新車乗用車の登録台数は徐々に回復、中国からのEV輸入が加速(ウクライナ)

2025年11月21日

ウクライナの自動車市場研究所によると、2024年の同国の新車乗用車の新規登録台数は6万8,751台だった(前年比9.2%増)。そのうち 国外からの輸入車が6万5,667台(95.5%)、国内生産車が3,084台(4.5%)だった。

2021年の新車乗用車の新規登録台数は10万7,800台で、2014年以降初めて10万台に達した。ロシアによるウクライナ侵攻により、2022年には3万9,089台まで落ち込んだが、徐々に回復している。

新車はトヨタが首位、その他の日本ブランドも人気

2024年の新規登録台数を月単位で見ると、8月を除いて、約5,000~6,000台が登録された。8月は8,119台と突出して増加している。これは、7月18日に新車と中古車の新規登録に対する15%の追加軍事税を定める法案が提出されたことが背景にある。この追加課税は、自動車の需要縮小や課税価格算定時の汚職リスクなどが懸念され、結局導入されなかった。

ブランド別では、トヨタが14.1%と、唯一2桁のシェアを獲得している(表1参照)。日産、スズキ、マツダも、それぞれ3~4%のシェアを有し、日本メーカーの人気ぶりがうかがえる。

表1:ブランド別乗用車新規登録台数 上位10位(2024年)
順位 ブランド シェア
(%)
登録台数
2024年 2023年(注1)
1 トヨタ 14.1 9,700 10,012
2 ルノー 9.8 6,714 5,701
3 フォルクスワーゲン(VW) 7.6 5,200 6,434
4 BMW 7.1 4,885 4,502
5 シュコダ 6.7 4,625 4,944
6 現代 4.1 2,843 3,415
7 日産(注2) 4.1 2,840 2,073
8 スズキ 3.4 2,332 2,517
9 マツダ 3.3 2,266 2,435
10 メルセデス・ベンツ 3.1 2,158 2,880

注1:2023年の登録台数は、各月の登録台数をジェトロにて集計。
注2:2023年の日産の登録台数は、データ入手可能だった3~12月分のみの集計。
出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

モデル別に見ると、1位はルノーのダスターが5,575台、2位はトヨタのRAV-4が4,068台だった(表2参照)。ルノーのダスターは、低価格ブランドとして知られるルノー傘下のダチア(ルーマニア)が展開するモデルだ。上位10モデルのボディータイプを見ると、10位のトヨタのカムリ(セダン)以外がスポーツ用多目的車(SUV)だった。

表2:モデル別乗用車新規登録台数 上位10位(2024年)
順位 車種名 登録台数
1 ルノー・ダスター 5,575
2 トヨタ・RAV-4 4,068
3 マツダ・CX-5 1,739
4 起亜・スポーテージ 1,658
5 VW・ID.4 1,618
6 VW・トゥアレグ 1,417
7 現代・ツーソン 1,413
8 シュコダ・コディアック 1,392
9 ホンダ・M-NV 1,294
10 トヨタ・カムリ 1,265

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

国内中古車市場はフォルクスワーゲンが最大シェア

2024年の国内市場で販売・購入された中古車(国内再販中古車)の登録台数は110万9,000台だった。12月の10日間、サイバー攻撃で中古車の再登録が停止したにもかかわらず、前年より15.9%増加した。自動車市場研究所の分析によると、5月18日に発効した車両動員に関する法律が影響している。この法律は、特定の期間、ウクライナ軍やその他の軍事組織の需要に応じた、行政組織、公的機関、企業、個人などのあらゆる対象からの車両の徴用を規定する。個人が1台しか車両を有していない場合、徴用の対象とはならない。そのため、複数の自動車を保有していた個人が他者に所有権を移したことで、登録台数の増加につながった。自動車市場研究所は、車両徴用の影響がなかった場合、国内再販中古車の登録台数は前年(95万6,000台)とさほど変わらないのではないかと指摘する。

ブランド別とモデル別登録台数では、ドイツメーカーが存在感を示す(表3、4参照)。国内再販中古車の平均車齢は16.3年だった。

表3:ブランド別国内再販中古車登録台数 上位10位
(2024年)
順位 メーカー・ブランド シェア (%) 登録台数
1 VW 12.5 138,394
2 ルノー 5.9 65,425
3 アフトワズ/ラーダ 5.9 65,205
4 シュコダ 5.5 60,881
5 トヨタ 5.2 57,927
6 BMW 4.9 54,381
7 フォード 4.9 53,965
8 メルセデス・ベンツ 4.6 51,092
9 現代 4.4 48,392
10 アウディ 4.4 48,293

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

表4:モデル別国内再販中古車登録台数 上位10位
(2024年)
順位 車種名 登録台数
1 VW・パサート 39,175
2 シュコダ・オクタビア 35,004
3 VW・ゴルフ 30,689
4 ZAZ/大宇・ラノス 25,561
5 ルノー・メガーヌ 19,577
6 フォード・フォーカス 16,636
7 BMW・5シリーズ 15,315
8 オペル・アストラ 14,929
9 BMW・3シリーズ 14,304
10 シュコダ・ファビア 14,215

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

2024年に輸入された中古車の登録台数は22万8,500万台(前年比3.3%増)、平均車齢は10年だった。ブランド、モデル別では、ドイツメーカーの強さに加え、EVなど先進的な車種選好がみられる(表5、6参照)。

表5:ブランド別輸入中古車登録台数 上位10位(2024年)
順位 メーカー・ブランド シェア (%) 登録台数
1 VW 15.5 35,406
2 アウディ 9.0 20,585
3 日産 7.6 17,361
4 ルノー 7.0 16,061
5 フォード 5.8 13,235
6 BMW 5.8 13,208
7 シュコダ 5.6 12,845
8 テスラ 5.2 11,849
9 現代 4.5 10,193
10 ジープ 3.3 7,449

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

表6:モデル別輸入中古車登録台数 上位10位(2024年)
順位 車種名 登録台数
1 VW・ゴルフ 10,997
2 シュコダ・オクタビア 8,149
3 VW・パサート 6,618
4 ルノー・メガーヌ 6,030
5 VW・ティグアン 6,013
6 日産・リーフ 5,559
7 アウディ・Q5 5,348
8 テスラ・モデル3 4,688
9 ルノー・セニック 4,443
10 アウディ・A4 4,426

EVの登録台数は2年で約3倍に増加

自動車市場研究所によると、2024年12月末時点で、ウクライナには約13万9,200台の電気自動車(EV)が登録されている。そのうち、乗用車は約13万5,200台、トラックは約3,000台、バイクは約900台、バスは5台だ。2023年1月末時点では、4万7,982台(乗用車4万6,145台、トラック1,833台、バス4台、廃車や輸出によって登録から削除された車両も含む)だった。2023年12月末時点では、8万5,881台(乗用車8万3,668台、トラック2,208台、バス5台)が登録されていた(廃車や輸出によって登録から削除された車両を除く)。約2年の間にウクライナでのEVの登録車数は約3倍に伸びている。

2021年~2024年の乗用車のEV登録台数は図1のとおりで、新車、国内再販中古車、輸入中古車それぞれの登録台数は年々伸びており、2024年の乗用車EV全体の登録台数は2021年の約5倍に相当する。また、新車乗用車の新規登録台数におけるEVの割合は、2021年に1.1%だったのが、2024年は14.8%となった。輸入中古車では、2021年の1.4%から2024年は18.3%まで拡大している。

図1:ウクライナにおけるEV登録台数の推移
新車は2021年に1,213台、2022年に2,300台、2023年に7,304台、2024年に10,200台。国内再販中古車は、2021年に6,997台、2022年に9,200台、2023年に16,444台、2024年に26,100台。輸入中古車は、2021年に7,484台、2022年に11,100台、2023年に30,403台、2024年に41,200台。

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

2024年にウクライナで登録されたEVの乗用車は7万7,500台だった(前年比44.6%増)。そのうち、輸入された新車が1万200台(40.9%増)、輸入中古車が4万1,200台(前年比37.0%増)、国内再販中古車が2万6,100台(60.1%増)だった。ブランド、モデル別に見ると、表7、8のとおり。

表7:ブランド別EV乗用車登録台数・シェア 上位10位(2024年)

新車乗用車
順位 ブランド シェア
(%)
登録台数
1 VW 19.1 1,973
2 BYD 19.1 1,969
3 ホンダ 17.4 1,799
4 日産 8.1 841
5 ジーカー 7.9 819
6 アウディ 5.5 571
7 MG 4.0 413
8 BMW 3.7 379
9 メルセデス・ベンツ 3.4 355
10 ボルボ 3.2 333
輸入中古車
順位 ブランド シェア
(%)
登録台数
1 テスラ 28.3 11,849
2 日産 15.1 6,313
3 VW 10.0 4,184
4 現代 8.7 3,666
5 アウディ 5.5 2,286
6 起亜 5.4 2,263
7 ルノー 5.1 2,149
8 シボレー 3.5 1,482
9 メルセデス・ベンツ 2.5 1,058
10 ジャガー 2.3 959
国内再販中古車
順位 ブランド シェア
(%)
登録台数
1 テスラ 26.8 7,003
2 日産 22.5 5,880
3 VW 13.4 3,500
4 ルノー 5.0 1,293
5 現代 4.3 1,131
6 アウディ 3.4 885
7 BMW 3.1 803
8 シボレー 2.7 713
9 ホンダ 2.6 678
10 メルセデス・ベンツ 2.5 661

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

表8:モデル別EV乗用車登録台数 上位10位(2024年)

新車乗用車
順位 モデル 登録台数
1 VW・ID.4 1,618
2 ホンダ・M-NV 1,294
3 BYD・Song Plus 1,071
4 日産・アリア 783
5 ジーカー・001 702
6 ホンダ・e:NS1 431
7 アウディ・Q4 374
8 MG4 299
9 VW・ID.6 268
10 BYD Song 236
輸入中古車
順位 モデル 登録台数
1 日産・リーフ 5,559
2 テスラ・モデル3 4,688
3 テスラ・モデルY 4,285
4 VW・Golf 2,503
5 現代・Kona 2,354
6 テスラ・モデルS 2,086
7 アウディ・E-Tron 1,692
8 ルノー・Zoe 1,575
9 起亜・Niro 1,456
10 シボレー・ボルト 1,418
国内再販中古車
順位 モデル 登録台数
1 日産・リーフ 5,600
2 テスラ・モデル3 3,160
3 VW・Golf 1,878
4 テスラ・モデルY 1,747
5 テスラ・モデルS 1,609
6 VW・ID.4 1,213
7 ルノー・Zoe 1,099
8 アウディ・E-Tron 691
9 シボレー・ボルト 648
10 現代・Kona 608

出所:自動車市場研究所からジェトロ作成

特徴的なのは、新車EV市場で中国メーカーがシェアを伸ばしていることだ。モデル別に見ると、2022年は18位にBYDのE-2、19位にBYDのYuanがランクインする程度だった。一方、2024年のデータを見ると、ブランド別では2位にBYD、5位にジーカー〔Zeekr、中国自動車大手の吉利汽車(Geely)傘下のEVメーカー〕が入った。モデル別では3位にBYDのSong Plus、5位にZeekrの001が入った。

自動車市場研究所は、ウクライナ市場における「中国車の第2波」の動きを指摘する。第1波は2005~2008年ごろ、主にコストパフォーマンスを強みとするガソリン車で、奇瑞汽車(Chery)、Geelyなどの中国車が需要を伸ばした時期を指している。第2波は主にEVで、中国ブランドだけでなく、日本や欧州、米国ブランドを含む、中国で生産された自動車の需要が伸びる現状を指している。

2024年にウクライナ市場に投入された中国製の新車乗用車は1万974台で、ブランド別ではBYDが2,034台、ホンダが1,971台、VWが1,967台と続く。その1万974台のうち79.8%がEVだ。同年に輸入された新車のEV乗用車は1万200台で、このうち85%以上が中国で製造され、輸入された新車ということになる。

しかし、非正規ディーラーによるウクライナ市場への供給も指摘されている。VWは、他市場向けに製造されたIDモデルの一部が非正規ディーラーによってウクライナに輸入されており、同国での使用の技術レベルや現地規制に適合しないとして、注意喚起をしている。

ここ数年のEVの市場拡大は、輸入時の付加価値税(VAT)20%と関税の撤廃措置が影響している。VATの撤廃措置を定める現行(2025年11月11日時点)の規定は2025年末を適用期限としている。この優遇措置を2026年末まで延長する法案は2025年6月6日に提出されている。一方で、EVの輸入関税率の改正に関する公式の発表はないものの、複数のメディアでは、2026年から10%の関税が加算される可能性が報じられている。これらの優遇措置が終了すると、購入コストが20~30%上昇するといわれており、今後の動向が注目される。

ウクライナの自動車部品メーカー、ワイヤーハーネスを中心に欧州へ部品供給

最後に、ウクライナの自動車・自動車部品メーカーの分布についてみていきたい。同国での完成車製造は、他国メーカー・ブランド車の組み立て製造が主で、製造台数も新車登録台数の約1割以下に限定される。

ロシアによるウクライナへの全面侵攻前の2021年でも、国内生産車(国産車)の登録台数は1万100台で、新車登録台数全体(10万7,800台)の1割以下にとどまった。そのうち約3,700台はユーロカーが組み立て生産を行うシュコダ車で、約2,000台はザポリージャ自動車工場(ZAZ)がロシアからの生産キットで製造するラーダ(LADA、ロシアのアフトワズのモデル)車だった。なお、2022年のLADA車の新規登録台数は403台と前年の5分の1まで減少し、その後はほとんど登録されていない。ウクライナ情勢によってロシアからの部品供給が滞り、アフトワズモデルの生産・販売活動はほぼ停止していると思われる。

2024年の新車乗用車の新規登録台数6万8,751台のうち、国産車は3,084台と4.5%にとどまる。車種別に見ると、1位はシュコダのコディアック(1,003台)、2位はシュコダのカロック(694台)、その後に続くのは、現地企業による特殊車両への改造車だった。シュコダ車は公式ディストリビューターのユーロカーが、スロバキアとハンガリーに隣接するザカルパッチャ州で組み立て生産をしている。通常用途の乗用車について、ウクライナ国内で一定の生産活動、販売台数を維持できているのはユーロカーのみだ。

自動車部品については、ワイヤーハーネスを中心に、欧米や日本のメーカーがウクライナ西部を中心に拠点を構える(図2参照)。ワイヤーハーネスは一定の手作業を要する労働集約型の製品で、労働コストの安さとEU加盟国への近接性から、欧州の完成車メーカーへの主要供給地の1つとなっている。

日本企業では、フジクラ、矢崎総業、住友電工がワイヤーハーネスの製造拠点を構えている。ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、工場の一時的な稼働停止や、ウクライナ国外拠点における生産能力の増強などの対応を取りながらも、現在も生産活動を継続している。

図2:主な自動車部品メーカーの立地状況PDFファイル(353KB)

執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課ロシアCIS班
柴田 紗英(しばた さえ)
2021年、ジェトロ入構。農林水産食品部、ジェトロ・ワルシャワ事務所を経て、2024年9月から現職。