撮影)

現地発で本格的な日本食を提供するレストランも登場している。

2017年、オーセンティックな日本食を提供するコンセプトとして、居酒屋スタイルのOKUZONOがオープンした。開店当時は、現地で知られる日本食が寿司やラーメンなどに限られていたという。そうした中、同店は味の良さにとどまらず、五感を使った食事全体の体験を重視してきた。店内には日本風の座敷席が設けられ、客自ら七輪で焼く料理なども提供されているほか、日本人スタッフにゆかりのある北海道、京都、名古屋、沖縄のメニューを季節ごとに提供し、旬の食材を提供するよう工夫している。


OKUZONO店内の日本風の座敷席(ジェトロ撮影)

OKUZONOで提供される岐阜県の郷土料理「朴葉焼き」
(ジェトロ撮影)

イスラム教徒が多数を占める国ではあるが、多様な食文化を持つインドネシアでは、日本酒など酒類を提供する日本食レストランも存在する。

日本酒の輸入業者が運営するバー「SAKE+」では、自社で輸入している豊富な種類の日本酒のほか、刺し身、丼、そばやうどんなどの日本食も提供する。客層は日本人が4割程度、インドネシア人が6割程度を占めるとのことで、現地でなじみのあるウォッカ、ウイスキー、ワインなどに限らず、日本酒にもポテンシャルを感じているという。


SAKE+の店舗外観(ジェトロ撮影)

SAKE+店内の日本酒が並ぶ冷蔵ケース(ジェトロ撮影)

輸出時の規制には留意が必要

日本産食品の輸出額や日本食飲食店が拡大するインドネシアだが、輸出や進出にあたっては留意すべき点もある。

一部の品目については、政府の「商品バランス」(注2)の判断に基づき、輸入承認の取得が求められるものや、年間の輸入量が割り当てられることで実質的に制限されるものがある。また、輸入枠の割り当て時期が必ずしも明確とは言い切れない状況のため、短期的に商流が停滞するケースもみられる。

また、ハラール認証表示義務化の動向についても注意が必要となる。インドネシア政府は2024年10月、外国産の食品、飲料、食肉製品、食肉処理サービスに対するハラール認証の取得義務について、ハラール認証の相互承認(MRA)の完了を考慮した上で、2026年10月17日までに大臣が関係省庁と調整して決定すると定めた。現行法令上、2026年10月18日以降、輸入食品などを対象にハラール認証の表示義務が発生する。既に外資を含む現地食品製造業や飲食業に対するハラール認証は義務化されており、現地でも多くの飲食店がハラール認証のマークを店頭に掲げている。今後は、日本から輸出する食品についても、ハラール製品はハラール認証のマーク、非ハラール製品はその旨の表示が求められる見込みだ。詳細については、2024年10月25日付ビジネス短信や、今後の情報のアップデートが待たれる。

輸出や進出にあたっての課題もあるものの、日本食人気が高まっているインドネシアは、今後もポテンシャルのある市場と言えるだろう。

なお、ジェトロではインドネシアへの外食産業の進出に関する市場や規制については「外食産業のインドネシア課題調査(2026年3月)」を実施し、公開している。日本食レストランの展開状況や進出時の規制については、同レポートも参照されたい。


注1:
農林水産省「海外における日本食レストラン数」の調査手法は、次の1~4にいずれかに該当する店舗を対象としている。
  1. 現地のウェブサイトや電話帳およびガイドブックなどで「日本食レストラン」として紹介されている。
  2. 現地で「日本食レストラン協会」のような団体が組織され、これに参加している。
  3. 現地日本人会、日本商工会議所などで「日本食レストラン」として扱われている。
  4. 前述以外にも各在外公館において「日本食レストラン」として認識されている。例えば、ジェトロにおける日本食レストラン数調査結果など。本文に戻る
注2:
「商品バランス」とは、一定期間の国内需要と国内外の供給の情報を記載したデータのことであり、商品バランスシステムは、輸出入における許可の簡素化と透明化、輸出入政策の基本資料、投資事業や雇用の確実性の担保、工業利用のための原材料や補助材の在庫保証などを目的に商品バランスを利用した枠組みを指す。
2025年3月時点では、食品はコメ、砂糖、牛肉、塩、水産物、トウモロコシ、ニンニクが対象(2022年8月16日付2025年3月18日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム 課長代理
古城 達也(ふるじょう たつや)
2011年、ジェトロ入構。人材開発支援課、ジェトロ横浜、ジェトロ・ニューヨーク事務所、ジェトロ諏訪を経て、2024年11月から現職。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の輸入規制、法令や市場情報などの調査や、日本企業からの輸出相談窓口を担当。
執筆者紹介
ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム(執筆当時)
熊谷 佐和子(くまがい さわこ)
2024年、ジェトロ入構。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の市場情報や輸入規制、法令などの調査や、日本企業からの輸出相談窓口を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
長田 諒平(ながた りょうへい)
2015年、財務省東京税関入関。通関部門や財務省関税局を経て、2025年から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
リスナ・リザル
2009年からジェトロ・ジャカルタ事務所にて勤務。