2024年の新車登録27万台強、EVが5割近く(イスラエル)

2025年5月30日

イスラエル自動車輸入業者協会(I-via)によると、イスラエルの2024年の自動車新車登録台数は27万1,735台。前年比0.6%増にとどまった。

登録台数は2024年1月から5月にかけて、前年同月比で軒並み減少した(図参照)。特に1月から3月にかけて2桁台の減少が続いた。その原因としては、(1) 2023年10月に始まったイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの軍事衝突(2023年10月10日付ビジネス短信参照)や、(2)イエメンの武装組織フーシ派が紅海航行中の商船に攻撃を継続したこと(2024年1月10日付ビジネス短信参照)、などを挙げることができる。

しかし、6月以降は回復傾向がみられる。9月から11月は前年同月比で2桁台の増加が続き、12月は同2.7倍を記録した。このように、年後半の挽回が際立った。

図:月別の自動車新車登録台数の推移(2022年1月~2025年4月)
2024年1月から5月は、2023年の同じ月に比べて減少した。特に2024年1月から3月にかけては大きな減少が続いた。一方で、2024年6月以降は回復傾向がみられ、2024年9月から11月は2023年同月比でも増加が続き、特に12月は大幅な増加を記録するなど、2024年後半の挽回が際立った。

出所:イスラエル自動車輸入業者協会(I-via)資料からジェトロ作成

メーカー・ブランド別でトヨタ首位、国別でも日本勢首位

新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると、トヨタ自動車が前年比8.2%増の3万4,464台で全体の12.7%を占めた。前年の3位から首位となった。2位は現代自動車で32.1%減の2万8,381台(シェア10.4%)、3位の起亜は21.7%減の2万5,727台(同9.5%)。このように韓国勢は低迷し、それぞれ順位を1つ下げた。チェコのシュコダ・オート〔フォルクスワーゲン(VW)グループ〕は32.4%増の1万9,260台(同7.1%)で、前年から順位を1つ上げて4位に浮上した。中国の比亜迪(BYD)は、10.3%増の1万6,698台(同6.1%)と増加。ただし、順位を1つ下げて5位になった。 日本メーカー全体の2024年の総登録台数は前年比6.8%増、8万696台(シェア29.7%)。国別でも、韓国を抜き1位に返り咲いた。2位の韓国は26.6%減の5万5,694台(同20.5%)だった。現代自動車や起亜の低迷が響いた。3位は中国で、29.9%増の5万180台(同18.5%)と前年に続き増加した。前述したBYDが増加したほか、奇瑞汽車(Chery)が16.0%増して1万2,945台(同4.8%)、小鵬汽車(Xpeng)が211.7倍の4,869台(同1.8%)を記録した。 車種別にみると、首位はBYD「ATTO3」で1万606台だった。

EVの新車登録台数が全体の5割近く

2024年のハイブリッド電気自動車(HEV)を含む電気自動車(EV)の登録台数は、前年比21.1%増の13万2,374台。全体の48.7%を占めた。

国別にみると、日本メーカー・ブランドが前年比19.4%増の4万3,329台(EV全体の32.7%)で首位を維持した。続いて、中国が48.2%増の4万711台(同30.8%)になり、日本に大きく迫った。韓国は4.9%減の2万4,293台(同18.4%)で3位だった。 EVの登録台数をメーカー・ブランド別にみると、トヨタ自動車が前年比20.0%増の2万9,948台(同22.6%)で首位を維持した。BYDは10.3%増の1万6,698台(同12.6%)になり、前年に続き2位だった。現代自動車が、9.1%増の1万6,414台(同12.4%)で続いた。

EVの種類別にみると、バッテリー式電気自動車(BEV)が前年比39.3%増の6万7,171台(全登録台数の24.7%)になった。中国のXpeng(前年比211.7倍)やCherry(2,410.5倍)の増加が寄与した。HEVは28.7%増の5万9,159台(同21.8%)で、トヨタ自動車(20.7%増)や現代自動車(34.2%増)の増加が寄与した。一方、プラグインハイブリッド電気自動車 (PHEV、注)は、大幅に減少した。60.1%減、6,044台(同2.2%)だった。起亜(75.2%減)や英国のMG(93.6%減)が減少したことが響いた。

2024年にBEVやHEVの登録台数が増加した理由としては、(1) BEVに対する優遇税制や(2)ガソリン価格の上昇などがある。

  • (1)に関して:イスラエルで通常の自家用車と商用車を購入する際、原則として83%の物品購入税を課す。しかし2024年は、BEVに35%の優遇税率を適用した。
  • (2)に関して:エネルギー・インフラ省によると、ガソリン価格は2023年時点で、1リットルあたり6.90シェケル(約283円、1シェケル=約41円)だった。これが2024年、7.42シェケルに高騰した。

EVの種類別・メーカー・ブランド別に上位をみると、BEVではBYDが1万6,690台、テスラ8,202台。HEVでは、トヨタ自動車2万8,681台、現代自動車1万4,259台。PHEVでは、起亜2,099台だった。

生産国1位は中国

イスラエルに、自動車の生産工場はない。そのため、国内で販売している自動車は、全て輸入車になる。

そこで、グローバル・トレード・アトラス(貿易統計データベース)で乗用車(HSコード8703)の輸入額をみると、首位は中国。19億5,018万ドルに拡大した(前年比32.9%増)。前述のとおり、EV輸入の拡大が主因と言える。これに韓国(19.0%減)、日本(25.4%増)が続いた(表1参照)。

なお、8位のトルコは、39.0%減と落ち込んだ。2024年5月からイスラエルに禁輸措置を講じたことが響いた。

表1:イスラエルの乗用車(HSコード:8703)の国別輸入額の推移(2022~2024年)(単位:100万ドル、%、ポイント)(△はマイナス値)
順位 国名 2022年 2023年 2024年
金額 金額 金額 前年比 寄与度
1 中国 1,251 1,468 1,950 32.9 7.4
2 韓国 1,214 1,164 943 △ 19.0 △ 3.4
3 日本 756 735 922 25.4 2.9
4 チェコ 500 542 515 △ 4.9 △ 0.4
5 ドイツ 528 617 504 △ 18.3 △ 1.7
6 スペイン 308 236 325 37.6 1.4
7 米国 474 276 259 △ 6.2 △ 0.3
8 トルコ 388 328 200 △ 39.0 △ 2.0
9 フランス 129 97 170 75.7 1.1
10 英国 99 79 167 111.4 1.4
世界計 6,575 6,485 6,689 3.1 3.1

出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成

I-viaの公開データから生産国別の新車登録台数をみると、中国が1位。韓国、日本が続いた(表2参照)。

ここで、メーカー・ブランド別に生産国を確認してみる。まず中国は、ほぼすべて中国製だった。韓国は、韓国製が74.6%を占め、トルコ製(9.2%)、スロバキア製(9.1%)と続いた。また日本は、日本製が53.2%で、タイ製(13.2%)、フランス製(10.9%)、トルコ製(8.6%)だった。

表2:主要生産国別のイスラエルの新車登録台数(2022~2024年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 国名 台数 前年比 シェア
2022年 2023年 2024年 2024年 2024年
1 中国 24,783 46,636 64,035 37.3 22.9
2 韓国 61,126 53,186 46,141 △ 13.2 16.5
3 日本 39,206 35,955 44,852 24.7 16.0
4 チェコ 25,115 24,007 25,824 7.6 9.2
5 スペイン 16,629 16,074 16,935 5.4 6.1
6 トルコ 24,758 24,428 13,613 △ 44.3 4.9
7 ドイツ 11,229 13,963 12,627 △ 9.6 4.5
8 フランス 13,911 15,410 12,287 △ 20.3 4.4
9 タイ 15,839 13,043 11,156 △ 14.5 4.0
10 ハンガリー 7,151 7,116 6,922 △ 2.7 2.5
11 スロバキア 8,456 7,583 6,402 △ 15.6 2.3
12 米国 9,209 5,443 4,606 △ 15.4 1.6
13 英国 5,233 2,429 3,733 53.7 1.3
14 ポルトガル 2,101 1,475 2,078 40.9 0.7
15 メキシコ 3,971 2,332 2,062 △ 11.6 0.7
16 ルーマニア 2,216 1,679 1,833 9.2 0.7
17 ポーランド 377 562 978 74.0 0.3
18 イタリア 1,577 1,254 672 △ 46.4 0.2
19 ベルギー 1,091 1,110 646 △ 41.8 0.2
20 スウェーデン 623 617 544 △ 11.8 0.2
世界計 278,260 278,595 279,725 0.4 100

注:本統計の集計は、生産国別になっている。また、合計台数は本文で示した新車登録台数合計と異なる。
出所:イスラエル自動車輸入業者協会(I-via)のデータに基づきジェトロ作成


注:
PHEVには、内燃機関部分がガソリン仕様のものとディーゼル仕様のものがある。本稿でのPHEVは、その両者を区別していない。
執筆者紹介
ジェトロ・テルアビブ事務所長
中溝 丘(なかみぞ たかし)
1997年、ジェトロ入構。海外調査部、国際交流部、経済産業省通商政策局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所、産業技術部、企画部、経済産業省貿易経済協力局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所長、サービス産業部、調査部米州課長などを経て、2023年5月から現職。