米財務省、ロシアの石油大手に制裁発動、ロシアの停戦努力の欠如を理由に

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2025年10月27日

米国財務省は10月22日、ロシアの石油大手ロスネフチとルクオイルの2社、およびこれらの子会社34社を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。財務省は制裁発動の理由に、ウクライナとの停戦に向けた、ロシアの「真剣な姿勢の欠如」を挙げた。

SDNに指定された個人・事業体は、在米資産の凍結や、米国人との資金・物品・サービスの取引禁止が科される。SDNが直接的または間接的に50%以上所有する事業体も制裁の対象となる。なお、米国人には、米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、または米国内に存在するあらゆる個人が含まれる。

さらに、ロシアとウクライナの戦争などを理由にSDNに追加された事業体は、米国の輸出管理規則(EAR)の「エンティティー・リスト(EL)」にも指定される(2024年3月22日記事参照)。ELに指定された事業体に対し、特定の米国製品を輸出する場合には、商務省の輸出許可(ライセンス)が必要となる。なお、2025年9月に適用範囲をEL掲載事業体が直接的または間接的に50%以上所有する事業体に拡大するよう規則が改正されている(2025年10月3日記事参照)。

財務省のスコット・ベッセント長官はSDN追加の声明で、「(ロシアは)今こそ殺戮(さつりく)を止め、即時停戦を実現すべきだ」「ドナルド・トランプ大統領による戦争終結に向けた取り組みを支援するため、必要ならばさらなる措置を講じる用意がある。(米国の)同盟国はこの制裁に参加し、順守するよう呼びかける」と述べた。

米国はロシアとウクライナの停戦に向けた両国との外交的接触を続けている。トランプ氏は10月16日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談したほか、17日にウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と対面会談を実施した。さらに、トランプ氏はハンガリー・ブタペストでの米ロ首脳会談開催に意欲も示した(2025年10月21日記事参照)が、22日には中止を表明している。

これまでトランプ政権は、ロシアとウクライナの停戦の仲介を優先するため、対ロ制裁の発動を見送ってきた経緯がある(2025年8月21日記事参照)。このため、今回の制裁発動は、トランプ政権がロシアに対する圧力を強めるよう姿勢を変化させたことを示す動きとの見方もある(政治専門紙「ポリティコ」10月22日)。

(葛西泰介)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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