自動車の販売・生産拡大も、成長鈍化の兆し(カザフスタン)

2026年6月29日

カザフスタン自動車ビジネス協会の調査によると、2025年のカザフスタンの乗用車新車販売台数は前年比14.8%増の22万2,452台に達し、過去最高を記録した。2024年の3.6%増から大きく伸びた。一方で、2025年の政策金利引き上げを背景に、自動車ローンのコスト上昇により競争が激化し、消費者行動が慎重化する兆しがある。

2025年自動車販売市場は拡大

乗用車販売台数で上位2ブランドである現代とシボレーは、2025年に販売を拡大し、それぞれ14.8%増、26.1%増となった(表1参照)。一方、2024年に上位10位入りしていた中国ブランドのうち、ジェトゥール、ハバル、長安、吉利(2025年7月2日付地域・分析レポート参照)の販売台数は増加したものの、現代やシボレーには及ばなかった。中国ブランド車の販売シェアは、2024年と同水準の39%を維持した。

上位10位に入った唯一の日本ブランドであるトヨタの販売台数は、2.7%増だったものの、順位は前年の7位から8位へ後退した。レクサスも順位を1つ下げ、12位となった。スバルも25.5%増加したが、順位は16位から18位に下がった。

表1:主要ブランド別乗用車新車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値、ーは値なし)
順位 ブランド名 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比
1 現代 28,359 46,269 43,745 50,225 14.8
2 シボレー 33,306 44,941 30,684 38,700 26.1
3 起亜 14,421 25,478 22,829 23,400 2.5
4 チェリー(奇瑞汽車) 4,464 12,229 14,883 14,570 △2.1
5 ジェトゥール 3,930 9,507 14,507 52.6
6 ハバル 1,500 7,558 10,983 11,688 6.4
7 長安 245 6,087 8,510 11,260 32.3
8 トヨタ 9,575 10,685 10,966 11,259 2.7
9 JAC 3,371 7,525 11,771 10,330 △12.2
10 吉利(ジーリー) 163 3,643 8,252 9,621 16.6
11 BYD 3,245
12 レクサス 2,540 3,558 3,617 3,019 △16.5
13 ラーダ 7,386 1,477 1,085 2,842 161.9
14 シュコダ 1,401 2,634 88.0
15 タンク 1,015 2,047 2,260 10.4
16 EXEED 1,876 3,884 1,621 1,507 △7.0
17 オモダ 1,385 2,088 1,506 △27.9
18 スバル 654 1,521 1,105 1,387 25.5
19 カイー 773 1,253 62.1
20 GAC 128 544 728 33.8
20 MG 288 728 152.8
合計(他ブランドを含む) 115,015 187,072 193,775 222,452 14.8

出所:カザフスタン自動車ビジネス協会「カザフスタン共和国自動車市場レポート 2025年1~12月」

市場の主力はSUV、人気の韓国車に中国車が挑む構図に

乗用車のうち、SUV(スポーツ用多目的車)が依然として人気だ。SUVの販売台数は13万4,201台(表2参照)で、乗用車販売台数の60.3%を占めた。

SUVでも存在感が大きいブランドは、韓国と中国だ。現代および起亜は、この車種区分で上位を占める。現代のSUV4モデルの合計販売台数は27.9%増加した。起亜の2モデルも、合計で4.0%増となった。

中国ブランドSUVの販売も好調だ。2025年には、SUV車種区分の販売台数上位20モデルのうち、中国ブランドが12モデルを占めた。同モデルの合計販売台数は、2024年比で43.2%増加となった。中国ブランドSUVは価格面で現地市場において強い競争力を持ち、その価格は他メーカーのセダンの価格を上回らない(「クルシブ」2月23日)。

SUVの販売台数を大衆クラス、プレミアムクラスに分けると、韓国、中国ブランドが占める大衆クラスは順調な増加がみられるが、日本や欧州ブランドから成るプレミアムクラスは前年比13.9%減となった。

カザフスタンにおけるSUV人気の高まりは、冬季の厳しい気候や広大な国土に起因すると考えられる。未舗装路での走破性の高さや、冬季の急激な気温低下への対応力が重視されているためだ。

もう1つの人気車種区分であるPC(パッセンジャー・カー)(注) においては、シボレーが約50%のシェアを占めた。これは同社の2モデルであるコバルトおよびオニキスが、市場で最も手頃な価格帯に属するためだ。

表2:カザフスタンにおける新車乗用車の車種区分別主要ブランド・モデル乗用車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値、ーは値なし)
セグメント 順位 ブランド名/モデル 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比
SUV

1 現代 ツーソン 8,862 14,409 22,389 20,697 △7.6
2 起亜 スポーテージ 3,321 10,503 8,834 10,988 24.4
3 現代 ムファサ 2 8,203 410,050
4 現代 サンタフェ 2,969 7,433 4,423 5,764 30.3
5 長安 CS55PLUS 109 3,255 3,678 5,558 51.1
6 チェリー ティゴ2 3,678 5,310 5,278 △0.6
7 JAC S3 Pro 81 38 1,295 5,127 295.9
8 ハバル M6 2,390 5,185 5,019 △3.2
9 チェリー ティゴ7 2,324 4,309 4,907 4,520 △7.9
10 ジェトゥール X70FL 608 3,741 515.3
11 ジェトゥール X50 2 3,450 172,400
12 ハバル ジョリオン 354 1,684 3,097 3,369 8.8
13 吉利(ジーリー) クールレイ 86 1,353 2,286 3,259 42.6
14 チェリー ティゴ4 406 2,291 2,966 2,970 0.1
15 ジェトゥールX70Plus 1,119 2,620 2,776 6.0
16 起亜 ソレント 2,132 3,043 4,208 2,576 △38.8
17 トヨタ LCプラド 3,511 1,462 2,727 2,409 △11.7
18 現代 パリセード 988 1,572 1,833 1,962 7.0
19 ジェトゥール T2 806 1,848 129.3
20 トヨタ RAV4 945 1,407 1,759 1,808 2.8
SUV(他ブランドを含む)合計 45,629 93,363 114,424 134,201 17.3
PC

1 シボレー コバルト 23,178 30,425 26,537 31,802 19.8
2 現代 エラントラ 4,981 5,975 6,520 7,867 20.7
3 シボレー オニキス 6,000 2,405 5,732 138.3
4 トヨタ カムリ 991 3,724 3,385 4,496 32.8
5 現代 ソナタ 4,563 4,770 4,092 3,883 △5.1
6 吉利(ジーリー)エムグランド 579 3,009 3,398 12.9
7 起亜 セラート 1,220 3,050 2,255 3,077 36.5
8 起亜 K5 2,277 2,252 2,317 2,677 15.5
9 起亜 シード 1,571 2,856 3,044 2,449 △19.5
10 長安 ALSVIN 2,172 2,414 11.1
PC(他ブランドを含む)合計 60,968 82,705 66,917 76,015 13.6
プレミアムSUV

1 レクサス RX 854 2,011 1,721 1,163 △32.4
2 レクサス LX 822 993 1,018 1,095 7.6
3 レクサス GX 120 66 258 499 93.4
4 ポルシェ カイエン 291 260 211 233 10.4
5 BMW X7 267 80 197 224 13.7
プレミアムSUV(他ブランドを含む)合計 4,462 6,653 7,137 6,148 △13.9
ピックアップ

1 トヨタ ハイラックス DC 951 611 963 1,060 10.1
2 JAC T6 809 1,111 561 634 13.0
3 長安ハンターPLUS 119 590 395.8
4 JAC T9 1 106 469 342.5
5 GWM ウィングル 7 175 305 205 △32.8
ピックアップ(他ブランドを含む)合計 1,841 2,430 2,699 3,379 25.2
MPV

1 現代 カスティン 1,478 1,819 23.1
2 JACトラック M4 168 179 6.5
3 GAC M8 29 60 106.9
4 メルセデス・ベンツ・トラック 59 116 68 54 △20.6
5 起亜 カーニバル 100 807 58 53 △8.6
MPV(他ブランドを含む)合計 1,348 1,009 1,805 2,227 23.4
プレミアムPC

1 ホンチー H5 22 140 97 △30.7
2 レクサス ES 378 157 170 67 △60.6
2 BMW 5シリーズ 57 127 10 67 570
4 メルセデス・ベンツ Sクラス 79 85 93 42 △54.8
5 ポルシェ パナメーラ 20 15 24 36 50
プレミアムPC(他ブランドを含む)合計 767 912 793 482 △39.2

出所:カザフスタン自動車ビジネス協会「カザフスタン共和国自動車市場レポート 2025年1~12月」

2025年には、大衆向け車種区分であるSUVおよびPCの強化傾向が引き続きみられる一方、プレミアム車種区分のSUVおよびPCでは販売が減少傾向であった。

BYDがカザフスタン市場参入、NEV市場の発展を加速

2025年3月、中国ブランドのBYDの公式販売がカザフスタン市場で始まった。2025年のBYD車の販売台数は3,245台であり、新エネルギー車(NEV)全体の販売台数4,243台の中で、76.5%という高い市場シェアを獲得した。2025年には、NEVの販売台数が前年比4倍以上に増加した(Dknews.kz、3月31日)。とはいえ、BYDブランドのEV(電気自動車)の年間販売台数が2万台を超える隣国ウズベキスタンと比べると、市場規模は小さい。その理由として、石油・ガス専門家のアスカル・イスマイロフ氏は、充電インフラの未整備によりEVの利用が制約されている点を指摘する(「クルシブ」5月12日)。加えて、カザフスタンの冬季はウズベキスタンよりも寒冷であることも考えられる。

自動車販売は増加も、金利上昇が成長抑制か

2025年の販売台数は増加したが、今後の見通しについては専門家が厳しい見方を示している。カザフスタン自動車市場モニタリング・分析機関のゼネラルディレクター、アルトゥール・ミスカリャン氏によると、一部の自動車ブランドでは、ローンを活用した販売が全体の販売台数の過半数を占める。

カザフスタン国立銀行(中央銀行)は2025年10月10日に、政策金利を16.5%から18%へ引き上げた。独立自動車連合会のエドゥアルド・エドコフ会長は、この措置が自動車ローンのコストを押し上げ、消費者需要を冷え込ませたと指摘している(「カズインフォルム」2025年12月4日)。

自動車小売りを手掛けるオルビスオートグループのディナラ・イスカコワ最高経営責任者(CEO)も、2025年秋以降、消費者は自動車購入により慎重になり、販売の落ち込みはディーラーによる意図的な値引きによって食い止められたと指摘している。さらに、自動車市場は今後、爆発的な成長は見込みにくく、年間5~10%程度の安定的成長を伴う成熟段階へ移行するとの見方を示している(「クルシブ」2025年12月26日)。

自動車専門家のエドゥアルド・エスココフ氏も、2025年末にみられたネガティブな動向として、銀行による借り入れ条件の厳格化や、既存の自動車ローンにおける延滞増加の兆候などを挙げ、過去2年間にみられた自動車販売の急成長は減速し始めていると指摘している(「カズインフォルム」2025年12月4日)。

2025年に2つの新工場が稼働

2025年のカザフスタンにおける乗用車生産台数は、前年比19.2%増の16万360台と過去最高を記録した(表3参照)。国内販売市場に占める国産車のシェアは、2024年の62%から2025年には68%に拡大した。

生産台数の増加には、新工場の稼働が寄与している。2025年9月に操業を開始したアスタナ・モータース(2025年9月25日付ビジネス短信参照)の工場では、長安、チェリー、ハバル、タンクといった中国ブランド車を1万5,180台生産した。年間生産能力は12万台であることから、2026年以降はさらなる増加が見込まれる。

さらに、2025年10月に稼働した起亜カザフスタン工場では、起亜ブランドの多様なモデルを2,885台生産した。年間生産能力は7万台のため、同工場でも2026年以降のさらなる生産拡大が予想される。

サルィアルカ・アフトプロム工場では、乗用車が9万976台生産され、前年比1.7%増となった。同工場の製品ラインアップは起亜、シボレー、JAC、ジェトゥール、シュコダに加え、2025年から吉利も生産されている。第2位の規模の生産メーカーとなったのは現代トランス・カザフスタンであり、2025年には現代およびジェネシスの乗用車5万1,319台を組み立てた(2024年比13.8%増)。

表3:主要ブランド・モデル別組み立て台数
ブランド名/モデル 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比 前年比
現代 36,643 48,209 45,041 51,109 13.5 6,068
ツーソン 11,557 15,765 21,881 23,739 8.5 1,858
ムファサ 378 8,502 2149.2 8,124
エラントラ 6,134 6,048 8,022 6,531 △ 18.6 △ 1,491
サンタフェ 4,876 7,632 4,887 5,266 7.8 379
ソナタ 5,857 4,896 3,792 4,018 6.0 226
シボレー 40,019 38,089 39,270 36,370 △ 7.4 △ 2,900
コバルト 28,464 23,707 33,843 30,994 △ 8.4 △ 2,849
オニキス 6,868 3,224 4,320 34.0 1,096
起亜 15,262 24,825 23,998 27,707 15.5 3,709
スポーテージ 3,583 11,344 9,192 12,869 40.0 3,677
セラート 1,222 2,483 2,288 3,603 57.5 1,315
ソレント 2,015 2,960 4,423 3,576 △ 19.1 △ 847
K5 2,442 1,954 2,563 2,686 4.8 123
シード 1,914 2,247 3,151 2,120 △ 32.7 △ 1,031
ジェトゥール 5,230 11,305 13,326 17.9 2,021
X50 312 3,459 1008.7 3,147
X70 1,376 5,259 3,382 △ 35.7 △ 1,877
X70+ 1,746 1,889 2,672 41.5 783
T2 1,067 1,652 54.8 585
X90+ 884 1,731 1,111 △ 35.8 △ 620
JAC 7,652 17,465 12,833 12,829 △ 0.03 △ 4
S3 644 220 2,477 5,701 130.2 3,224
J7 3,421 11,967 4,837 3,060 △ 36.7 △ 1,777
T6 1,927 1,962 558 1,115 99.8 557
長安 6,043 6,043
CS55PLUS 4,180 4,180
CS75 1,175 1,175
チェリー(奇瑞汽車) 5,356 5,356
Tiggo 7 1,956 1,956
Tiggo 2 1,754 1,754
Tiggo 4 1,170 1,170
ハバル 3,712 3,712
M6 1,708 1,708
ジョリオン 1,547 1,547
シュコダ 1,599 2,766 73.0 2,766
コディアック 1,339 2,105 57.2 2,105
吉利(ジーリー) 863 863
シティレイ 642 642
ジェネシス 46 210 356.5 210
GV70 20 102 410.0 82
タンク 69 69
500 69 69
合計(他ブランドを含む) 105,067 135,811 134,561 160,360 19.2 25,799

出所:カザフスタン自動車ビジネス協会「カザフスタン共和国自動車市場レポート 2025年1~12月」

独立自動車連合会のエドゥアルド・エドコフ会長によると、国内生産が継続的に成長している主な要因は、2016年に導入された制度、すなわち廃車税および初回登録制度を通じた外国車の市場参入制限にある。これにより、カザフスタン国内のメーカーは自動車の生産および販売を拡大してきたと指摘している。


注:
セダン、ハッチバック、ワゴン、クーペなど、定員8人以下の乗用車を指し、SUVは含まない。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・タシケント事務所
ウラジミル・スタノフォフ
2015年からジェトロ・タシケント事務所勤務。ウズベキスタンの経済状況や企業動向の調査や分析を担当。