外資に関する奨励
最終更新日:2019年01月31日
奨励業種
「責任ある開発のための戦略」に沿った戦略部門には、高品質食品部門、 輸送部門、電気・電子機器の専門分野、 航空宇宙分野、 衛生製品部門、医薬品および医療機器部門、 機械部門、エコ建設部門などが該当し、これらの投資分野に焦点が当てられる。
各種優遇措置
ポーランドの投資優遇措置はEU規則およびポーランドの法律に取り入れられた投資支援メカニズムに則っている。投資家が享受できる優遇措置はEU地域助成の上限基準内であり、上限基準は国内地域ごとに定められている。優遇措置は新規投資支援と新規雇用助成に大別される。また、新しい投資支援システムおよび既存の経済特区支援システムに基づいて投資を行う際、所得税の免除を受ける優遇措置もある。
投資の新支援メカニズム
2018年、ポーランドに新しい投資支援システムが導入された。その目的は、既存の経済特区に限られていた投資誘致を拡大することである。新たな投資支援システムは、これまでの特別経済区の代替として導入されるのではなく、2026年の経済特区の満了まで両システムが並行して稼動する。新たな支援システムは「ポーランド経済圏」、現行の支援システムは「経済特区」と呼ばれる。
- 新たな投資支援システム「ポーランド経済圏」
経済特区内で行われている既存の支援システムと同様に、所得税の免除という形式での支援が新しい投資促進の主要な手段である。- 支援の対象
経済活動を行う自然人と法律で定められた条件を満たす法人の両方がこの支援の対象となる。環境関連で有罪とされた者、およびパートナーや役員が同様の犯罪で有罪判決を受けた法人は、所得税の免除を受けることができない。 - 支援の決定機関
新システムでの支援の決定は企業・技術省が行う。 決定の申請には、新しい投資の実施計画が含まれていなければならない。
支援は10年以上15年以下の一定期間にわたって行われ、支援期間はポーランドの特定の地域に設定された公的援助の内容によって個別に決定される(公的援助の支援範囲は地域によって異なる)。また、新規投資が既存の経済特区内で行われる場合、支援期間は15年となる。 - 支援の決定基準
支援の決定は、起業家が量的および質的基準を満たしているかが判断基準となる。質的基準は、サービス部門と産業部門で個別に定義されており、量的基準は両方の部門に共通の定義がある。新規投資を行う起業家は、質的基準で合計6ポイント以上、経済発展と社会開発の各基準で1ポイント以上得なければならない。該当区域における地域援助の度合いに応じて、5ポイントまたは4ポイントまで減点される場合もある。
質的基準:サービス部門 基準 判断基準 ポイント数 経済発展基準 「責任ある開発のための戦略」と合致した戦略的セクターにおける投資で、ポーランドが競争上の優位性を得ることができ、現在の開発政策と一致する産業を支援する投資である。つまり、高品質食品部門、輸送部門、電気・電子機器の専門分野、航空宇宙分野、衛生製品部門、医薬品および医療機器部門、機械部門、エコ建設部門などである。 1 ポーランド外で目標販売レベルを達成している。 1 研究開発を実施している。 1 ポーランド外にまで範囲の及ぶ近代的なビジネスサービスの本拠地が設立されている。 1 中小企業または中規模企業などに該当する。 1 社会開発基準 高賃金雇用が確立され、安定した雇用が提供できる。 1 環境への悪影響が少ないビジネスを行う。 1 投資の場所 1 専門学校との連携を図り、教育および専門資格の取得を支援する。 1 従業員に対して社会保障活動が行われている。 1 質的基準:産業部門 基準 判断基準 ポイント数 経済発展基準 「責任ある開発のための戦略」と合致した戦略的セクターにおける投資であり、ポーランドが競争上の優位性を得ることができ、現在の開発政策と一致する産業を支援する投資である。つまり、高品質食品部門、輸送部門、電気・電子機器の専門分野、航空宇宙分野、衛生製品部門、医薬品および医療機器部門、機械部門、エコ建設部門などである。 1 ポーランド外で目標販売レベルを達成している。 1 主要なクラスターに参加している。 1 研究開発を実施している。 1 中小企業または中規模企業などに該当する。 1 社会開発基準 新規投資の対象となる事業活動を行い、安定的な雇用を提供するための専門職を創出している。 1 環境への悪影響が少ないビジネスを行う。 1 投資の場所 1 専門学校との連携を図り、教育および専門資格の取得を支援する。 1 従業員に対して社会保障活動が行われている。 1 - 量的基準:サービス部門および産業部門
- 新規投資支援の決定条件である量的基準は、投資が実施される地域の失業率によって異なる。新規投資の資金面の観点から、以下の情報に基づき、該当する地域の失業率が高いほど、起業家に対して量的基準要件が低く設定されるようになっている。
該当地域の失業率 最小投資額 国の平均失業率の60%以下 10,000万ズロチ 国の平均失業率の60%を超えるが、100%未満 8,000万ズロチ 国の平均失業率の100%以上130%未満 6,000万ズロチ 国の平均失業率の130%以上160%未満 4,000万ズロチ 国の平均失業率の160%以上200%未満 2,000万ズロチ 国の平均失業率の200%以上250%未満 1,500万ズロチ 国の平均失業率の200%以上であり、社会的・経済的な機能を失っている場合、および失うと予想される場合 1,000万ズロチ 同時に、特定のタイプのサービスや研究開発活動の実施、および中小企業が特定の投資を行う場合には、新規投資の最低資本コストを引き下げることが可能である。
- 支援の対象
- 特別経済区(SEZ)
経済特区システムは、前述の新規投資支援メカニズム「ポーランド経済圏」とは別個に実施され、2026年まで有効である。SEZに投資した企業は、引き続き企業減税を受けることができる。
特別経済区(SEZ)に進出した企業は、一定の条件を満たせば、法人税の減免措置を受けることができる。また、SEZの経営会社が、競争価格での土地の提供、手続き処理支援(有償、無償)など投資家のサポートを行っている。投資家がSEZに所属しない土地を所有していても、別途手続きの上、SEZの対象に含めることが可能。SEZの適用対象は主として製造業であったが、現在では物流、ビジネス・プロセス・アウトソーシング、シェアード・サービス、研究開発、情報処理などにも本制度が適用される。
起業家は、特定地域のビジネスライセンスに基づいてSEZで経済活動を行い、公共援助を利用する資格が与えられる。
SEZは地域振興を目的として、全国に14カ所に設けられ、各SEZは複数のサブゾーンから形成されている。サブゾーンはいわゆる工業団地が主で、大型投資の場合、単独案件でもサブゾーンに組み入れられている場合がある。- 投資の公的援助の条件
10万ユーロ以上の投資(既にSEZとして認定された地区の場合)。また、投資の総費用において起業家自身は、25%以上を負担しなければならない。 - 助成額
出資額や採用コストに基づいて各地域の地域助成の上限額(後述)をベースとして計算された支援額が尽きるまで、もしくはSEZの有効期限(2026年)まで、法人税の支払いが免除される(ただし、SEZ許可証に記載された事業活動に限る)。
(例)大企業の投資額:1,000万ユーロ、上限係数:50%の場合
所得が1,000万ユーロ×50%=500万ユーロに達するまで、所得税免税の資格を得る。全国14カ所のSEZは次のとおり。活動終了年はすべて2026年。
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ミェレツ(Euro-Park Mielec)
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カミェンナ・グラ(Kamienna Gora SEZ)
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コシジン・スウビツェ(Kostrzyn-Slubice SEZ)
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カトヴィツェ(Katowice SEZ)
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クラクフ・テクノロジーパーク(Krakow Technology Park)
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レグニツァ(Legnica SEZ)
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ウッジ(Lodz SEZ)
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ポモジェ(Pomorska SEZ)
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スウプスク(Slupsk SEZ)
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スタラホヴィツェ(Starachowice SEZ)
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スヴァウキ(Suwalki SEZ)
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タルノブジェグ(Tarnobrzeg SEZ)
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ヴァウブジフ(Walbrzych SEZ)
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ヴァルミア・マズリ(Warmia-Mazury SEZ)
- 投資の公的援助の条件
地域助成度数(両方の支援メカニズムに該当)
地域助成度数は、地域助成とその助成に適格な費用の比率に基づき計算される。国家助成度数は、各地域で個別に決定される。
- ワルシャワ市:上限係数10%(2018年1月1日から2020年12月31日まで)
- 西ワルシャワ区:上限係数20%
- ドルノシロンスキェ県、ヴィエルコポルスキェ県、シロンスキェ県:上限係数25%
- クヤフスコ・ポモルスキェ県、ルブスキェ県、マウォポルスキェ県、ウツキェ県、オポルスキェ県、ポモルスキェ県、シフィエントクシスキェ県、ザホドニョポモルスキェ県、マゾヴィエツキェ県の一部(チェハノフスコ・プウォツキ管区、オストロウェンツコ・シェドレツキ管区、ラドムスキ管区、東ワルシャワ管区):上限係数35%
- ルベルスキェ県、ポトカルパツキェ県、ポドラスキェ県、ヴァルミンスコ・マズルスキェ県:上限係数50%
これらの係数は、対象投資額が5,000万ユーロを超える新規投資を除いた中小企業に対しては、20%ポイント、小規模企業に対しては10%ポイント加算される。
助成上限額(両方の支援メカニズムに該当)
企業は、新規投資の費用補填、および新規投資に関連して特定数の従業員の雇用創出を目的として公的支援を受けることができる。新規投資の費用補填の場合、最大援助額は所与の地域について決定された公的援助度数と投資適格コストとの積として計算され、援助額は投資の最大適格費用を超えてはならない。新しい投資に関連した特定数の従業員の雇用創出費援助については、所与の地域について定義された援助度数に応じ新規雇用された従業員の2年間分の労働費が補填される。
大型投資プロジェクト(3年間における新規投資のうち、支援の対象になる費用が5,000万ユーロ相当以上)の場合には、次の算定式に従って、補助金の上限額が決定される。
I=R×(5,000万ユーロ+0.5B+0.34C)
I:「大型投資プロジェクト」が享受できる補助金の額
R:「助成強度」、つまり各地域の助成金上限係数を代入
B:投資額全体のうち、5,000万~1億ユーロまでに該当する支援対象の費用を代入(補助金享受日のポーランド国立銀行NBPの平均レートに基づき換算)
C:投資額全体のうち、1億ユーロを超える支援対象の費用を代入
出所:
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内部市場に合致した優遇措置の設定に関するEU条項651/2014、協定107条108条(2014年6月26日付、EU官報L 187)
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2014−2020年の地域支援に関するガイドライン(官報:UE C 210 z 04.07.2014.)
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内閣規程2014−2020年の地域支援マップの設定(2014年1月7日付、官報2014、878項)
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特別経済区(SEZ)に関する規約(1994年10月20日付、改正2017年5月24日、官報2017、1010項)
(99KB)
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特別経済区(SEZ)で活動許可を得て優遇措置を与えられ企業活動を行う場合の内閣規約2018年1月10日付(官報:2018年1月10日、2018、81項)
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特別経済区(SEZ)で活動許可を得て企業活動を行う場合の優遇措置(法律広報2015年465項)
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所得税法(法律広報2016年1888項、改正2016年11月24日)
その他の投資インセンティブ
固定資産税の減免措置
日本の固定資産税よりも狭義であり、不動産のみに課される税。直訳は不動産税。
固定資産税は地方税であり、減免措置を受けられるのは、本措置を設定している郡の判断による。
財政支援の供与条件は、各郡の固定資産税の免除に関する決議に基づく。
地方税と手数料に関する規制(1991年1月12日付、法律広報2017、1785項、改正2017年9月27日)
ポーランド政府の補助金
「2011~2023年までの国民経済にとって重要性を持つ投資助成プログラム」では、ポーランド政府補助金交付のルールが定められている。
新規投資に伴う補助金交付プログラムの申請を行う場合、助成金を受けられるのは次の投資を計画している企業のみ。
- 優先産業分野(自動車、電子機器、航空、バイオテクノロジー、農業・食品)への投資(プログラムの9.1.1.に記載)
- 前項の優先産業分野以外の産業に投資を行う場合には、最低200人の新規雇用を行い、少なくとも7億5,000万ズロチの適格投資を行うか、または最低500人の新規雇用を行い、少なくとも5億ズロチの適格投資を行う必要がある。(「重要性を持つ投資」と呼ばれる)
- ビジネスサービス分野(会計アウトソーシング、給与計算アウトソーシング、市場分析、ITコンサルティング、ヘッジのような一部の金融サービスなど)
具体的なサービス内容や助成書類作成に必要なポイント付けについては、プログラム内に記載。 - 研究開発 (R&D)分野への投資
これら投資には、新規雇用の創出、新規投資額のいずれかの基準を満たせば、助成が付与される。
- 新規雇用の創出に対する基準
- 優先産業分野の場合: 4,000万ズロチ以上の適格投資の結果、最低250人の新規雇用を行うこと。
- 優先産業分野以外の場合:「重要性を持つ投資」であること。
- ビジネスサービス分野の場合:150万ズロチ以上の新規投資(固定資産のみ計算に該当)で、250人以上の新規雇用を行うこと。
- 研究開発の場合:総投資額が100万ズロチ以上で、35人以上の高学歴者(大卒)の新規雇用を創出すること。
- 新規投資額に対する基準
- 優先産業分野の新規製造投資:1億6,000万ズロチ以上、50人以上の新規雇用創出すること。
- 研究開発分野の投資:総投資額が1,000万ズロチ以上(オフィス賃料は含まない)で、35人以上の高学歴者の新規雇用を創出すること。
ただし、補助金交付の上限額は、R&D分野への投資の場合は適格投資費用の10%まで、その他の投資分野の場合は同7.5%まで。
なお、同上限は、次の低開発地域に投資を行う場合、5%引き上げられる。
該当地域は、シフィエントクシスキ県、ルベルスキ県、ポトカルパツキ県、ポドラスキ県、ヴァルミンスコ・マズルスキ県の5県。
新規雇用助成
地域労働局にて次の制度が利用可能。
- 失業者の職能実習に対する補填制度
- 就労の場における職能訓練に対する補填制度
- 雇用者側のニーズに応じた失業者向け職能訓練に対する補填制度
ポーランド投資貿易庁:Investment incentives - Governmental grants
2014~2020年までのEU結束基金による財政支援
ポーランドは2014~2020年の7年間、EU結束基金による総額825億ユーロの財政支援を受ける予定である。
当該支援はインフラ整備などに当てられるほか、その一部は投資補助金としても支出される。
一例として、次のような補助金プログラムが予定されている。
EU基金ポータルサイト(European Funds Portal)
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知的開発オペレーション・プログラム
イノベーションを生み出す製品・サービスのための研究開発を支援するプログラム。 -
マゾヴィエツキェ県での2014~2020年におけるオペレーション・プログラム
(ポーランド語)
マゾヴィエツキェ県に投資する投資家に対して、R&D活動、技術移転などに際して、補助金を交付。 -
ホライゾン2020プログラム
(National Contact Point in Poland/HORIZON 2020)
- 欧州投資銀行(EIB)によるR&D活動を行う投資家に対する低利での与信供与
その他
特になし