Otaku Pop Fes開催、フィリピンで注目高まる日本アニメ

2026年6月25日

日本アニメーション(以下、アニメ)関連イベントの開催を背景に、フィリピンで日本アニメへの関心が一段と高まっている。アニメを含むクリエーティブ産業の総付加価値額は2兆ペソ台を超える。フィリピン政府は同産業を重視しており、アニメ関連の日系企業も進出している。

本稿では、フィリピンにおけるアニメ産業や関連市場の動向を整理するとともに、フィリピンのアニメ産業や消費者の特徴について、日本のエンターテインメントを集約した複合イベント「Otaku Pop Fes 2026(OPF 2026)」に携わるCyberE(注1)の大﨑章功氏に取材した内容を紹介する(取材日:2026年5月1日)。


「Otaku Pop Fes 2026」会場の入り口(ジェトロ撮影)

クリエーティブ産業の総付加価値額、2018年から61.1%増

フィリピン統計庁(PSA)によれば、2025年の同国におけるクリエーティブ産業の総付加価値額(名目)は2兆1,175億ペソ(約5兆5,000億円、1ペソ=約2.6円)となった。2018年(注2)と比べて61.1%増だった。このうち、アニメを含むデジタル・インタラクティブ商品・サービスは4,163億ペソで、クリエーティブ産業全体の約2割を占めている(図参照)。

フィリピンのアニメ産業は長い歴史を持ち、現地の各スタジオはウォルト・ディズニー・スタジオをはじめとする世界的なアニメスタジオの制作パートナーとして知られている(2023年10月27日付海外発トレンドレポート参照)。近年は、政府によるクリエーティブ産業への支援も強化されており、2022年に施行された「フィリピン・クリエーティブ産業開発法」では、アニメを含む映像分野を重点産業に位置付け、雇用創出、人材育成、資金支援・インセンティブ付与を柱とする振興体制を整備した。また、「フィリピン・クリエーティブ産業開発計画(PCIDP)2025~2034年」では、2030年までに同国を「アジアのクリエーティブ産業ハブ」とする目標を掲げている。さらに、2025年10月には、フィリピン貿易産業省(DTI)とフィリピン・アニメーション評議会(ACPI)が覚書(MOU)を締結し、官民合同による現地雇用や同国独自のコンテンツ創出、海外市場開拓支援を通じた競争力向上を進めている。

日系企業の進出動向を見ると、東映アニメーションが1986年にフィリピンへ進出し、動画や背景、仕上げなどの制作工程を手掛けている。また、ジーアングル・エンターテインメントは2015年3月、豊富なデジタルクリエーター人材を有するセブに拠点を設立し、アニメ制作や日本語音響など幅広いクリエーティブ制作を請け負っている(2026年3月25日付地域・分析レポート参照)。

近年は、現地のアニメ関連市場を見据えた進出がみられ、アニメ・コミック・ゲーム専門店であるアニメイトが、2026年5月、マニラ首都圏マカティ市内の商業施設「One Ayala(ワン・アヤラ)」への初出店を発表した。同国のアニメ関連市場は、1億人を超える人口を抱える。消費の中心となる若年層の増加が見込まれる上、公用語の1つが英語で、NetflixやYouTubeなど海外配信プラットフォームと親和性が高いことから、有望市場の1つとなっている。

図:フィリピンにおけるデジタル・インタラクティブ商品・サービスの
付加価値額の推移(2018~2025年)
2018年に2,524.96億ペソ、2019年に2,740.54億ペソ、2020年に2,620.17億ペソ、2021年に2,804.08億ペソ、2022年に3,143.45億ペソ、2023年に3,520.40億ペソ、2024年に3,883.32億ペソ、2025年に4,163.33億ペソと推移している。

出所:フィリピン統計庁(PSA)のデータを基にジェトロ作成

日本発IPを「体験」として届ける、イベント関係者に聞く

マニラ首都圏に位置する統合型リゾート「OKADA MANILA」で、4月25~26日に日本のエンターテインメントを集約した複合イベント「Otaku Pop Fes 2026(OPF 2026)」が開催された。

OPF 2026は、CyberEがグローバルIP(知的財産)戦略の一環としてプロデュースを担い、日本発のアニメ、音楽、ゲームなどのコンテンツを通じて、海外市場における日本ポップカルチャーの発信および認知拡大を目的としている。会場では、「SPY×FAMILY(TOHO)」「東京リベンジャーズ(ポニーキャニオン)」「ウマ娘 プリティーダービー(Cygames)」 など、日本発のIP全11タイトルの展示ブースが設けられ、キャラクターパネルとの撮影コーナーや参加型ゲームが提供された。また、日本企業による出展も行われ、伊藤園が日本茶の試飲を実施するなど、自社製品の販路開拓や認知向上に取り組んだ。


「SPY×FAMILY」のブース(ジェトロ撮影)

伊藤園のブース(ジェトロ撮影)

OPF 2026に携わるCyberEの大﨑氏は、本イベントについて、同社がリアルイベントを通じ、日本発IPを「体験」として届けるモデルの構築を目指していると語る。開催地をフィリピンとした理由については、日本コンテンツへの高い親和性、若年層中心の人口構成、今後の成長への期待を挙げた。来場者の反応については、コスプレや音楽ライブ、展示ブースのいずれでも写真撮影を楽しんだり、体験型ブースに積極的に参加したりするなど、主体的に楽しむ様子が見られた。特に、コスプレ参加率の高さやライブでの一体感、公式グッズへの強い購買意欲が顕著だったという。

チケット販売も好調で、3,500ペソのチケットに加え、最大約6万ペソのグループ向けVIPパッケージも用意された。これにより、日本IPに対する強い需要とコミュニティーの存在を確認できたほか、現地企業やパートナーとの新たな連携機会の創出にもつながったという。一方で、日本品質を維持しながら海外展開を進める上では、現地市場への理解や事業スキーム設計、品質とコストの両立といった課題も見えた。特に、クオリティーを維持したかたちでの展開には、日本側と現地側の双方の調整が不可欠だと指摘した。


「NARUTO」のブースにてゲームに参加する来場者の様子(ジェトロ撮影)

日本コンテンツの強みは、世界観の完成度やキャラクターへの感情移入、継続的なシリーズ展開にあるという。フィリピンでは、これらは単なる視聴対象にとどまらず、「体験したいコンテンツ」として受け入れられており、コスプレやSNS投稿などの参加・共有型の消費行動が活発である点が特徴だと分析する。こうした動きは、コンテンツ消費が「視聴」から「体験」へとシフトしていることを示唆しており、日本IPの海外展開においては、リアルイベントを起点としたファンコミュニティー形成が重要性を増していると考えられる。

大﨑氏は今後について、フィリピンを起点に、同イベントをアジア展開していく構想を示し、「単なるイベントではなく、日本IPの海外展開を支えるプラットフォームとして育てていきたい」と語った。


注1:
CyberEとは、サイバーエージェントグループ傘下でエンターテインメント制作・運営会社のこと。CyberZの子会社にあたる。 本文に戻る
注2:
PSAウェブサイトでは、2018~2025年のデータが遡及可能。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・マニラ事務所
杉山 咲(すぎやま さき)
2022年、ジェトロ入構。企画部海外事務所運営課を経て、2025年7月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課
西村 公伽(にしむら きみか)
2024年、ジェトロ入構。アジア大洋州課でASEANおよびオセアニア関係の調査を担当。