中国EVが躍進、VAT免除措置終了前の駆け込み需要(ウクライナ)

2026年8月24日

2025年のウクライナの自動車市場は、2018年から導入された電気自動車(EV)に対する付加価値税(VAT)免除措置適用の最終年だったことから、EVの駆け込み需要が発生した。輸入新車の登録台数全体に占めるEVの割合は29.4%(前年比13.8ポイント増)、輸入中古車では30.3%(12.3ポイント増)だった。

新車市場で中国EVが躍進、VAT免除措置終了前の駆け込み需要

自動車市場研究所によると、2025年のウクライナの新車乗用車の新規登録台数は7万9,501台だった(前年比15.6%増)。これは、ロシアによるウクライナへの全面侵攻が開まった2022年以降で最多だった。このうち、海外からの輸入車が7万7,674台、国内製造車(部分組み立てなど)が1,827台だった。

ブランド別では、中国のEVメーカーBYDが9,861台、12.4%のシェアを獲得し、前年に唯一シェアが2桁だったトヨタを僅差で上回った(表1参照)。BYDと8位のジーカー(Zeekr、中国自動車大手の吉利汽車〔Geely〕傘下のEVメーカー)は、2024年の新車乗用車新規登録台数の上位10ブランドに入っておらず、急速にシェアを伸ばした(2025年11月21日付地域・分析レポート参照)。2024年に3~4%のシェアで上位10ブランド入りしていた日産、スズキ、マツダは、2025年は上位10位圏外となった。

表1:ブランド別新車乗用車の新規登録台数 上位10位(2025年)
順位 ブランド シェア (%) 登録台数
1 BYD 12.4 9,861
2 トヨタ 12.2 9,687
3 フォルクスワーゲン(VW) 9.3 7,398
4 シュコダ 7.3 5,806
5 ルノー 6.7 5,343
6 現代 5.0 3,970
7 BMW 4.7 3,716
8 ジーカー 3.7 2,941
9 アウディ 3.7 2,903
10 ホンダ 3.3 2,651

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

モデル別に見ると、1位と2位は前年と同様で、ルノーのダスターが4,153台、2位はトヨタのRAV4が3,560台で続いた(表2参照)。3位に入ったフォルクスワーゲン(VW)のID.Unyxは、「中国における、中国のための戦略(In China, for China strategy)」の下に開発された中国市場向けEVモデル。VWはウクライナでEVモデルを販売していないため、非公式に輸入されたものとみられる。上位10モデルのボディタイプは全てスポーツ用多目的車(SUV)だった。

表2:モデル別新車乗用車の新規登録台数 上位10位(2025年)
順位 ブランド・モデル 登録台数
1 ルノー・ダスター 4,153
2 トヨタ・RAV4 3,560
3 VW・ID. Unyx 3,137
4 BYD Song Plus 2,969
5 現代・ツーソン 2,359
6 トヨタ・ランドクルーザー・プラド 2,117
7 シュコダ・コディアック 1,960
8 VW・トゥアレグ 1,610
9 マツダ・CX-5 1,599
10 ジーカー・7X 1,550

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

国内中古車市場はVWが首位、輸入中古車市場はテスラが好調

2025年に登録された国内再販中古車(国内市場で販売・購入された中古車)の台数は89万5,593台(前年比18.9%減)だった。ブランド別ではVWが11万2,021台(シェア12.5%)で首位となり、ルノーが5万1,637台(5.8%)、アフトワズ・ラーダが5万1,566台(5.8%)と続いた。

2025年に輸入された中古車の新規登録台数は27万8,628台(前年比22%増)だった。ブランド別では、1位と2位は前年と同様で、VWが3万7,217台で首位、続いてアウディが2万5,911台だった。前年に1万1,849台(シェア5.2%)で8位だったテスラは、前年比約2倍となる2万4,140台(シェア8.7%)となり、3位に浮上した(表3参照)。

モデル別に見ると、昨年に続き1位となったVW・ゴルフは、EVモデル「eゴルフ」が販売を牽引した。2位のテスラ・モデルY(前年トップ10圏外)、3位のテスラ・モデル3(前年比96.3%増)、5位の日産・リーフ(34.7%増)の好調ぶりから、輸入中古車市場でもVAT免除措置終了前のEV需要がうかがえる(表4参照)。

表3:ブランド別輸入中古車の新規登録台数 上位10位(2025年)
順位 ブランド シェア (%) 登録台数
1 VW 13.4 37,217
2 アウディ 9.3 25,911
3 テスラ 8.7 24,140
4 日産 7.8 21,628
5 ルノー 6.1 16,952
6 BMW 6.0 16,720
7 現代 5.4 15,145
8 フォード 5.4 15,039
9 起亜 4.9 13,656
10 シュコダ 4.4 12,226

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

表4:モデル別輸入中古車の新規登録台数 上位10位(2025年)
順位 ブランド・モデル 登録台数
1 VW・ゴルフ 10,665
2 テスラ・モデルY 10,553
3 テスラ・モデル3 9,204
4 シュコダ・オクタビア 7,718
5 日産・リーフ 7,488
6 VW・ティグアン 7,419
7 アウディ・Q5 6,512
8 起亜・Niro 5,729
9 VW・パサート 5,414
10 日産・ローグ 5,296

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

EV市場は大幅拡大、中国からのグレー輸入が課題

自動車市場研究所の推計(2026年1月)によると、ウクライナには2025年末時点で約24万6,000台のEVが登録されており、平均車齢は6.3年だった。そのうち、乗用車は約24万1,200台、トラックは約4,900台、バスは9台だった。2021年以降のEV新規登録台数は年々増加しているが、VAT免除措置が適用される最後の年だった2025年の伸び率は、ここ数年で特に高かった(図参照)。

図:ウクライナにおけるEV登録台数の推移
ウクライナにおけるEV登録台数の推移。新車EVは2021年から2025年にかけて、1,213台、2,300台、7,304台、10,200台、22,800台と推移した。国内再販中古車は6,997台、9,200台、16,444台、26,100台、35,800台と推移した。また、中古輸入車は7,484台、11,100台、30,403台、41,200台、84,400台と推移した。

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

2025年にウクライナで登録されたEV乗用車は約14万3,000台(前年比84.5%増)だった。そのうち、輸入新車が2万2,800台(2.2倍)、輸入中古車が8万4,400台(2.0倍)、国内再販中古車が3万5,800台(38%増)だった。ブランド別およびモデル別の登録台数は表5、6のとおり。

表5:ブランド別EV乗用車登録台数・シェア 上位10位(2025年)

新車乗用車
順位 項目 シェア
(%)
登録台数
1 BYD 42.3 9,656
2 VW 16.7 3,815
3 ジーカー 12.9 2,940
4 ホンダ 10.3 2,357
5 アウディ 4.8 1,104
6 BMW 2.0 447
7 デンザ 1.4 312
8 シャオミ 1.1 260
9 メルセデス・ベンツ 1.1 247
10 MG 0.8 190
輸入中古車
順位 項目 シェア
(%)
登録台数
1 テスラ 28.6 24,140
2 日産 10.0 8,455
3 起亜 9.3 7,808
4 現代 8.7 7,353
5 VW 6.8 5,700
6 アウディ 5.8 4,875
7 ルノー 4.7 3,931
8 シボレー 3.9 3,308
9 メルセデス・ベンツ 3.4 2,844
10 BMW 3.2 2,703
国内再販中古車
順位 項目 シェア
(%)
登録台数
1 テスラ 26.8 9,618
2 日産 18.0 6,438
3 VW 12.2 4,365
4 現代 5.4 1,945
5 ルノー 4.5 1,611
6 アウディ 4.3 1,535
7 シボレー 3.5 1,264
8 BMW 3.4 1,231
9 起亜 3.2 1,164
10 メルセデス・ベンツ 3.0 1,082

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

表6:モデル別EV乗用車登録台数 上位10位(2025年)

新車乗用車
順位 項目 登録台数
1 VW・ID.Unyx 3,137
2 BYD・Song Plus 2,921
3 ジーカー・7X 1,550
4 BYD レオパルド3 1,474
5 ホンダ・e:NS1 1,293
6 BYD・Sea Lion 07 1,216
7 ジーカー・001 1,119
8 BYD・Sea Lion 06 867
9 アウディ・Q4 e-tron 771
10 BYD・Yuan UP 753
輸入中古車
順位 項目 登録台数
1 テスラ・モデルY 10,553
2 テスラ・モデル3 9,204
3 日産・リーフ 7,488
4 起亜・Niro 5,087
5 現代・Kona 4,123
6 ルノー・Zoe 3,387
7 テスラ・モデルS 3,038
8 シボレー・ボルト 2,914
9 VW・eゴルフ 2,716
10 アウディ・e-tron 2,458
国内再販中古車
順位 項目 登録台数
1 日産・リーフ 6,106
2 テスラ・モデル3 4,158
3 テスラ・モデルY 2,788
4 VW・eゴルフ 2,382
5 テスラ・モデルS 1,972
6 ルノー・Zoe 1,386
7 VW・ID.4 1,305
8 シボレー・ボルト 1,175
9 現代・Kona 1,015
10 アウディ・e-tron 908

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

新車乗用車市場におけるBYDやジーカーの好調ぶりにみるとおり、2025年は中国製EVのシェアが拡大した。自動車市場研究所の2026年1月の発表によると、同年に購入された新車EVの94%を中国製が占める見込みだ。一方、ウクライナで販売されている中国製造車の大部分は非公式に輸入されている。同研究所によれば、2025年に販売された中国製造車(新車・中古車含む)は約4万台(前年比約34%増)で、販売台数上位15モデルのうち、公式にウクライナ市場に導入されているモデルは、上海汽車集団(SAIC)傘下のMGのZSのみだった。

非公式に輸入された中国製造車は、国内に正規ディーラー網が存在しないため、保証やアフターサービスが限られるほか、中国市場向け仕様のインターフェースが残っている場合があるなどの問題がある。しかし、性能に対する車両価格の割安感や、先進的なインフォテインメントシステムなどが評価され、購入されている。ただし、BYDやジーカーなどのEVは、SDV(Software Defined Vehicle、ソフトウエアで定義された車)として、車載ソフトウエアや通信システムの保守やアップデートが不可欠だ。この観点で、メーカーによる十分なサポートを受けられない非公式輸入車については、将来的な再販価値や中古車市場での流通に不確実性が残る。

EV市場の先行きを左右する車両価格とエネルギーコスト

今後のEV市場の将来性について、(1)車両価格と(2)エネルギー価格の動向が、消費者の選択を左右する主要因として挙げられる。

(1)について、ジェトロが2026年2月に市場関係者にヒアリングしたところ、「VAT復活による一時的な販売台数の減少などの影響はあるものの、消費者は新たな価格にも慣れる上、現在のEV価格は一定クラスの内燃機関車と比較すると価格が手頃なため、市場はじきに回復するだろう」といった意見が聞かれた。また、ウクライナで新車・中古車を問わず新規登録時に課される国家年金保険料は、EVには課されない点も価格面での利点となる。

(2)について、ウクライナ国内外の情勢により、電気料金と燃料価格はともに変動しており、EV市場と内燃機関車市場の双方に影響を及ぼしている。前者について、自動車市場研究所によれば、ロシアによる冬季のエネルギーインフラへの攻撃激化や、2026年1月以降の電力市場における上限価格の引き上げに伴う業務用電気料金への影響などを背景に、公共充電所の1キロワット時(kWh)当たりの価格が、従来の16~18フリブニャから30フリブニャ以上となるケースが出現した。一般家庭向けの電気料金は値上がりしておらず、自宅などで充電した場合は運用コストを抑えられる一方で、充電には時間を要するため、戦争に起因する計画停電の際には影響を受けやすい。

燃料価格については、金融情報サイトMinfinによると、ガソリン(オクタン価95)は2026年初に1リットル当たり58フリブニャ(約209円、1フリブニャ=約3.6円)台だったところ、イラン情勢により高騰し、2026年7月時点で74~81フリブニャ台と高騰している。自動車市場研究所は2026年4月、VW・ゴルフの各モデルを例とした走行距離100キロ当たりのエネルギーコスト比較を実施した(表7)。これによれば、ガソリン車の燃料コストは、公共の直流(DC)急速充電を使用したEVの電力コストよりも高い。

表7:VW・ゴルフ 各モデルの走行距離100キロ当たりのエネルギー価格比較
モデル 動力源 必要エネルギー量 料金単価
(フリブニャ)
料金
(フリブニャ)
VW・eGolf 家庭用充電(夜間) 17.5 kWh 2.16/kWh 37.8
VW・eGolf 家庭用充電(通常) 17.5 kWh 4.32/kWh 75.6
VW・eGolf 公共交流(AC)普通充電 17.5 kWh 21/kWh 367.5
VW・eGolf 公共直流(DC)急速充電 17.5 kWh 26kWh 455
VW・Golf 1.6 TDI ディーゼル 5.5l 90/l 495
VW・Golf 1.4 TSI ガソリン 7.0l 73/l 511

出所:自動車市場研究所の発表を基にジェトロ作成

欧米・日本メーカーの内燃機関車より低価格から同価格帯の中国製EVラインアップが存在するほか、ガソリンやディーゼルなどの燃料価格が高騰する状況下では、今後もEV需要の拡大が見込まれる。新車・中古車を合わせたEV登録台数は、2025年12月に3万5,167台に急増を記録したのち、翌1と2月はそれぞれ5,927台、3,027台と激減した。しかし、3月は燃料価格の高騰も背景に6,361台と増加に転じた。4~6月は月間約8,000~9,000台と前年同時期に近い水準で推移しており、EV市場の底堅さがうかがえる。

一方、2026年4~6月のEV市場登録台数を見ると、輸入EV市場の縮小と国内中古EV市場の拡大という構造変化が認められる。同期間、新車EVが前年同月比39~71%減、輸入中古EVが44~51%減と低迷したのに対し、国内再販中古EVは76~141%増と高い伸びを示した。国内中古市場で取引の中心となったのは、日産やテスラなど、これまで数年にわたりウクライナで普及してきた車種であり、前年に大量に流入したBYDやジーカーなどの中国製EVが中古市場に流入したとは考えにくい。燃料価格の高騰やEVに対する消費者の関心の高まりを背景に、輸入に伴うVAT負担やコスト上昇を避けようとする消費者が、国内市場の中古EV購入への関心を高めたと考えられる。2026年の動向は、VAT免除措置の終了がEV需要そのものを失わせたのではなく、需要の中心を輸入車から国内再販中古車へ移した可能性を示している。

ここ数年のEV普及を踏まえ、複数のディーラーがさらなる市場拡大を見込み、EVモデルの新規投入・拡充に関心を示している。トヨタは2026年6月19日、ウクライナでEVの3モデル(Toyota C-HR+、bZ4X、bZ4X Touring)の販売開始を発表した(2026年6月30日付ビジネス短信参照)。レクサスブランドでは既にLEXUS RZを販売しているが、トヨタ車としては初のEV導入だ。欧州企業では、BMWウクライナと公式輸入業者のAVTババリヤが同年6月4日、次世代EVプラットフォームを採用したBMW iX3を同国で初めて発表した。同社はグランクーペのi4シリーズ、セダンのi5シリーズ、SUVのiXシリーズなど、比較的幅広いEVモデルを展開している。

日本・西欧メーカーが展開するEVは、非公式に市場投入されている中国製EVよりも高価格だ。しかし、ブランドへの信頼や公式ディーラーによる保証・アフターサービスなどを重視する消費者にとっては、選択できるEVの幅が広がりつつある。非公式輸入が先行してきたEV市場構造に今後変化が生じる可能性がある。

執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課ロシアCIS班
柴田 紗英(しばた さえ)
2021年、ジェトロ入構。農林水産食品部、ジェトロ・ワルシャワ事務所を経て、2024年9月から現職。