進出拡大の背景
ウズベキスタンで存在感を増すトルコ企業(1)
2026年7月14日
ウズベキスタンは、中央アジア5カ国の人口の約半分に当たる3,823万人の国民を抱える。国家統計委員会によると、2025年の1人当たりGDPは4,881万スム(4,068ドル、1ドル=1万2,000スム)。2025年の実質GDP成長率は7.7%。2024年の6.7%、2023年の6.3%に続き安定した成長が続いている。
2016年に現職のシャフカト・ミルジヨエフ大統領が就任して以来、さまざまな分野で経済改革が進み、外国企業の進出が加速している。日本企業の進出も拡大する一方、現地では、中国、ロシアに加え、トルコ系企業の存在感が高まっている。トルコ企業の存在感拡大の背景には、両国の「兄弟国家」としての関係性や近年の政治関係の改善に加え、対中央アジア戦略の強化、そして経済構造の補完性といった複合的要因がある。さらに、トルコからの投資や進出企業数の増加にみられるように、両国の経済的結びつきは急速に深化している。
本稿は、トルコ系企業のウズベキスタンにおける活動を分析することで、日本企業の進出に向けた参考とすることを目的とする。
親密な両国関係
ウズベキスタンとトルコの協力関係の背景には、共通する歴史・言語・文化的背景がある。トルコは、1991年のウズベキスタンの独立を最初に承認した国の1つだ。1996年には両国間で「永遠の友好協力条約」を締結した。イスラム・カリモフ前大統領時代には緊張があったものの、2016年にレジェップ・タイップ・エルドアン大統領がサマルカンドを、ミルジヨエフ大統領が2017年にアンカラを訪問して以来、両国関係は改善した。両国は二国間関係を包括的戦略パートナーシップへ格上げし、2018年にはハイレベル戦略協力評議会会合(HLSCC)を立ち上げた。同年に両国それぞれが短期滞在のビザ免除を定め、往来が活発化した。現在は両国間で週100便以上が運航されている。
ウズベキスタンはテュルク語圏諸国の国際組織、テュルク諸国機構(OTS)(注) に2019年から加盟している。OTSは、1992年にトルコのイニシアチブで始まったテュルク語圏諸国首脳会議プロセスの流れをくむ。トルコ政府は、2023年の建国100周年に合わせて外交政策「トルコの世紀(Century of Türkiye)」を打ち出した。同政策は、地域の安定強化、外交関係の基盤拡大、地域の経済発展と繁栄の促進、トルコの影響力向上を目指す。
2026年1月、ミルジヨエフ大統領は、アンカラでのエルドアン大統領との公式会合で「共通の母語と神聖な宗教を持つ、トルコ人とウズベク人の兄弟のような関係を、いかなる距離も引き裂くことはできない」と述べ、親密な関係を強調した。また、トルコは世界の新たな地政学的パワーハブの1つとなりつつあるとして、「トルコの世紀」イニシアチブが着実に実行されていると指摘した。
トルコと中央アジアの連携強化
トルコは、近年ウズベキスタンのみならず中央アジア全体にも影響力を強化している。
トルコ外務省は、2019年8月に外交戦略文書「アジア新イニシアチブ」を立ち上げ、アジア各国との経済・貿易協力および投資関係の強化を掲げた。トルコは、エネルギー分野の地域貿易ハブとなることを目指しており、中央アジアを物流ルートとして重視する。エルドアン大統領は2026年5月14日、カスピ海横断国際輸送ルート(TITR)は現在のシルクロードに匹敵すると重要性を強調した。TITRを西欧向けエネルギー輸送路としてPRし、カザフスタン産石油のトルコ経由による世界市場への輸出を促す狙いだ。
ウズベキスタン共和国大統領付属戦略・地域研究所(ISRS)ディロロム・ママトクロワ上級研究員の論考(2026年1月28日)によると、トルコと中央アジア間の2025年の貿易高は2018年と比べ2倍以上の145億ドルに増加した。投資面では、2016年から2024年までにトルコの対中央アジア投資額が11億ドルから30億ドルへと2.7倍に拡大し、同期間のユーラシア全体における投資増加率を大きく上回った。進出企業数は2016年の約4,000社から2025年には7,000社超に増加した。トルコ企業の事業領域は、小規模ビジネスから、建設、通信、繊維、農業分野などの大規模インフラ事業へと移行している。
変動するトルコ経済と安定したウズベキスタン経済
トルコ企業にとって、経済・人口面ともに安定的な成長を持続しているウズベキスタンでの事業活動は魅力的であると考えられる。
両国のGDP成長率のグラフを比較すると(図1参照)、ウズベキスタンは安定しているのに対し、トルコでは上下の動きが激しいことが見て取れる。合計特殊出生率もウズベキスタンで増加傾向にある一方、トルコでは減少傾向にあり、対照的だ。
ウズベキスタンではカリモフ前大統領時代に厳しい外貨規制が敷かれ、世界経済の影響を受けにくかったという要因もあるが、2016年末のミルジヨエフ大統領就任後も、コロナ禍の影響を除いては5%前後で推移し、安定した成長を続けている。
トルコ経済は2001年の国内金融危機の後、2002年から2007年にかけて平均7.2%の高成長を実現し、2008年には1人当たりGDPが初めて1万ドルを超えた。民営化の推進と同時に外資の流入が進み、対内直接投資が急拡大したほか、1996年のEU関税同盟発効を背景に、自動車部門を牽引役とする輸出主導型の工業も安定成長を続けた。
ミルジヨエフ大統領の就任以来、民営化を推し進め外資参入が進んだウズベキスタンは、2000年代のトルコ高成長期と重なる。トルコ企業にとって、当時の経験をウズベキスタンでの展開に応用しやすいと考えられる。
出所:世界銀行データ・各国公式統計からジェトロ作成
ウズベキスタンが原料輸出、トルコから完成品輸入
両国間の貿易は、ウズベキスタンから原料を輸出し、トルコから完成品を輸入するかたちだ。2024年のウズベキスタンからトルコへの輸出品目は、綿糸、銅線、ポリエチレン、銅管、石油製品、未加工亜鉛、綿くず、家庭用洗濯機、ブドウ、硫酸塩の順に多く、産業資源が中心の構成だった。ウズベキスタンがトルコから輸入したのは、ガソリンエンジン、食品加工機・包装機械、エアコン、発電機、合成繊維フィラメント糸、繊維仕上げ機械、そのほかの産業用機械、医薬品(調製済み)、農業用機械などであった。
2021年までは両国間の輸出入額はほぼ同額だったものの、2021年以降、ウズベキスタンのトルコ向け輸出額が落ち込む一方、トルコからの輸入額はゆるやかな増加傾向で推移し、ウズベキスタンの対トルコ貿易赤字が拡大した。
2024年のUN Comtradeデータによると、ウズベキスタンにとってトルコは金額ベースで輸入5位、輸出4位の貿易相手国だ。一方、トルコにとってウズベキスタンは輸入50位、輸出31位にとどまった。
2023年7月には両国間で特恵貿易協定が発効した(2023年7月10日付ビジネス短信参照)。トルコ産品では食品、ウズベキスタン産品では建設・電気設備関連の品目の関税が引き下げられた。具体的には、ウズベキスタンは、トルコの発電機、電化製品、部品、電線・ケーブル、建具、プレハブ建築構造物、遠心ポンプ、圧延鉄鋼などに対して関税を半減する。建設・エネルギー市場で活発に活動するトルコ企業にとってはメリットがあると考えられる。
トルコからの対外直接投資が増加
トルコのウズベキスタンへの対外直接投資フロー(図2参照)は、2016年の800万ドルから2025年には1億2,300万ドルと、10年で15倍以上に増加した。この背景には、2016年以降の両国関係の急速な強化と、ウズベキスタンの投資環境改革を受けたトルコ企業の進出拡大があると考えられる。
ウズベキスタン投資産業貿易省の発表(2026年3月13日)によると、2020年から2025年で合弁企業の数は3.5倍に増えた。実行されたトルコからの投資額は4.5倍に増加し、2025年には31億ドルに達した。現在、エネルギー、地質調査、建設資材の生産、農業、医療などの分野において、トルコ投資が関与する総額約100億ドル規模のプロジェクトが進行中だ。
注:2025年のストックの数値は未公開。
出所:トルコ中央銀行データからジェトロ作成
ウズベキスタンで存在感を増すトルコ企業
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- 執筆者紹介
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ジェトロ・タシケント事務所(執筆当時)
竹内アイシェギュル(たけうち あいしぇぎゅる) - 2023年、ジェトロ入構。本部ビジネス展開課にて国内外での投資フォーラム運営、モンゴル事業などを担当。2025年7月から2026年6月までウズベキスタンを中心とした中央アジア地域の事業運営や調査を担当。2026年7月より総務部広報課勤務。





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