制裁下のロシア市場で外資は
撤退・残留・新規参入について現状分析

2026年2月5日

西側諸国による対ロ制裁の影響を受け、ロシア市場で多くの西側企業が事業を縮小・撤退した。その空白を埋めるかたちで、中国その他の友好国企業が進出。事業を拡大した。

とは言えロシアは、足元で経済が低迷し、西側による二次制裁の影響を受けている。事業を縮小・撤退した西側企業にとっても、拡大した友好国企業の存在や、ロシア政府が提示する復帰条件の見通しは不透明だ。

こうしたことから、在ロシア外資系企業の事業環境は依然として厳しい。

西側諸国の制裁はなおも継続

ロシアは2022年2月、ウクライナに侵攻。その動きを受け、G7諸国を中心とする西側諸国は、金融・貿易分野を含めて、包括的な対ロシア制裁措置を発動した。その結果、西側企業が事業撤退や縮小を余儀なくされるケースが相次いだ。製品輸出や送金の制限、物流のサプライチェーンの混乱などが、その主な原因だ(ロシアの貿易と投資2023年版)。

2025年も、西側諸国はエネルギー分野や制裁回避に関与した第三国企業に対して制裁を強化した。ロシアと取引関係を持つ企業は、デューディリジェンスやコンプライアンス対応の負担が一層重くなっている(表1参照)。

表1:主要国・地域がロシアに対して導入した制裁措置(2025年1~11月) 注1:本表は貿易・経済分野の措置に焦点を当てて整理しており、各国のロシア関係者などに対する資産凍結、軍事関連団体などに向けた輸出等の禁止については除外した。 注2:本表では制裁措置として整理していないが、ドナルド・トランプ米大統領が8月、ロシア産石油の購入しているインドに対し25%の追加関税を課す大統領令を発表した。この措置は、制裁的性格を帯びている。
国・地域名 内容
日本
  • 335品目 〔化学物質(カプサイシンなど)や、産業基盤強化に資する物品(特殊車両などのエンジン・部品など)〕の輸出禁止(1月23日)
  • 最恵国待遇の撤回措置を2026年3月31日まで延長(4月1日)
  • ロシア産原油取引の上限価格を、1バレル当たり60ドルから47.6ドルに引き下げ(9月12日)
米国(注2) 大手石油会社のロスネフチとルクオイルの2社と両社の子会社34社を、金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定(10月27日)(2025年10月27日付ビジネス短信参照
EU
  • デュアルユース品目(化学兵器の原料、CNC工作機械用ソフト、ゲーム用コントローラなど)の輸出禁止(2月24日)
  • ロシア産一次アルミニウムの輸入を禁止(2月24日)
  • ボールねじやエンコーダーなどの部品(塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、アルミニウム粉末、マグネシウム粉末、ホウ素粉末など)の輸出禁止(5月20日)
  • ロシア産原油を取引する際の上限価格を、1バレル当たり60ドルから47.6ドルに引き下げ(7月22日)
  • ロシア産液化天然ガス(LNG)の段階的な輸入禁止。国有石油大手ロスネフチと、ガス最大手ガスプロム傘下の石油子会社ガスプロム・ネフチとの取引禁止。第三国の金融機関・石油取引事業者と取引禁止(10月23日)
英国
  • 化学製品、電子機器、機械、プラスチック、金属の輸出禁止(4月24日)
  • ヘリウムと第三国で加工されたロシア産合成ダイヤモンドの輸入禁止(4月24日)
  • エネルギー関連、先端産業、工業製品技術、ビジネスエンタープライズ、工業デザイン、石油・ガス関連分野において使用されるソフトウエア および技術について、技術移転や供給、これらに付随する関連サービスの提供を禁止(4月24日)
  • ルクオイルとロスネフチを資産凍結の対象に指定(10月15日)

注1:本表は貿易・経済分野の措置に焦点を当てて整理しており、各国のロシア関係者などに対する資産凍結、軍事関連団体などに向けた輸出等の禁止については除外した。
注2:本表では制裁措置として整理していないが、ドナルド・トランプ米大統領が8月、ロシア産石油の購入しているインドに対し25%の追加関税を課す大統領令を発表した。この措置は、制裁的性格を帯びている。
出所:米国国際貿易委員会(ITC)、米国財務省外国資産管理局(OFAC)、EU、英国政府、経済産業省公式サイト、ジェトロの資料から作成

ロシア経済は低調推移の見通し

ロシア経済はウクライナ侵攻以降、アジアとの貿易を拡大するなど、外部環境の変化に適応してきた。しかし、2025年は景気後退が見込まれる。

ロシア経済発展省は2025年9月、マクロ経済予測で、金融引き締めによる消費や投資の鈍化を主要因として景気が減速すると発表した。政策金利は侵攻直後、20%に達した。しかし、その後は段階的に下がり、2022年9月から2023年半ばまで7.5%で推移していた。2023年後半以降は高水準の内需と労働力不足による供給制約でインフレ圧力が強まり、高金利の状況が続いている。

後述のとおり、在ロシア外資は、制裁に加えてロシア経済低迷の影響も受けている(表2参照)。

表2:ロシア経済概観(△はマイナス値) 注1:2025年の実質GDP成長率、インフレ率は、中銀見通し(2025年10月24日)。 注2:キーレートは10月末時点の年間の最低値と最高値 注3:失業率は2025年9月末時点。10月29日に経済発展省が発表した結果に基づく
実質GDP成長率 インフレ (年率)(%) キーレート(%) 失業率(%)
2021 5.9 8.4 4.25~8.5 4.8
2022 △ 1.4 11.9 7.5~20 4.0
2023 4.1 7.4 7.5~16 3.2
2024 4.3 9.5 16~21 2.5
2025 (注1)0.5 ~1.0 (注1)6.5~7.0 (注2)16.5~21 (注3)2.2%

注1:2025年の実質GDP成長率、インフレ率は、中銀見通し(2025年10月24日)。
注2:キーレートは10月末時点の年間の最低値と最高値。
注3:失業率は2025年9月末時点。10月29日に経済発展省が発表した結果に基づく。
出所:ロシア連邦国家統計局、ロシア中央銀行、ロシア経済発展省よりジェトロ作成

侵攻以降、主要西側諸国企業の3割以上が撤退

2022年2月24日の侵攻開始以降、ロシア国内で活動する西側企業は事業再編や撤退を迫られた。

イエール大学のデータベースによると、侵攻以降、ロシアで活動する外資企業は、欧州企業を中心に減少した。「非友好国」(注1)については2025年10月時点で、EU企業の33.5%、米国企業の37.4%、英国企業の53.9%が撤退を発表済みだ(表3)。

しかし中国企業やインド企業は、半数以上が事業を継続している。また、ロシア政府の撤退制限措置により、希望しても撤退できない企業も存在する。

表3:ウクライナ侵攻以降の主な在ロシア外資企業の事業ステータス(2025年10月23日時点)

(単位:社)(ーは記載なし)
非友好国 注1:EU加盟国については、在ロシアの企業数が多い6カ国だけを記載した。 注2:撤退のステータスは、撤退を表明した企業数を集計。
国・地域名 事業継続 事業規模縮小 事業復帰の選択肢を維持 新規投資・開発を延期 撤退 合計 事業継続 事業規模縮小 事業復帰の選択肢を維持 新規投資・開発を延期 撤退
EU 94 68 200 84 225 671 14.0% 10.1% 29.8% 12.5% 33.5%
階層レベル2の項目ドイツ 25 19 38 21 47 150 16.7% 12.7% 25.3% 14.0% 31.3%
階層レベル2の項目フランス 23 6 22 11 20 82 28.0% 7.3% 26.8% 13.4% 24.4%
階層レベル2の項目フィンランド 1 17 1 36 55 1.8% 30.9% 1.8% 65.5%
階層レベル2の項目オランダ 8 16 8 19 51 15.7% 31.4% 15.7% 37.3%
階層レベル2の項目ポーランド 1 4 13 3 20 41 2.4% 9.8% 31.7% 7.3% 48.8%
階層レベル2の項目イタリア 12 5 9 9 5 40 30.0% 12.5% 22.5% 22.5% 12.5%
米国 22 55 163 46 171 457 4.8% 12.0% 35.7% 10.1% 37.4%
英国 2 5 43 9 69 128 1.6% 3.9% 33.6% 7.0% 53.9%
日本 12 4 36 13 11 76 15.8% 5.3% 47.4% 17.1% 14.5%
スイス 3 11 15 9 21 59 5.1% 18.6% 25.4% 15.3% 35.6%
友好国 注1:EU加盟国については、在ロシアの企業数が多い6カ国だけを記載した。 注2:撤退のステータスは、撤退を表明した企業数を集計。
国・地域名 事業継続 事業規模縮小 事業復帰の選択肢を維持 新規投資・開発を延期 撤退 合計 事業継続 事業規模縮小 事業復帰の選択肢を維持 新規投資・開発を延期 撤退
中国 42 1 5 4 1 53 79.2% 1.9% 9.4% 7.5% 1.9%
インド 13 1 2 2 2 20 65.0% 5.0% 10.0% 10.0% 10.0%

注1:EU加盟国については、在ロシアの企業数が多い6カ国だけを記載した。
注2:撤退のステータスは、撤退を表明した企業数を集計。
出所:イエール大学のデータベースからジェトロ作成

非居住者法人登記に友好国の存在感

インターファクス通信(ロシアの大手独立系通信社)は、ロシア国内で事業展開する非居住者が参加する企業(注2)数を集計している。そのデータによると、2023年の総数は、約11万6,000社。2017年のピーク時(約18万5,000社)と比較して、37%減になった。

一方で、2023年に新たに法人登記した企業は6,100社に上る。そのうち中国企業が25%、独立国家共同体(CIS)諸国に属する企業が59%を占めた。業種別には、主に卸売り、小売り、建設、自動車販売だった(表4参照、「インターファクス通信」2024年1月11日)。

表4:2023年新規法人登記6,100社の内訳(ーは記載なし)注:企業数は、記事に記載の合計の社数と割合に基づいて推計。
国・地域 割合(%) 企業数(社) 備考
中国 25.0 1,525 記事の割合に基づく推計
CIS諸国 59.0 3,599
階層レベル2の項目ベラルーシ 32.0 1,952
階層レベル2の項目キルギス 9.0 549
階層レベル2の項目カザフスタン 6.0 366
階層レベル2の項目その他CIS 12.0 732 その他の中央アジア、コーカサス地域諸国
トルコ 3.0 183
インド 2.0 122
非友好国 3.0 183
その他(友好国等) 8.0 488 中国、CIS諸国、トルコ、インド、非友好国以外の合計
総計 100.0 6,100

注:企業数は、記事に記載の合計の社数と割合に基づいて推計。
出所:「インターファクス通信」(2024年1月11日)から、ジェトロ作成

一方、2024年の外国企業の新規登記数は、6,500社〔前年比16%増(注3)〕。そのうち中国企業が約2,000社を占めた。ほかの友好国企業も、月平均の登記数が増加している。業種別には、卸売り、小売り、建設が増加。卸売りでは、特に機械製品を扱う企業が増加している(「インターファクス」2025年1月15日)。中国の機械類の輸出(2025年2月19日付地域・分析レポート参照)や自動車などの国内生産(2025年6月23日付地域・分析レポート参照)の増加した影響がうかがえる。

表5:外国企業の登記動向(2022~2024年と2020~2021年の比較)(-は値なし) 注:( )内の数値は2020~2021年のシェアと比べた増減。
業種 登記のシェア(2022~2024年) 備考
卸売業 34%(2.5ポイント増) 卸売業全体の中で、機械製品を扱う企業のシェアは2022~2024年、28%。2020~2021年は17%だったので、増加したことになる。
小売業 16%(7.1ポイント増) 消費市場回復、所得・給与上昇、ローン拡大の影響を受けた。
建設業 10%(データなし) ロシア企業との競争が激化し、政府の支援が縮小した。
自動車販売業 6%(2.4ポイント増) 背景には、2023年以降の市場回復がある。
観光・リース業 -(大幅な減少) 数値の記載なし。

注:( )内の数値は2020~2021年のシェアと比べた増減。
出所:「インターファクス通信」(2025年1月14日)からジェトロ作成

表6:国・地域別の新規登録(月平均)比較(ーは記載なし) 注:2023年とは異なり、2024年の調査は非居住者が参加する企業における新規登録社数の国ごとの内訳の詳細は不明。
国・地域 2020~2021年の月平均 2022~2024年の月平均 増加倍率 備考
中国 40件/月 135~145件/月 3.6倍 制裁前後で大幅増。
キルギス 20件/月 40~45件/月 2.2倍 友好国は、全般に伸びた。
ベラルーシ 120件/月 145~150件/月 1.7倍 高水準を維持し増加。
トルコ 10件/月 15~18件/月 1.5倍
カザフスタン 20件/月 30~35件/月 1.4倍
ベトナム (四半期平均30件未満の水準) ―(具体値不詳) 4.5倍 具体件数の公開なし。
タジキスタン (四半期平均30件未満の水準) ―(具体値不詳) 2.2倍 同上
イラン (四半期平均30件未満の水準) ―(具体値不詳) 2.1倍 同上
インド (四半期平均30件未満の水準) ―(具体値不詳) 1.5倍 同上

注:2023年とは異なり、2024年の調査は非居住者が参加する企業における新規登録社数の国ごとの内訳の詳細は不明。
出所:「インターファクス通信」(2025年1月14日)からジェトロ作成

中国系も経済停滞や二次制裁に懸念

友好国企業の進出や市場拡大の背景には、西側企業の撤退で生じた市場の空白がある。この機会を捉え、中国をはじめとする企業が積極的に参入したかたちだ。しかし、ロシア経済の減速や購買力低下に加え、高金利政策による資金調達コストの上昇で、消費を冷え込んだ。産業によっては、友好国企業でも事業環境が厳しくなる様子をうかがえる。

例えば中国ブランド車は、侵攻後に新車販売台数が急拡大した。しかし、2025年1〜10月は前年比27.3%減(「タス通信」2025年11月7日)。ロシア自動車ディーラー協会のベラ・パブロワ広報部長は、「中国ブランド車は、シェア55~60%の高水準を維持する。しかし、高金利によって自動車ローンを組んだ貸し出しが減速。さらに、廃車税引き上げ、物流・保有コスト増、消費者の中古車へのシフトにより、中国車を含む新車市場全体が縮小している」と指摘した(「ロシア新聞」2025年12月8日)。

西側諸国による二次制裁の影響も、懸念材料だ。中国の銀行や輸出企業の動きを見ると、米国の制裁対象になるリスクを警戒し、ロシアとの取引を制限する動きがある。その結果、資金送金や部品供給の停滞が生じ、業務の継続に支障をきたすケースも出てきた。拡大一辺倒ではない現実が、浮き彫りになっている。

西側企業の復帰に壁

では、西側諸国企業の本格的な復帰や事業再開は、あり得るのだろうか。結論として、容易ではなさそうだ。その要因としては、ロシア経済の低迷や対ロ制裁、西側諸国企業の撤退後に拡大した地場・中国企業との競争などがある。加えて、撤退企業の復帰にロシア政府が厳しい条件を付けることも予想できる。

在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)は2025年6月、加盟企業を対象にした年次調査の結果を発表した。当該調査によると、今後3年に利益増を見込む企業の比率は38%。前年より4ポイント低下した。その背景にあるのは、ロシア経済の低成長見通しだ。また、AEBのタッジオ・シリング会長は「制裁圧力が続く中、外国企業のロシア市場復帰は現時点で困難」と指摘した(「タス通信」2025年5月21日)。

米国企業も、ロシアでの活動を模索している。在ロシア米国商工会議所(AmCham)のロバート・エイジー会頭によると、ロシアで活動する米国企業は2025年3月時点で、150社。これは、侵攻前の半分にとどまる。これら企業が事業を続けているとはいえ、全て新規の投資を停止している(「RBK」2025年3月7日)。エイジー会頭は「米国企業には、ロシア市場への復帰を望む声がある」という。そこで米国政府に対し、(1)ロシアへの直接投資禁止の解除、(2)金融セクターでの協力再開、(3)複数分野(航空、IT、医療機器、高級品など)で制裁を見直すよう提案する方針を示した(「インターファクス通信」4月15日)。

在ロシア日系企業の動きはどうか。2025年9月のジェトロ調査によると、7割超の企業が今後1~2年の事業展開を「維持」と回答した。事業展開する上での問題点については、「対ロ制裁や輸出規制のため、製品の輸入・販売ができない」状況を挙げる声が多い(2025年11月25日付ビジネス短信参照)。

政府は西側企業の再参入に厳しい姿勢

ロシアでは外資の再参入に向けて、法整備を進める動きがある。プーチン大統領は2025年4月、非友好国企業の活動再開に向けた手続きの策定を政府に指示した(2025年5月2日付ビジネス短信参照)。法制化の時期は未定。再参入に厳しい条件を課してくる見通しがある(「PRAVO.RU」2025年6月17日)。再参入の場合、厳しい条件に対応する必要が生じると推察される。最後に、ロシアの対西側企業姿勢を示すポイントを整理する。

  • ロシア政府は、自国企業の保護を政策の最優先事項に位置付けており、西側企業の再参入よりも国内産業の育成・維持を重視する姿勢を明確にしている。
  • その裏返しで、自国企業が対応困難な分野では、西側企業の再参入を認める可能性がある。
  • 当地産業界は、撤退企業の復帰に複数条件を導入することをロシア政府に提案している。資産売却や配当金の引き出しに制限を設けることなど〔「フォーブス」ロシア版(2025年5月14日)〕。

注1:
「非友好国」とは、ロシア政府やロシアの個人・法人に対して非友好的行為を行う国・地域のこと。具体的には、欧米諸国や日本など。 当初は、連邦政府指示第430-r号(2022年3月5日付)で規定。その後、数度にわたり改定(追加)している。 本文に戻る
注2:
本記事での「非居住者が参加する企業」は、原文で「外国(企業など)の参加を伴う企業」および「非居住者が参加する企業」と表現されている。 本文に戻る
注3:
インターファクス通信(2025年1月14日)の数値に基づく。 ただし、この数値は、本稿にある2023年の新規登記企業数を基に計算した伸び率と整合しない。ということは、2023年の登記企業数を2024年1月に公表した後、当該数値を改定した可能性がある。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課ロシアCIS班 課長代理
小野塚 信(おのづか まこと)
2021年、民間企業勤務を経て、ジェトロ入構。