バングラデシュにおける日本食市場の可能性

2026年4月14日

バングラデシュの1人あたりGDPは2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)で2,593ドル(出所:世界銀行)と低く、国連が定める後発開発途上国(LDC)に位置付けられている。しかしダッカ商工会議所(DCCI)の調査によると、首都ダッカの1人あたりGDPは5,164ドルに上り、インドネシアやベトナムの国平均と同程度だ。全国1億7,000万人、ダッカ2,000万人超の人口と中間層の拡大を背景に、近年、ダッカを中心にバングラデシュの内需開拓に関心を寄せる企業が増えている。本稿では、日本食市場に焦点を当て、農林水産物・食品の輸出入や小売店・飲食店の動向を整理するとともに、日系食品企業が直面している課題などを概説する。

農林水産物・食品の輸出入概況

バングラデシュの農林水産物・食品の輸入額は、2023/2024年度に127億ドルだった(表1参照)。このうち、衣料品製造の原料となる綿の輸入が27.8%、動物性・植物性油脂が17.3%、穀物が15.2%を占めた。他方、日本からバングラデシュへの同輸出額は2025年(暦年)14億294万円、ドル換算で890万ドルであり、昨対比で60.9%増加した(表2参照)。配合調製飼料が3.9倍と大幅に増加したことに加え、前年に実績がなかった食品7品目の輸出が増加の主因に挙げられる。品目別内訳では、農産物が58.1%、水産物が41.8%、林産物が0.1%を占め、清涼飲料水、緑茶、スープブロス、チョコレート菓子、菓子、しょうゆなども、少額だが輸出されている。

表1:バングラデシュの農林水産物・食品の品目別輸入状況(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値) 注1:農林水産省が定めている農林水産物の対象範囲(HSコード別、輸出)である03類、04類、07類、08類、09類、10類、12類、15類、17類、18類、21類、22類、23類、29類、32類、38類、52類、53類に限る。29類はHSコードが6桁設定されているが、バングラデシュ銀行のデータでは特定ができないため4桁を使用。 注2:輸入統計は輸入決済の資金の種類(現金、バイヤーズ・クレジット、ローン)などに基づいており、複数のインコタームズ(原則としてCFR/CPT。FOBも可)が含まれる。
品目 2022/23年度 2023/24年度
金額 金額 構成比 伸び率
綿・同製品 3,950 3,529 27.8 △ 10.7
有機化学品 208 229 1.8 10.1
各種科学工業製品 1 2 0.0 100.0
なめしエキス、染料 6 4 0.0 △ 33.3
植物繊維 12 22 0.2 83.3
動物性・植物性油脂 2,951 2,203 17.3 △ 25.3
穀物 2,753 1,931 15.2 △ 29.9
砂糖、砂糖菓子(チョコレート菓子除く) 951 1,205 9.5 26.7
油糧種子 1,343 1,195 9.4 △ 11.0
野菜 1,010 1,098 8.6 8.7
コーヒー、茶、スパイス 360 480 3.8 33.3
乳製品、鶏卵、天然のはちみつ 423 409 3.2 △ 3.3
果実 342 393 3.1 14.9
合計 14,310 12,700 100.0 △ 11.3

注1:農林水産省が定めている農林水産物の対象範囲(HSコード別、輸出)である03類、04類、07類、08類、09類、10類、12類、15類、17類、18類、21類、22類、23類、29類、32類、38類、52類、53類に限る。29類はHSコードが6桁設定されているが、バングラデシュ銀行のデータでは特定ができないため4桁を使用。
注2:輸入統計は輸入決済の資金の種類(現金、バイヤーズ・クレジット、ローン)などに基づいており、複数のインコタームズ(原則としてCFR/CPT。FOBも可)が含まれる。

出所:バングラデシュ銀行(中央銀行)

表2:日本からバングラデシュ向けの農林水産物・食品の品目別輸出状況(金額以外の単位:%、△はマイナス)(△はマイナス値) 注1:0は実績のないもの。n.a.は計算不能。 注2:為替レートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2025年12月30日)のTTSレート「1ドル=157.56円」を適用。 注3:2025年1月1日~12月31日における輸出額の合計。
品目 2024年 2025年
1,000ドル 1,000円 1,000ドル 1,000円 構成比 伸び率
農産物(合計) 1,760 277,381 5,169 814,448 58.1 193.6
酵母 10 1,550 0 0 n.a. △ 100.0
配合調製飼料 335 52,767 1,323 208,377 n.a. 294.9
ペプトン等 76 11,925 127 20,085 n.a. 68.4
播種(はしゅ)用の種、果実および胞子 629 99,030 27 4,254 n.a. △ 95.7
ソース混合調味料 0 0 21 3,368 n.a. n.a.
メントール 66 10,422 18 2,850 n.a. △ 72.7
清涼飲料水 0 0 16 2,464 n.a. n.a.
スープブロス 0 0 9 1,386 n.a. n.a.
緑茶 0 0 8 1,243 n.a. n.a.
チョコレート菓子 0 0 6 934 n.a. n.a.
菓子(米菓を除く) 0 0 6 934 n.a. n.a.
しょうゆ 0 0 3 524 n.a. n.a.
植物性油脂 6 932 2 285 n.a. △ 69.4
農産物(その他) 639 100,755 3,603 567,744 n.a. 463.5
水産物(合計) 3,755 591,713 3,723 586,645 41.8 △ 0.9
にしん(生・蔵・凍) 17 2,743 0 0 n.a. △ 100.0
ホタテ貝 116 18,230 0 0 n.a. △ 100.0
水産物(その他) 3,622 570,740 3,723 586,645 n.a. 2.8
林産物(合計) 18 2,829 12 1,850 0.1 △ 34.6
木製家具 16 2,581 12 1,850 n.a. △ 28.3
林産物(その他) 2 248 0 0 n.a. △ 100.0
農林水産物・食品(合計) 5,534 871,923 8,904 1,402,943 100.0 60.9

注1:0は実績のないもの。n.a.は計算不能。
注2:為替レートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2025年12月30日)のTTSレート「1ドル=157.56円」を適用。
注3:2025年1月1日~12月31日における輸出額の合計。

出所:農林水産省、財務省統計

日系食品企業の事業展開形態

実際にどのような企業が事業に取り組んでいるのか。バングラデシュで事業展開する日系食品企業の形態は、輸出と進出に分類される。輸出については、主に大企業が海外で生産した商品を展開している。キッコーマンのシンガポール産しょうゆ、キユーピーのマレーシア産マヨネーズおよびドレッシング、日清食品のインドネシア産即席麺、森永乳業のオランダ産粉ミルクが例に挙げられる。伊藤園の緑茶やヤマサ醤油のしょうゆのように、一部には日本から輸送している事例もある。

対バングラデシュ輸出に取り組む魅力について、国民の約9割がムスリムであり、第三国で生産したハラール製品を展開しやすい点がある。一方、市場の情報が限られており動向を把握しづらいため、投資判断に難しさを感じる企業は多いようだ。中には、現地バイヤーからの引き合いをきっかけに市場に関心を持ち、輸出を始めた企業もある。

進出については、企業の規模を問わない。味の素が調味料、ユーグレナがユーグレナ原料およびハラールサプリ、ナルトジャパンがさつまいも、加えて日本の7社を中心に14社で構成されるJグループが水産物を扱っている。当該企業はコストの削減や商品の現地化を通じて、競争力を確保しようとしている。過去には日本から輸入した商品が現地の価格や味覚に合わず、現地生産を決断した企業もある。人件費が他国と比べて安価なため、バングラデシュで生産した加工品を第三国に輸出する事業も検討可能だ。

独特な輸入規制への対応が必要

事業に取り組む日系企業がいる一方で、バングラデシュで食品の輸入許可を得るためには、独特の規制を順守する必要がある。食品および食用可能な物質は全て、毎回の輸入時にバングラデシュ基準検査機関(BSTI)またはバングラデシュ科学工業研究評議会(BCSIR)の法定検査を受けなければならない。「食品として適正であることの衛生証明書」(Fit for Human Consumption Certificate)や放射性測定証明書の提出も求められる。

ムスリムが忌避する豚および豚由来製品は、輸入禁止品目に該当する。このため、日本製品の輸入障壁は高い。バングラデシュ農業省が「異議なし証明書(NOC)」を発行しない和牛は、実質的に輸入禁止品目となっている。ハラール認証を求めるバイヤーはいるものの、小売店や日本食レストランが認証のない商品を扱うケースもあり、建前と実態が混在している状況だ。また、輸入業者が最大小売価格(MRP)を設定できるため、小売業者はこれに従う必要があり価格は不当には吊り上がらない。

過半が第三国からの輸入

独特な規制がある中、バングラデシュで食品メーカーの承諾を得て商品を取り扱っているバイヤーは5社存在する(表3参照)。このうち、2社が日本から直接輸入している。ほかの企業はタイ、マレーシア、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイから仕入れている。筆者がヒアリングを行った限り、さらに約12の輸入業者が「日本食品の需要が高まれば、取り扱いを検討したい」と述べている。日本食品の取り扱い実績を持たない業者の間でも、日本食品への関心は高まっている。

表3:日本食品を取り扱う輸入業者の一例
企業名 所属国 日本食品の取り扱い
ONODA 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 日本 調味料、加工食品、菓子類
ヌール・トレード・ハウス(Noor Trade House)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます バングラデシュ 調味料、水産物、加工食品
ナカ・トレーディング(Naqa Trading)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます バングラデシュ 調味料、茶
Q&Qトレーディング(Q & Q Trading)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます バングラデシュ 菓子類
スバル・バングラデシュ(Subaru Bangladesh)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます バングラデシュ 即席麺、調味料

出所:ヒアリングを基にジェトロ作成

小売店と日本食品の取り扱い

輸入業者は、どのような小売店に販売しているのか。小売店の構成は、キオスク型の野外仮設店舗や中小路面店が7割を占める。これらの店はほとんどが安価な商品を陳列しており、利用者は高価な輸入品を求めていない。一方、小売店の3割を占める近代的なスーパーマーケットは全国に200店舗程度存在し、うち40店舗はダッカに立地している(注1)。財閥がスーパーマーケットやコンビニエンスストアを多店舗展開しており、一部の利用客はより高品質な輸入品を求めている。

日本食品の売り先となり得る代表的な小売店は、大手財閥系のユニマート(Unimart)や大手スーパーチェーンのショプノ(Shawapno)だ。ユニマートはダッカを中心に7店舗、ショプノは全国で700店舗以上を展開しており、並行輸入品も含めて日本の商品が陳列されている。小売価格はメーカー参考価格の2~7倍と高い(表4参照)。当該小売店は「賞味期限が長い」「ハラール認証を取得している」「価格が高すぎない」ことを求める傾向にある。バイヤーは日本の食品に関してさほど知識や経験を持たないため、サプライヤーにはプロダクトアウトの発想が求められる。既にダッカで売られている菓子類、麺類、お茶、清涼飲料水、調味料は、市場に適した商品を考える上で参考になる。のり、そば、わさび、パン粉、てんぷら粉なども、自社商品への切り替えを狙えるかもしれない。

表4:小売店における日本食品の価格注:1タカ=1.2円換算、日本の参考価格はAmazonを参照。
企業名 ブランド・商品名 現地
価格
日本
参考価格
原産国 小売店
ロッテ 小さなチョコパイ 606 251 114.4g
(8個)
日本 Unimart
ロッテ トッポ「ザ・ショコラ」 390 219 36g 日本 Unimart
ブルボン チョコダイジェスティブビスケット 432 167 98.6g
(17枚)
日本 Unimart
森永製菓 アーモンドクッキー 516 226 111.6g
(12枚)
日本 Unimart
ミツカングループ 穀物酢 1,554 230 800ml 日本 Unimart
キユピー Thousand Island 563 210ml マレーシア Shwapno
日清食品 GEKIKARA RAMEN 276 109g インドネシア Shwapno
キッコーマン Soy Sauce 1,799 1L シンガポール Unimart

注:1タカ=1.2円換算、日本の参考価格はAmazonを参照。

出所:2025年7~9月に実施した価格調査を基にジェトロ作成

日本食レストランは拡大傾向、フュージョン料理が多数

日本食レストランはどのような状況なのか。バングラデシュには52の日本食レストランが存在するとみられるが、大多数が現地化されたフュージョンレストランだ。ジェトロが2025年6~8月に日本食レストラン10店舗へヒアリング調査を実施した結果、すし(巻きずし、サーモン)、エビ天ぷら、ギョーザが日本食レストラン共通の人気メニューであり、客はしょうゆやソースを多めにつける傾向にあると分かった(表5参照)。ヒアリング調査を行った店舗の半数にあたる5店舗が、日本食品の仕入れ先の多様化を希望していた。日本食市場は拡大傾向にあり、他社との競争が生まれているようだ。すしやラーメンに使う食材への需要が高く、日本人シェフが在籍する高級レストランでは日本産食材への要望が確認された。

表5:日本食レストランのヒアリング調査結果注:1タカ=1.2円換算。
No 関心のある商材 店舗数 席数 主な日本食メニューと品数 顧客層
(国・地域別)
顧客単価
(ディナー)
A 業務用商品、マグロ、常温うどん、焼きそば麺、地方限定食材、季節のフルーツ 1 100 刺し身、すし、天ぷら、鉄板焼き(計108品) 7割:現地・欧米
3割:日本
6,000円以上
B のり、みそ 1 85~90 刺し身、すし、揚げ物、焼き物(計125品) 6~7割:外国
3割:現地
6,000円以上
C すし酢、天ぷら粉 1 60 刺し身、巻きずし、天ぷら(計119品) 7割:現地
3割:東アジア
3,600~6,000円
D 昆布、のり 3 76~78 天ぷら、巻きずし、チキンカツカレー、抹茶チーズケーキ(計78品) 7割:外国
3割:現地
1,800~3,600円
E しょうゆ 2 60~120 天ぷら、巻きずし、あぶりサーモンすし(計25品) 9割:現地
1割:外国
1,800~3,600円

注:1タカ=1.2円換算。

出所:ジェトロ作成

課題は貿易インフラの脆弱性と高課税

食品事業の課題は何か。海上輸送について日系物流会社に聞いたところ、日本からバングラデシュ南東部チョットグラム港までの輸送には、シンガポールやマレーシア経由で約3週間かかる。また、2週間以上の積み替え待ちが日常的に発生する。港湾職員が要保冷品を適切に扱わない事案も起きている。リードタイムが読みづらく海上輸送にコストがかかる点で、企業は脆弱(ぜいじゃく)なインフラに悩まされている。国際協力機構(JICA)が現在、有償資金協力を通じて大型船が入港可能なマタバリ港を開発中だ。同港が将来的にバングラデシュの貿易を支える強いインフラとなり、物流が改善されると、日本からの輸入も大きく拡大すると期待される。

また関税率が高く、加えて輸入品には関税を含め6種類の税金(CD、RD、SD、VAT、AIT、AT)(注2)が課される。このため、輸入額を過少に申告しようとする業者もいる。一度輸入した商品について、次回以降も同じ価格での申告を求められ、製造者による価格低減の企業努力が認められないケースも確認されている。バングラデシュ向けに貿易取引を行う企業に対して、高関税に加え、競争をゆがめるような通関時の対応も確認されている。そのほかの課題として、決済は基本的に信用状(L/C)であり、外貨準備高や商業銀行の方針により決済遅延を起こすことがある。模倣品も蔓延(まんえん)し、正規品の販売障壁となっている。

日本バングラデシュEPA締結による貿易促進に期待

課題を解決する動きはあるのか。日本とバングラデシュは2026年2月6日、東京で経済連携協定(EPA)の署名式を行った。日本からバングラデシュへの輸出に関し、和牛、ぶり、たい、ほたて、緑茶、りんご、ぶどう、しょうゆなどが即時~18年以内の関税撤廃の対象となった。また、同協定にはルールの整備も組み込まれており、税関での手続きは通常貨物の通関48時間以内を目標とし、汚職・腐敗防止のための倫理規定の制定も進められる。知的財産に関しては、特許と商標の国際出願条約への加入義務、当局に対する知財侵害物品の廃棄命令権限の付与などが記載されている。発効時期は現時点で明らかになっていないものの、発効すれば日本からの輸出を強く後押しするものになる。

質の高いビジネスマッチング組成と消費者開拓を目指す

バングラデシュにおける食品市場を取り巻く環境を踏まえて、ジェトロは2025年12月21日、ダッカで日本産食品披露会を実施した。日本企業7社がバングラデシュのバイヤー11社(輸入業者5社、日本食レストラン3社、小売店2社、ホテル1社)に対して、対面またはオンラインで自社商品を紹介した(2026年1月5日付ビジネス短信参照)。その後、バイヤーごとに関心をもった商材を取りまとめ、商談を組成した。書類でのスクリーニングのみならず、バイヤーが「見て、聞いて、食べて」判断する工程を経たことで、質の高いマッチングが成立した。さらに、日本食レストランと連携して、2025年11~12月に日本産食材のプロモーションイベントを実施し、本格的な日本産食品の認知や体験の提供を図った(2026年2月13日付ビジネス短信参照)。

バングラデシュの日本食市場は、開拓が始まったばかりだ。BtoBとBtoCの両輪で、戦略的に販路開拓の機会を組成することで、関心のある企業が挑戦しやすい土壌を作っていきたい。


注1:
多店舗展開の小売店でも1つとカウントした場合の店舗の概数。 本文に戻る
注2:
一般関税(CD)、調整税(RD)、補足税(SD)、付加価値税(VAT)、前払い所得税(AIT)、前払い税(AT)の略。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所
箕浦 智崇(みのうら ともたか)
2021年、ジェトロ入構。農林水産食品部市場開拓課、ジェトロ新潟を経て、2025年1月から現職。