ブラジルを席巻する新興スポーツ、キングスリーグとビジネス機会

2026年2月24日

2026年1月3~17日にかけてキングス・ワールドカップ・ネーションズがサンパウロ市内で開催された。キングス・ワールドカップ・ネーションズは、7人制サッカーをベースにした新興スポーツ、キングスリーグ(Kings League)の国際大会。キングスリーグはスペイン発祥で、その後メキシコ、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、MENA諸国(中東および北アフリカ諸国)などに拡大し、現在、複数カ国・地域でリーグが立ち上がっている。リーグはSNSや配信プラットフォームを介して知名度を上げており、昨今、デジタル世代の若年層を中心にキングスリーグ人気が急速に高まっている。本稿では、世界的に拡大を続けるキングスリーグの特徴を整理し、日系企業との協業の可能性を考察する。

リアルとデジタルの融合で人気を博す新興スポーツ、キングスリーグ

キングス・ワールドカップ・ネーションズの決勝が行われたサンパウロ市内のアリアンツ・パルケには4万1,316人が詰めかけた。会場には、サッカー元ブラジル代表で、2002年日韓ワールドカップでブラジルを優勝へ導き、通算2度のワールドカップ優勝と3度のFIFA最優秀選手賞を受賞した、ブラジルサッカー界の英雄的存在であるロナウド・ナザリオ氏や、歴代ブラジル代表最多得点記録を更新し、現代のブラジルサッカーを象徴する人気選手であるネイマール・ダ・シウバ・サントス・ジュニオール氏といった著名人が来場した。加えて多数のインフルエンサーらが来場し、会場で大会を盛り上げた。試合はSNSや配信プラットフォームを介して放送され、決勝の同時接続視聴数は230万件を超えた。国際的にみても高い注目度を示す結果となった。公式発表によると、大会開催期間中の累計ライブ視聴数は1億2,000万回、SNSインプレッション(注1)は16億件、動画再生回数は10億回に達した。開催期間中は、スポーツ専門のストリーミングサービスを提供するダゾーン(DAZN)(注2)、アベマ、イーエスピーエヌ/ディズニープラス(ESPN/Disney+)、フランス国営メディアグループのフランスTV、スポーツ中継を中心とした大型デジタル放送チャンネルのカゼーティービー(CazéTV)など、20のパートナーが放送を担当した。200以上の国・地域で配信された。


決勝戦前の会場の様子(ジェトロ撮影)

決勝戦で盛り上がりを見せる会場の様子(ジェトロ撮影)

キングスリーグは、元サッカー・スペイン代表のジェラール・ピケ氏(注3)が2022年に創設した7人制サッカーだ。短時間で展開が大きく変わる試合構造や、インフルエンサーをチーム代表に据えた運営方式、配信プラットフォームを主軸とした戦略が特徴で、デジタル世代の若年層を中心に人気を集めている。

キングスリーグは7人制、20分ハーフで競われる(1試合当たりの試合時間は40分)。開始直後はゴールキーパーとフィールドプレーヤー1人の1対1からスタートし、1分ごとにプレーヤーが1人追加され、開始から5分経過後に7対7へ移行する。また、以下のようなゲーム的演出が複数採用されており、SNSでの短尺動画化や、漫画、アニメ、ゲーム、映画などのキャラクターや作品〔いわゆるIP(知財)〕とのコラボレーション施策との相性が極めて良いと思われる。

  • シークレットカード(一定期間に得点が2倍になる、相手側の選手が一時退場する、PKが与えられるなど、数種類のカードから1枚付与されチームは試合中の任意のタイミングで使用できる)
  • ダイス(サイコロを振って出た目の人数でプレーしなければいけない)
  • プレジデントPK(チーム代表者が任意で指定のタイミングでPKができる)

ブラジル企業のG3X、オムレッチ・カンパニーとの協業の可能性

ジースリーエックス(G3X)(注4)は、ブラジルの人気ストリーマーであるガウレス氏(注5)がオーナーを務める、ブラジルのキングスリーグのチームだ。「K9」の愛称で知られ、現地で絶大な人気を誇る主力選手のケルビン・オリヴェイラ氏(注6)が所属することでも知られている。

このチームの運営母体は、ブラジルの主要カルチャー企業のオムレッチ・カンパニーだ。同社は南米最大級のポップカルチャーイベント「コミックコン・エクスペリエンス(CCXP)、(注7)」、大規模ポップカルチャーイベントである「ゲームズコム・ラタム(注8)」や「アニメフレンズ(注9)」などを主催しており、現地のアニメやゲームファン層との接点を持つ。半導体・コンピューティング技術を提供するインテルやブラジル発のスポーツサプリメントブランド、マックス・チタニウムとのスポンサー実績もある。配信・SNS・現地イベントを横断した発信力が高い企業としても知られている。

オムレッチ・カンパニーでG3Xを運営する担当者は、キングスリーグと日本のアニメIPとの親和性を強調する。同担当者は、「キングスリーグと日本のコンテンツとの連携は非常に興味深い。特にサッカー関連の漫画作品とのコラボレーションには強い関心があり、ケルビン・オリヴェイラ氏とアニメキャラクターのコラボレーション動画作成などができれば面白い」と述べる(インタビュー日:2026年1月15日)。また「機会があれば、日本のコンテンツとどのようなかたちで連携できるか、ぜひ可能性を探りたい」と話しており、日本IPとの協業余地が十分にありそうだ。

G3Xは3月および10~11月にかけて開催予定のブラジル国内のキングスリーグの大会への出場が見込まれている。2026年はさらに、1月開催の国際大会への出場、6月開催の世界クラブ大会への出場も予定されており、年間を通して協業企業のIPを露出させることが可能だ。G3Xのスポーツ領域とオムレッチ・カンパニーが持つイベント網の融合により、スポーツとポップカルチャーの双方のファン層を取り込むことができるだろう。

キングスリーグを活用した日本IP普及の可能性

日本ではABEMA TVが運営する動画配信サービスABEMAが、キングスリーグの日本代表戦を全試合無料で生中継している。同社は、日本代表チームのオーナーである加藤純一氏(注10)、チーム強化責任者で元サッカー日本代表の柿谷曜一朗氏、現地リポーターで元サッカー日本代表の田中マルクス闘莉王氏らと連携し、日本向けの配信体制を整備した。また、特設ページでは、ルール解説を通じて日本語対応から視聴、SNS配信に至るまでフォローし、日本でのファン層を着実に獲得している。

日系企業が当該市場に参入する方法や参入の効果としては、上記オムレッチ・カンパニー担当者へのインタビューや、過去に海外のプロサッカーチームと日本のコンテンツとがコラボレーションした事例などを参照すると、以下のような方法が考えられる。

(1) G3Xとの限定コラボレーションの実施

ユニホームデザイン、スタジアム内ビジュアル、シークレットカード発動演出などを日本IP仕様に調整する軽量コラボレーションで、現地ファン層への初期的な訴求効果が期待できる。

(2) ストリーマーおよび選手との共創コンテンツの制作

ガウレス氏をはじめとする影響力の高いストリーマーと連携し、日本IPを活用したコラボレーション動画、SNSショートクリップ、選手との対談企画などを展開し、若年層への認知を段階的に拡大することが可能。

(3) 日本IPと連動した「テーママッチ」の開催

特定試合を日本IPと連携したイベントとして位置付け、限定ユニホーム制作、場内演出、ハーフタイム演出、来場者向けノベルティー配布などを組み合わせた総合的なプロモーションを行うことで、会場および配信双方での注目度を高めることが可能。

(4) 日本IPと連動した国際的プロモーションの企画

CCXPなどの大型イベント期間とキングスリーグの国内リーグ期を組み合わせ、1年を通じた段階的な露出強化を図ることで、現地ファン層、イベント来場者、オンライン視聴者それぞれに対するプロモーションを行うことができる。

(5) ストリーマー・選手の日本招聘(しょうへい)による双方向PR企画の実施

ブラジルで人気のストリーマーやチーム関係者を日本に招き、日本のアニメスタジオ訪問やクリエーター交流企画を実施することで、ブラジル側ファン層に向けた日本IPの認知拡大を促すことができる。

ブラジルではキングスリーグが既に社会現象として受容されている。例えば、G3Xのようなキングスリーグのチームと、オムレッチ・カンパニーのようなポップカルチャーに精通した企業と組むことによる日本IPのブラジルにおける展開余地は大きい。キングスリーグが、ゲーム視聴というカルチャーの文脈で消費される新しいスポーツフォーマットである点は、日本のアニメやゲームIPとも親和性がある。ブラジルで日本のコンテンツの認知を広げる上で、キングスリーグとのコラボレーションは、既存の日本のコンテンツファンにもリーチでき、新たなファン層獲得にもつながる可能性がある。


注1:
SNSインプレッションとは、SNS上で投稿がユーザー画面に表示された延べ回数を指す。閲覧したか否かを問わない“到達規模”の指標。 本文に戻る
注2:
タゾーンは、2026年にかけて多言語対応や広域配信を強化し、多くの市場で無料視聴を可能とする運用方針を示している。 本文に戻る
注3:
元サッカー・スペイン代表のジェラール・ピケ氏は、FCバルセロナで公式戦600試合以上に出場した。スペイン代表としてもワールドカップやユーロ選手権の優勝メンバーとして活躍した。 本文に戻る
注4:
ジースリーエックス(G3X)は、ブラジルのキングスリーグにおいて、直近シーズンでレギュラーシーズン6勝2敗、得点41/失点35(得失点差+6)と安定した戦績を残す。その後のプレーオフでも準決勝進出を果たすなど、リーグ内で継続的に上位争いを行う強豪チームとして位置付けられている。 本文に戻る
注5:
ブラジルの人気ストリーマー Gaules(ガウレス)氏の本名はアレシャンドレ・ボルバ・シケッタ氏(Alexandre Borba Chiqueta)。ブラジルを代表するストリーマーだ。アマゾン傘下のライブストリーミング配信プラットフォーム、Twitchのフォロワー数は約432万人、インスタグラムのフォロワー数は約187万人を超える人気インフルエンサー。主にeスポーツ実況やキングスリーグ関連配信を軸に活動している。 本文に戻る
注6:
ケルビン・オリヴェイラ氏は、ブラジル出身のサッカープレーヤー。G3Xに所属しキングスリーグでも活躍する。2025年のキングス・ワールドカップ・ネーションズで得点王になった実績を持つ。SNSでも大会後48時間で約69万超の新規フォロワーを獲得するなど高い影響力を持つ選手。 本文に戻る
注7:
CCXP(Comic Con Experience)は、サンパウロで開催される世界最大規模のポップカルチャーイベント。2019年には28万人以上、2025年には約29万7,000人を動員した実績を持つ大規模フェスティバル。2024年12月17日付ビジネス短信参照。2025年12月12日付ビジネス短信参照。 本文に戻る
注8:
gamescom latamは、ラテンアメリカ最大規模のゲームイベント。2025年の開催では13万人以上が来場し、40以上の主要ゲームパブリッシャーが出展するなど、国際的ゲーム企業が集う商談・展示イベント。2025年5月9日付ビジネス短信参照。 本文に戻る
注9:
アニメフレンズ(Anime Friends)は、南米最大級のアニメイベントで、2025年開催回では15万人以上の来場者を記録した。サンパウロ発のアジアポップカルチャー・フェスティバル。2025年7月8日付ビジネス短信参照。 本文に戻る
注10:
加藤純一(Junichi Kato)氏は、日本のトップストリーマーの一人。Twitchフォロワー約115万、ユーチューブ登録者約128万を持つ人気配信者であり、キングスリーグの日本代表チーム「ムラッシュFC」のオーナーも務めている。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・サンパウロ事務所
榊原 悠生(さかきばら ゆうき)
2023年、ジェトロ入構。ジェトロ本部を経て2025年8月から現職。