ロシア中銀、国外凍結有価証券取引のための細則を公布
(ロシア、EU)
調査部欧州課
2024年01月16日
ロシア中央銀行は2023年12月11日、ロシアの投資家が保有する海外の有価証券で取引が禁止された有価証券などを、特定の口座を使い非居住者に対し売却することを可能にする中銀取締役会裁定(2023年12月8日付)を公表した。同裁定は、大統領令第844号「外国有価証券の取り扱いに関する経済的追加時限措置について」(2023年11月8日付)によって概要が公表されていた措置の細則に相当するもの。取引は、連邦政府委員会が規則や条件を定めたのちに開始される。
EU理事会(閣僚理事会)は2022年2月25日に、金融分野を含めた対ロシア制裁を採択した(2022年2月28日記事参照)。これを受け、欧州の国際証券決済機関であるユーロクリアやクリアストリームはロシアの投資家が所有する外国証券の取引の実施を停止し、ロシア中銀も停止された外国証券に対し取引制限を導入した(2022年3月9日記事参照)。ロシア側の決済機関である国家決済保管所(NRD)も、2022年6月3日のEUによる対ロシア制裁パッケージ第6弾(2022年6月6日記事参照)の一部として制裁対象に含まれ、ロシアの個人および機関投資家は凍結された有価証券の売却ができない状況が続いている。アントン・シルアノフ財務相によると、ロシアの個人投資家が保有する凍結された有価証券の総額は約1兆5,000億ルーブル(約2兆4,000億円、1ルーブル=約1.6円)に達する(RBK2023年12月11日)。
ロシアの凍結された有価証券の所有者は、売却総額の上限を10万ルーブルとして外国人に対し特別決済口座(C口座、注)を通じて凍結有価証券の売却が可能。凍結有価証券の売買を希望する者は、当該有価証券取引資格を持つブローカーなどに対して取引の指示を出す。取引の結果に基づき、当該有価証券の売却資金はロシアの投資家(売却元)の口座に振り込まれる。
ただし、これらの実効性については疑問の声も聞かれる。ロシアの会計事務所RB IASのパートナー、ミハイル・ブリュハノフ氏は「この仕組みは外国側の決済機関の同意なしでは実効性がない」と指摘する。ロシア中銀のウラジミル・チスチュヒン第1副総裁は、外国の決済機関との調整が進んでいないことを認めつつも、ロシア、外国の双方の投資家は凍結有価証券の取引に関心を示しており、外国人の投資家が規制当局に対して働きかけることを期待しているとしている(ベドモスチ2023年11月10日)。
(注)非友好国からの融資・貸し付けへの返済、配当などの振り込み(月額1,000万ルーブルを超えるもの)などに利用目的を限定して使用される特別口座。
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