中国、米国による気球撃墜に強い不満と抗議を表明、対抗措置の権利留保

(中国、米国)

北京発

2023年02月07日

中国外交部は2月5日、米国が中国の気球(注1)を米国領海上で撃墜したことに対し、「強い不満と抗議」を表明した。外交部は「米国の国防総省自身が、気球は地上の人々に対して軍事的・人身的脅威にならないとしたにもかかわらず、武力を用いたことは、過剰反応であり国際慣習にも反する」と非難した。その上で、中国は関係する企業の正当な権益を守り、さらに必要な対抗措置を行う権利を留保するとした。

同日に外交部の謝鋒副部長は在中国米国大使館に対し、「厳正な抗議」を表明、米国の「過剰反応」を非難し、バリ島会談(注2)以降の双方の米中関係安定に向けた努力と進展を損なうものだとした。中国国防部も「撃墜は明らかに過剰反応だ」とし、同様な状況において必要な手段を行使する権利を留保すると発表した。

気球については、米国政府が2日、中国の偵察用とみられるものを米国モンタナ州上空で確認したと発表した。外交部は3日の記者会見で、気球が中国のものであることは認めた上で、「民間の気象研究などに用いられるもの」として偵察用であることは否定した。米国上空を飛行していた理由は、偏西風の影響や気球自身の操作上の限界などにより、予定されていた航路を大幅に外れたためとした。その上で遺憾の意を表明し、米国と連絡を保ち、「不可抗力による突発的な状況」を適切に処理するとしていた。

また、外交部は3日夜、外交トップの王毅・共産党中央政治局委員が米国のアントニー・ブリンケン国務長官との電話で、双方がいかに冷静に専門的態度で偶発的な事件を処理するか話し合ったと発表した。今回の件を受けたブリンケン国務長官の訪中延期(2023年2月6日記事参照)について、外交部は4日、「双方は訪問について発表したことはなく、米国の発表は米国自身の事情であり、われわれは尊重する」と述べるにとどめた。

中国側の報道では、米国海洋大気庁の追跡データでは、気球の飛行ルートがアラスカ州からカナダを経てモンタナ州に入っていることから、気球が脅威であるならば「アラスカ基地にもF22戦闘機は配備されているにもかかわらず、東海岸海上に至るまでなぜ撃墜を待つ必要があったのか」とし、米国政府は自国民と国際世論を欺いているとの見方が紹介されている(「直新聞」2月5日)。

(注1)外交部は「無人飛行船」と表現している。

(注2)2022年11月14日にインドネシア・バリ島で習近平国家主席と米国のジョー・バイデン大統領が会談を行った(2022年11月16日記事参照)。

(河野円洋)

(中国、米国)

ビジネス短信 5652744f6b7568e8