外資に関する規制
最終更新日:2022年10月26日
規制業種・禁止業種
石油の探鉱・採掘・生産、メッカとマディーナにおける不動産投資、ハッジ(巡礼)とウムラ(小巡礼)関連ガイド業、軍事機器製造、出版物の印刷・発行(例外あり)、軍事・治安関係、雇用・人材派遣等のサービス業など特定分野への外国資本による投資は禁止されている。
主な外資参入の規制・禁止業種(ネガティブリスト)は次のとおり。
- 製造業分野:石油の探鉱・採掘・生産、軍事機器・装備等製造、民生用爆発物製造
- サービス分野:軍へのケータリング、治安・警備、探偵業、メッカおよびマディーナにおける不動産投資、巡礼関連観光業、人材斡旋・採用サービス、Commission Agent(国連中央製品分類CPCの621に該当する業種)など。
参考
サウジアラビア投資省(MISA):ネガティブリスト "Services Manual 9th Edition(2.32MB)" の「14.01 Appendix(1):List of Businesses Excluded from Foreign Investment」を参照。
外資規制は、サウジアラビアのWTO加盟にかかる米国との二国間通商合意(2005年9月)とWTOへの正式加盟(同年12月)により、以下のとおり、段階的に緩和されている。
主な規制緩和分野
- 銀行・通信分野
- 卸売・小売分野
- 保険分野
- 固定/携帯電話事業
- エンジニアリング
- ヘルスケア
- 教育
出資比率
外資100%での現地法人設立も可能だが、代理店業、保険・金融業、通信業、建設施工管理などのEPC(Engineering, Procurement and Construction)など業種によって出資規制がある。
- 商業(卸売業、小売業、フランチャイズ分野)における出資比率100%まで許可。
※サウジアラビアの代理店を通さない輸入品の卸売および小売業での直接取引を許可。 - 貿易業における外資出資比率の上限75%。
- 固定/携帯電話事業における外資出資比率の上限60%。
- 情報伝達/付加価値通信網事業における外資出資比率の上限70%。
- 外国銀行の出資比率の上限60%。
- 外国保険会社による外資出資比率の上限60%。
- 不動産金融事業おける外資出資比率の上限60%。
- エンジニアリング業(建設プロジェクト、設計、EPCなど)における外資出資比率の上限75%。
- 公共交通機関(バス)における外資出資比率の上限70%。
- 公共交通機関(メトロ)における外資出資比率の上限80%。
参考
サウジアラビア投資省(MISA):"Services Manual 9th Edition(2.32MB)" 「11.03 Types of Licenses, Minimum Capital Requirement and Percentage of Saudi Partnership」を参照。
有限会社(LLC)
2016年5月に施行された新会社法により、設立の際、1人以上の株主(法人、個人のいずれでも可)の出資で設立が可能となった。
支店
本社100%の出資となる。
卸売業および小売業(輸入業、代理店等を含む)
2008年末に外資の出資比率上限が75%に引き上げられ、2016年6月には小売・輸入・流通業を外資に100%開放する閣議決定がなされ、小売・輸入・流通業の参入について、3カ国以上に拠点があること、最低資本金3,000万リヤルなど、条件付きで100%の外資出資が認められた。
エンジニアリング事業
10年以上の実績と4カ国以上に拠点があるという条件付きで、100%の外資出資が認められている。
卸売業および小売業、エンジニアリング事業の条件は次のとおり。
- 現地資本と合弁で有限会社(LLC)を設立し、外資の出資は2,000万リヤル以上、出資比率上限は75%。ライセンス料として、当初5年間で年間2,000リヤルの支払い。投資省サービス利用料として初年度10,000リヤルの支払い。
- 外資100%で進出する場合には、少なくとも以下の条件を満たすこと。
- 設立する法人の資本金が3,000万リヤル以上であること。
- 人材・社会発展省が規定するサウジ人の雇用比率を順守し、管理職への登用に向けた能力開発プログラムを雇用から5年間実施し、その後も継続すること。
- サウジ人従業員の30%に毎年研修を実施すること。
- 次のいずれかの条件を満たすこと。
- 当初5年間で3億リヤル以上の投資を行うこと(資本金を含む)。
- 当初5年間で2億リヤル以上の投資を行うこと、また同期間で以下の項目を1つ以上満たすこと。
- 現地製造:国内で販売する製品の30%以上を現地製造すること。
- 研究開発:国内における売上高の5%以上を国内における研究開発に投入すること。
- 流通・アフターセールス拠点:国内に流通ならびにアフターサービスを提供する拠点を開設すること。
外国企業の土地所有の可否
非サウジアラビア投資家は、「非サウジアラビア投資家の不動産所有及び不動産に関する法律」により、一定の条件の下で、ライセンス当局(内務省)の承諾を得ることを条件に必要な不動産(土地含む)を所有することができる。
非サウジアラビア投資家は、次のいずれかの利用目的のためであれば、ライセンス当局(内務省)の承諾を得ることを条件に、サウジアラビアの不動産を購入することが認められている。
- 専門的、技術的、または経済的事業活動を実施するための利用
- SAGIAの外国投資ライセンスを取得したプロジェクトに従事する従業員の個人住宅用不動産としての利用
- 適法な滞在許可証(イカーマ)を有する個人の住居のための利用
ジェトロ:ビジネス関連法
「非サウジアラビア投資家の不動産所有及び不動産投資に関する法律」(日本語仮訳)
なお、2019年5月、高度技能を有する、あるいはファンドオーナー等、一定の条件を満たした外国人に対して、サウジアラビア人スポンサー不要の居住権(いわゆるグリーンカード)が与えられることが、議会に相当する諮問評議会で承認された。該当外国人は、土地の所有が可能となった。
資本金に関する規制
資本金は、進出業態、進出業種によって決められる。
以下は業種・業態別の資本金の例である。
- 不動産開発業:各プロジェクトにつき3,000万リヤル
- 小売・卸売・貿易業:外資の出資比率上限75%であれば2,000万リヤル(外資出資分)。外資100%出資の場合は3,000万リヤル以上。
- 公共交通サービス(バス):50万リヤル
- 公共交通サービス(メトロ):50万リヤル
- 株式会社(Joint Stock Company):50万リヤル
- 有限責任会社(Limited Liability Company):MISAおよび商業省によって決定される。
- 支店:通常、50万リヤル
- Scientific and Technical Office(TSO):資本に関する要件なし。
その他規制
「サウジ・ビジョン2030」における投資促進策を強化・拡充の一環として、中東・北アフリカ(MENA)地域の地域統括会社点(Regional Head Quarter:RHQ)制度を導入、ライセンスの申請受付を開始している。RHQライセンスは2022年第1四半期に改訂された投資省のサービスマニュアル第9版03.19 Regional Headquarters (RHQ) Licenseにて記載されている(RHQの詳細情報は2022年10月末時点で未公表)。
RHQは独立した法人(または支店)として、商業、サービスなどのライセンスを持つ事業会社を配下に持ち、自ら商業活動は直接行わない代わりに、経営戦略立案機能と管理機能(注1)に係る必須業務とともに、3種類以上の選択可能な補助業務(注2)を担う必要がある。
注1:経営戦略立案には、地域戦略策定・監督、戦略調整、製品・サービス配備、投資支援、財務レビュー、管理機能には、事業計画策定、予算編成、事業調整、マーケティング、事業・財務報告がそれぞれ含まれる。
注2:補助業務には、次のものが含まれる。
[1]販売およびマーケティング支援、[2]人事・人事管理、[3]研修、[4]財務管理、外国為替・資産管理、[5]コンプライアンスおよび内部監査、[6]会計・経理、[7]法務、[8]監査、[9]調査・分析、[10]アドバイザリー、[11]運営管理、[12]物流・サプライチェーンの管理、[13]国際取引、[14]テクニカルサポート、エンジニアリング支援、[15]ITネットワーク運用、[16]研究開発、[17]知財管理、[18]生産管理、[19]原材料・部品調達。
参考
ジェトロの記事:2022年3月16日付「サウジアラビアが進める地域統括会社(RHQ)誘致策とその行方」
ジェトロの記事:2022年10月24日付「地域統括会社(RHQ)誘致策の調整が続く中、ライセンス申請受け付けを開始」
サウジアラビア投資省(MISA):"Services Manual 9th Edition(2.32MB)" 「03.19 Regional Headquarters (RHQ) License」
サウジアラビア外国投資法の中には、細かい規制がある。例えば、自国民雇用政策「サウダイゼーション」と同政策をプログラム化した「ニタカート」は、サウジアラビア人の雇用状況に応じたペナルティーを設けている。
その他、Local Contents強化の動きがある。
- 外国投資法の詳細は、ジェトロ:「サウジアラビア外国投資法および外国投資法施行規則」の日本語仮訳を参照。
- サウダイゼーションの詳細は、ジェトロ:「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」を参照。
2015年12月に、国営石油会社サウジ・アラムコが国内産業奨励プログラムとして、国内調達比率や国内産業への貢献度を数値化するIKTVA(the In-Kingdom Total Value Add Program)を導入。2018年12月27日の勅令にてLocal Content and Government Procurement Commission が設立され、2022年9月5~6日に第1回ローカルコンテンツフォーラムが開催された。