外資に関する規制
最終更新日:2024年11月22日
- 最近の制度変更
-
-
2021年12月9日
-
2020年12月23日
-
2020年8月6日
-
2020年6月12日
-
2020年3月30日
-
規制業種・禁止業種
外資ガイドラインで指定された重要分野については、外資比率の上限規定などの規制が行われている。
概要
オーストラリア政府は外資の必要性を認識し、オーストラリア経済の発展につながる外国資本を基本的に歓迎する方針を採っている。
連邦政府は2020年6月5日、外国投資に対して、国家安全保障の観点に基づく新たな審査方法や、監視・調査体制の整備、罰則の強化など、1975外資による取得および買収に関する法律(Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975)の大幅な改正を行うことを発表。改正法は、2021年1月1日に施行された。また、重要インフラ安全保障法(Security of Critical Infrastructure Act 2018
)の改正法が2021年12月3日に施行され、外資買収法における国家安全保障に関する事業の定義が拡大され、従来の定義の範囲である水、電気、港湾、ガスなどに加えて、金融、エネルギー、ヘルスケアなどに拡大された。
外国投資審査委員会(FIRB):外国投資に関する概況 “General - Guidance”
外務貿易省:外国投資について “About foreign investment”
事前認可
オーストラリアではこれまで、大部分の産業において、小規模な外資買収は報告義務が免除されており、多額の投資の場合でも国益に反しない限り認可されていた。法改正に伴い、投資額の大小に関わらず、国家安全保障通知義務行為(Notifiable national security action)および国家安全保障再審査義務行為(Reviewable national security action)の2つの新たな概念が導入され、外国人投資家がこれらに該当する行為を行う場合、外国投資審査委員会(FIRB)の承認取得が義務付けられた。
事前認可が必要となる主な要件
外国人投資家が投資する際、FIRBの事前認可の対象となるかは、投資家の種類、投資の種類、投資金額、国家安全保障に関わる事業かどうか、投資予定の事業に事前認可の例外が該当するかなどの項目について確認する必要がある。
主な要件として、連邦政府が規定する外国投資案件の閾額に該当する場合、FIRBの事前認可が必要。詳細は表のとおり。オーストラリアと自由貿易協定を締結しているため、日本の投資家は表中の「特定のFTA締結相手国・地域の民間投資家」に該当する。なお、国家安全保障に関する事業への投資、外国政府による投資は金額にかかわらず事前認可の対象。詳細は、それ以外の要件も含め、FIRBの「外国投資に関する手引き」を参照。土地への投資は、後述の「外国企業の土地所有可否」を参照。
なお、国家安全保障に関する事業(National Security Business)への投資には、金融サービス、通信、メディア、防衛、軍事用重要技術、エネルギー、食品、ヘルスケア、高等教育施設、IT、港湾、航空、貨物、公共交通機関、上下水道などに分類される事業において、経営への関与など直接的権利の取得(基本10%以上)、新規開業が含まれる。各分野においての要件等詳細は、FIRBの国家安全保障に関するガイダンス資料を参照。
投資家の種別 | 投資対象 | 閾額*1 |
---|---|---|
すべての投資家 | 国家安全保障に関する事業・企業 | 0豪ドル |
オーストラリアのメディア事業・企業 | 0豪ドル | |
特定のFTA締結相手国・地域*2の民間投資家 | センシティブ分野*3以外の事業・企業 | 14億2,700万豪ドル |
センシティブ分野*3の事業・企業 | 3億3,000万豪ドル | |
農業関連事業・企業 |
a. チリ、ニュージーランド、米国:14億2,700万豪ドル b. a.以外の対象国:累計7,100万豪ドル |
|
特定のFTA締結相手国・地域以外の民間投資家 |
農業またはサービス業以外の事業・企業 (センシティブ分野*3およびセンシティブ分野以外の事業・企業のいずれも) |
3億3,000万豪ドル |
農業関連事業・企業 | 累計7,100万豪ドル | |
センシティブ分野*3以外のサービス業 | ・インド:5億3,300万豪ドル | |
外国政府 | すべての投資(ごく一部の例外あり) | 0豪ドル |
*1:毎年1月1日、物価スライドにより改定される。
*2:チリ、中国、香港、日本、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、韓国、米国、英国および、CPTPPが発効されている、別途記載されていない国(カナダ、メキシコ、マレーシア、ベトナムなど)(オーストラリアは除く)。
*3:メディア、通信、運輸、国防関連、暗号・セキュリティー技術、ウランまたはプルトニウムの抽出、原子力施設の運営等を含む。
外国投資審査委員会(FIRB:Foreign Investment Review Board):
- 審査対象となる外資投資案件(土地への投資含む)の閾額 “Monetary thresholds
”
- 外資投資に関する手引き “Guidance - Overview
”
- 国家安全保障に関するガイダンス “Guidance - National Security
”
オーストラリア政府:
- 1975年外資による取得および買収に関する法律(外資買収法) “Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975
”
- 2015年外資による取得および買収に関する規則(外資買収法規則) “Foreign Acquisitions and Takeovers Regulation 2015
”
産業別ガイドライン(外資買収法以外の規制)
外資買収法以外の法律において、外国投資で求められる要件について、主なものは以下のとおり。他の産業や詳細は、FIRBの「外国投資に関する手引き」を参照。
- 銀行・金融業
銀行業に対する外国投資は、銀行法(Banking Act 1959)、金融部門株主法(FSSA:Financial Sector (Shareholdings) Act 1998
)および健全経営規制を含む銀行政策に適合する必要がある。
- 民間航空業(国際線)
外国人投資家による国際線運航企業(カンタス航空を含む)の合計所有は、航空法(Air Navigation Act 1920)などにより、最大49%までに制限される。
- 空港運営業
オーストラリアの空港に対する外国投資は、通常の通知要件に基づき事例ごとに審査される。連邦政府により売却された空港については、空港法(Airport Act 1996)により、外国人投資家の所有は最大49%に、航空会社の相互所有は5%に、そして、シドニー空港とメルボルン、ブリスベンおよびパースの各空港の所有には一定の制限が設けられている。 - 海運業
オーストラリアの海運業者により用船契約される船舶を除き、オーストラリア船籍を登録するためには過半数がオーストラリア人(企業その他の団体)による所有である必要がある(船舶登録法:Shipping Registration Act 1981)。ただし、オーストラリアの運航業者が借り切っていると認められる場合は、この限りではない。
- 通信業
テルストラ法(Telstra Corporation Act 1991)により、テルストラ社の外国人投資家による合計所有は35%に制限されており、単独では5%を超えて所有することはできない。
- 農林水産業
外国人投資家が農地を新たに取得、または既に所有している場合、土地の価格にかかわらず、オーストラリア国税局(ATO)の農地登録制度に申告することが義務付けられている。 - 重要インフラ資産
重要インフラ安全保障法(Security of Critical Infrastructure Act 2018)により、重要インフラ資産10%以上を所有する事業体および責任主体(その資産を運用するライセンスを付与された団体)は、内務省サイバーインフラセキュリティーセンター(CISC)の重要インフラ資産登録簿に情報提供を求められる。詳細は、CISCのウェブサイトを参照。
FIRB:事業への投資について “Guidance - Business Investments”
ATO:農地登録制度 “Registration of agricultural land for foreign investors”
内務省CISC “Legislation, regulation and compliance”
出資比率
業種によって外資の出資比率が制限されるケースあり (前項「規制業種・禁止業種」を参照)。
外国企業の土地所有の可否
外国人投資家および居住者などの外資による土地所有に関しては、ほとんどの場合、権利を取得する前に外国投資審査委員会(FIRB)の認可が必要となっている。
事前認可が必要となる主な要件
外国人投資家が土地へ投資する際、FIRBの事前認可の対象となるかは、投資家の種類、投資の種類、投資金額、国家安全保障に関わる土地に該当するかどうか、事前認可の例外が投資予定の土地に該当するかなどの項目について確認する必要がある。
事前認可の主な要件について、連邦政府が規定する外国投資案件の閾額に該当する場合、FIRBの事前認可が必要。詳細は表のとおり。日本はオーストラリアと自由貿易協定を締結しているため、日本の投資家は表中の「特定のFTA締結相手国・地域の民間投資家」に該当する。なお、国家安全保障に関する土地への投資、外国政府による投資は金額にかかわらず事前認可の対象。詳細は、それ以外の要件も含め、FIRBの「外国投資に関する手引き」を参照。国家安全保障に関する土地(National Security Land)とは、軍の施設、諜報機関に関連する土地等。詳細は、FIRBの国家安全保障に関するガイダンス資料を参照。
投資家の種別 | 投資対象 | 閾額*1 |
---|---|---|
すべての投資家 | 国家安全保障に関する土地 | 0豪ドル |
住宅用地 | 0豪ドル | |
未開発の空き商業用地 | 0豪ドル | |
特定のFTA締結相手国・地域*2の民間投資家 | 農業用地 |
|
開発済みの商業用地 |
14億2,700万豪ドル (香港、ペルーの投資家でセンシティブ土地の場合、7,100万豪ドル) |
|
鉱業用地(鉱山および鉱物加工用地) |
|
|
特定のFTA締結国・地域以外の民間投資家 | 農業用地 |
|
開発済みの商業用地 |
|
|
鉱業用地(鉱山および鉱物加工用地) | 0豪ドル | |
外国政府 | すべての投資 | 0豪ドル |
*1:毎年1月1日、物価スライドにより改定される。
*2:チリ、中国、香港、日本、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、韓国、米国、英国および、CPTPPが発効されている、別途記載されていない国(カナダ、メキシコ、マレーシア、ベトナムなど)(オーストラリアは除く)。
法律の運用により移譲された権利の場合は、市民権や在留資格の有無に関係なく、FIRBの認可は必要ない。
長期滞在者
長期滞在者が中古物件を購入する場合には、FIRBに申請しなければならない。オーストラリアに居住しなくなった場合には、購入した物件を3カ月以内に売却しなければならない。
長期滞在者は、投資を目的とした住居を購入することはできない。
新築物件を購入した際には政府に申請しなければならず、空き地を購入した際には、4年以内に建設を終了しなければならない。
居住者でない外国人
原則、居住者でない外国人が、投資を目的とした中古物件を購入することはできない。新築物件を購入した際には政府に申請しなければならず、空き地を購入した際には、政府に申請を行い、4年以内に建設を終了しなければならない。
FIRB:農業用地について “Guidance - Agricultural Land”
住宅用地への投資について “Guidance - Residential Land”
国家安全保障に関するガイダンス “Guidance - National Security”
資本金に関する規制
特になし。
その他規制
特になし。