2018年の輸出入は、ともに過去最高を更新(スイス)

2019年2月26日

2018年のスイスの貿易は、輸出が前年比5.7%増、輸入が8.6%増で、ともに過去最高を更新した。主要品目である化学品・医薬関連品が輸出入の双方で堅調に伸び、米国向け輸出が12.3%増と好調だった。

スイス連邦関税局の発表(2019年1月29日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )によると、2018年のスイスの貿易は、輸出が前年比5.7%増、輸入が8.6%増で、ともに過去最高を更新し、それぞれ2,331億スイス・フラン(約25兆6,410億円、CHF、1CHF=約110円)、2,018億CHFとなった(表1参照)。貿易収支は前年比で35億CHF減少し、313億CHFの黒字にとどまった。輸出は四半期ごとでも2016年末から増加を続け、欧州の景気減速が鮮明となった2018年第3四半期に減少したが、第4四半期は増加に転じた。輸入は、第3四半期、第4四半期と続けて減少したものの、通年では2,000億CHFの大台に乗せた。

表1:2018年通年の主要品目別輸出入(通関ベース) (単位:100万CHF、%)(△はマイナス値、―は値なし)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
金額 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
化学品・医薬関連品 104,332 44.7 5.8 50,148 24.8 7.3
機械および電気・電子機器 33,514 14.4 4.6 32,078 15.9 5.5
時計 21,173 9.1 6.3 4,006 2.0 13.0
精密機械・医療機器 16,799 7.2 7.4 8,231 4.1 6.8
金属 14,398 6.2 5.5 15,902 6.8 9.8
装身具・宝飾品 11,580 5.0 4.1 16,002 7.9 40.7
食品・飲料 8,978 3.9 3.4 10,856 5.4 2.5
輸送用機器 5,015 2.2 △ 7.5 19,301 9.6 1.6
繊維・衣類 4,862 2.1 15.8 11,659 5.8 10.5
プラスチック 3,501 1.5 6.1 4,637 2.3 7.2
製紙・印刷・出版物 1,670 0.7 △ 4.6 3,893 1.9 2.6
エネルギー 9,498 4.7 16.9
合計(その他含む) 233,146 100.0 5.7 201,827 100.0 8.6
注:
貴金属・宝石、芸術品、骨とう品(加工して貨幣またはその代替品として流通可能なもの)を含まず。
出所:
スイス連邦関税局

輸出を品目別にみると、輸送用機器と製紙・印刷・出版物を除き、前年比増だった。輸出の45%近くを占める化学品・医薬関連品は5.8%増で、輸出増加額125億CHFのうち46%(58億CHF増)を占めた。CHF高などの影響により、2016年に9.9%減となった時計は、2017年には回復基調となり、2018年は6.3%増だった。一方、輸送用機器は、好調だった2017年から一転して、7.5%減となった。

輸入では、全体の4分の1を占める化学品・医薬関連品が前年比7.3%増、次に構成比の大きい機械および電気・電子機器も5.5%増だった。最も伸び率が大きかったのは、装身具・宝飾品の40.7%増で、これはアラブ首長国連邦などからの電子部品用の金輸入とみられる。エネルギーも16.9%増と大きく伸びた。繊維・衣類は、2017年に引き続き輸出入とも10%以上の増加を示しているが、これは外国の大手衣料通販サイトへの注文および返品が繊維・衣類の輸出入を押し上げているとみられる。「ハンデルスツァイトゥング」紙(2月7日)によれば、ドイツの人気衣料通販会社ザランドゥへの注文による輸入が2018年に約1,330万個ある一方で、約800万個がドイツに返品されている。

輸出を国・地域別にみると、北米向けが前年比11.6%増と好調で、うち米国は12.3%増だった(表2参照)。これは主として、化学品・医薬関連品の伸びによる。アジアでは、引き続き中国、香港への輸出が好調だった。日本は機械および電気・電子機器が伸び、ほぼ横ばいだった2017年から回復し、4.3%増となった。一方で、EUへの輸出増加率は全体と比べて低く、特に英国向けは鉱物の急減により、過去30年間で最大の落ち込みとなる22.9%減だった。

表2:2018年通年の主要国・地域別輸出入(通関ベース)(単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
金額 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
欧州 127,634 54.7 4.2 144,543 71.6 6.9
階層レベル2の項目 EU 121,352 52.0 3.9 141,805 70.3 6.9
階層レベル3の項目 ドイツ 43,121 18.5 3.6 54,650 27.1 4.4
階層レベル3の項目 フランス 14,734 6.3 5.1 16,230 8.0 10.1
階層レベル3の項目 イタリア 14,106 6.1 2.5 18,778 7.2 4.3
階層レベル3の項目 オーストリア 6,125 2.6 △ 8.2 8,227 4.1 5.4
階層レベル3の項目 ベルギー 4,144 1.8 0.3 3,295 1.6 △ 0.9
階層レベル3の項目 スペイン 6,741 2.9 16.8 5,217 2.6 3.0
階層レベル3の項目 英国 8,781 3.8 △ 22.9 7,746 3.8 27.3
米国 37,930 16.3 12.3 12,563 6.2 △ 1.0
アジア 50,249 21.6 4.4 38,176 18.9 19.4
階層レベル2の項目 中国 12,178 5.2 6.8 14,237 7.1 9.6
階層レベル2の項目 日本 7,642 3.3 4.3 3,394 1.7 △ 5.5
階層レベル2の項目 香港 5,944 2.5 11.2 1,198 0.6 0.3
合計(その他含む) 233,146 100.0 5.7 201,827 100.0 8.6

出所:表1に同じ

輸入は、EUからが前年比6.9%増となり、うちフランスはエネルギーやレアメタルを中心に10.1%増だった。輸出を減らした英国も、輸入では鉱物や精密機械・医療機器を中心に27.3%増と伸びた。米国からは1.0%の微減となった。アジアからは全体で前年比19.4%増、うち中国が9.6%増、シンガポールが30.2%増だった。

2018年の対日貿易については、スイスからの輸出が前年比4.3%増の76億CHFで、伸び率が大きかったのは機械および電気・電子機器、食品・飲料だった。日本からの輸入は、時計および装身具・宝飾品などの減少により、5.5%減の34億CHFとなった。

執筆者紹介
ジェトロ・ジュネーブ事務所長
和田 恭(わだ たかし)
1993年通商産業省(現経済産業省)入省、情報プロジェクト室、製品安全課長などを経て、2018年6月より現職。