中南米に商機を!拡大するグローバルサウス消費市場中南米の消費市場
ASEANを上回る市場規模

2026年9月30日

中南米は日本からの距離が遠く、日本企業にとって必ずしも身近な消費市場ではない。しかし、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、チリ、ペルーの主要6カ国を合わせると、経済規模と家計消費はASEAN11カ国を上回る。所得水準も総じて高く、都市化やスマートフォンの普及も進む。一方で、所得格差が大きく、人口構造や金融サービスの普及度には国ごとの差がある。本稿では、主要6カ国の市場規模、所得階層、人口動態、都市構造、決済環境などを俯瞰(ふかん)する。

ASEAN11カ国を上回る家計消費市場

中南米主要6カ国の名目GDPは2025年に合計5兆9,478億ドルとなり、ASEAN11カ国の4兆9,452億ドルを約20%上回る(表1参照)。中南米諸国はアジアと比べると消費性向が高いため、家計消費で見るとその差はさらに広がる。2024年の主要6カ国の家計消費は合計3兆7,936億ドルで、ASEAN11カ国の2兆1,962億ドルの約1.7倍に達した。国別では、ブラジルの家計消費が1兆3,980億ドルで世界8位、メキシコが1兆2,938億ドルで同10位となる。両国だけで中南米主要6カ国全体の約7割を占める(表1参照)。

表1:世界主要国のGDP、家計消費、消費財輸入の国際比較注:GDPは2025年、家計消費は2024年、耐久消費財・半耐久消費財消費は2021年のデータ。 耐久消費財は自動車と家電・家具、準耐久消費財は衣類・履物の各国の消費規模。
国・地域 GDP 家計消費 耐久消費財消費 準耐久消費財消費
順位 金額 順位 金額 順位 金額 順位 金額
米国 1 30,767.1 1 19,896.0 1 1,333.8 1 484.5
中国 2 19,626.2 2 7,483.8 2 545.8 2 358.4
ドイツ 3 5,048.1 3 2,457.4 3 236.0 6 77.7
日本 4 4,435.2 6 2,192.0 4 190.3 5 81.6
英国 5 4,003.0 5 2,243.2 5 175.3 4 86.4
インド 6 3,916.3 4 2,426.0 10 91.5 3 111.1
フランス 7 3,368.9 7 1,726.7 8 117.4 8 49.2
ロシア 8 2,587.9 12 1,093.2 11 85.3 9 46.2
イタリア 9 2,550.1 9 1,361.0 7 120.4 7 65.4
カナダ 10 2,319.9 11 1,262.1 6 132.8 12 41.1
ブラジル 11 2,279.9 8 1,398.0 9 102.2 11 42.6
スペイン 12 1,903.8 13 962.3 14 65.3 15 28.8
韓国 13 1,872.4 15 909.3 13 66.1 10 43.3
オーストラリア 14 1,840.0 14 918.3 15 64.9 14 31.0
メキシコ 15 1,832.6 10 1,293.8 12 84.5 23 17.3
インドネシア 17 1,445.6 17 773.6 17 56.0 17 22.4
アルゼンチン 25 681.5 22 425.7 23 29.4 29 11.7
シンガポール 28 603.9 48 172.4 47 10.5 57 3.7
タイ 30 577.0 26 306.5 32 21.6 29 11.7
ベトナム 33 494.0 36 256.6 28 24.5 45 5.8
フィリピン 34 487.2 23 351.5 41 13.2 50 5.3
マレーシア 35 472.2 37 256.5 38 15.4 41 6.5
コロンビア 38 457.4 27 306.1 43 12.3 25 12.9
チリ 46 355.3 41 191.9 33 21.2 36 9.0
ぺルー 48 341.0 46 178.1 51 9.2 42 6.1
中南米主要6カ国 — 5,947.8 — 3,793.6 — 258.7 — 99.4
ASEAN6 — 4,189.7 — 2,117.1 — 141.3 — 55.2
ASEAN11 — 4,945.2 — 2,196.2 — N.A. — N.A.

注:GDPは2025年、家計消費は2024年、耐久消費財・半耐久消費財消費は2021年のデータ。
耐久消費財は自動車と家電・家具、準耐久消費財は衣類・履物の各国の消費規模。

出所:IMF(GDP)、国連統計局(家計消費)、世銀(その他)データからジェトロ作成

2021年の中南米主要6カ国の耐久消費財の消費額は2,587億ドルで、同年のASEAN主要6カ国の1,413億ドルの約1.8倍だった。衣類・履物などの準耐久消費財も994億ドルで、ASEAN主要6カ国の552億ドルの約1.8倍となった。中南米は人口だけでなく、実際の購買につながる家計支出の厚みを持つ市場といえる。

市場の厚みを支えるのが所得水準だ。2025年の1人当たりGDPは、中南米主要6カ国のうちチリ、アルゼンチン、メキシコ、ブラジルの4カ国で1万ドルを上回った。ASEAN主要国ではマレーシアを除き1万ドル未満で、中南米主要国の所得水準は総じて高い(図参照)。

図:中南米・ASEAN主要国の一人当たりGDPの推移
中南米・ASEAN主要国の1980年から2025年までの5年ごとの一人当たりGDPと、2030年の一人当たりGDPのIMF推定値を示した図。チリは1980年2,598ドル、1985年1,434ドル、1990年2,522ドル、1995年5,142ドル、2000年5,093ドル、2005年7,551ドル、2010年12,748ドル、2015年13,507ドル、2020年13,208ドル、2025年17,735ドル、2030年のIMF推定値は24,244ドル。マレーシアは1980年1,927ドル、1985年2,154ドル、1990年2,586ドル、1995年4,671ドル、2000年4,348ドル、2005年5,678ドル、2010年9,047ドル、2015年9,663ドル、2020年10,400ドル、2025年13,949ドル、2030年のIMF推定値は18,859ドル。メキシコは1980年3,557ドル、1985年3,015ドル、1990年3,640ドル、1995年4,110ドル、2000年7,468ドル、2005年8,626ドル、2010年9,633ドル、2015年9,915ドル、2020年8,744ドル、2025年13,741ドル、2030年のIMF推定値は18,464ドル。アルゼンチンは1980年8,361ドル、1985年3,249ドル、1990年4,858ドル、1995年8,295ドル、2000年8,639ドル、2005年5,164ドル、2010年10,413ドル、2015年14,895ドル、2020年8,489ドル、2025年14,355ドル、2030年のIMF推定値は16,701ドル。ブラジルは1980年1,230ドル、1985年1,720ドル、1990年3,106ドル、1995年4,852ドル、2000年3,752ドル、2005年4,806ドル、2010年11,341ドル、2015年8,893ドル、2020年7,057ドル、2025年10,686ドル、2030年のIMF推定値は14,797ドル。ペルーは1980年1,151ドル、1985年851ドル、1990年1,286ドル、1995年2,119ドル、2000年1,908ドル、2005年2,671ドル、2010年5,202ドル、2015年6,453ドル、2020年6,408ドル、2025年9,911ドル、2030年のIMF推定値は12,087ドル。コロンビアは1980年1,682ドル、1985年1,624ドル、1990年1,691ドル、1995年3,035ドル、2000年2,535ドル、2005年3,494ドル、2010年6,499ドル、2015年6,337ドル、2020年5,363ドル、2025年8,623ドル、2030年のIMF推定値は11,595ドル。タイは1980年705ドル、1985年772ドル、1990年1,564ドル、1995年2,847ドル、2000年2,006ドル、2005年2,868ドル、2010年4,974ドル、2015年5,689ドル、2020年6,983 ドル、2025年8,057ドル、2030年のIMF推定値は9,092ドル。インドネシアは1980年673ドル、1985年658ドル、1990年771ドル、1995年1,254ドル、2000年870ドル、2005年1,404ドル、2010年3,177ドル、2015年3,373ドル、2020年3,919ドル、2025年5,082ドル、2030年のIMF推定値は7,000ドル。ベトナムは1980年653ドル、1985年319ドル、1990年122ドル、1995年359ドル、2000年499ドル、2005年873ドル、2010年1,629ドル、2015年2,582ドル、2020年3,549ドル、2025年4,829ドル、2030年のIMF推定値は6,323ドル。フィリピンは1980年774ドル、1985年646ドル、1990年829ドル、1995年1,237ドル、2000年1,087ドル、2005年1,261ドル、2010年2,237ドル、2015年3,039ドル、2020年3,313ドル、2025年4,270ドル、2030年のIMF推定値は5,949ドル。

注:2030年はIMF推定値。
出所:IMF、World Economic Outolook Database、April 2026からジェトロ作成

もっとも、ドル建ての1人当たりGDPは為替変動の影響を受ける。特にアルゼンチンやブラジルでは変動幅が大きい。市場を評価する際は、足元の1人当たりGDPだけでなく、所得階層別の人口や購買力、物価、為替を併せて見る必要がある。

一様ではない中南米の所得階層

中南米は一般に所得格差が大きいとされるが、その状況は国によって異なる(表2参照)。「中間層以上」(注1)の所得階層が厚いのはチリで、1人当たり世帯所得が1日17ドル以上の層が人口の71.4%を占める。1日8.3ドル未満(「貧困層」)の人口は4.5%にとどまり、主要6カ国の中では比較的均質で所得水準が高い市場だ。アルゼンチンも中間層以上が55.6%と過半を占める。

ブラジルでは中間層以上が49.7%まで拡大する一方、ジニ係数(所得格差の大きさを示す指標)は0.503と高く、所得格差はなお大きい。メキシコは中間層以上が40.3%で、1日8.3~17ドルの「脆弱(ぜいじゃく)層」が38.3%を占める。左派政権下の福祉政策の拡充で貧困層は近年減少したものの、景気や物価の変動で生活水準が下がり得る層が厚く、ブラジルよりも中間層以上の割合が小さい。

ペルーは1日8.3ドル未満が36.2%、脆弱層が39.4%で、中間層以上は24.4%にとどまり、全体的に所得水準が低い。コロンビアはペルーよりも中間層以上の比率が高く(33.2%)、一方で1日8.3ドル未満の貧困層も37.0%を占める。ジニ係数は0.544と主要6カ国で最も高く、所得格差も最も大きい。

表2:中南米主要6カ国の所得・社会階層比較(2024年)(単位:%、ポイント)注:極貧率は、一人当たり世帯平均所得が2021年の購買力平価(PPP)調整ドルで3ドル未満の人口の比率。 貧困率(1)は、一人当たり世帯所得が2021年のPPP調整で4.2ドル未満、貧困率(2)は同8.3ドル未満の人口の比率。 脆弱層は同8.3以上17ドル未満、中間層は同17ドル以上の人口の比率。
国名 最新年 極貧率
(3.0ドル)
貧困率(1)
(4.2ドル)
貧困率(2)
(8.3ドル)
脆弱層
比率
中間層
以上
ジニ係数
ブラジル 2024年 3.0 6.2 20.6 29.6 49.7 0.503
メキシコ 2024年 1.6 N.A. 21.4 38.3 40.3 0.426
アルゼンチン 2024年 1.0 2.8 15.2 29.2 55.6 0.424
コロンビア 2024年 8.5 14.7 37.0 29.8 33.2 0.544
チリ 2024年 0.4 0.7 4.5 24.1 71.4 0.430
ペルー 2024年 5.1 10.7 36.2 39.4 24.4 0.401

注:極貧率は、一人当たり世帯平均所得が2021年の購買力平価(PPP)調整ドルで3ドル未満の人口の比率。
貧困率(1)は、一人当たり世帯所得が2021年のPPP調整で4.2ドル未満、貧困率(2)は同8.3ドル未満の人口の比率。
脆弱層は同8.3以上17ドル未満、中間層は同17ドル以上の人口の比率。

出所:世銀データ(Poverty and Inequality Platform,2026年9月2日閲覧)からジェトロ作成

各国を「中南米市場」とひとくくりにせず、対象とする所得階層に応じて、商品仕様や価格帯、決済手段や消費者向け金融サービスなどを設計する階層別マーケティングが重要な意味を持つ。

人口ボーナスのピークから高齢化へ

人口規模ではブラジルが2025年に2億1,281万人、メキシコが1億3,195万人と突出する(表3参照)。ただし、2050年までの増加率は、ブラジルが2.2%、チリが2.3%にとどまる一方、ペルーは17.4%、メキシコは12.9%、コロンビアは11.2%と見込まれる。人口の伸びという面では、メキシコ、ペルー、コロンビアの余地が比較的大きい。これら3カ国の人口増加率は、ASEANの人口大国であるインドネシアやフィリピンと同程度の水準にある。

表3:中南米・ASEAN主要国の人口規模と将来人口(単位:人、%)(△はマイナス値)
国名 総人口 2025~2050年増減
2025年 2030年 2050年 増減数 増減率
ブラジル 212,812,405 216,074,411 217,489,300 4,676,895 2.2
メキシコ 131,946,900 136,904,738 148,946,274 16,999,374 12.9
コロンビア 53,425,636 55,736,475 59,385,357 5,959,721 11.2
アルゼンチン 45,851,378 46,585,022 48,308,944 2,457,566 5.4
ペルー 34,576,665 36,193,880 40,583,876 6,007,211 17.4
チリ 19,859,921 20,233,183 20,320,307 460,386 2.3
インドネシア 285,721,236 295,876,648 320,712,950 34,991,714 12.2
フィリピン 116,786,963 121,408,895 134,373,439 17,586,477 15.1
ベトナム 101,598,527 104,254,903 110,008,908 8,410,381 8.3
タイ 71,619,863 71,215,022 66,382,735 △ 5,237,128 △ 7.3
マレーシア 35,977,838 37,961,719 44,289,773 8,311,935 23.1

出所:国連データ(World Population Prospects 2024, medium variant)からジェトロ作成

年齢構成にも違いがある。2025年の年齢中央値はチリが36.9歳、ブラジルが34.8歳であるのに対し、メキシコは29.6歳、ペルーは30.2歳と若い(表4参照)。一方、主要6カ国では15~64歳人口がいずれも総人口の66~70%程度を占め、現在は人口ボーナス期のピークに近い。しかし、高齢化の進展は早い。2050年の65歳以上人口の割合は、チリで26.7%、ブラジルで22.5%、コロンビアで20.6%に達する見込みだ。

表4:中南米・ASEAN主要国の年齢構成と人口ボーナス(単位:歳、%)注:特に指定がない場合は2025年央の推定値。高齢者は65歳以上とする。
国名 年齢
中央値
構成比 従属人口
指数
2050年の
高齢者比率
0~14歳 15~64歳 20~49歳 65歳以上
ブラジル 34.8 19.4 69.1 45.2 11.5 50.7 22.5
メキシコ 29.6 24.1 67.4 44.4 8.5 44.6 17.0
コロンビア 32.5 20.0 69.8 46.4 10.2 45.2 20.6
アルゼンチン 32.9 21.0 66.3 43.5 12.6 43.3 19.9
ペルー 30.2 16.5 68.9 44.6 14.6 41.5 17.7
チリ 36.9 23.6 66.9 44.6 9.5 46.6 26.7
インドネシア 30.4 24.2 68.2 44.2 7.5 48.4 15.1
フィリピン 26.1 27.1 67.1 45.3 5.7 49.4 11.2
ベトナム 33.4 22.9 67.6 43.8 9.5 48.9 20.0
タイ 40.6 14.4 69.6 42.1 16.0 47.8 29.6
マレーシア 31.0 21.3 70.7 49.3 8.0 43.7 16.8

注:特に指定がない場合は2025年央の推定値。高齢者は65歳以上とする。

出所:国連データ(World Population Prospects 2024, medium variant)からジェトロ作成

ASEAN主要国との比較で見ると、高齢化の進展が早いタイを除けば、65歳以上の高齢者の比率は中南米主要国の方が現時点でも高く、今後の高齢化の進展も早い。中南米市場開拓では、若年・現役世代向けの需要を取り込みつつ、中長期的には医療、健康、介護、省力化など、高齢化に対応する市場も視野に入る。

都市を起点に広がる商機

中南米では都市への人口集中が進んでいる。国連統計によると、2025年に人口5万人以上の都市に住む人口の割合は、チリ65.3%、アルゼンチン64.0%、コロンビア62.8%、ペルー57.0%、ブラジル54.1%、メキシコ53.2%だった(表5参照)。ASEAN主要国ではマレーシアが55.7%、インドネシアが53.6%である一方、フィリピンは42.0%、ベトナムは40.2%、タイは36.0%だった。人口5万人以上の都市に住む割合で見ると、中南米主要国はASEAN主要国より都市集積が進んでいる国が多い。

表5:中南米・ASEAN主要国の都市人口と主要都市圏(単位:1,000人、%)注:人口5万人以上の都市に住む人口を「都市人口」と定義し、その人口および総人口に占める比率も算出した。
国名 都市人口 都市人口比率 最大都市圏 最大都市圏人口
2025年 2050年 2025年 2050年 2025年 2025年
ブラジル 115,234.5 119,896.9 54.1 55.1 サンパウロ 18,900
メキシコ 70,259.3 77,012.7 53.2 51.7 メキシコシティ 17,700
コロンビア 33,561.3 38,716.5 62.8 65.2 ボゴタ 10,600
アルゼンチン 29,336.2 30,835.9 64.0 63.8 ブエノスアイレス 14,000
ペルー 19,699.4 24,164.2 57.0 59.5 リマ 10,600
チリ 12,977.0 13,496.1 65.3 66.4 サンティアゴ 6,700
インドネシア 153,184.4 178,177.6 53.6 55.6 ジャカルタ 41,900
フィリピン 49,007.8 58,949.9 42.0 43.9 マニラ 24,700
ベトナム 40,875.8 49,140.7 40.2 44.7 ハノイ 14,100
タイ 25,748.0 28,563.0 36.0 43.0 バンコク 18,200
マレーシア 20,026.1 26,593.4 55.7 60.0 クアラルンプール 8,400

注:人口5万人以上の都市に住む人口を「都市人口」と定義し、その人口および総人口に占める比率も算出した。

出所:国連データ(World Urbanization Prospects 2025)からジェトロ作成

最大都市圏の人口はサンパウロ1,890万人、メキシコシティ1,770万人、ブエノスアイレス1,400万人、ボゴタとリマが各1,060万人に達する。さらに、ブラジル、メキシコ、コロンビアには人口100万~500万人規模の都市圏が複数ある。大都市を販売、物流、プロモーションの拠点としながら、首都や最大都市だけでは捉え切れない地方中核都市の需要を見極めることが重要となる。

スマホが金融と消費の接点に

中南米はASEANと同様に新興国が多く、インフォーマル就労(注2)がなお広くみられる。就労者に占めるインフォーマル就労者の割合は、ペルー70.5%、メキシコ56.9%、コロンビア56.0%、アルゼンチン52.8%と高い水準にある(表6参照)。

表6:中南米・東南アジア主要国の金融サービス普及率(2024年時点)(単位:%)注:インフォーマル就労率のみILOのデータ(2024~2025年時点)を使用し、その他は2024年時点のデータ。
国・地域名 銀行口座 クレジット
カード
デビット
カード
デジタル
決済
参考指標
スマホ
普及
インフォーマル
就労
ブラジル 85.6 43.5 73.8 70.0 92.1 35.6
メキシコ 52.4 14.2 40.1 29.5 83.3 56.9
コロンビア 43.4 8.7 26.1 42.5 88.1 56.0
アルゼンチン 72.9 29.9 64.1 65.4 90.5 52.8
ペルー 49.8 12.6 36.7 46.5 85.7 70.5
チリ 85.1 N.A. 80.8 N.A. 95.6 26.4
中南米・カリブ全体 66.4 25.2 53.3 50.8 88.7 51.1
インドネシア 52.4 8.7 41.4 30.0 80.3 81.0
フィリピン 33.5 3.0 20.1 32.1 78.0 N.A.
ベトナム 69.9 5.8 64.8 56.5 97.8 67.0
タイ 91.1 8.0 56.9 59.1 92.1 63.2
マレーシア 87.2 13.2 80.1 56.8 94.7 N.A.

注:インフォーマル就労率のみILOのデータ(2024~2025年時点)を使用し、その他は2024年時点のデータ。

出所:世銀データ(Global Findex 2025)および国際労働機関データ(ILOSTAT)からジェトロ作成

インフォーマル就労者は、安定した給与記録や社会保障への加入実績などを示すことが難しい場合がある。こうした就労構造は、伝統的な商業銀行による信用供与を受けにくい消費者が一定数存在する背景の一つと考えられる。2024年のクレジットカード保有率は、ブラジルが43.5%、アルゼンチンが29.9%であるのに対し、メキシコは14.2%、ペルーは12.6%、コロンビアは8.7%にとどまった。

一方、スマートフォン普及率は主要6カ国で83~96%と高い。デジタル決済の利用率は、ブラジル70.0%、アルゼンチン65.4%、ペルー46.5%、コロンビア42.5%に達する。従来型の金融サービスを十分に利用できない層に対し、スマートフォンを通じた決済サービスやフィンテックが新たな選択肢を提供している。ブラジルの即時決済「ピックス(PIX)」や、ペルーにおけるデジタル決済の相互運用化は、その具体例だ。なお、スマートフォンは金融包摂のインフラであると同時に、SNSを通じて商品を知り、評価し、購入する消費者との主要な接点にもなっている。

親日国が多いが、国ごとの差や所得階層に応じた市場開拓を

中南米市場の開拓に際しては、中南米全体でおおむね共通する「親日感」というプラスの要素がある。その背景には、若い世代から比較的高齢の世代まで親しまれている日本のアニメや映画、ゲームなどのソフトパワーに加え、他の地域を大きく上回る日系移民の存在があるだろう。海外日系人協会によると、2023年10月1日時点でブラジルには約270万人、ペルーには約20万人、メキシコには約7万9,000人、アルゼンチンには約6万5,000人、ボリビアには約1万2,000人、パラグアイには約1万人の日系人が存在する。それぞれ、第1位、第3位、第6位、第7位、第13位、第16位に位置し、中南米全体では約308万人の日系人が暮らしている。世界の日系人(約500万人)の5分の3以上が中南米に暮らしていることになる。

中南米主要6カ国は、ASEAN11カ国を上回る経済規模と家計消費市場を有する。比較的高い所得水準と都市人口の厚みに加え、スマートフォンの普及によって、従来型の金融サービスを利用しにくかった消費者との接点も広がっている。一方で、所得階層、人口の伸び、高齢化の速度、金融アクセスには、主要6カ国の間でも大きな差がある。市場参入に当たっては、国別の平均値だけでなく、都市や所得階層ごとに商品仕様や価格、決済方法、販売チャネル、SNSでの訴求を組み合わせる必要がある。


注1:
国際比較のため、世界銀行の分類を採用。1日の1人当たり世帯所得が2021年の購買力平価(PPP)換算ドルで17ドル以上を「中間層」、同8.30ドル未満を「上位中所得国の貧困ライン」、同4.20ドル未満を「下位中所得国の貧困ライン」、同3.00ドル未満を「国際貧困ライン(極度の貧困)」と定義している。上位中所得国の貧困ラインを上回るものの、中間層には達しない1日8.3~17ドル未満の層を「脆弱層」と定義している。 本文に戻る
注2:
インフォーマル就労率は、就業者全体に占めるインフォーマル就労者の割合。インフォーマル就労には、非公式な事業体であるインフォーマル部門の自営業者や従業員、無給の家族従業者のほか、フォーマル部門で働いていても社会保障などの制度的保護を受けない被用者が含まれる。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課主幹(中南米)
中畑 貴雄(なかはた たかお)
1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て、2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月からジェトロ・メキシコ事務所長、2024年5月から調査部主任調査研究員、2025年4月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『グローバルサプライチェーン再考: 経済安保、ビジネスと人権、脱炭素が迫る変革』、『NAFTAからUSMCAへ-USMCAガイドブック』など。