イラン通貨リアルが急激な下落、インフレが続く

(イラン、ロシア)

テヘラン発

2023年02月01日

イランの通貨イラン・リアルの対ドル為替レート(市場レート)の下落に歯止めがかからない。2022年8月半ばに1ドル=約29万リアルだった市場レートは下落を続け、12月末には40万リアルとなった。2023年に入っても下落の勢いは止まらず、1月28日には44万5,000リアルを記録し、5カ月半で約50%下落した計算になる。

2022年末には中央銀行総裁が交代し、新総裁にモハンマド・レザー・ファルジン氏が就任した〔2022年12月29日付イスラーム共和国通信(IRNA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。同氏は就任後のインタビューで、中銀の最も重要な任務はインフレ率と為替レートを統制することと述べつつ、金融政策だけではインフレを抑制することはできないとして、政府内の各経済機関と協力して財政、予算、金融政策を調整する委員会を確立する必要があるとした。

同氏はまた、今後、基本的な商品、設備、原材料の輸入に必要な外貨の調達にはNIMAレート(2018年8月28日記事参照)を割り当てるとし(注)、変動制だったNIMAレートを約1年間、1ドル=28万5,000リアルに固定するとした(2022年12月29日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2022年1月30日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

実際に、中銀の発表では、NIMAレートは1月3日から28万5,000リアルで固定されている。一方、当地で報道される市場レートは前述のとおり、1月以降も下落を続けており、その差は乖離を続けている。

また、インフレ率は、2022年8月後半以降は徐々にではあるものの下降傾向にあったが、イラン統計局の発表によると、直近1カ月(2022年12月22日~1月20日)の消費者物価指数上昇率は、総合が前年同月比51.3%(前月は48.5%)、食品飲料が70.1%(同66%)と、いずれも増加に転じている。

なお、中銀は1月29日、イランとロシアの銀行の通信システムを接続する合意文書に両国中銀が署名したと発表した(2023年1月29日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この発表がどのようにイランの外国為替に影響するかも注目される。

(注)政府は、食品や医薬品などの輸入に対し、1ドル=4万2,000リアルに固定された公定レートを割り当ててきたが、段階的に割り当て対象品目を減らしていた。

(鈴木隆之、マティン・バリネジャド)

(イラン、ロシア)

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