36経済団体が社会保険制度の負担上限維持を要請

(ポーランド)

ワルシャワ発

2018年08月15日

ポーランド民間経営者連盟「レビアタン」をはじめとする計36の経済団体は7月31日、社会保険料の算出の上限基準を少なくとも2020年まで維持することを、政府に対して要請するレターを公表した。

現在、社会保険料を算出する年収上限は、ポーランドの月平均給与の30倍〔2018年は13万3,290ズロチ(約387万円、1ズロチ=約29円)〕に設定されている(注)。年収がこの基準を上回る場合、上回った金額については社会保険料算出の対象とならない。2017年に「社会保険システムおよびその他の法令に関する修正法案」が議論され、2019年1月1日から、この上限基準を廃止することが盛り込まれた。2017年12月15日に上下院を通過した同法案がアンジェイ・ドゥダ大統領に署名のため提出されたが、ドゥダ大統領は、この法案の議論に際してパブリックコンサルテーションに十分な期間が設定されなかったとして拒否権を発動、2018年1月5日に憲法裁判所に審査を要請し、現在も審議が続いている。

上限基準が廃止されれば、IT技術者をはじめ賃金水準の高い高技能労働者を雇う企業にとっても、高技能者個人にとっても、社会保険料負担が増えることになる。社会保険庁(ZUS)も上限廃止を支持しておらず、ヤドビガ・エミレビチ企業・技術相も猶予期間の延長を他の閣僚に掛け合うと発言するなど、政府内でも議論が続いている。

レターの中で36の経済団体は、現在の法的状態の不確実性が雇用者にとっては新規投資の妨げになる可能性があることを指摘、高技能専門職の雇用コストが増加すればポーランドで雇用を創出する魅力が減じることになると警鐘を鳴らした。また現在、企業にとっては2019年予算策定の最終段階の時期にあり、少なくとも2020年までは社会保険制度の上限基準を現状のまま維持するよう、関係団体と具体的な対話を重ねるべきだ、と主張した。

(注)対象は、年金および生活保護保険。

(深谷薫、ジュリア・ポヤタ)

(ポーランド)

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