競争力の源泉と進出戦略
ウズベキスタンで存在感を増すトルコ企業(2)

2026年7月14日

トルコ企業は、ウズベキスタン市場において存在感を高め、エネルギーやインフラ分野を中心に事業展開を拡大している。

特に近年では、官民パートナーシップ(PPP)を活用したインフラ事業への参画に加え、制度面への関与や人材育成にも取り組むなど、単なる投資にとどまらない多面的な関与がみられる。

本稿では、トルコ企業の具体的な事業展開と競争力の特徴を分析し、日本企業への示唆について検討する。

企業数で第3位、存在感高めるトルコ企業

トルコ企業の活動の特徴を見ていく。ウズベキスタン国家統計委員会によると、4月1日時点の同国におけるトルコ系企業数は2,186社。中国の5,398社、ロシア3,260社に続く3位だ。インフラ、エネルギー、建設、ロジスティクス、繊維分野で活発に活動する(表参照)。ウズベキスタンは鉱業分野においてバリューチェーンの中核拠点を目指しており、具体的な公開案件は少ないものの、同政府の発表によると、鉱業分野でもトルコ企業複数社が活動している。

ジェトロが2026年1月に行ったウズベキスタン政府関係者へのインタビューによると、トルコ企業の強みは、(1)意思決定のスピードの速さ、(2)コストと品質のバランスの良さ、(3)ファミリービジネス文化による柔軟な対応、(4)市場トレンドの察知力の4点だ。これらの強みが、PPP案件の獲得や制度形成への関与、人材育成を通じた現地定着につながっているとみられる。

トルコ側は、ウズベキスタンの安定性や地政学的重要性、アフガニスタンへの市場へのアクセスの良さを背景に、投資やウズベキスタンでの事業展開、ウズベク製品の輸入に関心を持っている。トルコ国内では物価・賃金の上昇が続き、繊維企業の倒産やエジプトなど周辺国への生産移転が増加している。エジプトはコスト優位性があるものの、現地の人材マネジメントが難しく、ウズベキスタンへの生産移転を模索する企業が増える傾向にある。特にファストファッション業界では、中国企業への対抗上、低コスト・高効率の新たな生産拠点としてウズベキスタンに関心を持っている。

表:トルコ企業のウズベキスタンでの活動
分野 社名 プロジェクト概要
IT TAVテクノロジーズ 空港のデジタル化(サマルカンド)
医療 ノーベル・ファームサノアト 医薬品製造
医療 サム・ヤプ 透析クリニック開設予定(カシカダリヤ、スルハンダリヤ)
インフラ アルバヤク・ホールディング 交通違反探知のための画像・映像機器導入
インフラ オスティム・グローバル ウズベク・トルコ産業地帯(OSTIM Global)の運営(タシケント)
インフラ ルネサンス 病院事業開発(サマルカンド) ※双日と協業
インフラ チェリケル・ホールディング アクチャ・クルルシュ(子会社)「タシケント・シティ・パーク」「マジック・シティ」など建設(タシケント)
インフラ リマック・ホールディング 水力発電所建設に向け協議
インフラ ICイクタシュ サマルカンド・ブハラ間有料道路建設に向け協議
エネルギー アクサ・エネルジ ガス火力発電所投資・運営(タリマルジャン、タシケント、ブハラ)
エネルギー チャルク・エネルジ ガス火力発電所受注(※三菱商事、三菱パワー参画)、熱電併給プラントのガスタービン増設(EPC)(タシケント)
エネルギー ジェンギズ・エネルジ 天然ガスコンバインドサイクル発電所(タシケント、シルダリア、ジザフ)
エネルギー イルテクノ コージェネレーション発電所建設(タシケント)
エネルギー コントロルマティック 変電所および架空送配電線の建設(タシケント)
金融 ズィラアト銀行 銀行サービス
建設 アカイ・コンストラクション 住宅・商業複合施設「Akay City」開発(タシケント)
建設 コチ・コンストラクション 高級住宅・商業施設、ホテル、会議場、病院、つり橋、天然ガス発電所などの建設
建設 オズギュべン 超高層ビル「ネスト・ワン」建設(タシケント)
建設 オンジュオウル・アーキテクツ 「タシケント・シティ・モール」、住居・商業複合施設などのデザイン
建設 XVAVヤプ 地下鉄延伸計画(タシケント)
自動車 アナドルいすゞ 自動車製造(サマルカンド)※トルコのアナドル・グループ、日本のいすゞ自動車、伊藤忠商事を主要株主とする商用車メーカー
食品 アナドル・エフェス ビール製造(タシケント)
食品 コカ・コーラ・イチェジェク 飲料製造(タシケント、ウルゲンチ、ナマンガン、サマルカンド)
製造・販売 MTマキナ 廃棄物処理・分別工場の設置(サマルカンド、2027年末までの完成予定)
製造・販売 ノバ・ウズベキスタン 衛生陶器製造(タシケント)
製造・販売 アルチェリク ウズベキスタンで家電販売を行う「インデシット・インターナショナル」「ワールプール」の買収
農業 ヘクタシュ 農業化学品工場
鉱業 エサン・エジザージュバシュ ウチクラチ鉱床の開発、採掘・加工複合施設の建設(ジザフ)

出所:公開情報を基にジェトロ作成

エネルギー分野で制度形成にも関与

分野別では、ウズベキスタンのジュラベク・ミルザマフムドフ・エネルギー相によると、両国間でエネルギー分野の協力が急速に発展している(アナドル通信、2025年12月22日)。

トルコ企業は、ウズベキスタンで発電・送電から大規模インフラ事業まで、エネルギー分野に積極的に参入している。サマルカンドでの送配電分野における最初のPPP案件は、2025年に国際入札でトルコ企業が獲得した。以来、ウズベキスタンのエネルギーインフラ開発において、エンジニアリング、調達、建設工事の請負業者として重要な役割を果たしている。

ミルザマフムドフ・エネルギー相によると、同国は設備や電気部品、ケーブルなどの製造を含む付加価値型の共同事業に前向きだ。加えて、鉱業分野ではバリューチェーンを網羅する地域の中核拠点を目指している。

ウズベキスタンでは、電力自由化に向けてトルコのノウハウを吸収する動きがある。2024年6月、ウズベキスタンの電力市場自由化を担う独立規制機関であるウズベキスタンエネルギー市場規制庁(EMDRA)とトルコエネルギー市場規制庁(EPDK)は、トルコ側からのノウハウ共有や同分野での二国間協力の確立を目的として協力合意に署名した。電力市場運営モデルに関しても、EMDRAはトルコのエネルギー取引所(EPİAŞ)と、効率的なウズベキスタンのエネルギー市場形成に向けた協力覚書を締結した。エネルギーの安定供給確保や民間投資家の誘致を目指す。EMDRAは活動内容が2024年1月に定められたばかりの新しい機関だ。エネルギー分野では、トルコ側が制度形成の段階から影響力を持っていることが特徴的だ。

官民パートナーシップ(PPP)の経験を強みに事業拡大

ウズベキスタンは国をあげてPPP支援を行う。2024年8月にミルジヨエフ大統領は大統領令「2024~2030年におけるウズベキスタン共和国の官民パートナーシップ発展に向けた措置について」を承認し、制度面の整備を進めた。同大統領令では、2030年までにPPPプロジェクトへの民間投資を少なくとも300億ドル誘致することを目標に掲げ、地域の持続的な高成長を支える社会・経済インフラの整備や、エネルギー分野でのPPP成功事例を他分野への展開を目的として、優先PPPプロジェクトを定めている。

トルコでは、過去20年間でPPP方式の活用が、従来の公共調達に代わる手段として増加してきた。同国投資・財務局によると、2003年から2025年までのPPP契約額は1,990億ドルに達し、207件のプロジェクトが実施された。特に運輸とエネルギー分野で豊富な経験を有しており、こうした実績はウズベキスタンが抱える課題とも合致している。この点が、トルコ企業によるウズベキスタンのPPP案件での存在感を裏付ける要因の1つとみられる。

トルコのゼネコン最大手ルネサンス・ホールディングによると、ウズベキスタンでのPPPプロジェクトは、国家的な支援体制が整っていることに加え、中央アジア中でも識字率が高く、若い人口が増加していること、地理的優位性、金・銅・ガス・ウランといった豊富な天然資源、さらに大きな発展潜在力を有する点が魅力だ(「fDiインテリジェンス」2024年9月2日)。

雇用創出と技術移転をアピール

雇用や技術移転、人材育成も重要な連携分野だ。ウズベキスタンでは、人口が毎年数十万人規模で増加しており、雇用先の確保が課題になっている。トルコ企業は、雇用創出と技術移転を同時に進める点で、ウズベキスタン政府の優先課題と合致している。

2026年6月16日、タシケント国際投資フォーラム(TIIF)内で「トルコ・ウズベキスタン・ビジネスフォーラム」が開催された。ジャムシド・クチカロフ副首相兼経済財務相が登壇し、労働需要の高いトルコの産業分野におけるウズベキスタン人技術者の組織的な雇用に向けた仕組みづくりを明らかにした。登壇したアナドルなどのトルコ財閥企業は、ウズベキスタンでの雇用創出に加え、現地調達を進めることで地場産業に貢献していることをアピールした。

トルコ企業オズギュベンは、2023年に完成したウズベキスタン初の超高層ビル「ネスト・ワン」の建設に携わった。同社によると、当初はトルコから1,000人の専門家が派遣されていたが、現地の建設作業員に技術指導を行った結果、最終的にはトルコ人専門家の数を200人まで減らすことができた(「ウズデイリー」2023年11月20日)。

政府系機関の協力による人材育成も行われている。トルコの公式開発援助機関であるトルコ国際協力調整庁(TIKA)は、ウズベキスタンで、エネルギー効率の向上や都市開発、水資源の有効活用、サービス産業の発展などの分野において、地元企業の専門知識向上を目的とした研修会の開催に協力している。また、ウズベキスタン経済財務省および関連機関の職員を対象とした能力向上プログラムや研修コースも実施している。

さらに、トルコのデニズリ(繊維業)、コジャエリ(製造・化学品)、ブルサ(自動車・繊維)といった産業クラスターを形成する地方都市とウズベキスタンの地方都市との間で、人的交流などの連携も進んでいる。

日本企業との第三国連携の可能性

先述の「トルコ・ウズベキスタンビジネスフォーラム」では、トルコの有力企業の幹部が登壇する中、チャルク・エネルジは「三菱」に、アナドル・グループは「いすゞ」に、それぞれパートナーとして言及する場面があった。ウズベキスタンにおけるトルコ企業の活動において、日本企業が実績に基づく信頼という価値を提供し、存在感を示している象徴する場面だった。

これまで見てきたように、トルコ企業はウズベキスタンとの文化的親和性を背景に、官民一体となって現地市場に深く入り込み、スピードと柔軟性を強みとしている。一方、ウズベキスタン側は、日本企業について品質や信頼性、長期的な関係構築に優位性があると評価している。

両者は補完関係にあり、日本企業にとってトルコ企業は有力な第三国連携パートナーとなり得る。日本の技術・信頼性とトルコの現場対応力を組み合わせることで、ウズベキスタン市場における競争力向上が期待される。

ウズベキスタンで存在感を増すトルコ企業

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(1)進出拡大の背景

執筆者紹介
ジェトロ・タシケント事務所(執筆当時)
竹内アイシェギュル(たけうち あいしぇぎゅる)
2023年、ジェトロ入構。本部ビジネス展開課にて国内外での投資フォーラム運営、モンゴル事業などを担当。2025年7月から2026年6月までウズベキスタンを中心とした中央アジア地域の事業運営や調査を担当。2026年7月より総務部広報課勤務。