フリーゾーンへの投資を中核に安定成長が持続(ドミニカ共和国)
税制インセンティブと競争力ある労働力
2026年6月15日
ドミニカ共和国が安定した経済成長を続けている。その背景には、1990年以降発展を続けている輸出フリーゾーン(ZFE)制度がある。ZFEを中核に医療機器製造など高付加価値製造業の誘致に成功し、2025年に中南米・カリブ地域では第8位の経済規模となった。ZFEの税制インセンティブと競争力ある労働力を武器に、同国はさらなる外資誘致を狙う。近年のニアショアリング需要の高まりを背景に、その重要性は一段と高まっている。ZFEを中心に同国の最新動向を報告する。
過去10年間の年平均成長率は域内2位
ドミニカ共和国は、カリブ海でキューバ島に次いで2番目に大きいイスパニョーラ島の東部に位置する。西部にはハイチがある。カリブ海のほぼ中央に位置し、米国フロリダ州マイアミからは1,400キロメートル、空路で約2時間の位置にあり、米国向けニアショアリング製造拠点として最適な立地にある。人口は2025年時点推定値で1,088万人、カリブ島嶼(とうしょ)国ではキューバに次いで2番目に多い。
過去10年間の実質GDP成長率を見ると、コロナ禍の2020年に観光産業が大打撃を受け、マイナス7.9%の大きな落ち込みをみせた。それ以外の年はおおむね安定した成長が続き、年平均成長率は4.2%に達する。
中南米・カリブ地域では、2015年に大規模油田が発見され、2020年の原油生産開始から急成長しているガイアナ(2025年12月12日付地域・分析レポート参照)に次ぐ高い成長率となっている(図1参照)。2025年の名目GDPはドル建てで1,278億6,100万ドルであり、中南米・カリブ地域では第8位(注1)の経済規模だ(表1参照)。インフレ率(消費者物価指数上昇率)は過去10年間平均で4%台前半、失業率も同5.8%、為替レートの変動率も毎年3.2%程度で推移しており、安定したマクロ経済環境を有している。
出所:IMF(World Economic Outlook Database, April 2026)データからジェトロ作成
| 指標 | 単位 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| GDP成長率 | % | 6.7 | 3.9 | 7.1 | 4.9 | △ 7.9 | 14.0 | 5.2 | 2.2 | 5.0 | 2.1 |
| 名目GDP | 100万ドル | 75,613 | 79,103 | 84,974 | 89,113 | 78,481 | 95,123 | 113,908 | 120,760 | 124,598 | 127,861 |
| 人口 | 1,000人 | 10,075 | 10,169 | 10,266 | 10,358 | 10,448 | 10,536 | 10,622 | 10,711 | 10,796 | 10,878 |
| 1人当たりGDP | ドル | 7,505 | 7,779 | 8,277 | 8,603 | 7,511 | 9,029 | 10,724 | 11,274 | 11,541 | 11,754 |
| 消費者物価上昇率 | % | 1.70 | 4.20 | 1.17 | 3.66 | 5.55 | 8.50 | 7.83 | 3.57 | 3.35 | 4.95 |
| 完全失業率 | % | 7.08 | 5.51 | 5.66 | 6.17 | 5.83 | 7.38 | 5.29 | 5.31 | 5.14 | 5.03 |
| 期中平均為替レート | ペソ/ドル | 46.09 | 47.57 | 49.54 | 51.34 | 56.59 | 57.25 | 55.14 | 56.17 | 59.58 | 62.00 |
| 輸出額 | 100万ドル | 9,840 | 10,135 | 10,638 | 11,193 | 10,302 | 12,486 | 13,750 | 12,950 | 13,929 | 15,958 |
| うちフリーゾーン | 100万ドル | 5,504 | 5,710 | 6,035 | 6,250 | 5,895 | 7,180 | 7,827 | 7,959 | 8,500 | 8,552 |
| 輸入額 | 100万ドル | 17,399 | 17,734 | 20,197 | 20,268 | 17,105 | 24,282 | 30,913 | 28,813 | 29,803 | 29,793 |
| うちフリーゾーン | 100万ドル | 3,534 | 3,747 | 3,838 | 3,952 | 3,620 | 4,613 | 5,276 | 4,874 | 4,853 | 4,754 |
| 対内直接投資額 | 100万ドル | 2,407 | 3,571 | 2,535 | 3,021 | 2,560 | 3,197 | 4,099 | 4,390 | 4,523 | 5,033 |
| うちフリーゾーン | 100万ドル | 224 | 264 | 234 | 260 | 232 | 284 | 368 | 345 | 417 | 438 |
| 財政収支/GDP | % | △ 2.7 | △ 2.8 | △ 2.3 | △ 2.3 | △ 7.6 | △ 2.5 | △ 2.7 | △ 3.1 | △ 3.2 | △ 3.3 |
| 公的対外債務残高/GDP | % | 45.1 | 47.0 | 48.2 | 50.4 | 69.4 | 62.2 | 58.6 | 58.8 | 57.4 | 57.9 |
出所:ドミニカ共和国中央銀行
輸出総額の5~6割を占めるフリーゾーン
カリブ海屈指のビーチリゾートであるプンタカナなどを有するドミニカ共和国は、観光業による収入が大きい。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、観光業の同国GDPへの貢献を2024年に16.1%と推定し(2025年6月27日付WTTCプレスリリース参照
)、同年の観光業の雇用を87万6,000人と見込んでいる。中央銀行のプレスリリース
によると、2025年の対内直接投資額に占める観光業の割合は26.3%に及ぶ。
観光業ほどGDPへの直接的貢献は大きくないものの、輸出フリーゾーン(ZFE)は同国の経済成長、雇用、外国直接投資に大きく貢献している。同国の輸出総額に占めるZFEからの輸出は5~6割に及ぶ。対内直接投資も約8~9%(2025年は8.7%)がZFEへの投資となっている。国内98カ所あるZFEの雇用合計は、2025年に20万人を超えた。
ドミニカ共和国の最初の輸出加工区は、1969年設立のラ・ロマーナ自由貿易区だが、1990年の法律8号に基づき現在の税制インセンティブが確立された1990年以降、ZFEの急拡大が始まった。国家輸出フリーゾーン評議会(CNZFE)のデータから過去20年間の工業団地数、企業数などの推移を見ると、工業団地数は2025年に2005年比41カ所増加して98カ所に達し、入居企業数も同302社増加して858社に達した(表2参照)。これらの企業により雇用されたZFEの雇用総数は20万237人に及び、過去20年間で4万7,282人増加した。
2025年のZFEからの輸出額は、20年前の1.8倍に当たる85億4,860万ドルとなり、同年の累積投資額は2006年比3.3倍の81億6,410万ドルに達した。入居企業1社当たりの輸出額を計算すると、2005年は850万ドルだったものが、2025年には1,000万ドルとなっており、輸出品目の高付加価値化が進んでいる。
| 年 | 工業団地 | 企業 | 雇用 | 輸出額 | 輸入額 | 貿易収支 | 累積投資額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2005年 | 57 | 556 | 152,955 | 4,749.7 | 2,503.2 | 2,246.5 | N.A. |
| 2006年 | 56 | 555 | 146,535 | 4,678.6 | 2,615.0 | 2,063.6 | 2,471.7 |
| 2007年 | 53 | 526 | 126,187 | 4,525.2 | 2,499.7 | 2,025.5 | 2,457.3 |
| 2008年 | 48 | 525 | 122,531 | 4,354.1 | 2,428.8 | 1,925.3 | 2,611.2 |
| 2009年 | 47 | 553 | 110,728 | 3,793.5 | 2,349.7 | 1,443.8 | 2,738.1 |
| 2010年 | 48 | 555 | 119,104 | 4,194.4 | 2,609.0 | 1,585.4 | 2,881.6 |
| 2011年 | 51 | 578 | 123,007 | 4,767.1 | 2,938.7 | 1,828.4 | 2,913.7 |
| 2012年 | 53 | 584 | 131,977 | 4,918.9 | 2,898.7 | 2,020.2 | 3,133.9 |
| 2013年 | 55 | 602 | 142,125 | 4,976.4 | 3,110.8 | 1,865.6 | 3,442.8 |
| 2014年 | 60 | 614 | 150,967 | 5,261.7 | 3,423.8 | 1,837.9 | 3,794.9 |
| 2015年 | 65 | 630 | 158,713 | 5,423.6 | 3,498.0 | 1,925.6 | 4,043.1 |
| 2016年 | 69 | 645 | 160,594 | 5,503.9 | 3,534.1 | 1,969.8 | 4,326.8 |
| 2017年 | 71 | 665 | 163,096 | 5,709.6 | 3,746.7 | 1,962.9 | 4,473.1 |
| 2018年 | 74 | 673 | 168,123 | 6,035.2 | 3,837.6 | 2,197.6 | 4,977.8 |
| 2019年 | 75 | 695 | 172,711 | 6,249.5 | 3,951.6 | 2,297.9 | 5,107.0 |
| 2020年 | 75 | 692 | 164,421 | 5,894.5 | 3,620.2 | 2,274.3 | 5,189.0 |
| 2021年 | 79 | 734 | 179,455 | 7,179.6 | 4,612.5 | 2,567.1 | 5,903.1 |
| 2022年 | 84 | 774 | 187,869 | 7,827.3 | 5,275.7 | 2,551.6 | 7,160.9 |
| 2023年 | 87 | 820 | 193,344 | 7,959.4 | 4,873.6 | 3,085.8 | 7,496.2 |
| 2024年 | 94 | 843 | 193,398 | 8,500.3 | 4,852.8 | 3,647.5 | 7,735.7 |
| 2025年 | 98 | 858 | 200,237 | 8,548.6 | 4,753.5 | 3,795.1 | 8,164.1 |
出所:国家輸出フリーゾーン評議会(CNZFE)
医療機器メーカーの進出が拡大、2024年にはZFE輸出の3割超に
2024年末時点のZFEの利用を製品・サービス分野別に見ると、企業数ではたばこ(葉巻)が160社と最多で全体の19.0%を占める(図2参照)。コールセンター・BPO、縫製・繊維、サービス、農産加工品と続き、医療製品(医療機器など)は全体の4.7%に過ぎない。
しかし、雇用規模の大きな大企業が多いことから、医療製品の雇用は3万3,437人と全体の16.8%を占める。医療製品以外で雇用への貢献が大きいのは、たばこ(19.6%)、コールセンター・BPOと縫製・繊維(いずれも18.2%)だ。
累積投資額で見ると、医療製品は19億4,040万ドルで全体の25.1%を占め、たばこ(24.7%)、縫製・繊維(9.9%)が続く。輸出額で見ても医療製品が最多で27億6,260万ドルに及び、全体の32.8%を占める。続いて、たばこ(15.7%)と電気・電子機器(13.7%)の輸出が多い。
注:電気電子機器の累積投資額はその他に含まれる。
出所:国家輸出フリーゾーン評議会(CNZFE)のデータを基にジェトロ作成
医療製品のZFEにおけるプレゼンスは、近年特に顕著だ。2000年時点の企業数では縫製・繊維が275社で全体の57.2%を占めており、医療製品は13社で3.0%に過ぎなかった。輸出額も縫製・繊維が全体の52.8%を占め、医療製品は8.4%に過ぎなかった。
2001年末の中国のWTO加盟を機に、繊維・縫製業は最大の仕向け地である米国市場において、中国製品との厳しい競争にさらされることとなった。
2010年になると、企業数で縫製・繊維は120社となり、全体の21.6%まで縮小した。代わりにサービス(20.7%)、たばこ(9.2%)が増えたが、医療製品は24社(4.3%)にとどまっていた。
同年の輸出額で見ると、縫製・繊維の輸出額は全体の23.6%まで低下した。一方、医療製品の輸出額は24社合計で10億6,410万ドル、全体の26.1%と、この時点で既に縫製・繊維を上回った。
2020年になると、縫製・繊維は87社(12.6%)まで減少し、サービス(23.4%)、たばこ(14.3%)が増加したほか、医療製品も35社(5.1%)まで増えた。
同年の輸出額を見ると、縫製・繊維のシェアが11.7%とさらに縮小する一方、医療製品は30.7%に達し、最大の輸出セクターに成長した。
ZFEへの累積投資額を国別に見ると、米国からの投資が全体の29.8%を占め最多で、ドミニカ共和国(24.1%)、ドイツ(9.7%)、英国(8.5%)、カナダ(3.7%)と続く(図3参照)。
米国からの投資は多様な分野に及び、ニアショア製造拠点としてのドミニカ共和国の活用が進んでいる。
ドミニカ共和国資本の企業の投資は、たばこ(葉巻)や食品・飲料などの分野で多い。医療製品分野では、米国系の医療機器大手が工場を持つほか、ドイツや英国の企業も進出している。米国市場への近接性と制度的優遇を併せ持つ同国は、医療機器など規制・品質対応が求められる製造業の集積地として地位を高めている。
出所:国家輸出フリーゾーン評議会(CNZFE)
ドミニカ共和国を重要な輸出製造拠点として活用するビー・ブラウン
ドミニカ共和国政府によると、同国のZFEには米国のメドトロニック(Medtronic)、カーディナル・ヘルス(Cardinal Health)、バクスター(Baxter)、ベクトン・ディキンソン(BD)、メドライン(Medline)、ドイツのフレゼニウス(Fresenius Medical Care)、ビー・ブラウン(B. Braun)など、米欧を中心とする世界有数の医療機器メーカーが製造拠点を構えている。
ドイツに本社を置くグローバル医療機器企業ビー・ブラウンは、1839年創業の家族経営企業だ。世界60カ国以上で事業を展開している。売上高は約91億ユーロ(2024年、ビー・ブラウンのウェブサイト参照
)で、従業員は約6万人を超え、売上高では世界15位前後の規模に位置する。輸液・外科・透析を中心に、機器、消耗品、サービスを統合提供する病院向け総合ソリューションが特徴だ。
ビー・ブラウンは、早くからドミニカ共和国のラス・アメリカス・フリーゾーンに進出し、低コスト製造拠点として活用してきた。進出は1999年で、当時の従業員はわずか55人だった。
2000年代にはカテーテル、輸液セット、シリンジなど消耗品系の医療機器の米国向け量産体制を確立し、2010年代には生産品目の多角化と雇用規模の拡大を続けた。従業員数は1,000人を超える規模となり、生産ラインも多様化し、同社のグローバルなサプライチェーンの中でも重要な供給拠点となった。
2022年3月には約13ヘクタールに及ぶ大規模な新工場を開設し、1,000人を追加雇用した。その後もドミニカ共和国への投資を継続し、最新の建屋は2025年1月に稼働を開始した。2020~2025年(コロナ禍を含む)に生産量が大きく拡大し、2026年3月時点の雇用規模は約3,500人に達している。ビー・ブラウンにとってドミニカ共和国は輸出製造拠点のモデルであり、年間約1億個の完成品を生産して米国、カナダ、欧州市場に出荷している。
アジア向け輸出は限定的だが、日本への輸出実績もある。同工場の主力生産品は輸液セットや静脈用投与セットで、プラスチック製チューブを内製し、クリーンルーム内で組み立て、検査、包装を行い出荷している。
魅力的な税制インセンティブ、国内販売規制も撤廃
医療機器メーカーや電気・電子機器メーカーなど外資系企業の投資を誘引してきたのは、ZFEの魅力的な税制インセンティブだ。ZFEに進出することで、輸出オペレーションに関連するほぼ全ての税や公課が免除となる。法人所得税(ISR、通常の国内税率は27%)、工業製品・サービス移転税(ITBIS、付加価値税、一般税率は18%)、原材料や部品、機械設備、工具・治具の輸入関税など、ほぼ全ての税金がZFE内では課されない。ただし、国内に製品を販売した場合は、関税とITBISを支払う必要がある。詳細は表3を参照。
表3:ドミニカ共和国の輸出フリーゾーン(ZFE)の税制インセンティブ一覧
| 税目 | 内容 | 条文 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 所得税(ISR) | 免税 | 第24条(a) | 通常の法人税率は27%だが、ZFEでは免税。ただし、国内販売分については売上高(課税所得ではない)の2.5%を納税 |
|
建設税、抵当融資契約税、 不動産譲渡税 |
免税 | 第24条(b) | ー |
| 会社設立・増資税 | 免税 | 第24条(c) | ー |
| 地方税 | 免税 | 第24条(d) | ー |
| 輸入関税 | 全免除 | 第24条(e) | ZFEにおける操業に用いる原材料、部品、資本財の全てが対象。その後、国内販売した場合は納税する。 |
| 輸出税 | 免税 | 第24条(f) | ドミニカ共和国には現時点で輸出税は適用されていない。 |
| 工業製品・サービス移転税(ITBIS) | 免税 | 第24条(g) | 通常の税率は18%。ZFEへの輸入、ZFE内の販売には非課税。ZFE外に販売した場合は納税する。 |
| 免許・財産税・資産税 | 免税 | 第24条(g) | 現状で法人が対象となる資産税としては、資産価格の1%に相当するミニマムタックス(法人所得税と相殺)があるが、ZFEでは免税。 |
| 領事税(輸入関連) | 免税 | 第24条(h) | 通常の輸入ではCIF価格の0.4%が課税されるが、これを免除。 |
| 労働者福利厚生関連設備の輸入関税 | 免税 | 第24条(i)(j) | 職場の食堂、診療所、託児所などに用いられる設備の関税を免除。 |
| 貨物・従業員輸送用車両の輸入関税 | 免税 | 第24条(i)(j) | 輸入後最低5年間は転売できない。 |
|
利益の再投資分に対するISR 免税 |
免税 | 第26条 | ハイチとの国境地帯のZFEは再投資分の100%、首都圏は同80%、それ以外は同90%の所得がISR免除扱いとなる。ただし、当該年度の課税所得の50%を上回ることはできない。 |
出所:1990年の法律8号(Ley 8-90)および2011年の法律139号(Ley 139-11)
輸出を条件に所得税を引き下げることは、WTOの補助金および相殺関税に関する協定(SCM協定)上、輸出補助金とみなされる。WTO加盟国は輸出補助金を撤廃する必要があるが、SCM協定第27条に基づき、開発途上国は当初、WTO発足後8年間(2002年末まで)の猶予期間が設けられていた。
一部の国が猶予期限までに撤廃できなかったため、2007年7月31日のWTO一般理事会会合で同期限が2015年末まで延長された。
ドミニカ共和国もWTOとの関係で、2015年末までに輸出を条件としたISRの免除を見直す必要が生じた。さらに、米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定(DR-CAFTA)の第3.4条に基づき、輸出義務などパフォーマンス条件付き関税優遇措置が2010年以降維持不可とされたこともあり、税制見直しが求められた。これを受け、同国は2011年の法律139号(Ley 139-11)において1990年の法律8号の改正を盛り込み、公布した。
2011年の法律139号第11条は、1990年の法律8号の第17条を改正し、ZFE進出企業の国内販売の制限(販売総額の20%まで)を撤廃するとともに、輸出要求を明文で撤廃した。
これにより、国内販売の制限はなくなったが、国内販売収益に相当する部分のISRについては、国内販売額の2.5%(注2)が課税されることとなった(2011年の法律139号の第11条III項)。
なお、関税については、ZFE生産品がZFEから国内市場に向けて搬出された時点でZFEからの輸出、国内市場への輸入とみなされる。このため、製品の工場出し販売価格(Ex-Works)に輸送費を加えた課税標準価格に対し、関税、ITBIS、選択消費税(ISC:たばこなど該当する品目のみ)が課される。
この改正で1990年の法律8号に国内販売の比率制限はなくなったが、同法第2条でZFEは「輸出向け製品製造・サービス提供を行う企業が入居できる地域」と定義されており、同条に変更はない。
また、ZFE利用企業はCNZFEの認可が必要となる。CNZFEの組織や運営について定める1997年の政令366号(Decreto366-97)第8条は、ZFE利用企業の業態について定めており、ここでも輸出に関連する業務(輸出製造業、輸出製造業へのサービス提供、または食事、輸送・貯蔵、警備などフリーゾーン内でのサービス提供)が対象とされている。したがって、100%国内販売向け製品の製造やサービスの提供を行う企業には、ZFE利用企業としての認可は下りないと考えられる。
競争力のある人件費、カリブ島嶼国で最大の労働人口
ドミニカ共和国の人口は2025年央時点で1,074万人となり、カリブ島嶼国の中ではキューバ(1,094万人)に次いで多い。15~64歳の生産年齢人口で比べるとカリブ最多だ(図4参照)。中米・カリブ地域で見ると、グアテマラ(約1,869万人)には及ばないが、コスタリカ(約515万人)の2倍以上となる。
平均年齢は30.4歳で、人口ボーナス指数(注3)は1.86と、現在は人口ボーナス期にある。2030年前後にピークを迎え、少なくとも2050年までは人口増加が続き、1,220万人超まで増加すると見通されている。
出所:国家統計局(ONE)「人口推計1950-2050(2026年3月9日リバイス版)」からジェトロ作成
中米・カリブ地域の中では若くて豊富な労働人口を有する国であり、労働コストにも競争力がある。
CNZFEによると、2024年時点のフリーゾーンの医療製品製造企業のオペレーターの平均賃金は月額358ドル、技能工(技術高校卒業レベル)は658.3ドルで、前年比上昇率はそれぞれ0.7%、4.5%となっている(表4参照)。
オペレーター賃金を対米オフショア医療機器製造拠点であるメキシコおよびコスタリカと比較すると、メキシコのティフアナは642ドルとドミニカ共和国の1.8倍、コスタリカのサンホセは約1,000ドルで約3倍となる(注4)。メキシコのティフアナの賃金は2019年以降、毎年2桁の水準で伸びている。このため、メキシコと比較するとドミニカ共和国の賃金水準は低位で安定している。
また、ZFE進出企業のメリットとしては、労働法典(Codigo de Trabajo)第226条第3号に基づき、同法典第223条が定める無期限雇用労働者への利益分配(注5)が免除される点も挙げられる。
| 製品分野 | オペレーター | 技能工 | 上昇率(2024/2023年) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 2024年 | 2023年 | 2024年 | オペレーター | 技能工 | |
| 医療製品 | 355.6 | 358.0 | 630.2 | 658.3 | 0.7 | 4.5 |
| 履物・同部品 | 340.2 | 355.7 | 572.1 | 588.6 | 4.5 | 2.9 |
| 宝飾品 | 326.6 | 335.3 | 525.3 | 541.8 | 2.7 | 3.1 |
| 繊維・縫製品 | 325.8 | 328.3 | 556.1 | 563.2 | 0.8 | 1.3 |
| たばこ・派生品 | 324.2 | 322.7 | 530.3 | 541.6 | △ 0.5 | 2.1 |
| 電気・電子機器 | 316.5 | 316.0 | 543.5 | 546.0 | △ 0.2 | 0.5 |
注:CNZFEのオリジナル・データはドミニカ共和国ペソ建ての週当たり平均賃金だが、4.34を乗じて月給に換算し、期中平均レートで除してドル換算した。上昇率もドル換算後の上昇率であり、ペソ建てではいずれの製品分野でも上昇している。
出所:国家輸出フリーゾーン評議会(CNZFE)データからジェトロ作成
ドミニカ共和国政府は、フリーゾーンで働く労働者の人材育成に力を入れている。1980年の法律116号に基づき同年に設立されたドミニカ共和国職業技術訓練庁(INFOTEP)がその役割を担う。
INFOTEPは毎年の国家予算に加え、企業(雇用主)から従業員の固定給与総額(注6)の1.0%、従業員から利益分配およびボーナス支給額の0.5%を徴収し、運営資金としている。
ZFEはINFOTEPのサービスを積極的に活用している。INFOTEPへの企業拠出金は、一般には全国的な職業訓練制度を支える共通財源として機能しているが、フリーゾーン企業については1992年のINFOTEPとドミニカ共和国フリーゾーン協会(ADOZONA)の協定に基づき、ZFE進出企業が納めた拠出金の35%を、ZFEの労働者向けの研修・訓練・専門化に重点的に振り向ける仕組みが設けられている。
このため、多くのZFEはこの制度を積極的に活用し、各ZFE内にINFOTEPの研修・訓練施設を誘致している。企業立ち上げ時の採用訓練や専門工程向け技術研修などに活用しやすい環境を整備している。医療機器や電子機器を製造する外資系企業も、自社に必要な労働者のスキルをINFOTEPに提示し、INFOTEPが訓練を設計・実施し、実地研修は企業の現場で行うといったかたちで人材育成を行っている。
- 注1:
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ブラジル(2兆2,799億1,800万ドル)、メキシコ(1兆8,326億4,100万ドル)、アルゼンチン(6,814億8,500万ドル)、コロンビア(4,574億1,000万ドル)、チリ(3,553億4,600万ドル)、ペルー(3,410億2,500万ドル)、エクアドル(1,303億2,100万ドル)、ドミニカ共和国(1,278億6,100万ドル)、グアテマラ(1,211億1,300万ドル)、コスタリカ(1,029億200万ドル)の順。
- 注2:
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国内市場への売上高が課税ベースであり、通常の内国法人に適用される、売上から費用を控除した課税所得が課税ベースではない。2011年の大蔵省内国税局(DGII)一般規定5号に基づき、ZFE利用企業の月次税務申告では、フリーゾーン総売上高と国内市場売上高の双方を申告することとなった(一般規定第2条)。後者に2.5%を乗じた税額を翌月15日までに納税する(第3条)。
- 注3:
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15~64歳の「生産年齢人口」が、14歳以下の年少人口や65歳以上の高齢者などの「従属人口」の何倍に当たるかを示す指標。
- 注4:
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メキシコはジェトロの投資コスト比較調査による(2025年1月のデータ)。コスタリカは進出日系企業に対するヒアリング調査(2026年2月実施)による。
- 注5:
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企業の年間純利益の10%を期間の定めのない雇用契約の労働者に分配する仕組み。一時雇用者は対象外。メキシコにも同様の労働者利益分配金(PTU)があるが、同国では一時雇用者も分配の対象となる。
- 注6:
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一般的な企業の給与支払総額(ペイロール)から、利益分配やボーナスなど変動報酬を除いた給与台帳をベースとする。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部米州課主幹(中南米)
中畑 貴雄(なかはた たかお) - 1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て、2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月からジェトロ・メキシコ事務所長、2024年5月から調査部主任調査研究員、2025年4月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『グローバルサプライチェーン再考: 経済安保、ビジネスと人権、脱炭素が迫る変革』、『NAFTAからUSMCAへ-USMCAガイドブック』など。





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