ジェトロ世界貿易投資報告 2026年版
第Ⅲ章 世界の通商秩序を巡る動向
第1節 世界の通商政策の最新動向 第2項 主要国・地域の通商政策(米国)
自由貿易体制を揺るがす米国第一の通商政策
2025年1月に第2次トランプ政権が発足して以来、世界の通商環境および貿易体制は大きく様変わりした。政権は貿易赤字の是正を最優先課題に据えた「米国第一の通商政策(アメリカ・ファースト)」注1を掲げ、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に全世界に対して10%の相互関税を導入したほか、特に貿易赤字を抱える69カ国・地域に対する追加関税、合成麻薬フェンタニル流入阻止などを目的としたメキシコ・カナダ・中国への関税、1962年通商拡大法232条による品目別関税など、さまざまな関税措置を矢継ぎ早に発動した。とりわけ、最大の貿易赤字相手国である中国との間では関税の応酬がエスカレートし、その税率は一時125%に達するなど、前例のない水準にまで上昇した注2(図表Ⅲ- 8)。こうした関税政策は、同盟国と懸念国を区別せず、自国利益を最優先とする姿勢の下で展開され、世界のサプライチェーンに大きな混乱をもたらした。米国は、従来の自由貿易と多国間協調を基軸とする体制から、国家利益を優先する保護主義および二国間交渉を重視した体制への移行を加速させている。
1962年通商拡大法232条は、ある製品の輸入が国家安全保障に及ぼす影響を理由に、大統領に当該製品の輸入制限措置を発動する権限を認める規定である。政権発足以降、同条に基づき、自動車および同部品には25%の関税が課され、米国を主要な販売先とする日本企業に大きな打撃を与えた。さらに、鉄鋼(25%)・アルミニウム(10%)関税については例外措置の撤廃に加え、税率が段階的に引き上げられるとともに対象品目も拡大し、銅製品も追加された。また、含有金属の取引価格に基づく課税方式の導入により関税算出が複雑化し、企業負担が増大した。その後、2026年4月に対象品目の縮小や軽減税率の導入、課税方式の見直しが実施された。現在、トランプ政権は民間航空機・同部品、ポリシリコン、無人航空機システム(UAS)、風力タービン・同部品などの品目に対し、追加関税の導入に向けて232条に基づく調査を実施している。
| 時期 | IEEPA(フェンタニル) | IEEPA(相互関税) | 301条関税 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月 | 10%のIEEPA関税発動 | — |
中国が実施している技術移転策に対する制裁措置として、2018年7月より301条関税を発動中。米国関税分類番号(HTSコード)8桁ベースで、全品目の9割以上の品目を対象に、7.5~100%の追加関税率を設定 ※電子機器や医療機器、太陽電池製造装置など178品目に対しては適用除外措置が設定 |
| 2025年3月 | 20%にIEEPA関税を引き上げ | — | |
| 2025年4月 | — | 84%の相互関税賦課を表明 | |
| 相互関税を125%に引き上げ表明 | |||
| 2025年5月 | — | 相互関税を34%に引き下げ(うち、8月12日までの90日間、10%の相互関税のみの適用を表明) | |
| 2025年8月 | — | 2025年11月10日まで同上措置の延長を表明 | |
| 2025年11月 | 10%にIEEPA関税を引き下げ | 2026年11月10日まで同上措置の延長を表明 | |
| — | — | 適用除外措置の期限を2025年11月29日から2026年11月10日に延長すると発表 | |
| 2026年1月 | — | — | フェースマスク(50%)や医療用手袋(100%)への追加関税率を引き上げ |
| 2026年2月 | IEEPA違憲判決により無効 | IEEPA違憲判決により無効 | — |
| 1972年通商拡大法122条による10%の関税発動 | — | ||
| 2026年5月 | — | — | 関税措置の2度目の見直しを行うことを官報で公示 |
- 出所:
- 各種報道により作成
日米間の枠組み合意の成立と対米投資プロジェクト
米国は一方的に発動した追加関税を交渉手段として活用し、各国・地域に対して関税低減を条件に、米国産品の市場開放や大規模な対米投資の確約を引き出した。2026年6月時点で、日本を含む19カ国・地域がこうしたディールを締結している注3。日本に対しては、2025年7月22日に成立した日米間の枠組み合意において、大豆やトウモロコシなどの米国産農産品の輸入拡大や5,500億ドル規模の対米投資などを条件に、相互関税注4および自動車・同部品関税が25%から15%に引き下げられた。また、木材・製材および木材製品や医薬品にも軽減税率が適用された。
対米投資プロジェクトは、重要鉱物、エネルギー、半導体、人工知能(AI)といった経済安全保障上重要な戦略分野において、日米間が協力して強靱なサプライチェーンを構築することを目的とし、米側主導の選定プロセスを経て実施される。利益は一定期間日米企業で折半された後、貢献度に応じて配分される仕組みとなる。対米投資スキームの履行期日は、トランプ大統領の任期終了(2029年1月20日)までとなり、投資拒否やプロジェクト遂行の遅れは、関税率の引き上げリスクを伴う。ただし、投資プロジェクトに必要な機器やサービスは日本企業が発注先となるため、日本企業にとっても事業拡大が見込まれる。2026年6月時点、対米投資プロジェクトの第1弾(2月18日)として3件、第2弾(3月19日)として3件が発表された。注5
IEEPA関税を巡っては、2026年2月に連邦最高裁判所が、大統領には同法に基づく関税賦課は認められないとして、違憲判決を下した。この判決を通じて、関税に関する権限は議会に帰属するという憲法原則が再確認されるとともに、三権分立に基づくチェック・アンド・バランスが機能していることが示された。判決を受けて、国際貿易裁判所(CIT)は税関・国境警備局(CBP)に対しIEEPAに基づき徴収された関税の還付を命じ、4月より統合通関管理・処理システム(CAPE)を使った段階的な関税還付が開始された。
一方、トランプ大統領はIEEPA違憲判決と同日に、「大規模かつ深刻な米国の国際収支赤字」を理由として1974年通商法122条を根拠に、全世界に対し10%の課徴金を課すことを発表注6。さらに、同条の適用期限である7月24日以降、301条による追加措置を視野に、16カ国・地域に対し過剰生産能力や過剰生産の実態、60カ国に対し強制労働産品の輸入禁止措置の実施状況に係る調査を実施注7している。
2026年も米国第一を軸とした通商政策の継続
IEEPA違憲判決などの逆風下にあっても、2026年の米国の通商政策は引き続き、「米国第一の通商政策」を基軸として展開されるとみられる。米国通商代表部(USTR)は3月、「2026年の通商政策課題と2025年の年次報告」注8および2026年版「外国貿易障壁報告書(以下、NTE)」注9を発表した。「2026年の通商政策課題と2025年の年次報告」では、米国第一の通商政策の下、輸入元の多様化や対中輸入依存の低減、相互貿易協定(ART)の推進による財・サービス輸出の拡大といった成果を強調した。その上で、2026年も米国第一の通商政策を推進するため、(1)ARTの継続、(2)通商協定および米国通商法の厳格な執行、(3)重要鉱物・重要分野のサプライチェーン確保、(4)USMCAの見直し、(5)対中貿易の管理、(6)国際フォーラムでの米国利益の促進、といった6つの分野に重点を置く方針を示した。
NTEは、米国企業の輸出や投資に対して障壁となる外国の貿易慣行などについて、主要な国・地域別に示した報告書で、1985年以降毎年公表されている。2026年版のNTEでは、対象国・地域が前年の59から63に拡大したほか、非市場的政策および慣行(NMPPs)が新たに貿易障壁の主要分野として追加された。NMPPsとは、国有企業などへの優遇措置や特定産業保護のための過剰な補助金、過剰生産能力の創出・維持、第三国の非市場的な政策や慣行への措置の欠如など、自由な市場競争をゆがめる可能性のある政策や慣行のことを指す。
日本については、こうしたNMPPsに対処する条項を含むARTを締結していないことが指摘された。また、301条調査の対象にもなっている強制労働産品の輸入規制が存在しない点も指摘され、これにより日本の商品やサービスの価格は人為的に低く抑制され、優位性が保たれているとした(図表Ⅲ- 9)。
一方、中国は前年から引き続き最大の焦点となり、同報告書の中で最も分量が割かれた。まず、国家産業戦略「中国製造2025」に基づく過剰な国家介入と自国企業優遇措置、半導体や造船など特定産業分野における貿易依存関係の武器化、巨額の補助金による特定産業の保護などが、強く非難された。そのほか、鉄鋼・アルミ・太陽光・半導体・造船分野における過剰生産能力、新疆ウイグル自治区における強制労働や重要鉱物分野における輸出管理措置などの非市場的政策についても懸念が示された。米国と中国は、第1次トランプ政権下の2020年1月に、中国が知的財産の保護や金融市場の開放、為替操作の禁止、米国からの輸入拡大などを約束する「米国と中国の経済貿易協定」(第1段階の経済・貿易協定)に署名している。同報告書では、この協定に反して、中国による不公正な政策や慣行は続いており、場合によっては悪化していると結論付けた。
| 国 | 主な障壁 | 具体的な指摘内容 |
|---|---|---|
| 日本 | 高関税 |
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| 輸入割当(TRQ) |
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| 基準認証 |
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| 国内制度 |
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| 非市場的政策および慣行(NMPPs) |
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| 中国 | 産業政策・補助金 |
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| 過剰生産能力 |
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| 市場アクセス制限 |
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| 技術・知財問題 |
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| デジタルデータ規制 |
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| 非市場的政策および慣行(NMPPs) |
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- 出所:
- 米国通商代表部(USTR)発表資料から作成
全会一致主義の多国間協定からの脱却
第2次トランプ政権は引き続き、WTOに批判的な姿勢を維持している。2025年3月にUSTRが発表した「2025年の通商政策課題と2024年の年次報告」注10の中で、「設立30周年を迎えるWTOと米国の利益」と題されたセクションが追加された。現状のWTOルール下での問題点として、上級委員会の権限逸脱行為注11、中国など非市場経済が実施する過剰な補助金政策や国有企業問題への対応不足、全会一致原則によるルール形成の停滞などが指摘された。ジェミソン・グリアUSTR代表は8月、「ニューヨーク・タイムズ」紙への寄稿注12の中で、既存の多国間体制に代わる枠組みとして、米国主導の二国間交渉を基軸とする「ターンベリー体制注13」を提唱した。同体制は、高関税を交渉手段として活用し、国益の最大化と短期間の迅速な成果を目指すものとなるが、国際貿易秩序の分断や長期的安定性への影響も懸念される。
また、2026年3月にカメルーンで開催されたWTO第14回閣僚会議(MC14)に先立ちUSTRが発表した「WTO改革レポート」注14では、(1)WTO加盟国による通報義務の履行強化とそのためのインセンティブ確保、(2)経済的に自立した加盟国が「特別かつ差別された待遇(S&DT)」を受けないためのS&DT適用基準の見直し、(3)多国間協定に代わる一定期間の暫定的な「複数国間(プルリ)協定」の活用などが提案された。閣僚会議に出席したグリアUSTR代表は、米国が2025年11月に提案した電子商取引モラトリアムの恒久化が一部の加盟国からの反発を受けて実現しなかったことに触れ、WTOが世界貿易政策において限定的な役割しか果たしていないことを強く非難した。また、地域間や二国間などの貿易協定を通じて「米国は独自の道を歩んでいる」と発言し、WTO体制から距離を置くことを示唆した。ただし、WTOへの資金拠出の再開にみられるように、米国は今後もWTOとの関係は引き続き維持するとみられる。
暗礁に乗り上げるUSMCA共同見直し
2020年7月の第1次トランプ政権時に発効されたUSMCAは、発効から6年後に共同見直しを行うことが規定されている。2026年7月の共同見直しで合意に至れば有効期限は16年間、2042年まで延長されるが、不成立の場合は2036年まで毎年見直しが続く。米国では2025年9~11月、見直しに関するパブリックコメントが募集され、業界やシンクタンクから1,500件を超えるコメントが提出された。同年12月に開催された公聴会では、業界団体や労働組合、研究機関が協定の運用上の課題などを証言したが、参加者はおおむね現状の協定内容を支持し、見直しは最小限にとどめるよう求めた。
他方、12月のグリアUSTR代表による議会報告注15では、米国からカナダ、メキシコへの財・サービス輸出が2020年比で56%増加したことや「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」によりメキシコの労働賃金が倍増したことに触れ、「USMCAは一定程度成功している」との見方を示した。一方で「(USMCAの)欠陥はあまりにも甚だしく、同協定を無批判に承認することは国益にかなわない」とした。これら欠陥(図表Ⅲ- 10)が解決可能な場合にのみ更新を勧告するとの見解を示した。
今回の見直しにおいて米国は、メキシコ経由での中国製品の流入阻止や米国への製造業回帰を狙う。中国製品を排除するための原産地規則の強化とUSMCA域内原産割合(RVC)の引き上げ、第三国資本による投資に関する監視強化、米国の製造と雇用を守るための労働付加価値割合(LVC)の引き上げなどが主要な争点になる見込みだ。
2026年5月には、米国とメキシコ間で見直しに向けた初の会合が開催された。会合後のUSTRからの発表によると、自動車の原産地規則、鉄鋼・アルミ、経済安全保障について協議され、医療機器、医薬品、化粧品分野における規制の互換性向上に向けた協力の推進で一致した。他方、USMCAを延長するためには、3カ国での合意が必要になるが、6月初旬時点で米国とカナダは協議を開始するめどが立っていない。米国の自動車関連7業界団体は5月、USTRに対し書簡を提出し、USMCAを撤廃して個別の貿易協定に切り分けることは、既存のサプライチェーンを損なう恐れがあると警告した。
| 国 | 内容 |
|---|---|
| カナダに対する課題 |
|
| メキシコに対する課題 |
|
| 両国共通の課題 |
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- 出所:
- グリアUSTR代表による2025年12月の議会報告の冒頭証言
緩和と強化を繰り返す輸出管理措置
バイデン前政権とトランプ政権の対中戦略は、いずれも中国を最大の戦略的競争相手と位置付け、経済的依存度の低減を目指す点で共通している。ただし、その手法は明確に異なる。バイデン政権は、同盟国との連携やルールに基づき、AIや半導体など先端技術分野に限定して中国との競争管理(デリスキング)を図った。これに対し、トランプ政権は自国利益を最優先とした広範な関税措置(図表Ⅲ- 8)や戦略的分野における輸出管理措置などの経済的圧力を戦略的に活用し、それを交渉材料として中国から譲歩を引き出すアプローチを採る。
2025年は特に、米中間で輸出管理措置が活発に行使され、技術覇権争いが表面化した。第1次トランプ政権は、2015年に中国政府が発表した「軍民融合」政策(民生技術を軍事目的に転用するための国家戦略注16)を重大な安全保障リスクと位置付けた。2018年には輸出管理改革法(ECRA)を制定し、輸出管理規則(EAR)に基づく輸出制限を強化した。この方針はバイデン前政権でも踏襲されたが、特に軍事転用リスクが高い先端半導体やスーパーコンピューターに対象が絞られ、対中輸出管理はより精緻(せいち)化された。
第2次トランプ政権はどうか。就任初日に発表された「米国第一の通商政策」においても、輸出管理を通じて米国の技術的優位性を維持・強化することや輸出管理の抜け穴を特定・排除する基本方針は変化がなかった。しかし、その運用は柔軟性を強めており、輸出規制は安全保障のみならず、経済的利益や対外交渉の手段として、強化と緩和が使い分けられている(図表Ⅲ- 11)。実際に、商務省産業安全保障局(BIS)は2025年3月、中国やイランなど6カ国の事業体をエンティティ・リスト(EL)に追加・修正し、翌月にはエヌビディア(NVIDIA)のAI向け半導体「H20」、アドバンスト・マイクロ・デバイセス(AMD)の半導体「MI308」をBISへのライセンス申請対象に追加するなど強化措置を講じた。一方、米国企業のイノベーション阻害と過度な規制負担をもたらすとして、バイデン前政権が導入した「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」注17の撤回方針を示すなど、規制の見直しも同時に行われた。
また、対中摩擦が激化した2025年9月には、ELや軍事エンドユーザー(MEU)リスト掲載事業体が50%以上所有する事業体にもEARの適用範囲を拡大する「関連事業体ルール」を発表した。しかし、同ルールによる影響が広範にわたることに加え、中国政府も報復措置としてレアアースなど重要鉱物の輸出制限を表明したため、2026年11月10日まで当該ルールの適用延期を決定した。2026年5月に北京で開催された米中首脳会談では、建設的な戦略的安定を図ることが強調されたものの、双方の輸出管理措置について具体的な方針は示されなかった。
| 時期 | 内容 | 方向性 | |
|---|---|---|---|
| 2025年 | 3月 | 商務省、中国などの80の事業体をエンティティ・リスト(EL)に追加 | 強化 |
| 4月 | 商務省、エヌビディアのAI向け半導体「H20」、AMDの半導体「MI308」を商務省産業安全保障局(BIS)へのライセンス申請を要する対象に追加 | 強化 | |
| 5月 | 商務省、ファーウェイ製半導体の使用リスク、米国製AI半導体が中国のAIモデルの開発や推論に利用されるリスク、半導体転用リスクに関するガイダンスを発表 | 強化 | |
| 商務省、バイデン前政権下で制定されたAI向け半導体への輸出管理を強化する「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」の撤回および代替規則を発表する意向を表明 | 緩和 | ||
| 商務省が中国に対する航空機部品および半導体技術の輸出許可を一時停止 | 強化 | ||
| 8月 | 商務省、インテル、サムスン電子、SKハイニックスの中国拠点向けの半導体製造装置・関連技術の輸出管理を強化する最終規則を発表 | 強化 | |
| エヌビディアとAMDに対し輸出ライセンスの発給を開始。両社は販売収益の15%の米政府への納付で合意 | 緩和 | ||
| 9月 | 商務省、ELなどに掲載される事業体が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「関連事業体ルール」を発表 | 強化 | |
| 商務省、バイデン前政権で導入された非軍事用の銃器、弾薬、関連部品に関する輸出規制を撤廃する最終規則を発表 | 緩和 | ||
| 10月 | 中国などの32の事業体をELに追加 | 強化 | |
| 11月 | 「関連事業体ルール」の2026年11月9日までの停止を発表 | 緩和 | |
| 12月 | USTRが2027年6月より、シリコン、ディスク・ウエハーなどの形態の化学元素、ダイオード、トランジスタ、光電性半導体デバイス、集積回路など、米国関税分類番号(HTSコード)8桁ベースで18品目に対し追加関税を課すことを表明 | 強化 | |
| 2026年 | 1月 | 商務省、エヌビディアの「H200」やAMDの「MI325X」など特定の米国製半導体の中国・マカオへの輸出管理を緩和 | 緩和 |
| 商務省、特定国向け商用ドローンの輸出管理を緩和する暫定最終規則を発表 | 緩和 | ||
- 出所:
- 各種報道を基に作成
米国は、重要鉱物分野における対中依存の低下とサプライチェーンの強じん化を重要課題と位置付け、国際的な協力枠組みの構築を進めている。マルコ・ルビオ国務長官は、2026年2月に開催された重要鉱物閣僚会合において、「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の設立を発表し、多国間での資源協力を推進する方針を示した。FORGEには、55カ国・地域が参加する見込みだ。さらに、2025年12月には、日本、韓国、オーストラリアらと共に、AI半導体や重要鉱物に係るサプライチェーンの安定化と強化を目的とした新たな国際枠組みである「パックス・シリカ(Pax Silica)」を発足させた。同枠組みは、半導体製造に係る資源獲得から製造、流通までのサプライチェーン全般において、同盟国間の協力を深めることを目的とする。また、国務省は同年3月、同枠組みを後押しするための「パックス・シリカ基金」設立を表明し、対外援助資金として2億5,000万ドルを拠出する方針を示した。
西半球での覇権確保へ強硬な政策を展開
2025年12月に発表された「国家安全保障戦略(NSS)」では、従来のグローバリズムと自由貿易路線を「破壊的な誤り」と批判し、その結果として米国の経済的・軍事的優位性の基盤である中産階級と産業基盤が空洞化したと評価した。その上で、外交の目的を国家の中核的利益の防衛とし、「モンロー主義注18」を再主張することで、西半球における優位性の回復と戦略的地域へのアクセス確保を掲げた。こうした方針の下、トランプ大統領は、ベネズエラへの軍事介入、デンマーク自治領グリーンランドの領有権の主張、イランの核施設攻撃など、強硬な対外政策を次々と展開した。特にイランへの軍事攻撃は、同国によるホルムズ海峡閉鎖を招き、エネルギー供給や物流に甚大な被害をもたらしたほか、原油価格の高騰やインフレ圧力を引き起こす結果となった。2026年6月時点で、米国とイラン間で戦闘終結に向けた覚書に合意したものの、協議は難航しており情勢は不透明である。こうした対外政策は、同年11月に予定されている中間選挙の結果を左右する要因にもなり得る。仮に中間選挙で共和党優位の構図が覆されれば、トランプ大統領の今後の政権運営に大きな影響を及ぼす可能性は否めない。
注記
- 注1
-
ホワイトハウス“America First Trade Policy”(2025年1月20日)
- 注2
-
両国協議を経て5月14日以降は当初の 34%に引き下げつつ、うち10%のみ適用。残り24%は2026年11月10日まで適用停止期間を再延長
- 注3
-
EU、英国、スイス、リヒテンシュタイン、バングラデシュ、タイ、カンボジア、インドネシア、マレーシア、韓国、日本、台湾、ベトナム、エクアドル、アルゼンチン、エルサルバドル、グアテマラ、インド、北マケドニア。
- 注4
-
MFN税率が15%以上の場合は、MFN税率が適用され、MFN税率が15%を下回る場合は、15%が上限となる
- 注5
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第1弾は、(1)人工ダイヤ製造プロジェクト(総額見込み:約6億ドル)、(2)米国産原油の輸出インフラ・プロジェクト(約21億ドル)、(3)AIデータセンターなどに電力を供給するガス火力プロジェクト(約333億ドル)、第2弾は、(1)GEベルノバ日立によるテネシー州およびアラバマ州における小型モジュール原子炉(SMR)の建設(推定額:最大400億ドル)、(2)ペンシルベニア州における天然ガス発電施設の建設(最大170億ドル)、(3)テキサス州における天然ガス発電施設の建設(最大160億ドル)
- 注6
-
150日間の時限的な関税措置。対日関税は10%に低下するが、日米合意で約束された対米投資スキームはそのままとなる。
- 注7
-
強制労働産品の輸入禁止措置の実施に関する調査は2026年6月2日に完了し、調査対象であった60カ国・地域に対し10~12.5%の301条関税が提案された。パブリックコメントと公聴会を経て正式決定される。
- 注8
-
USTR “2026 Trade Policy Agenda and 2025 Annual Report
(4MB)”(2026年3月2日) - 注9
-
USTR “2026 National Trade Estimate Report on FOREIGN TRADE BARRIERS of the President of the United States on the Trade Agreements Program
(5.3MB)”(2026年3月31日) - 注10
-
USTR “2025 Trade Policy Agenda and 2024 Annual Report
(2.8MB)”(2025年3月3日) - 注11
-
米国は、上級委員会はWTO協定で与えられた権限を逸脱し、法解釈を通じて加盟国の合意を超えた新しいルールを制定しているなどと批判し、裁判官にあたる上級委員の選任・再任を阻止している。結果、上級委員会は、2019年末以降、機能停止の状態になっている。
- 注12
-
ニューヨーク・タイムズ紙 “Why We Remade the Global Order”(2025年8月7日付)
- 注13
-
2025年7月、トランプ氏が所有するスコットランドのリゾート「ターンベリー(Turnberry)」で成立した米欧合意が、新しい通商秩序の出発点と位置付けられたため、こう名付けられたとされる。
- 注14
-
USTR “Further Perspectives of WTO Reform Communication from the United States
(524 KB)”(2026年3月23日) - 注15
-
グリアUSTR代表による議会報告 “Opening Statement for House Ways and Means and Senate Finance Committees Ambassador Jamieson Greer, United States Trade Representative
(179KB)”(2025年12月16日、17日) - 注16
-
米国側発表に基づく(中国側で2015年に明示的な軍民融合政策が発表されたという事実関係は確認できない)。
- 注17
-
先端AIモデルの開発に不可欠とされる先端コンピューティング集積回路(IC)を規制対象とするなどの強化措置。
- 注18
-
第5代大統領ジェームズ・モンローが宣言した「欧米両大陸における相互不干渉」という米国の外交原則。
目次
-
第Ⅰ章
世界と日本の貿易 -
第Ⅱ章
世界と日本の直接投資と産業動向 -
第Ⅲ章
世界の通商秩序を巡る動向 -
- 第1節 世界の通商政策の最新動向
- 2025年以降の通商環境の変化と主要課題
- 主要国・地域の通商政策
- 経済安全保障のトレンドと企業の対応
- 第2節 多国間貿易体制の現状と課題
- 第3節 ルールと価値に基づく国際経済秩序の広がり
- 第1節 世界の通商政策の最新動向
(2026年7月28日)



