カザフスタンで中国ブランド車の生産開始、自動車生産能力が倍増

(カザフスタン、中国)

タシケント発

2025年09月25日

カザフスタンの自動車販売大手アスタナ・モータースは9月15日、同国最大都市アルマトイで、自動車組立工場のアスタナ・モータース・マニュファクチャリング・カザフスタン(AMMKZ)の操業開始を発表した。同工場では、中国の奇瑞汽車(チェリー)、長安汽車、長城汽車(ハバル)のブランド車を生産する。低コストを武器にロシアなどCIS諸国への販売を目指す。

新工場の年間生産能力は12万台に上る。これは2024年のカザフスタンにおける乗用車生産台数(約13万5,000台)に匹敵する水準だ(2025年7月2日付地域・分析レポート参照)。同社の新工場がフル稼働した場合、カザフスタンの自動車産業の生産台数はほぼ2倍になる。当初の計画段階では年間生産台数を9万台と予定していたが(2022年11月28日記事参照)、2交代制を導入することで生産能力を増強する考えだ(中国車情報サイト「キタイスキエ・アフトモビリ」6月26日)。

同社は、新工場での生産の60%をCIS諸国に輸出することを目標としている。ロシアにある中国自動車メーカーの代理店は、AMMKZの新工場との提携を急ぐ様子は見せていないものの、長安汽車のロシア法人は、カザフスタンで組み立てられた自社ブランドの自動車をロシアに輸入する方針だ(「Auto.ru」7月15日)。

新工場は高度な自動化が特徴で、世界的ブランドの技術が活用されている。「キタイスキエ・アフトモビリ」(9月15日)によると、車体溶接ラインに17台のファナック製品、組立工場に3台のファナック製品が含まれている。また、スウェーデンのメーカーABB製の34台のロボットが塗装工場で使用されている。そのほか、ドイツ、フランス、韓国のメーカー製の設備も使用されている。

同社は自動化の推進により、人件費を削減している。「フォーブス・カザフスタン(8月5日)」によると、アスタナ・モータースの製造拠点(注)における平均労働コストは1台あたり394.05ドル。国別の平均労働コストを比べると、モロッコ(106ドル)、ルーマニア(273ドル)、メキシコ(305ドル)よりも高いが、中国の自動車産業(597ドル)よりは著しく安い水準となっている。

アスタナ・モータースは、同社のカザフスタンにおけるディーラーにおいて9月16日から、チェリー、長安、ハバルの各モデルの価格を7~15%引き下げる方針を明らかにした。生産の現地化により原価が削減されたためとしている。

(注)アスタナ・モータースは、AMMKZ工場のほか、傘下の乗用車メーカーのヒュンダイ・トランス・カザフスタンの工場において2020年から現代ブランドの乗用車を生産している。

(ウラジミル・スタノフォフ)

(カザフスタン、中国)

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