為替管理制度

最終更新日:2023年01月13日

管轄官庁/中央銀行

ロシア中央銀行、およびロシア連邦政府(内閣)により指定された連邦行政機関

財務省、連邦税関局、ロシア中央銀行は、それぞれの管轄範囲に応じて外為管理規制を行う(2003年12月10日付連邦法第173-FZ号「外為規制・外為管理について」第22条第2項)。

為替相場管理

2014年11月10日より、ロシアは完全な変動相場制を導入した(ただし、中銀が政策金利を設定したり、その他の措置で調整を行う)。モスクワ証券取引所(MOEX)における外為取引価格に基づき、中銀が公定為替レートを決定する。

貿易取引

ロシアへの輸出代金は、ドル、ユーロ、円などの外貨を、銀行を通じて受領する。ただし、一部の邦銀は、ルーブル建ての決済に応じている。決済手段として、銀行振込、手形、L/C等が活用される。2004年6月に発効した改正外為法により、資本取引以外の取引(経常取引)に関しては、原則、制限がなくなった。さらに、ほとんどの外為制限は一旦2007年1月1日に廃止されたが、2022年に対ロシア制裁への対抗策として幅広い制限が導入された。

以前の外為規制・外為管理法には経常取引の限定列挙があり、経常取引として指定されていない取引は資本取引とみなされ、各取引の実施に際しては、中央銀行規則に特段の定めがない限り、個別許可が必要であった。経常取引には、支払いが猶予されない、あるいは支払期間が90日以内の輸出入取引決済における外貨振込み、180日以内の融資の貸出しまたは借入れ、利子・配当金等の振込みなどがあった。
しかし、2004年6月に発効した外為規制を緩和する外為法の改正に伴い、外為規制の対象となる取引の限定列挙が導入され、規制対象取引として特定されない取引については制限が廃止された。2006年7月には、さらなる自由化が行われ、2007年1月1日にはほとんどの規制が廃止されたが、西側諸国がロシアによるウクライナ侵攻を受けて発動した対ロ制裁の対抗策として、大幅な規制が導入された。

現在の具体的な制限としては、次のような義務・規制がある。

  1. 本国送還義務
    輸出代金の送還義務について、決済の通貨をルーブルとする貿易取引の場合、一部の鉱物資源以外の輸出については、2020年1月1日より廃止されており、鉱物資源の輸出取引については、輸出代金の送還すべき割合が2020年、2021年、2022年、2023年それぞれに90%、70%、50%、30%とされ、2024年より0%と段階的に廃止される予定であった。対ロ制裁の対抗策として、一時、鉱物資源の輸出の外貨売り上げについて強制売却の割合が引き上げられ、鉱物資源の輸出以外の売り上げについてもの同様の義務が導入されたが、2022年6月10日より当該義務が廃止された(2022年6月9日付大統領令第360号「対外経済活動を行う居住者による外貨及びロシア連邦通貨の本国送還について」)。
  2. 契約書登録制度(輸入取引証明書(取引パスポート)の後継制度)
  3. 外国銀行における口座開設後の税務署への通知義務、および当該口座の明細についての定期的な報告義務
  4. 居住者個人が銀行口座を開設せずに外国に送金する際の金額規制(5,000ドル相当額まで)など。

現行外為法では居住者は一定の例外を除き外貨の本国送還義務を負っていたが、2022年7月5日より当該義務が廃止された(2022年7月5日付大統領令第430号)。現在、本国送還の対象となる外貨売り上げの割合は、強制売却の対象となる外貨売り上げの割合と同様とされている。強制売却の対象となる外貨売り上げの割合は、ロシア連邦外国投資規制政府委員会により定められている。2022年6月以降(2023年1月13日時点)ゼロと定められているので、本国送還の対象となる外貨売り上げの割合もゼロとなっており当該義務が実際に課されていない。

外貨流出の予防対策として、輸出外貨代金のロシアへの回収を監督する制度がある。この制度では、輸入者は輸入代金を支払う前に、外為取引を行う資格を有する取引銀行に対して輸入取引契約の写しを提出し、輸入取引証明書(パスポート)を作成しなければならなかった。
居住者と非居住者間のローンやサービス提供取引等についても同様に、輸入取引証明書(パスポート)の作成が義務付けられていたが、2018年3月1日より輸入取引証明書(パスポート)の作成義務を廃止し、その代替制度として、契約書登録制度が導入された。同制度は、輸入契約・融資契約と輸出契約のそれぞれについて300万ルーブルと1,000万ルーブル以上の取引に適用される。ただし、60万ルーブル未満の少額契約は規制の対象外。
当該銀行は、連邦税関局および中銀地方支店と情報交換を行い、輸入品が一定の期間内に事実上ロシア国内に入ることを確認する。輸入品が一定の期間内にロシア国内に入らないことに正当な理由がない場合、輸入者は外為法違反として罰則を受けることがある。
また、居住者間の外貨決済の原則禁止(例外あり)、個人による外貨の海外送金の制限などもある。

貿易外取引

2004年6月に発効した改正外為法により、資本取引以外の取引(経常取引)に関しては、原則、制限がなくなった。しかし、2022年に対ロシア制裁への対抗策として、多くの制限が導入された。自国保険主義はない。

資本取引

2007年1月1日より、資本取引に関する制限は廃止されたが、2022年に対ロシア制裁への対抗策として、多くの制限が導入された。

資本取引には、居住者と非居住者間の輸出入、融資、証券取引などがある。居住者間の外貨取引は、一部例外を除いて禁止される一方、非居住者間の外貨取引には、原則として制限はない。

2004年6月に発効した外為規制を緩和する改正外為法に従い、外為規制を受ける取引の限定列挙が導入され、規制対象取引として特定されない取引については制限がなくなった。2007年1月1日より、残りの制限についても、ほとんどが廃止されたが、2022年に対ロシア制裁への対抗策として、多くの制限が導入された。

2022年に対ロシア制裁への対抗策として、一定の取引について許可制が導入された。具体的には、非居住者への外貨融資の提供、利益分配に関連する自己外国口座への送金、その他一定金額を超える特定の取引についてロシア財務省の許可が必要である。

  • 「非友好国」(対ロシア制裁を導入した国)に属する非居住者についてロシア国外への送金は、2023年3月31日まで禁止されている。
  • 居住者・非居住者を問わず外貨口座から、2022年3月9日前に入金した資金のうち、かつ、1万ドル以下または同等のユーロを引き落とすことができる。前記を上回る外貨について、ルーブルに交換してのみ引き落とすことができる。この制限は2023年9月9日までとされている。
  • 非友好国に属するものに対するルーブル建て融資、非友好国に属するものとの間の不動産または有価証券を対象とする取引については、外国投資規制政府委員会の許可が必要とされている(ただし例外あり)。
  • 非友好国に属するものに対する融資・貸付などの返済の1カ月当たり1,000万ルーブル(中央銀行の月初のレートでルーブルに換算)に相当する金額を超える支払い、利益配当、原資や残金配当の振込について、特別S口座のみに行うことが義務付けられている。当該S口座は出金用途が税金納付、他のS口座への振込等に限られている。金融機関はロシア中央銀行、非金融機関はロシア財務省の許可を得た場合、別途の振込手続きも可能である。
  • 非友好国に属するものなどに対する知的財産の使用料について特別O口座のみに行う必要がある。O口座からの振込も制限され、振込の際外国投資規制政府委員会の個別の許可が求められる。2023年12月31日まで、証券市場の投資以外、外国法人への出資には、ロシア中央銀行の許可が必要とされる。

関連法

2003年12月10日付連邦法第173-FZ号「外貨規制・外貨管理について」
2022年2月以降の大統領令などに関しては次のとおり。

2022年2月28日付大統領令第79号「アメリカ合衆国及びこれと共同した諸外国並びに国際機構の非友好的な行為に伴い特別経済措置の適用について」
2022年3月1日付大統領令第81号「ロシア連邦の財政安定の確保のための追加暫定経済措置について」
2022年3月5日付大統領令第95号「一部の外国投資家に対する債務履行の暫定規則」
2022年3月8日付大統領令第100号「ロシア連邦の安全のための対外経済活動における特別経済措置の適用について」
2022年3月18日付大統領令第126号「ロシア連邦の外為規制における安全確保のための追加暫定経済措置について」
2022年5月4日付大統領令第254号「一部の外国債権者に対する会社法上の金融的債務の履行の暫定規則について」
2022年5月27日付大統領令第322号「一部の権利者に対する債務の履行の暫定規則について」
2022年6月9日付大統領令第360号「2022年2月28日付大統領令第79号「アメリカ合衆国及びこれと共同した諸外国並びに国際機構の非友好的な行為に伴い特別経済措置の適用について」および2022年3月18日付大統領令第126号「ロシア連邦の外為規制における安全確保のための追加暫定経済措置について」の改正について

その他

法人間の決済に関しては、契約1件当たりのルーブル現金決済金額にも制限がある。この限度額は、2019年12月9日付ロシア中央銀行規則第5348-U号に基づき、10万ルーブルとなっている。

2018年8月3日付連邦法第290-FZ号「国際企業について」の規定により、外国企業がロシア国内で、国際企業として登記後、1年以内に最低5,000万ルーブルの投資をすることを約束し、その他一定の要件を満たした場合、ロシア国内で現地法人を設立せずに、ロシア法人と同様のステータスを取得することを可能とする制度が導入された。
また、2018年8月3日付連邦法第291-FZ号「カリーニングラード州および沿海地方域内における特別行政区について」に基づき、前述の国際企業の設立は、カリーニングラード州および沿海地方の域内に限定されているが、支店、事務所等は他の地域にも設置することが可能である。国際企業については、一定の税制上の優遇措置が適用される。