税制

最終更新日:2023年12月22日

法人税

法人税率は原則として19%だが、例外も設けられている。会計年度は暦年とする場合が多いが、暦年以外の任意の12カ月も設定できる。

税率

法人税率は次のとおり。

  1. 19%:以下の2.以外の納税者
  2. 9%:小規模納税者または新規事業を立ち上げる納税者(ただし、小規模納税者に限らない)の資本利得以外の所得に対して適用される。小規模納税者とは、2022年1月1日より、前年分所得金額がポーランド国立銀行の為替レートで200万ユーロに相当するポーランド・ズロチの金額(課税年度の初営業日にポーランド国立銀行が発表した為替レートで、1,000ズロチ以下を四捨五入した額)を超えない納税者と定義される。
    1. 新規事業の初年度およびそれに続く課税年度に、別の先行事業から1万ユーロに相当するズロチの金額を超える資本または資産の一部が移転された場合、9%の税率は適用されない。
    2. 会社分割の際に、別の事業に対して、先行事業から1万ユーロに相当するズロチの金額を超える資本、事業または資産の一部、もしくは清算中の会社に対して所有していた持分(株式)から得た資産を移転した場合、分割または前記移転がなされた課税年度および次年度においては、9%の税率は適用されない。
    3. 法人税率9%の予定納税は、納税者の課税年度における所得が200万ユーロを超えない場合のみ認められる。これを超える所得の予定納税に対しては、税率19%が適用される。

なお、研究開発の成果を活かしたソリューションを生み出すか商品化する場合、法人税および個人所得税の課税に優先レート5%を適用できる場合がある。

適用法令:

世界共通の最低法人税率導入

2022年12月にEUで採択された理事会指令2022/2523に基づき、国内法を整備し、2024年(2023年12月31日以降に開始する会計年度)から、売上高が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業およびポーランドの大企業に対し、世界共通の最低法人税率15%を導入。

概要

法人税は、原則として、ポーランド国内の法人活動に課税される。
ポーランドで登記されている、または実質的な経営拠点を有する法人は、収入源、発生地にかかわらず全世界で得た所得に対して課税される(無制限納税義務)。
他の法人は、ポーランドで生じた所得のみに対して課税される(限定納税義務)。
次の項目は、ポーランドで生じた売上(所得)とみなされる。

  1. ポーランドで行われるあらゆる経済活動。外国企業のポーランド国内での活動を含む。
  2. ポーランドに立地する不動産、あるいは使用権。また、その不動産の全体あるいは部分の取得、権利の取得。
  3. ポーランド国内で公に認可された株式市場内の有価証券、または、有価証券ではない収入をもたらす金融商品。それらの売上所得を含む。
  4. 移転株式(持分)、法人格を持たない組織の権利義務、投資ファンド、集団投資スキーム、あるいはその他法人における持分、ならびにこれらの移転株式(持分)、権利義務、持分に係る債権(当該株式会社、法人格を持たない組織、投資ファンド、集団投資スキーム、あるいはその他法人の資産のうち、少なくとも50%が直接・間接的にポーランド国内にある不動産、あるいは当該不動産に係る権利である場合)
  5. 不動産会社(保有資産の半分以上が不動産)への株式(持分)、権利義務、配当権またはこれに類する権利の移転
  6. ポーランド国内に拠点や住所を持つ個人、法人、法人ではない組織で、入手・支払い・回収可能な債権から得たもの(契約の場所やサービスを行った場所を問わない)。
  7. ポーランド領土外への資産の譲渡、または税務上の居住地国の変更に伴う将来的な利益。
課税年度

2021年1月1日より、これまでパススルー事業体とされてきた合資会社と一部の合名会社も法人税の課税対象とされている。
資産の半分以上がポーランド国内の不動産で構成される事業体による持分売却に際し、売却益に対する源泉徴収税が、売却した側である同事業体から徴収されている。

法人税の減免措置

  1. 法人税の一律課税(エストニア方式)
    適用条件を満たし、自ら選択した事業体には、以下の課税方式を適用している。
    1. 会社は所得金額にかかわらず、定期的に法人税を納める義務はなく、利益の分配時に株主配当にのみ課税がなされる。
    2. この課税方式を採用できるのは、有限会社、株式会社、簡易株式会社、自然人株主のみで構成される合資会社または株式合資会社である。
    3. 一定の雇用(雇用契約またはその他の民事契約による3人以上の雇用)を維持するなどの要件が設けられている。
    4. 小規模納税者と大規模納税者に対する実効税率は、通常はそれぞれ26%と34%であるが、エストニア方式では20%と25%まで下がる。
  2. 研究開発に向けた減税
    1. 研究開発を目的としてすでに損金として計上された特定経費を、さらに課税標準から控除することが認められる。
    2. これは、2倍の損金計上が認められうることを意味するが、その限度と対象経費は企業規模に左右される。
    3. 対象経費としては、従業員の給与、社会保険料、物品・原材料の調達、専門家意見、研究調査費、科学的助言が挙げられる。
  3. パテントボックス税制
    1. 知的財産権の利用で生じた所得に対する法人税の軽減を認める。
    2. 知的財産権の利用で生じた所得に対する実効税率は、5%に引き下げうる。
    3. パテントボックス税制の適用対象は、指定要件を満たす知的財産を構築、発展、または改良するための研究開発に直接従事する納税者。
    4. この税制の適用可否は、企業規模に左右されない。
  4. ロボット化に向けた減税
    1. ロボット化に向けた投資経費の50%をさらに税控除できる。
    2. 税控除が認められる経費の例:
      • 新規導入ロボットの購入費またはリース料
      • ロボット化に向けて新規導入する固定資産を正しく運用するためのソフトウェア購入費
      • 労働安全衛生を確保するための器具購入費
      • 新規導入機器を操作する従業員の研修費
    3. 減税措置は、2022年初めから2026年末までの5年間のみ受けられ、生産工程も対象となる。
  5. 試作などに向けた減税
    1. 課税年度当たり資本利得以外の所得の10%を上限として、新製品の試作または発売にかかる経費の30%まで課税標準から控除できる。
    2. 控除対象となる経費の例:
      • 新製品の試作のために新規導入しなければならない固定資産の購入費または製作費
      • 新製品の試作を唯一の目的とする資材や原材料の購入費
      • 新製品の試作を目的とする固定資産の改良費
      • 調査費、意見書作成料、認証費
      • 製品のライフサイクル試験
      • 環境技術認証制度
  6. 事業拡大に向けた減税
    事業収益を増やすための努力に対する減税措置として、製品販売経費の200%まで課税年度当たり100万ズロチを上限として課税標準から控除できる。納税者が既に生産している製品でも、これまで納税者またはその一切の業者が国内で販売してこなかった製品でも対象となりうる。
    控除対象となる経費の例は次のとおり。
    1. 見本市への参加(出展費用、宿泊費)
    2. 販売促進費
    3. 取引先の要望に応じた包装開発費
    4. 製品販売に向けた文書作成費(製品の認証や商標登録)
    5. 入札書類の作成費
  7. 革新人材の雇用に向けた減税
    月当たりの勤務時間の50%以上を研究開発に直接的に費やす人材、すなわち革新人材を雇用し、研究開発に従事させる事業体のうち、損失を出したか収益が少なすぎたために研究開発に向けた減税措置を利用しなかったものに認められる。
    革新人材(民事契約による雇用も可)の個人所得税の予定納税にも適用され、研究開発に費やされた人件費と税率を掛け合わせた額だけ予定納税額を減額できる。
    減税措置を受けるには次の条件を両方とも満たさなければならない。
    1. 対象となる人材が、月当たりの勤務時間の50%以上を研究開発に直接的に費やすいわゆる革新人材である。
    2. 当該人材が研究開発に費やした時間を詳細に記録していること。
  8. 新規株式公開に向けた減税
    1. 次の条件を満たす株式会社は、特定経費を損金として課税標準から控除できる。
      • 税務上のポーランド居住者
      • ワルシャワ証券取引所に未上場
      • 上場して新規の公開株式を発行する
    2. 課税標準から控除が認められるのは次の費用:
      • 上場費用の150%
      • VAT抜きで5万ズロチを上限とする上場のためのコンサルティング、法務、金融サービス料金の50%

    これまで前記の上場費用とサービス料金には一律で100%の控除が認められてきたが、現在は150%と50%と控除限度が異なるので注意されたい。

  9. CSR活動に向けた減税
    スポーツ、文化、高等教育、科学研究の振興を資金面で支援する事業者は、次の費用の150%を損金計上することで税負担を軽減できる(これまでは100%だったが、控除枠が拡大された)。
    1. スポーツ用具の購入支援、スポーツ大会開催・参加支援、スポーツ研修施設利用支援、スポーツ奨励金の拠出
    2. 特定規模以下のスポーツ大会での経費
    3. 公式に登録された文化機関、美術学校、公立の芸術学校の活動を支援するための経費
    4. 学術奨学金、スポーツ奨励金、博士課程奨学金、従業員に学士課程、修士課程、その他の教育のための資金、技能実習生の雇用資金の拠出
  10. 株式取得に向けた減税
    所在地、事業分野、納税者との関係などについて特定要件を満たす有限責任会社の株式を取得する事業者は、その株式取得の特定経費を課税年度当たり25万ズロチまで課税標準から控除できる。
    控除が認められるのは、事業者が有限責任会社の株式を取得した年度に負担した対象経費のみである。
    控除対象となる経費の例は次のとおり。
    1. 株式(持分)の取得に必要な法務サービス料金
    2. 株式取得にかかる税金
    3. 公証人手数料、裁判所手数料、印紙税

免税措置

  1. ポーランド投資ゾーン
    1. 2018年に、経済特別区(SEZ)に代わるポーランド投資ゾーン(PIZ)という投資支援制度が導入された(「外資に関する奨励」参照)。
      • 新規投資を行う事業者の個人所得税と法人税について、投資額の70%まで免税とする。
    2. 免税対象は、酒類、たばこ、爆発物の生産、製鉄、電力、ガス産業などを除く従来型産業部門または先進サービス部門。
      • 免税対象は、工場新設、既存工場の生産能力増強、生産多角化、または生産工程の大幅な変更を目的とする投資。
      • 免税措置を受けるには、まず支援決定(DoS)を申請して取得する必要がある。この決定は、10、12、15年のいずれかの期間にわたり有効とされる。

関連法令:
新規投資支援に関する法律(官報2018年第1162外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(ポーランド語)

会計と税務

法人税の申告計算は、会計システムに記録されたデータに基づいて行われる。
会計基準と税務上の取り扱いでは、処理区分など多くの相違が存在しているため、法人税の申告には、一定の調整が必要となる。

課税年度

納税年度は暦年と定められているが、法人所得税法に定められた一定の基準を満たす場合、納税者は納税年度として暦年以外の12カ月を設定できる。納税年度変更の具体的手続きは、法人所得税法で規定。

所得申告と納付

自己申告納税制度(納税者自身が法人税額を算定し、自己申告する制度)を採用。
納税者は、毎月の所得申告を義務付けられており、各月申告を翌月20日までに提出する必要がある。

財務諸表の作成を義務付けられた納税者は、監査報告書と報告書を年次財務諸表の承認後15日以内に、納税条例の規制に沿って電子方式で税務署に申告する。
法人の場合は、財務報告書が役員会で承認された旨の決議書も添付する(法人所得税法第27条第2項)。この義務は、連結納税グループに含まれる企業にも適用される。

法人所得税法では、税額の計算・前払納税について簡便方式も定めている。すなわち、納税者は前々課税年度の確定税額の12分の1を毎月納税する定額納付を採用できる(法人所得税法第25条第6項)。
納税者は、決済に簡便方式を採用することについて、特に通知する必要はない。一年間簡便方式を用いて予定納税を行い、税務年度の終了後、その年に簡便方式を用いて予定納税をしたという旨の年次申告を行うだけでよい(法人所得税法第25条第7a項)。

減価償却

減価償却額とその償却期間は、減価償却法と年間減価償却率に基づく。
減価償却の方法はいくつかあるが、一般的な方法は定額法である。
また、法人所得税法の付設にある年間減価償却率は、企業資産となる支出の何割を年間の費用に含むことができるかを示している。

固定資産の取得価格および取得関連費用は、減価償却/割賦償却により漸次償却される。
減価償却は原則、税務上の耐用年数に基づき定額法が採用されている。

定率法の採用も、一部の固定資産に認められている。主な固定資産の減価償却率は次のとおり。

  1. 住居以外の建物:償却率2.5%
  2. 機械・生産設備:同7~25%
  3. 事務機器:同14%
  4. コンピューター:同30%
  5. 車両(自動車):同20%
  6. 携帯電話:同20%

これらの標準減価償却率は修正される場合がある。
例えば、劣化・陳腐化した資産の場合、法人税法の規程の範囲内で、早期償却が可能となる。
また、中古資産もしくは機能追加された資産に対しては、一定の条件下で異なる償却率が適用される。

次の場合は、一部の固定資産について一括償却処理が可能である(一般的に機械・設備が対象。ただし、乗用車、不動産を除く)。

  • 少規模納税者(前課税年度での売上収益総額(付加価値税を含む)が200万ユーロ以下の納税者)
  • 事業活動を開始した納税者(納税初年度のみ)
    適用可能額は、当該課税年度合計で5万ユーロを上限に一括償却可能。
    この上限の計算には、従来から少額固定資産として一括償却が認められている1万ズロチ以下の固定資産および無形資産を含まない。

また納税者は、機械・製造設備(詳細は規制に記載)の新規購入の際、それを固定・無形・法的資産として登録した納税年に、10万ズロチを上限に一括減価償却できるとされた。

為替差損益

特定の条件を満たせば、納税者は法人税申告上、為替差損益の計算方法について、会計方式か、税務方式かを選択できる。

税務方式では実現為替差損益のみが計算対象になるのに対し、会計方式では期末の評価替から生じる未実現の為替差損益も対象に含まれる。

会計方式は、財務諸表監査を受けている企業のみが採用可能で、会計方式を採用もしくは停止する場合、納税者は税務年度の最初の月末までに、税務署長への通知が必要である。
会計方式を一旦採用すると、最低3年間の適用義務がある。

繰越欠損金

課税年度に損失がある納税者は、当該納税年度から5年間、その損失を所得から差し引くことができる。ただし、相殺される損失と収入が同じ出所でなければならない。
また、年次決算で1回損金算入できる金額は、過去5年間の各年に生じた損失の50%以下である。損失の控除は、500万ズロチを限度として一度だけ認められる。

負債による資金調達における損金算入

借入金の調達費用(利子等)の損金算入の上限は300万ズロチとEBITDA(利払前・税引前・減価償却前・その他償却前利益)の30%を比較して、より大きな金額までとなる。

移転価格

一定の条件を満たすグループ企業間取引は、独立企業間原則に基づき行わなければならない。
法人所得税法では、納税者が当局から移転価格の文書の提供を求められた場合、14日以内に提出しなければならない(法人所得税法第11条第1項)。
移転価格の設定の原則に違反した場合や、税務当局の要請にも関わらず移転価格に関する書類を提出しなかった場合は、税務当局は、税務上の不当な損失または過度の損失、および課税所得のうち開示されなかった一部または全部に対して、合計額の10%から30%に当たる加算税を課す。
ローカルファイルの提出期限は、各課税年度末から10カ月以内であり、マスターファイルの提出期限は各課税年度末から12カ月以内である。

源泉徴収税(WHT)

利息、ライセンス料、配当または無形サービスなどに起因するポーランド国外への振込は、原則として20%または19%の定率で源泉徴収税(英語名Withholding Tax)の課税の対象となる法人所得税法第21条第1項)。また、ポーランドの法人所得税法、EU指令、または二重課税の回避に関する関連協定の規定に該当する場合、免税または減税措置の対象となる場合がある。
2020年1月1日より、源泉徴収税の課税対象となるのは、納税者が設ける課税年度当たり取引先別で200万ズロチを超える配当、ライセンス料、利息を伴う関連会社間の取引に限定される。

ポーランドの法人所得税法、EU指令、または二重課税の回避に関する関連協定の規定に基づいて、免税または減税措置が適用されるか否かにかかわらず、原則として、20%または19%の源泉徴収税が課される(法人所得税法第26条第2e項)。

源泉徴収の免税または減税措置が適用できるのは、次の場合に限られる。

  1. 徴収義務者または納税者が申請により税務当局から源泉徴収の免税または減税措置の妥当性を是認する意見書を取得した場合(法人所得税法第26条第2g項)
  2. 源泉徴収の免税または減税を受ける要件を満たしていることを示す証明書を納税者が提出した場合(法人所得税法第26条第7a項)

二国間租税条約

日本とポーランドとの間では租税条約が締結されており、各種源泉税の上限が定められている。

  1. 源泉税率
    配当親子会社間:10%(二国間租税条約第10条第2項)
    配当一般:10%(二国間租税条約第10条第2項)
    利子送金:10%(二国間租税条約第11条第2項)
  2. 使用料
    工業的事案:10%(二国間租税条約第12条第2項第a号)

文化的事案の使用料には、受領者が租税条約を締結している相手国に在住または拠点を持つ場合、課税されないこともある(二国間租税条約第12条第2項第b号および第3項第b号)。
源泉徴収義務、課税方法、税率は租税条約で定められているので、日本・ポーランド間で支払いを行う場合には、必ず規定内容を確認することが望ましい。
原則として、ポーランドの会社が、租税条約の規定の適用を受けるには、支払先の日本企業の居住者証明を入手しておく必要がある(法人所得税法第26条第1g項第1号)。源泉徴収対象となる支払いに租税条約による免税または減税措置を受けるには、より多くの要件を満たすことが求められる。

ポーランド財務省は、2023年9月28日に源泉徴収の税務指針案を発表し、その中で実質的支配者を定義し、その義務を説明している。ここで、納税者は、実質的支配者について、脱税防止条項の適用の要否などを確認する義務を負うとされ、利子やロイヤルティーに対する課税基準が明確に定められている。

関連条約(財務省):所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とポーランド人民共和国との間の条約外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(981KB)

その他税制

個人所得税、付加価値税(VAT)、 物品税、固定資産税

個人所得税

税率は所得区分による12%、32%の累進課税(法人所得税法第27条第1項)。

  • 年間課税所得12万ズロチ以下の場合:課税所得の12% - 控除額
  • 同12万ズロチ超の場合:1万800ズロチ + 12万ズロチを超える課税所得の32%

なお、外国人駐在員(課税年度において183日以上ポーランドに滞在し、ポーランドに生活または事業の基盤を有する場合)にも前記の累進課税が適用されている。以下に挙げられる所得(収入)は、ポーランドで発生する課税対象とみなされる。

  1. ポーランドで行われた業務による収入(報酬が支払われた場所を問わない)
  2. ポーランドで行われた個人活動による収入(報酬が支払われた場所を問わない)
  3. ポーランドで行われた経済活動による収入(ポーランドに所在する外国企業活動も含む)
  4. ポーランドに立地する不動産、あるいは使用権、またその不動産の全体あるいは部分の取得、権利の取得による収入
  5. ポーランド内で公に認可された株式市場内の有価証券、または有価証券ではない収入をもたらす金融商品。それらの売上所得を含む。
  6. 会社の株式の所有権、法人以外の会社の全権利や義務の移動、投資ファンドや共同投資組織・法人への参加またはそれに類する権利、あるいは当該株式や権利の保有に起因する債権・全権利や義務などによる収入(直接・間接的にポーランドに立地する不動産を所有する(または権利を持つ)法人、法人ではない会社や投資財団、あるいは共同投資組織・法人のシェア(株式)の50%以上の場合)
  7. 不動産会社への株式(持分)移転、権利義務、持分またはこれに類する権利
  8. ポーランド内に拠点や住所を持つ個人、法人、法人ではない組織で、入手・支払い・回収可能な債権から得たもの(契約の場所やサービスを行った場所を問わない)
  9. 未実現利益

関連法令:個人所得税法(官報1991年第80号第350外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(ポーランド語)

付加価値税(VAT)

基本的な付加価値税(VAT)率は現在23%である。
次の例に示す通り、一部の商品またはサービスに対しては、税率が引き下げられている。

  • 8%:医薬品
  • 5%:食品(2022年2月、政府は「インフレ防止シールド2.0」を導入し、肉や魚、野菜、乳製品などの基本的な食品の税率は0%に引き下げられた。同施策は2024年3月30日まで延長される予定。官報2023年第2670号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 23%:電力
  • 23%:天然ガス

特定要件を満たす物品のEU域内供給および域外輸出などにおいては、VAT率0%が適用される。
また、納税者は、拘束的税率情報(WIS)制度を利用して、特定の物品またはサービスに適用される税率について、当局による決定を申請することができる。

  1. EU標準税務監査(英語:SAF-T/ポーランド語:JPK)ファイルによるVAT申告義務
    過去のVAT申告内容を反映した売買明細としてポーランドでJPKと呼ばれるVAT申告書を様式JPK V7により、月次または四半期ごとに翌月25日までに税務当局へ提出することになっている。
  2. 物品の輸入にかかるVAT
    輸入物品に係るVAT(仕入に係る付加価値税)の支払義務が生じている場合、輸入業者はその仕入れに係るVATを、同期間内に発生した販売から得たVATと相殺できる権利を有している。
    VAT申告書上のみでの調整計算が可能であるが(実際の現金支出はなし)、前提として、簡易通関手続きを利用した輸入手続きが行われている必要がある。
  3. 分割支払いメカニズム(いわゆる「split payment」)
    2019年11月1日から、分割支払いメカニズムを適用する義務に関する規定が施行された。純売上高は仕入先の主要銀行口座に、VATはVAT口座に支払われることとなる。分割支払いメカニズムの義務は、総額が1万5,000ズロチ(または同等額の外貨)を超える「商品とサービスにかかる税に関する法律」で指定された商品またはサービスに対し、文書化された請求書を伴う支払いに適用される。請求書の発行または支払いの際に分割支払いメカニズムを使用しなかった場合、請求書に記載されているVAT金額の30%の追加の納税義務が課せられる場合がある。分割支払いが求められる外国企業は、国内(ポーランド)金融機関で決済口座を開設し、これをVAT口座に指定したうえで維持する必要がある。
  4. VAT納税者向けの「ホワイトリスト」
    VATの詐欺行為を防ぐ目的で、ポーランドの税制に新規則が導入された。この規則に従い、1万5,000ズロチを超える請求書の支払いについては、財務省のウェブサイトなどで入手できる経済活動に関する主要情報(CEIDG)のリスト(いわゆるVAT納税者の「ホワイトリスト」)に開示されている事業者の銀行口座に支払う必要がある。リストに記載されていない口座に請求金額を支払ってしまった場合、1万5,000ズロチを超える部分の請求額を損金計上できないばかりか、VAT滞納に対する責任が売り手に生じる。売り手は、リストに載っていない事業者の銀行口座に支払いが行われたことを振替指図から7日以内に税務当局に通知すれば免責される。
    2024年1月1日からさらに基準が厳格化し、請求額が8,000ズロチを超える請求書についても、ホワイトリストに開示されている銀行口座への支払いが義務付けられる。
  5. 電子インボイス制度「KSeF」
    ポーランドでは、納税者が雛形を利用して電子インボイスを作成・提出するためのプラットフォームが導入される予定。この電子インボイス制度「KSeF外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」により、紙媒体またはPDF形式で保存されていたインボイスが廃止され、「FA(2)」という論理構造で整理されたXML形式のインボイスの提出が求められるようになる。
    KSeFによる電子インボイス提出は、2024年7月1日よりVAT納税者に義務付けられ、2025年1月1日からはそれ以外の納税者にも納税義務が抽象的また具体的に発生するかを問わず義務付けられる。

関連法令:商品とサービスにかかる税に関する法律(官報2004年第54号第535外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(ポーランド語)

物品税

物品税は、とりわけ製造時、EU域内取得、もしくは輸入時に課せられる税。物品税が課せられる場合、VATは物品税を含めて計算される。
課税対象品目は、酒類、たばこ、石炭、燃料、電力、乗用車、乾燥タバコなど。

関連法令:物品税に関する法律(官報2009年第3号第11外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(ポーランド語)

固定資産税

固定資産税は土地、建物、構築物に対して、地方自治体が課す税である。
税法では税率の上限のみ定められており、税率は各地方自治体が決定する。
税額の適切な計算にあたっては、対象物の分析や適格性の検証(例:建築物であるか、建造物であるかの認識など)、土地・建物の面積測量、構築物の価値算定、適用税率の妥当性検証、および対象物の使用目的、立地する不動産などに注意を要する。

なお、特定の条件を満たせば、免税措置を受けることもできる(地方自治体が定める個々のプログラムによる)。

関連法令:地方税と手数料に関する法律(官報1991年第9号第31外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(ポーランド語)