欧米系企業の投資姿勢、一部に変化見られる(中国)
進出欧米系企業団体が実施したアンケートが示唆すること

2023年5月1日

米国でトランプ政権からバイデン政権へ移行して、2年以上が経過した。米中摩擦は長期化している。両国で輸出管理などが強化されているほか、中国の反外国制裁法、「信頼できないエンティティー・リスト」制度の適用事例が一部にみられた。一方で、中国を取り巻く環境は、大きく変化している。例えば、ロシアのウクライナ侵攻を受けた国際関係の複雑化がもたらした影響も大きい。そんな中、日本企業は、中国での今後のビジネスを検討するための情報把握に努めている。

そうした検討を進める上で、中国でビジネス展開する欧米企業の意向などを把握することも有益だろう。

本稿では、中国に所在する欧米系企業で構成する各国商工団体などのアンケート(特に、2022年末から2023年3月にかけて発表された結果)を概観。中国への投資に係る項目に絞って紹介する。そこから、欧米系企業の考え方を読み解く。

米国系企業の中国への投資マインドに変化

中国米国商会は、中国に所在する米国系企業などが加入する団体だ。米国企業の対中投資マインドなどを確認するため、同商会が3月5日に発表した「中国ビジネス環境調査レポート2023年版(2023 China Business Climate Survey Report)」をみてみる。なお、このレポートは、2022年10月中旬~11月中旬に実施した会員企業向けアンケートの結果(回答企業319社)を取りまとめたものだ。

「グローバルな投資計画での中国の重要性」について、「第1の目的地」とした回答は14%。「上位3位に入る目的地」は31%だった。前年調査より、それぞれ8ポイントと7ポイント、減少したかたちだ(図1参照)。両回答を合わせた構成比は、1999年の調査発表以来、初めて50%を下回った。対照的に、「多くの目的地の1つ」は38%、「優先的な考慮の対象でない」は17%。前年調査よりそれぞれ9ポイント、6ポイント増加した。米国系企業の考え方が、わずか1年で大きく変化したことが読み取れる。

図1:グローバルな投資計画での中国の重要性
「第1の目的地」とした企業は14%、「上位3位に入る目的地」は31%とそれぞれ前年調査より8ポイントと7ポイント回答率が減少した。一方で、「多くの目的地の1つ」は38%、「優先的な考慮の対象でない」は17%とそれぞれ前年調査より9ポイント、6ポイント拡大した。

注1:アンケート回答企業数は319。個別回答に対する回答企業数(n)は示されていない。
注2:2023年レポートでの回答結果は、「2022年」に表れている。
出所:中国米国商会「2023 China Business Climate Survey Report」

「2023年の中国事業への投資拡大見通し」については、拡大する旨の回答が45%だった(実際の回答は、見通される拡大比率ごとに示されている/図2参照)。前年調査では、この比率が66%だった。やはり、わずか1年で大きく減少したと言えるだろう。

最も多かった回答は「投資拡大計画なし」で46%、次いで投資の拡大幅が「1~10%」で31%だった。11%以上の拡大との回答は14%にとどまる。すなわち、大幅な拡大を予定する企業は少数ということになる。

業種別には、工業・資源産業(50%)、サービス業(48%)で全体平均を上回る企業が投資拡大の見通しを示した。なお、技術・研究開発業は43%、消費者向け産業は43%だった。

図2:2023年の中国事業への投資拡大見通し
最も多かった回答は「投資拡大計画なし」で46%、次いで投資の拡大幅が「1~10%」で31%となった。

注1:アンケート回答企業数は319。個別回答に対するnは示されていない。
注2:2023年レポートでの回答結果は、「2022年」に表れている。
出所:中国米国商会「2023 China Business Climate Survey Report」

近年は、米中摩擦や新型コロナ禍などを背景に、一部製品には追加関税が賦課される、物流が混乱する、調達先などで一時的に生産が停止される、などの問題が相次いだ。こうしたこともあり、リスク分散の重要性が指摘されるようになっている。

当該調査では、「生産や調達を中国以外の地域に移転することを検討しているか、あるいは開始しているか」について、「計画はない」が74%で、最多。「検討しているがまだ具体的な行動は取っていない」「移転に向けたプロセスを開始済み」が、それぞれ12%だった(図3参照)。「計画はない」が圧倒的とは言え、前年から9ポイント減少した。また、「検討しているがまだ具体的な行動は取っていない」「移転に向けたプロセスを開始済み」が前年よりそれぞれ5ポイント増加している点も注目される。米国系企業の少なくとも一部には、中国での生産や調達マインドに変化があったとみられる。

図3:生産や調達を中国以外の地域に移転することを検討しているかあるいは開始しているか
「計画はない」が74%と最大の回答となり、「検討しているがまだ具体的な行動はとっていない」「移転に向けたプロセスを開始済」はそれぞれ12%となった。

注1:アンケート回答企業数は319。個別回答に対するnは示されていない。
注2:2023年レポートでの回答結果は、「2022年」に表れている。
出所:中国米国商会「2023 China Business Climate Survey Report」

米国系企業を会員とする団体なら、ほかにもある。例えば「華南米国商会」は、中国南部に進出した米国企業などで構成される。

同商会も2月27日、アンケートを基に、特別報告(2023 Special Report on the State of Business in South China)を発表した。アンケートは2022年9月22日から12月14日まで実施。有効回答企業数は210だった。回答企業の内訳は、米国系が28%、中国系が43%、欧州系が10%、などだった。

図4:中国から投資を移転する意向があるか
74%が「なし」と回答。前年より3ポイント減少した。「あり」が26%。

注:アンケート回答企業数は210。個別回答に対するnは示されていない。
出所:華南米国商会「2023 Special Report on the State of Business in South China」

「中国から投資を移転する意向があるか」については、74%が「なし」と回答。依然として中国を重視していることがうかがえた。ただし、前年より3ポイント減少してはいる。なお、最多の回答は、「投資プロジェクトの30%以下を中国以外の国・地域に移転する」というものだった(84%)。中国から完全に移転・撤退するとした企業はなかった。

また、移転先の地域(複数回答)としては、「アジアのその他市場」が最も多く(51%)、次いで「北米市場」(33%)だった。

欧州系企業も同様

では、欧州系企業の投資マインドはどうだろうか。

「中国ドイツ商会」は、中国に進出したドイツ系企業で構成する団体だ。2022年12月15日、ビジネス心理に関するアンケートの調査結果を発表した。当該調査は2022年8月23日~9月21日に実施、有効回答数は593、会員企業の28%が回答した。

「今後2年内に中国にさらなる投資を計画しているか」との問いに、9%が投資を「大幅に拡大する」、42%が「多少拡大する」と回答(図5参照)。これに対して「投資しない」は17%、「多少縮小する」は16%、「大幅に縮小する」は5%だった。「大幅に拡大する」と「多少拡大する」の合計で、過半数(51%)に達したことになる。ただし、前年よりは20ポイント低下した。中国米国商会のアンケートと同様に、投資拡大意欲が前年より低下したことが分かる。

また、「今後2年以内に中国から完全に撤退する計画があるか」との問いには、「撤退の計画はない」と回答した企業が89%(n=573)。一方で、「現時点で具体的な計画はないが検討中」が10%、「はい」が1%だった。撤退までには踏み込まないという回答が圧倒的ではある。ただし、前年調査で「今後1年以内に中国から完全に撤退する計画があるか」を聞いた際には、「撤退の計画はない」が96%だった(n=538)。設問期間が異なることから単純比較はできないとは言え、ドイツ系企業でも、一部にはマインドに変化ありといえるだろう。

なお、「自社産業の中国市場における向こう5年の年間平均成長率」についての回答結果をまとめると、「上昇」が77%、「低下」が23%になる(n=586)。多くのドイツ系企業は、依然として中国市場の成長に期待していることが分かる。

図5:今後2年内に中国にさらなる投資を計画しているか
9%が投資を「大幅に拡大する」、42%が「多少拡大する」と回答。これに対して「投資しない」は17%、「多少縮小する」は16%、「大幅に縮小する」は5%となった。

注:2020年はn=462、2021年n=576、2022年n=574。
出所:中国ドイツ商会「Rocky Roads Ahead:Business Confidence Survey 2022/23」

このほか、「中国英国商会」は、中国に進出した英国企業で構成する団体だ。同商会は2022年12月2日、会員企業の中国でのビジネス意向に関するアンケートの結果を発表。アンケートは2022年10月12日~11月4日、470社余りの会員企業に実施したもの。292社から回答を得た。

「来年(2023年)の中国事業について、投資の拡大あるいは縮小を検討しているか」の問いに対して、投資を「拡大」との回答は30%だった(図6参照)。前年の46%から、大きく減少したかたちだ。一方で、「変化なし」は43%、「縮小」は18%。それぞれ4ポイント、11ポイント増加した。

図6:来年(2023年)の中国事業について、投資の拡大
あるいは縮小を検討しているか
投資を「拡大」の回答は30%となった。前年の46%から大きく減少した。「変化なし」は43%、「縮小」は18%とそれぞれ4ポイント、11ポイント増加した。

注:アンケート回答企業数は292。個別回答に対するnは示されていない。
出所:中国英国商会「British Business in China: Sentiment Survey 2022-2023」

また、この調査には「今後5年の対中投資戦略を見直したか、あるいは現在見直しているか」という設問がある。この設問に対しては、「いいえ、今後5年は変わらない」が51%で最多の回答だった。これに、「一部機能を中国外へと移転するかあるいは現在移転している」(19%)、「分からない」(18%)が続いた。英国系企業でも、(1)依然として多くは中国でのビジネスを重視していること、(2)ただし一部で、移転を視野に入れている、あるいは先行きが不透明と認識している、ことがうかがえる。

なお中堅企業では、「一部機能を中国外へと移転するかあるいは現在移転している」「完全に中国から離れることを検討あるいは計画している」の回答が全体よりも高かった(表参照)。

表:今後5年の対中投資戦略を見直したか、あるいは現在見直しているか (単位:%)
項目 全体 中堅企業 多国籍企業
一部機能を中国外へと移転するかあるいは現在移転している 19 23 17
一部機能を中国内へと移転するかあるいは現在移転している 6 7 8
完全に中国から離れることを検討あるいは計画している 7 13 2
いいえ、今後5年は変わらない 51 49 57
分からない 18 8 20
その他 4 6 2

注:アンケート回答企業数は292。個別回答に対するnは示されていない。
出所:中国英国商会「British Business in China: Sentiment Survey 2022-2023」

新型コロナ防疫措置のもたらした影響も大きかった

以上、欧米系の在中商工団体が最近実施したアンケート調査を幾つか取り上げ、投資関連の回答を見てきた。筆者は、本稿に先立って2022年5月13日にも、これら団体のアンケート調査を基に状況を報告。その際には、(1)「地産地消」やリスク分散といった意識の高まりが一部にみられる、(2)とはいえ、欧米系企業は基本的に、中国での投資に拡大あるいは現状維持の姿勢を取っている、と総括していた(2022年5月13日付地域・分析レポート参照)。それから、約1年が経過。一部とは言え、中国での投資マインドに顕著な変化が見られたことがうかがえた。すなわち、(1)多数が中国でのビジネスを重視している点は、なおも変わっていない、(2)その一方で、投資に消極的になったり、一部の機能を中国外へ移転したりするといった企業が前年から確実に増加した。

前述の中国米国商会の調査(2023年3月発表)では、「生産や調達を中国以外の地域に移転することを検討しているかあるいは開始しているか」の設問に対して検討・移転と回答した企業に、その理由を複数回答で聞いている。それによると、「リスク管理」が60%で最多。次いで、「新型コロナ防疫措置」(57%)、「米中貿易摩擦」(43%)と続いた。前年と比較しての増加幅は、それぞれ40ポイント、40ポイント、14ポイントだった。

また、前述の中国ドイツ商会の調査(2022年12月発表)でも、「今後2年内に中国にさらなる投資を計画しているか」との問いに「投資しない」「多少縮小する」「大幅に縮小する」とした企業が、その主な理由を回答している(n=216、多肢選択式、最多で3つまで回答可)。それによると、「『動態(ダイナミック)ゼロコロナ』政策(注1)の継続(旅行制限、封鎖管理、大量PCR検査など)」が61%で最多回答になった。次いで「市場拡大への期待の低さ・中国における成長鈍化の見通し」(37%)、「地政学的緊張(潜在的な貿易保護措置・制裁につながるもの)」(30%)だった。このほか、「今後2年以内に中国から完全に撤退する計画があるか」との問いに「現時点で具体的な計画はないが検討中」または「はい」とした企業が、最多で3つまでその主な理由を示した(多肢選択、n=61)。それによると、「『動態ゼロコロナ』政策の継続(旅行制限、封鎖管理、大量PCR検査など)」が72%で最多。次いで、「地政学的緊張(潜在的な貿易保護措置・制裁につながるもの)」(33%)、「本社の中国に対する態度の変化」(30%)だった。

こうした回答を踏まえると、中国に所在する欧米系企業の投資マインドに大きく影響をもたらしたと推察される要因は、主に2つに集約できる。すなわち、(1)中国政府が実施してきた新型コロナ感染拡大に伴う厳格な防疫措置と、(2)中国の国際関係に潜む不確実性(米中摩擦や地政学的リスク)だ。これらについて、経緯と現状を整理してみる。

  • 新型コロナ感染拡大に伴う厳格な防疫措置

    中国では2022年に入り、新型コロナのオミクロン株感染が複数地域で拡大。上海市では3月末から5月にかけて封鎖管理が実施され、同市を中心に国内での生産活動や物流が停滞した。また、同年後半にも複数の地域で感染拡大が散発した。これに対して中国EU商会は2022年11月、中国政府の防疫措置について部分的に歓迎を表明。その一方で、(1)その内容をよく理解していない地方政府によって適切な準備なしに実施されたことで、省・都市・地区によって運用が異なる結果に至った、(2)企業の操業・生産停止などの基準が統一されていなかった、という問題が起きていると問題提起した。こうしたことなどからも、経営心理として、一部懸念事項となっていたことが推察される(2022年11月30日付ビジネス短信参照)。

    ただし、中国では2022年末から新型コロナ防疫規制の緩和が進んだ。2023年1月8日からは、感染者に対して隔離措置を適用したり濃厚接触者を判定したりせず、高・低リスク地区についても指定しないことになった。また、入境者に課していた措置(入境後PCR検査と集中隔離)も、同日から取り消した。各種交通機関の乗客に対するPCR検査陰性証明や健康コードの確認、到着地でのPCR検査、乗客の体温測定も、実施を中止した。

    紹介した商工団体のアンケート結果は、いずれも2022年末から3月にかけて発表された。しかし、実施時期は新型コロナ防疫規制の大きな転換が図られる前で、回答には政策の転換が反映されていない。現状では、欧米系企業の懸念はかなり、低下していると思われる。

  • 中国の国際関係に潜む不確実性

    中国米国商会の調査(2023年3月発表)では、「2023年の米中二国間関係の展望について」聞いている。これに対する最大の回答は「悪化する」で、46%に上った。前年より22ポイント増加したかたちだ(図7参照)。一方で「改善する」は、13%と前年から14ポイント減少。「現状維持」も41%と8ポイント減少した。

    米国の政権交代後、両国間では、高官の会談が増加する側面もあった。しかし、2022年8月に米国のナンシー・ペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問したことに対して中国が反発する事態も、発生。先行きに悲観的なマインドが強まっている。

    図7: 2023年の米中二国間関係の展望について
    最大の回答は「悪化する」で46%と前年より22ポイント増加した。一方で「改善する」は13%と前年から14ポイント減少、「現状維持」も41%と8ポイント減少した。

    注:アンケート回答企業数は319、個別回答に対するnは示されていない。
    出所:中国米国商会「2023 China Business Climate Survey Report」

    また、華南米国商会の調査(2023年2月発表)では、「2023年の米中関係の見通し」について、米国系の44%が「比較的悲観」または「悲観」と答えた。楽観とも悲観ともいえない「中立」は35%だった(図8参照)。欧州系を含む「その他」でも、「比較的悲観」または「悲観」が33%、「中立」が41%だった。

    図8: 2023年の米中関係の見通し
    「楽観」「比較的楽観」を合計すると、中国系が40%、米国系が47%。楽観とも悲観ともいえない「中立」はそれぞれ48%、36%。

    注:アンケート有効回答企業数は210、個別回答に対するnは示されていない。 
    出所:華南米国商会「2023 Special Report on the State of Business in South China」

    中国の習近平国家主席と米国のジョー・バイデン大統領は2022年11月、インドネシアで開催されたG20サミットを機に会談。米中関係改善が期待された。しかし、その後、気球問題を受けて2月に予定されていたアントニー・ブリンケン国務長官による中国訪問が延期された(2023年2月7日付ビジネス短信参照)。並行して、米国は2022年10月、先端半導体の輸出管理を大幅に強化。同盟国・友好国との連携した輸出管理の導入を目指している(2023年2月2日付ビジネス短信参照)。このほか、2022年8月成立の「CHIPSおよび科学法」(CHIPSプラス法)では、半導体製造に関する補助金(注2)付与の条件として、中国などで半導体製造能力拡張を伴う重要取引を10年間差し控えることを課した。また、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する問題も、1年以上が経過して平和的解決に至っていない。両国を取り巻く環境は、むしろ複雑化してしまった状況だ。

    こうした状況を踏まえると、国際関係をめぐる不確実性への懸念については、現時点で、各企業の回答時点から大きな変化はないと思われる(4月14日時点)。

中国は依然、外資誘致姿勢

このように、国際関係は、複雑な情勢下にある。それでも中国政府は、新型コロナの影響を大きく受けた前年からの経済回復を目指している。期待するのは、これまで同様に外資企業の中国展開だ。第14期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第1回会議(2023年3月に開催)の政府活動報告でも、2023年に取り組むべき重点活動任務の1つに、「外資の誘致・利用に力を一層入れること」を掲げた。具体的には、市場参入規制を緩和し、現代サービス業(注3)を一層開放することや、外資企業の内国民待遇を徹底ししっかりそのサポートをすること、重要外資プロジェクトの投資を促すことなどを挙げた。

同会議で新首相に選出された李強首相も、全人代閉幕後に行われた記者会見で「事業環境やサービスをますます良くする。みなさんからの投資を歓迎する」と述べた。あわせて、「開かれた中国大市場は、必ずや各国企業に中国でのさらなる成長機会をもたらすことができるだろう」と強調した。

また、米中関係については、2022年11月の習近平国家主席とバイデン大統領の会談で得られた一連の重要な共通認識を実際の政策や具体的な行動に移すことが重要と指摘。「米国内ではここ数年、一部の人が両国の『デカップリング』をあおり、そうした論調が時に注目される。しかし、このような扇動から利益を得られる人が本当にいるだろうか」と非難。また、2022年に米中貿易は7,600億ドル近くと、過去最高となったことを挙げつつ、「中国と米国は協力でき、協力すべきだ。封じ込めや圧力強化は誰にもメリットがない」と関係改善に前向きととれるメッセージを発した。米中摩擦などを背景に、外資による対中投資意欲の低下を一部指摘する声もある中、不安払拭に努めたかたちだ。

こうした中国政府の意向と本国で強まる経済安全保障政策を踏まえて、欧米系企業が現状をどのように捉え、ビジネス展開していくかが注目される。フォルクスワーゲン(VW)グループやテスラなど一部欧米企業からは、中国への大型投資も発表されている。進出日系企業はこうした動きも踏まえつつ、自社のビジネスの参考とすることが有益だろう。


注1:
中国政府や対策に携わる専門家の説明によると、「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」政策とは、国内の「感染者の発生をゼロにする」ものではない。むしろ、「感染者を能動的かつ迅速に発見し、速やかに疫学的調査を進め、感染者に診断・隔離・治療機会を提供し、社区(コミュニティー)内で持続的に感染が広がることを防ぐ」防疫戦略とされている。
注2:
「CHIPSおよび科学法」に基づく当該補助金は、企業が米国内で半導体製造施設を建設・拡張したり、研究機関が開発を進めたりすることを促進する目的で設けられた。
この補助金は、2023年2月に申請受け付けが開始された(2023年3月1日付ビジネス短信参照)。
注3:
情報通信・ソフトウエア・情報技術、金融、不動産、ビジネスサービス、教育など。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
宗金 建志(むねかね けんじ)
1999年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジアチーム、ジェトロ岡山、ジェトロ北京、海外調査部中国北アジア課、ジェトロ北京を経て、2018年8月より現職。