日系企業の現状と好調企業の取り組み
中国ビジネスの最前線(前編)
2026年3月10日
ジェトロは2025年12月18日、ウェビナー「中国ビジネス最前線:日本企業の課題と対応」を開催した。同ウェビナーでは、ジェトロ調査部中国北アジア課の小宮昇平リサーチマネージャー、小林伶課長代理、藤原智生課長代理がそれぞれ「日系企業の中国ビジネスの現状と課題、黒字企業の取り組み事例」「変化する中国企業との競争環境、中国企業の海外展開とスマート製造の動向」「中国の輸出管理の実態と日系企業の共通課題、対応の方向性」をテーマに中国ビジネスの最前線について講演した。本レポートでは小宮リサーチマネージャーの講演について紹介する。連載の前編。

小林課長代理、藤原課長代理(ジェトロ撮影)
在中国日系企業の業績・拡大意欲は二極化
小宮リサーチマネージャーはジェトロが2025年8~9月、北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業を対象に実施した「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」の結果を基に、在中国日系企業のビジネスの現況と好調企業の取り組みについて講演した。以下は発言要旨となる。
2025年の営業利益見込みを「黒字」(注1)と回答した在中国日系企業の割合は4年ぶりに上昇し、6割台を回復した。また前年と比較した営業利益見込みについて、業種ごとにばらつきは見られるものの、全体では「改善」(注2)と回答した企業の割合が上昇した。営業利益が「改善」「悪化」した理由として最も多かった回答は、それぞれ「現地市場での需要増加」「現地市場での需要減少」であった。これらを理由として回答した割合を業種別に見ると、「販売会社」と「輸送機器部品」が、いずれにおいても上位5位に入っている。このことから同じ業種であっても企業によって明暗が分かれる二極化の状況にあることがうかがえる。
今後1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」(注3)するとの回答は21.3%と過去最低となるも、前年からの下落幅は過去3年と比べて縮小した。食料品、小売業では「拡大」が5割を超えたほか、精密・医療機器、化学・医薬、電気・電子機器も3割超の企業が「拡大」を志向している。他方、金融・保険業、輸送機器部品では4分の1超の企業が「縮小」と回答するなど、業種間で事業展開意欲の格差が顕著となった。「拡大」の理由としては、7割近い企業が「現地市場ニーズの拡大」を挙げており、自由記述コメントでは国内新規顧客の開拓や新製品の開発、EV・半導体分野の需要増、地場企業向けの販売拡大などが具体的に示された。
拡大する機能としては約7割が「販売機能」を挙げたほか、製造業では「高付加価値品の生産強化」、非製造業では「新規事業開発」との回答が多かった。具体的には、現地ニーズに合った販売戦略の実施や顧客ニーズに適した商品開発・展開、現地での開発・設計による迅速な製品化、地域統括機能の強化による中国国内での事業判断のスピードアップ、地場系への販路拡大などの取り組みがコメントで挙げられた。
事業展開の方向性として最も多数(64.3%)であった「現状維持」を選択した企業も、その約半数は従来とは異なる分野・地域、非日系企業への販路開拓を見据えて取り組んでいることが示された。短期的な景気の厳しさ、見通しの不透明性などを認識しつつも、中長期的には中国市場が引き続き重要との認識の下、現状を維持しつつ、今後の回復に備える姿勢がうかがえる。具体的な取り組みとして、中国企業への販路開拓・営業強化、中国企業の第三国・地域への展開を見据えた需要取り込み、ASEANなどへの営業拡大、自動化・省人化による生産性向上や調達の現地化・複数化などのコスト削減策が挙げられた。
米国関税措置への対応について、在中国日系企業のうち、直接輸出・間接輸出を含め対米輸出があるのは全体では23.5%と限定的であったが、 電気・電子機器や同部品など一部業種では半数前後の企業が米国に輸出しており、業績に一定のマイナスの影響を見込んだ。マイナスの影響があると回答した理由は、「米国市場の需要減」「コスト競争力の低下」などのほか、間接的な影響として、「調達コストの上昇」や「現地市場での需要減」を挙げる企業も見られる。対応策としては、過半数が「自社におけるコスト削減」と回答したほか、4分の1超の企業が「サプライヤーとの価格交渉」と回答するなど、多くがコスト削減に努力しつつ耐える姿勢を示した。
好調企業はブランドの浸透や現地に適応した販売・開発に取り組む
続いて2024年度海外進出日系企業実態調査(「2024年度 海外進出日系企業実態調査(中国編)」参照)において、営業利益見込みが「黒字」かつ今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業を「好調企業」と定義し、同企業へのヒアリング内容を基に、具体的な取り組みについて紹介した(詳細は2025年9月16日付地域・分析レポート参照)。
アンケートによると、好調企業は販売マーケットにおける自社の強みについて、「性能・品質の高さ」「ブランドの浸透度」「人材」「知的財産」「ビジネスモデル」の項目において全体平均を上回っている。
「黒字」を実現できている要因としては、食文化や世代の変化による消費の変化や外部要因による市場拡大、消費刺激策の効果などが挙がったほか、自社の要因としては、自社ブランドの浸透、コスト削減、新規販路開拓、新製品の発売などが挙がった。「拡大」を実現できている要因について、中国国内市場の拡大、顧客企業の投資・生産拡大、日本食品の浸透や食生活の変化、高齢化などによる需要の拡大、他地域の需要獲得を目的とする出店拡大を挙げる回答があった。このほか中国の国産品優遇政策への対応として現地生産を進めているとの声もあった。
具体的な取り組みでは、製品・サービスの「ブランドの確立・浸透」のため、大学や研究・医療機関とのコラボによる自社製品の信頼性の向上や科学的裏付けの獲得、丁寧なアフターサービスなどが挙がった。また認知度を高める観点からはSNSやECプラットフォームを使った販促に取り組む企業がある一方、実店舗やリアルイベントの活用の重要性を指摘する声もあった。「自社製品サービスの優位性を維持」するための取り組みについては、現地企業との連携による商品力強化、現地に合わせた商品開発や顧客に合わせた改善提案、サプライヤーと協力した生産性向上、代理店も含めたアフターサービスの維持・向上など、品質や信用面における取り組みが多く挙げられた。
中国ビジネスの最前線
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- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中国北アジア課
和田 拓己(わだ たくみ) - 2025年、ジェトロ入構。中国北アジア課で中国関係の調査を担当。






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