中銀が外貨引き出し制限を9月まで半年間延長、外貨現金不足の指摘も

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2023年03月15日

ロシア中央銀行は3月6日、2022年3月以降に導入した外国為替関連の制限措置を延長することを決定した。延長となる措置は、a.ロシア国民(注1)による外貨現金引き出し制限(1万ドル、または同額のユーロ相当額が上限)、b.法人などが従業員に外貨現金で支給する出張旅費の引き出し制限(5,000ドル、または同額のユーロ、ポンド、日本円相当額が上限)の2点。他の通貨には制限はない。3月9日に失効予定だったが、半年延長して9月9日まで継続する。

このほか、外為規制関連では、個人による国外への外貨送金制限(2023年3月31日まで有効。2022年4月12日記事参照)、1万ドルを超える外貨を国外に送金する際の中銀による許可制(期限指定なし)があるが、これらの措置が継続するかは不明。

中銀のエリビラ・ナビウリナ総裁は3月2日に開催されたロシア銀行協会の年次総会の講演で、今回の措置について「過去1年で外国為替管理に関する制限・禁止措置を緩和または廃止してきたが、ロシアを取り巻く環境が大きく変化していない」ためと説明していた。

措置延長の背景には、国内での外貨現金不足の懸念があるためとみられる。投資会社フォントビエレのルスラン・スピンカ販売・顧客サービス部門長は「現時点でロシアの金融セクターが保有する外貨の量は限定的だ。さらに、国内でのドル、ユーロ調達手段も縮小しつつある」と指摘する(金融情報サイト「バンキ・セボードニャ」2月20日)。投資会社テレトレードのアレクセイ・フョードロフ・アナリストは、これらの制限措置が緩和されるのは、今後の貿易や通貨ルーブル価格の安定が見込まれ、ロシアへの外貨の流出・流入が均衡状態になってからとの見方を示している(「モスコフスキー・コムソモレツ」紙2月19日)。

中銀によると、2022年1月の貿易取引に占めるドル、ユーロの割合は合わせて輸出が87%、輸入が65%だったが、同年12月にはそれぞれ48%、46%に低下した。米国とEUは対ロ経済制裁の一環で、ロシアへのドル、ユーロの現金持ち込みを2022年3月以降、一部の例外(注2)を除いて原則禁止している。

(注1)規制では対象者の国籍は明記されていないが、2022年3月以降、外国人は実態上、非友好国通貨を外貨預金口座から引き出すのに制限が生じている。

(注2)米国の場合、財務省が定める一般許可(General License)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから、EUの場合、対ロ制裁の状況をまとめたEUR-Lex(EU 法データベース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認が必要。

(欧州ロシアCIS課)

(ロシア)

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