ドイツ乗用車生産・新規登録台数ともに減
2024年乗用車市場(前編)

2025年6月2日

2024年のドイツ国内の乗用車生産、新規登録台数はいずれも前年比でわずかに減少した。同国大手自動車メーカー3社〔フォルクスワーゲン(VW)グループ、BMWグループ、メルセデス・ベンツグループ〕の世界生産・販売台数も同様に減少した。

1. 乗用車生産台数
2024年のドイツ国内乗用車生産台数でEVは過去最高

ドイツ自動車産業連合会(VDA)によると、2024年のドイツ国内乗用車生産台数は406万9,222台(前年比1.0%減)と減少した。そのうち、バッテリー式電気自動車(BEV)の生産台数は前年から増えて、初めて100万台超えの106万台(11%増)となった。ドイツ日刊紙の「ベルリナー新聞(Berliner Zeitung)」(2024年12月10日)はその要因の1つとして、ノルウェーやオランダなどからのドイツ産BEVへの高い需要を挙げた。他方で、プラグインハイブリッド車(PHEV)は29万台(6%減)と減少した。EV(注1)が全体に占めたシェアは33.2%となった。

VDAは1月に、2025年の国内乗用車生産台数について、ドイツ経済の低迷を背景に415万台(前年比1%増)と予測した。BEVとPHEVの生産台数はそれぞれ全体の増加率を上回る30%増、2%増としている。その理由として、EUで2025年から乗用車(新車)に対する新たな二酸化炭素(CO2)排出削減目標(2024年9月25日付ビジネス短信参照、注2)が課せられることを挙げた。しかし、欧州委員会は4月1日、2024年のEV需要の低迷を背景に、CO2排出削減目標に係る規則の一部改正案を提案した(2025年4月7日付ビジネス短信参照)。改正案では、排出目標は維持するが、2025~2027年に限り、単年ではなく3年間の平均値で順守状況をみる。同改正が成立した場合、VDAが2025年の国内生産の予測を修正することもあり得る。

ドイツ自動車大手3社、世界乗用車生産台数が前年比で減少

ドイツ自動車大手3社はいずれも、2024年の世界乗用車生産台数が前年比で減少した。以下、各社が発表した世界での乗用車生産台数をベースに、2024年の車両生産動向を概観する。

VWグループ

VWグループ〔中国の合弁会社(注3)分を含む〕の2024年の世界乗用車生産台数(乗用車以外の小型商用車も含む)は895万3,693台(前年比3.8%減)となった。同グループによると、特に中・東欧での洪水によるサプライチェーン混乱が生産台数に影響を及ぼした。2024年のドイツ国内生産台数は168万6,358台(前年比11.9%減)と減少した。国内生産台数のグループ全体でのシェアは18.8%となり、前年比で1.8ポイント下がった。中国の合弁会社分を含まない同グループによる車両生産は621万3,442台(0.4%減)だった。

BMWグループ

BMWグループの2024年の世界乗用車生産台数は251万3,830台(前年比5.6%減)だった〔中国の華晨汽車集団(Brilliance)による生産を含む〕。ブランド別では、BMWが222万9,009台(4.8%減)、MINIが27万8,897台(11.5%減)となり、高級ブランドのロールスロイスも5,924台(4.1%減)と減少した。BEVとPHEVの生産台数は65万324台(6.0%増)で、過去最高を更新した。うち、BEVが48万1,794台(15.9%増)を占めた。

メルセデス・ベンツグループ

メルセデス・ベンツグループ傘下では、メルセデス・ベンツ・カーズ(スマートを含む)の2024年の世界乗用車生産台数は196万8,885台(前年比3.5%減)となった。うち、中国の北京工場で生産された車両は57万1,000台だった。

2. 乗用車新規登録/販売台数
2024年のドイツ国内乗用車新規登録台数

続いて、販売台数の動向を紹介する。ドイツ連邦自動車局(KBA)によると、2024年のドイツ国内乗用車新規登録台数(注4)は281万7,331台(前年比1.0%減)だった。

主要ブランド別にみると、ドイツ3大自動車メーカー・ブランドが上位を占めた(表1参照)。VWが53万6,888台(前年比3.4%増)、シェア19.1%と最大だった。メルセデス・ベンツが25万7,888台(7.0%減)でシェアは9.2%、BMWが23万2,886台(0.1%減)でシェアは8.3%と続いた。VW傘下シュコダが20万5,593台(22.0%増)と大きく増え、7.3%のシェアを占めるに至った。一方で、同じくVW傘下アウディは20万2,317台(18.1%減)と大幅に減少し、シェアは7.2%にとどまり、メーカー・ブランド別で第5位と、前年の3位から順位を下げた。

日系メーカーでは、トヨタ(レクサスを除く)が9万5,474台(前年比27.0%増)と好調で、シェア3.4%と上位を維持した。同社が展開する高級車ブランドのレクサスも5,712台(75.3%増)と急増した。他方、マツダと日産はそれぞれ4万5,274台(2.5%減)と2万9,529台(7.3%減)と減少し、シェアは1.6%、1.0%だった。三菱自動車は2万8,679台(50.8%増)と大幅に増加し、1.0%のシェアを占めた。スズキも2万5,566台(1.8%増)とわずかに増加、シェアは0.9%だった。ホンダは7,063台(8.3%増)で、シェアは0.3%になった。スバル自動車は振るわず、4,510台(1.9%減)にとどまった。シェアは0.2%だった。

表1:ドイツの乗用車新規登録台数(2024年/主要メーカー・ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 メーカー・ブランド 台数 シェア 前年比
上位10
メーカー

ブランド
VW 536,888 19.1 3.4
メルセデス・ベンツ 257,888 9.2 △7.0
BMW 232,886 8.3 △0.1
シュコダ 205,593 7.3 22.0
アウディ 202,317 7.2 △18.1
セアト 152,334 5.4 14.9
オペル 147,833 5.2 2.0
フォード 99,554 3.5 △14.6
現代 96,365 3.4 △9.4
トヨタ 95,474 3.4 27.0
日系
メーカー

ブランド
トヨタ 95,474 3.4 27.0
マツダ 45,274 1.6 △2.5
日産 29,529 1.0 △7.3
三菱自動車 28,679 1.0 50.8
スズキ 25,566 0.9 1.8
ホンダ 7,063 0.3 8.3
レクサス 5,712 0.2 75.3
スバル 4,510 0.2 △1.9
合計(その他を含む) 2,817,331 100.0 △1.0

出所:連邦自動車局(KBA)の発表に基づきジェトロ作成

2024年の国内乗用車新規登録台数を燃料別にみると、BEVが38万609台(前年比27.4%減)と落ち込んだ一方、PHEVが19万1,905台(9.2%増)と増加した(表2参照)。それぞれの全体でのシェアは13.5%、6.8%となった。ハイブリッド車(PHEVを含まない)は75万5,493台(13.7%増)と増加し、26.8%のシェアを占めた。ガソリン車が99万1,948台(1.4%増)で、シェアは35.2%と最多だった。ディーゼル車は48万3,261台(0.7%減)となり、シェアは17.2%だった。

表2:ドイツの乗用車新規登録台数(2024年/燃料別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料 2024年
台数 シェア 前年比
ガソリン 991,948 35.2 1.4
ハイブリッド(HEV、注) 755,493 26.8 13.7
ディーゼル 483,261 17.2 △0.7
電気自動車(BEV) 380,609 13.5 △27.4
プラグインハイブリッド(PHEV) 191,905 6.8 9.2
液化石油ガス(LPG) 13,711 0.5 4.3
圧縮天然ガス(CNG) 137 0.0 △89.7
合計(その他を含む) 2,817,331 100.0 △1.0

注:ハイブリッド(HEV)にはプラグインハイブリッド(PHEV)を含まない。
出所:連邦自動車局(KBA)

なお、VDAは1月に2025年の乗用車新規登録台数を前年比1%の微増と予測している。中でも、2025年に適用される新たなCO2排出削減目標を背景に、BEVは75%増の66万6,000台と急増し、PHEVも8%増の20万7,000台となる見通しだ。

大手3社の2024年の世界販売台数が減少

ドイツ自動車大手3社とも、世界販売台数が2023年の増加から、2024年は減少に転じた。各社は特に中国での販売が落ち込み、ドイツでも同様に販売が減少した。以下、各社が発表した販売台数をベースに2024年の販売動向を紹介する。

VWグループ

VWグループの2024年の世界販売台数(乗用車以外の小型商用車も含む)は869万3,208台(前年比2.3%減)だった(表3参照)。国・地域別にみると、アジア大洋州は321万3,816台(10.3%減)と大きく減少した(中国の合弁会社分を含む)。うち、中国は292万6,763台(9.5%減)となった。インドと日本も振るわず、それぞれ8万5,395台(15.9%減)、5万4,667台(16.7%減)だった。また、ドイツでのグループ全体の販売台数は112万2,422台(1.7%減)にとどまった。米国は65万8,314台(2.9%増)となった。VWグループの営業担当者のマルコ・シューベルト氏は世界販売台数の動向について、「特に中国での激しい競争は当社の全世界での販売台数減少の主な原因となった」とコメントした(ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」2024年10月11日)。

表3:VWグループの2024年の乗用車販売台数(国・地域別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域名 販売台数 前年比
欧州・その他地域 3,993,368 1.0
階層レベル2の項目西欧 3,144,705 0.1
階層レベル3の項目ドイツ 1,122,422 △1.7
階層レベル3の項目英国 493,758 1.0
階層レベル3の項目フランス 277,097 5.1
階層レベル3の項目イタリア 271,868 0.9
階層レベル3の項目スペイン 252,619 8.7
階層レベル2の項目中・東欧 485,615 2.4
階層レベル2の項目その他地域 363,048 7.5
北米 961,916 6.9
階層レベル3の項目米国 658,314 2.9
南米 524,108 12.5
アジア大洋州 3,213,816 △10.3
階層レベル3の項目中国 2,926,763 △9.5
階層レベル3の項目インド 85,395 △15.9
階層レベル3の項目日本 54,667 △16.7
合計 8,693,208 △2.3

注:中国の合弁会社分を含む。
出所:VWグループ「2024年年次報告書(2025年3月11日)」に基づきジェトロ作成

ブランド別にみると(表4参照)、シュコダ、セアト/クプラ、高級ブランドのランボルギーニは増加した一方で、VW乗用車やアウディなどは前年減となり、一様ではない。

表4:VWグループの2024年の乗用車販売台数(ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 2024年 前年比
VW乗用車 4,796,931 △1.4
アウディ 1,671,218 △11.8
シュコダ 926,567 6.9
セアト/クプラ 558,159 7.5
VWブランド商用車 408,285 △0.3
ポルシェ 310,718 △3.0
ランボルギーニ 10,687 5.7
ベントレー 10,643 △21.5
合計 8,693,208 △2.3

注:中国の合弁会社分を含む。
出所:VWグループ「2024年年次報告書(2025年3月11日)」に基づきジェトロ作成

BMWグループ

BMWグループの2024年の世界販売台数は245万854台(前年比4.0%減)だった(表5参照)。同グループによると、減少の要因として、2024年第3四半期(7~9月)のインテリジェントブレーキシステム(IBS)供給停止と中国市場での困難な状況を挙げた。 国・地域別(100台単位で四捨五入した数値)では、アジアが96万3,600台(前年比10.2%減)で、うち中国も71万5,200台(13.4%減)と減少した〔中国の華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む〕。欧州は94万8,500台(0.6%増)と増加した一方、ドイツは26万5,700台(2.5%減)だった。米国は39万9,300台(0.5%増)となった。

表5:BMWグループの2024年の乗用車販売台数(国・地域別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域名 販売台数 前年比
欧州 948,500 0.6
階層レベル2の項目ドイツ 265,700 △2.5
階層レベル2の項目英国 168,800 6.0
米州 482,700 0.1
階層レベル2の項目米国 399,300 0.5
アジア(注2) 963,600 △10.2
階層レベル2の項目中国 715,200 △13.4
その他 56,100 0.0
合計 2,450,900 △4.0

注1:100台単位で四捨五入した台数。
注2:「アジア」「中国」には華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。
出所:BMW「2024年報告(2025年3月14日)」からジェトロ作成

ブランド別にみると、全てのブランドが前年比で減少した(表6参照)。その要因として、MINIでのポートフォリオの見直しや、ロールスロイスのモデルチェンジと中国市場での同ブランドへの需要減少を挙げた。

表6:BMWグループの2024年の乗用車販売台数(ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年比
BMW 2,200,217 △2.3
MINI 244,925 △17.1
ロールスロイス 5,712 △5.3
合計 2,450,854 △4.0

注:「BMW」には華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。
出所:BMW「2024年報告(2025年3月14日)」からジェトロ作成

メルセデス・ベンツグループ

メルセデス・ベンツグループ傘下のメルセデス・ベンツ・カーズの世界販売台数(スマートを含む)は198万3,403台(前年比3.0%減)だった(表7参照)。国・地域別にみると、アジア大洋州が89万2,147台(7.4%減)と減少し、うち中国も68万3,568台(7.3%減)と減少した〔北京汽車集団との合弁会社分(BBAC)を含む〕 。欧州(注5)も64万1,792台(2.7%減)と減少、うちドイツが21万3,456台(8.9%減)となった。他方、米国は32万4,529台(8.9%増)と増加した。

表7:メルセデス・ベンツグループ(注1)の2024年の乗用車販売台数(国・地域別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2024年 前年比
欧州(注2) 641,792 △2.7
階層レベル2の項目ドイツ 213,456 △8.9
アジア大洋州 892,147 △7.4
階層レベル2の項目中国 683,568 △7.3
北米(注3) 365,358 7.6
階層レベル2の項目米国 324,529 8.9
その他 84,106 3.7
合計 1,983,403 △3.0

注1:メルセデス・ベンツ・カーズおよびスマートの合計。
注2:欧州はEU加盟国、英国、スイスおよびノルウェーを含む。
注3:北米は米国、カナダおよびメキシコを含む。
出所:メルセデス・ベンツグループ「2024年報告書(2025年2月20日)」からジェトロ作成


注1:
PHEVとBEV。燃料電池車(FCEV)を含まない。
注2:
2025年目標では、乗用車(新車)のCO2排出量を2021年比で15%削減とし、排出上限値を1キロメートル当たり93.6グラムに引き下げる(2024年までは95グラム)。
注3:
一汽大衆(FAW-Volkswagen Automotive Company)、上汽大衆汽車(SAIC-Volkswagen Automotive Company、SAIC-Volkswagen Sales Company)。
注4:
新規登録台数は、KBAが発表するドイツ国内の車両登録台数。一方、販売台数は、各メーカーが発表する各社の販売台数。
注5:
EU加盟国と、スイス、ノルウェー、英国の合計。
執筆者紹介
ジェトロ・ミュンヘン事務所
クラウディア・トーディ
2020年からジェトロ・ミュンヘン事務所で調査、地域間交流を担当。