米半導体関連業界、パブコメで対中輸出管理の明確化と多国間連携を要請

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年02月02日

米国商務省産業安全保障局(BIS)が2022年10月に導入した中国向けの半導体輸出管理規則に対して、米国企業を中心とした利害関係者が規則の明確化と多国間連携を要請していることが分かった。

BISは2022年10月に導入した対中半導体輸出管理規則の位置づけを最終暫定規則(IFR)としており、最終規則(FR)として固める前に、1月31日を期限として利害関係者からパブリックコメントを募集していた(2022年10月11日記事参照)。2月1日時点(米国時間)で米欧企業や米業界団体、個人などを含めて42件のコメントが掲載されている。米国企業はインテル、アプライド・マテリアルズ、デュポンなど、欧州企業ではオランダのASMLの米国法人がコメントを提出している。業界団体からも、米国半導体産業協会(SIA)、米中ビジネス評議会(USCBC)、情報技術産業協会(ITI)、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)などが提出した。コメントには共通点が多く、おおむね以下に類型化される。

  1. 規則の明確化:10月に導入されたIFRには複雑かつ不明確な点が多く、産業界に不必要な負担を課すもので、規則の明確化を求めている。これにより、外国企業が米国製部品の使用を忌避することにもつながりかねないと指摘している。BISはIFR導入後に追加のガイダンスを公表したが(2022年11月1日記事参照)、産業界が規則の解釈に引き続き苦慮している実態が浮き彫りとなった。ITIはコメントで、IFRの影響を受ける企業は2023年に合計で4億~25億ドルの売上損失を見込んでいると指摘している。
  2. 規則制定過程の正常化:今回のIFRのように、公示と同時に有効とするのではなく、まず規則案を公示し、産業界などの利害関係者から意見を募った上で規則を制定すべきと提言している。
  3. 多国間で連携した輸出管理の導入:米国企業だけが競争上不利な条件に置かれないように、可能な限り同盟国・友好国と多国間での合意を取り付けるよう要請している。SIAはこの必要性をIFR導入直後から指摘していた(2022年11月7日記事参照)。ASML米国法人も、米国単独での広範な輸出管理の導入は輸出管理を多国間で実施していくとする従来の米国の約束に反し、半導体サプライチェーンを混乱させるとともに、外交・安全保障上の目的も阻害すると強調している。バイデン政権は半導体製造装置で米国と同等の技術を有する日本とオランダに対し、同様の対中輸出管理の導入を働きかけているとされる。一部報道は、3カ国が合意したとしており、SEMIもコメントで合意を歓迎するとしているが、いずれの政府も公式な発表はしていない。

提出されたコメントを受けて、米国政府が規則の改定と多国間の連携をどう進めていくのか、今後の動きが注目される。

(磯部真一)

(米国、中国)

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