フーシ派の攻撃により紅海航路から喜望峰迂回の動きが顕著に、IMF推計

(イスラエル、イエメン、英国、エジプト、南アフリカ共和国、米国、カタール)

テルアビブ発

2024年01月10日

イエメンの武装組織フーシ派による紅海を航行中の商船への攻撃が増加していることを受け、紅海航路を回避する動きが拡大している。IMFと英国オックスフォード大学が共同で開発した、衛星からの情報を基に船舶データを提供する「ポートウォッチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、アラビア半島南西端とアフリカ大陸との間にあるバブ・エル・マンデブ海峡やスエズ運河を通過する船舶数が減少する一方、喜望峰を通過する船舶数が増加していることが明らかになった。

バブ・エル・マンデブ海峡を通過する船舶数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、1月7日までの7日移動平均で前年同時期と比べ46%減少し、積載量では同時期と比べて48%減少した。7日移動平均の船舶数は43隻、前年同時期は79隻だった。また、積載量ベースでは、7日移動平均の貨物積載量は269万メトリックトン(MT)、前年同時期は520万MTだった。

スエズ運河を通過する船舶数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも、1月7日までの7日移動平均で前年同時期と比べ28%減少し、積載量では同時期と比べて35%減少した。7日移動平均の船舶数は52隻、前年同時期は72隻だった。また、積載量ベースでは、7日移動平均の貨物積載量は303万MT、前年同時期は468万MTだった。

一方、喜望峰を通過する船舶数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、1月7日までの7日移動平均で前年同時期と比べ63%増加、積載量では同時期と比べて68%増加した。7日移動平均の船舶数は70隻、前年同時期は43隻だった。また、積載量ベースでは、7日移動平均の貨物積載量は678万MT、前年同時期は404万MTだった。

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は1月7日、訪問先のカタールでムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ首相兼外相と会談後に記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行い、「フーシ派による、世界有数の貿易回廊である紅海での航行の自由に対する攻撃は、40カ国以上の国民、貨物、商業的利益に直接影響を及ぼし、世界の海運の20%近くが中断または迂回させられている」と指摘した。そうした中で、米国は「紅海を航行する商業船舶の安全と安心を守るため、20カ国以上とともに『繁栄の守護者作戦』(2023年12月19日記事参照)を開始した」と説明し、「さらなる地域紛争を抑止・防止し、世界中の人々にとって不可欠な自由な通商の流れを確保するための総合的な取り組みの一環として、この地域の海上安全保障を守り続ける」と述べた。

紅海を航行中の商船への攻撃増加を受けて、海運大手ドイツのハパックロイド、スイスのMSC、デンマークのマースク、フランスのCMA CGM、台湾のエバーグリーン、英国石油大手BPなどが紅海航路を回避し、南アフリカ共和国の喜望峰回りなどへのルート変更を発表している(2023年12月25日記事参照)。

なお、イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。

(中溝丘)

(イスラエル、イエメン、英国、エジプト、南アフリカ共和国、米国、カタール)

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