日系企業の事業展開事例
インドから検討するアフリカ市場(2)
2026年6月23日
本連載の前編(2026年3月19日付地域・分析レポート参照)では、インドとアフリカ間の外交や経済面でのつながりについて、各種統計を用いて確認した。これにより両国・地域間の関係性は伝統的に強固であり、貿易量も堅調な推移を記録していることが分かった。
インド単体で見れば、日系企業の有望投資先として熱視線が注がれている。国際協力銀行(JBIC)の「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2025年)」では、有望事業展開先としてインドが4年連続で首位となった。また、ジェトロが2025年11月に発表した「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)(以下、日系企業調査)」でも、81.5%の企業が今後1~2年でインドにおける事業を拡大すると回答している。
このような状況下で、インドの地の利を生かすかたちで、インドからアフリカへ製品・事業展開する企業が確認されている。本稿では、インドからアフリカ市場に事業展開する日系企業に焦点を当て、各社の事業展開を類型化して紹介する。
移管型と起点型に分かれる日系企業の事業展開
2026年1~3月に行った南アフリカ共和国(以下、南ア)やインドの日系企業、日本本社へのヒアリングから、インドの日系企業によるアフリカ事業を大きく2つに分類した。1つはインド以外からアフリカに輸出していた製品を、近年インドで製造するようになった「移管型事業」で、もう1つはインドで製造した製品をアフリカにも輸出する「起点型事業」だ。移管型はインドでの品質が高まったことにより実現したものと捉えられ、起点型はインド拠点の規模のメリットを生かした場合や、買収、イノベーションなどインドでの開発能力が大きく関わっているとみられる。
移管型の企業事例 生産地をASEAN等からインドへ
建設機械大手のコマツの南ア拠点であるコマツ南アフリカでは、現地生産を行っておらず、米国やドイツ、日本などで製造する製品をアフリカに輸入していた。このうち、日本で生産していた製品の一部についてインドネシアからの輸入に切り替え、その後インドネシアからインドに変更した。コマツのアフリカ統括会社であるコマツアフリカホールディングスの島崎裕介副社長は、「アフリカの顧客からのインド生産品への品質評価が良かったことから、地理的にも近いインドから輸出することになった」と語る(取材日:2026年2月16日)。インドからの輸入を開始した2010年頃は、取り扱い製品はダンプトラックだけだったが、現在は油圧ショベルなど広がりを見せている。

自動車部品サプライチェーンでも、東南アジアからインドへの移管が模索されている。南ア・ダーバンでトヨタ自動車向けに部品を供給している豊田通商アフリカ(TTAF)は、主にタイから部品を輸入しているが、最近はサプライヤーからインド製品を提案されることが増えているという。現在の輸入割合はタイが半分程度、インドは1割未満、残りが欧州や日本からとなっている。タイの人件費が上昇していることから、今後インドからの輸入が増える可能性がある。また物流面でも、タイから南アへの輸入には約45日を要するのに対し、インドからは約30日で、輸送日数を3分の2に短縮できる点が利点として挙げられよう(取材日:2026年2月18日)。
なお、自動車部品については、日系企業に限らずインドからアフリカ向けの輸出は増加傾向にある。インド自動車部品工業会(ACMA)によると、2025年度(2025年4月~2026年3月)の対アフリカ輸出額は11億6,000万ドルで、前年度比16.7%増加した。部品輸出総額229億ドルに占める割合は5%にとどまるが、伸び率は世界全体向け8%の2倍超であり、今後の成長余地の大きさがうかがえる。
起点型の企業事例 スケールメリット活かした輸出戦略
同型の代表格はスズキだ。同社はインドで製造した自動車を輸出し、南アなどで販売している。これまではインドで生産する車種の中からアフリカ市場に適合するモデルを選定していたが、今後はアフリカ市場を織り込んだ開発・製造を進めていく方針だという(2025年12月2日付地域・分析レポート参照)。また、豊田通商はスズキ車のインド製部品パッケージをガーナでノックダウン生産しており、インド起点のサプライチェーン構築が進みつつある。
自動車部品大手の武蔵精密工業は、インドで電動二輪向け駆動ユニット「イーアクスル(e-Axle)」を生産している。「アフリカの社会課題の解決」をアフリカ事業の目標として掲げる同社は、アフリカではケニアの電動バイク事業を手掛けるスタートアップ、アーク・ライド(ARC Ride)と2021年から協業を開始しており、同社への出資も行った。協業においては、イーアクスルの提供に加え、経済産業省の令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型競争等事業費補助金」に採択され、同社との共同事業としてバッテリーステーションをナイロビに設置し、取得したデータをステーションの運用率向上に活用している。なお、2025年にはインドで新技術の試験・検証に特化したムサシ・テクノロジー・エクセレンスセンター(M-TEC)を開設し、インドとアフリカを含むグローバルなニーズに応える新たなイノベーションの発展に取り組んでいる(取材日:2026年1月20日)。

検査・測定装置などを製造・販売するアークレイ(本社:京都府京都市)は、2014年にインドのスパン・ダイアグノスティクス(以下、スパン社)より事業譲渡を受けるかたちでインド事業に参入した。もともとスパン社がマラリアやHIVなどの臨床検査薬(IVD)を販売しており、これらをアフリカ市場に展開している。現在、アフリカ市場では代理店を経由して販売展開しており、ケニア、ナイジェリア、カメルーンなどで小型装置、チュニジア、モロッコ、モーリシャスなどでは、ラボで使用する糖尿病検査機器を販売している。


アグリテック系スタートアップ企業のサグリ(本社:兵庫県丹波市)は2019年にインド拠点を設立し、ベンガルールをエンジニア拠点として、人工知能(AI)やアプリエンジニアリングの観点からアフリカ事業をカバーする。同社のR&Dハブをインドに設置したことで、アフリカ事業をはじめとした各国の事業をインドからサポートしているかたちだ。
インドから検討するアフリカ市場 現地化への対応も
これまで、インドへ事業を「移管」またはインドを「起点」としてアフリカ市場を検討する企業の事例を紹介してきた。各社に共通するのは、インドに拠点を有し、グローバル展開のスケールを確保した上で、輸出先・事業展開先の1つとしてアフリカを位置付けている点だ。また両モデルの関係性としては、インドへ生産機能の「移管」が進むことでサプライヤーや人材のレベルが向上し、その結果としてインドを「起点」に世界各国へ事業展開できる土壌が整備されるという好循環が指摘できる。特に、地理的近接性や需要構造の類似性が指摘されるアフリカは、こうした展開の有力先といえる。
一方で、課題も残る。第一に、アフリカは54カ国それぞれに市場特性があることから、ひとくくりで捉えることが困難である点が指摘できる。第二に、中長期的には現地に根差した取り組みが必要である点だ。インドでは、製造業誘致振興政策「メーク・イン・インディア」に続き、目標をさらに前に進めるかたちで「メーク・イン・インディア、メーク・フォー・ザ・ワールド」を掲げ、輸出拠点化を進めている。同様に、アフリカ各国でも現地生産化の要請は強まっている。このため、インド拠点は有力な「入り口」となる一方、中長期的に市場を開拓していくためには、一定程度の現地化も必要不可欠である。インド拠点を活用した域外展開モデルは有効であるが、最終的にはアフリカ域内での価値創出(現地生産・雇用・供給網構築)にいかに接続できるかが、競争力を左右する要因となろう。そのため、インドからアフリカ市場を検討する際には、両国・地域の政府方針と整合的な事業戦略が重要となってこよう。
インドから検討するアフリカ市場
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- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部アジア大洋州課
深津 佑野(ふかつ ゆうの) - 2022年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課を経て、2023年8月から現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部調査企画課
中村 周(なかむら あまね) - 2024年、ジェトロ入構。同年4月から現職





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