外資に関する規制
最終更新日:2017年08月31日
規制業種・禁止業種
外資ガイドラインで指定された重要分野については、外資比率の上限などが特定されている。
概要
オーストラリア政府は外資の必要性を認識し、オーストラリア経済の発展につながる外国資本を基本的に歓迎する方針を採っている。
大部分の産業に対する小規模な外資買収は報告義務が免除されており、多額な投資の場合も国益に反しない限り、認可される。
案件の審査は、外国投資審査委員会(FIRB)によって行われ、非常に多額またはセンシティブな問題を含む案件に関しては、それが国益に反しないかが審議される。
すべての外国政府とその関連機関は、オーストラリアで直接投資をする前に、投資の額に関係なく、オーストラリア政府に届け出て、事前認可を得なければならない。
また、外国政府とその関連機関が新たに事業を開始する場合、または試掘や探鉱、採掘、生産に伴う権利を含む土地関連の権利を取得する場合(ただし、外交上または領事業務の必要により土地を購入する場合を除く)は、オーストラリア政府に届け出て、事前認可を得なければならない。これは、政府の従来からの慣行である。
事前認可
- 事前認可を必要とする外資投資案件
- 2億5,200万豪ドル以上(*1)の資産価値を持つ企業(センシティブ分野(*2)を除く)に対して、外国人が単独で20%以上、複数で40%以上の投資を行う場合
- 5,500万豪ドル以上の資産価値を持つ農業関連企業
- あらゆる外国政府/同関連機関による直接投資
- 自由貿易協定(FTA)締結相手国の事前認可を必要とする外資投資案件
- 10億9,400万豪ドル以上の資産価値を持つ企業(センシティブ分野(*2)を除く)に対して、外国人が単独で20%以上、複数で40%以上の投資を行う場合
- 2億5,200万豪ドル以上の資産価値を持つセンシティブ分野(*2)
- 5,500万豪ドル以上の資産価値を持つ農業関連企業(中国、日本、韓国)
- 10億9,400万豪ドル以上の資産価値を持つ農業関連企業(チリ、ニュージーランド、米国)
- あらゆる外国政府/同関連機関による直接投資
*1:毎年1月1日、物価スライドにより改定されるが、2017年は改訂の基準となるGDPデフレーターに変動がなかったため、前年に引き続き2016年の金額が据え置かれた。
*2:メディア、通信、交通、国防関連、暗号・セキュリティー技術、通信システム、ウランまたはプルトニウムの抽出、原子力施設の運営等を含む。
外国投資審査委員会(FIRB):
審査対象となる外資投資案件の敷居額 “Monetary thresholds”
外資投資に係る用語の定義 “Definitions”
外資投資申請のチェックリスト “BUSINESS APPLICATION CHECKLIST(212KB)”
オーストラリア政府:外資による取得および買収に関する法律 “Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975”
産業別ガイドライン
- 銀行業
銀行業に対する外国投資は、銀行法(Banking Act 1959)、金融部門株主法(FSSA:Financial Sector (Shareholdings) Act 1998)および健全経営規制を含む銀行政策に適合する必要がある。
オーストラリア金融庁(APRA)がその外国銀行およびその国の監督機関が十分に確立しており、その銀行がオーストラリア金融庁の健全経営規制に従うことに同意する場合には、連邦政府は銀行業を認可することになる。 - 民間航空業(国際線)
国益に反しない限り、外国人(外国の航空会社を含む企業)による国際線運航企業(カンタス航空を含む)の外資所有は、最大49%まで認可される。 - 空港運営業
オーストラリアの空港に対する外国投資の案件は、通常の通知要件に基づき事例ごとに審査される。連邦政府により売却された空港については、空港法(Airport Act 1996)により、外国人の所有は最大49%に、航空会社の相互所有は5%に、そして、シドニー空港とメルボルン、ブリスベンおよびパースの各空港の所有には一定の制限が設けられている。 - 海運業
オーストラリアの海運業者により用船契約される船舶を除き、オーストラリア船籍を登録するためには過半数がオーストラリア人(企業その他の団体)による所有である必要がある(船舶登録法:Shipping Registration Act 1981)。ただしオーストラリアの運航業者が借り切っていると認められる場合は、この限りではない。 - メディア関連
外国人によるメディア関連業の5%以上を買収する投資は、FIRBの事前認可を必要とする。 - 通信業
連邦政府が所有していたテルストラ社の株式は1997年以降売却対象となった。外国人の合計所有は売却された株式の35%に制限されており、単独では5%を超えて所有することはできない。 - 農林水産業
外国人投資家および外国政府が関与する農林水産業(農地を含む)に対する投資は、オーストラリアの国益に反しないか、オーストラリアの農業資源(水資源を含む)の質と有効性、生産性、地域社会への貢献と雇用の確保などについて評価され、オーストラリアの法律に従うことが確認される。
外国人の所有地に係る「全国登録制度」(National Land Register)に基づき、既存の農地を所有する外国人投資家は、土地の価格にかかわらず、オーストラリア国税局(ATO)に申告することが義務付けられた。
FIRB:
各産業の外資規制に関する法律および外資所有農地の登録制度の手引き “Sector-specific legislation and the National Land Register [GN43]”
財務省:
オーストラリアの外資投資政策 “AUSTRALIA’S FOREIGN INVESTMENT POLICY(198KB)”
出資比率
業種によって外資の出資比率が制限されるケースあり。 (「規制業種・禁止業種」の項を参照)
外国企業の土地所有の可否
外国人投資家および居住者などの外資による土地所有に関しては、ほとんどの場合、権利を取得する前に外国投資審査委員会(FIRB)の認可が必要となっている。
外国人投資家
外国人投資家が、次のような土地を取得する場合は、原則として、金額にかかわらずFIRBの事前認可が必要となっている。
- 住居用不動産
- 空き地
- オーストラリアの不動産企業または信託(第一次産業が行われていない土地/事業(Urban Land)の占める割合が、総資産額50%以上の事業のもの)の株式または物件
外国人投資家が、空き地の居住用および商業用の土地を取得する場合は、金額にかかわらずFIRBの事前認可が必要。
開発された商業用不動産については、FTA締結国(チリ、中国、日本、ニュージーランド、韓国、米国)の投資家は10億9,400万豪ドル以上、それ以外の国は2億5,200万豪ドル以上がFIRBの事前認可が必要。
農地については、外国政府系企業・機関を除く外国人投資家は1,500万豪ドル以上がFIRBの事前認可が必要。この規制は、チリ、ニュージーランド、シンガポール、タイ、米国の投資家には適用されないが、商業用不動産および居住用不動産と同等の規制が適用される。
鉱山作業場などについてはチリ、ニュージーランド、米国の投資家は10億9,400万豪ドル以上、それ以外の国はすべての投資に対してFIRBの事前認可が必要となっている。
なお、遺言により相続した権利、または法律の運用により移譲された権利などの場合は、市民権や在留資格の有無に関係なく、FIRBの認可は必要ない。
長期滞在者
長期滞在者が中古物件を購入する場合には、FIRBに申請しなければならない。オーストラリアに居住しなくなった場合には、購入した物件を3か月以内に売却しなければならない。
長期滞在者は、投資を目的とした住居を購入することはできない。
新築物件を購入した際には政府に申請しなければならず、空き地を購入した際には、4年以内に建設を終了しなければならない。
居住者でない外国人
居住者でない外国人が、投資を目的とした中古物件を購入することは、原則できない。新築物件を購入した際には政府に申請しなければならず、空き地を購入した際には、政府に申請を行い、4年以内に建設を終了しなければならない。
FIRB:
外国人投資に関する手引き “Guidance Notes”
資本金に関する規制
特になし
その他規制
特になし