アルバニア、初の経済特区整備で経済構造転換を図る

2026年6月23日

アルバニアは西バルカンに位置する、人口約241万人、四国の約1.5倍の面積(注1)の共和制国家だ。西バルカンの6カ国(注2)のうち、旧ユーゴスラビア構成国ではない唯一の国であり、1978年から1990年の対外開放までの期間は事実上の鎖国状態(注3)にあった。1990年の対外開放とその後の民主化以降、ロシア・中国とは距離を取る一方、親米・親EUの姿勢を取っている。EU加盟候補国であり、2030年の加盟を目指している(2025年9月29日付ビジネス短信参照)。

エネルギー分野においても、アルバニアは西バルカンにおいて特異な存在だ。西バルカン各国の電源構成(図参照)を見ると、アルバニア以外の5カ国は石炭などの火力発電の比率が高い。一方、アルバニアの総発電量は約97%が水力由来となっている。しかし、発電量は降雨量に左右される。また、発電・送配電施設が老朽化しており、国内電力需要を賄う発電量を確保できず、国内総消費量の2~3割程度を輸入電力に頼っている。同国は電源の多様化と再生可能エネルギー(再エネ)の普及整備に注力している。2024年の国家エネルギー・気候計画(NECP)(注4)によると、2030年までに電力の純輸出国になることを目指している。

図:西バルカン各国の電源構成(2023年)
アルバニアの電源構成、水力96.7%、太陽光3.3%。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの電源構成、石炭56.4%、石油火力0.4%、天然ガス0.1%、水力39.3%、太陽光1.5%、風力2.1%、その他0.2%。モンテネグロの電源構成、石炭39.1%、水力53.1%、太陽光0.4%、天然ガス火力7.4%。北マケドニアの電源構成、石炭火力40.2%、石油7.6%、天然ガス火力20.1%、水力23.6%、太陽光5.2%、風力2.4%、その他0.9%。セルビアの電源構成、石炭58.9%、天然ガス4.9%、水力32.7%、太陽光0.1%、風力2.7%、その他0.7%。コソボの電源構成、石炭87.1%、石油0.2%、水力6.2%、太陽光0.1%、風力6.4%。

出所:国際エネルギー機関(IEA)「Countries and regions」を基にジェトロ作成

EU加盟を視野に、アルバニアではエネルギー分野を含むインフラ整備プロジェクトが多数進行している。こうした中、2020年に同国初となる経済特区TEDA Tiranaを首都ティラナに整備するプロジェクトが開始された。2026年5月現在、入居企業を募集している。同経済特区の運営会社であるTEDA Tiranaの最高経営責任者(CEO)、ドリタン・デリヤ氏に、経済特区の設置背景や同国経済、再エネの展望、日本企業への期待について聞いた(取材日:2026年3月9日)。


TEDA Tirana(同社提供)

完成イメージ図(TEDA Tirana提供)

質問:
アルバニア初の経済特区TEDA Tiranaの意義と設置背景は。
答え:
TEDA Tiranaは、アルバニア政府が制定した法律(注5)に基づき設立され、ティラナ市が所有している。アルバニア経済は従来、サービス産業や出稼ぎ労働者からの送金に依存してきた。この経済構造を転換し、国内の製造業、高付加価値産業、先端技術分野の育成を図るためにTEDA Tiranaは設立された。アルバニアに投資する外国企業への税制インセンティブ、長期土地リース、集中型ゾーン管理を一体として提供する制度を初めて明確に整備した点に大きな意義がある。集中型ゾーン管理とは、TEDA Tiranaによる入居企業と当局との間の調整の一元的対応や、経済特区内のインフラ管理統合運用などを指し、投資負担の軽減を図っている。
また、TEDA Tiranaは回廊VIII(注6)の沿線に位置し、アドリア海、エーゲ海および黒海の港湾へのアクセスを有するため、EUおよびCEFTA(注7)市場を見据えたニアショアリング拠点としての競争力を発揮する。
質問:
アルバニアの投資環境について、どのように評価しているか。
答え:
アルバニアは、戦略的立地、税制、再エネ、若い人材プールなどの強みを持つ。戦略的立地は、先に述べた回廊VIIIへの接続が示すとおりだ。税制については、法人税率が15%であるほか、近代的な投資法制を整備している。また、再エネについては、国内の電力供給の大半が水力由来となっており、投資企業はクリーン電力で製造拠点を稼働させることが可能になっている。人材については、英語、イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語など複数言語を話す若年層が豊富におり、ティラナだけで年間数万人が大学を卒業している。
加えて、アルバニアは2009年に北大西洋条約機構(NATO)加盟を果たしており、政治的および安全保障面での安定性が高い点も投資判断にポジティブに影響するとみている。
質問:
TEDA Tiranaへの企業の入居状況は。
答え:
イスラエル企業とデータセンターの建設で契約を交わした。データセンターに必要な大容量電力の供給確保について、TEDA Tiranaが当該企業に代わって当局と調整を行っており、5年以内に100メガワット(MW)規模の電力を確保する予定だ。その他、英国の電気自動車(EV)部品メーカーおよびイタリア企業と製造拠点の設置について交渉を行っている。

整備中のTEDA Tirana(TEDA Tirana提供)
質問:
TEDA Tiranaが誘致したい産業セクターは。
答え:
TEDA Tiranaの誘致対象となる産業セクターは、法律に規定されている。先端技術、自動車、医療、農産物加工の4分野を優先している。いずれもアルバニアの産業高度化や人材の活用に資する分野だ。優れた技術と雇用を誘致し、アルバニアの優秀な労働者が国内にとどまるための選択肢を増やしたい。
質問:
TEDA Tiranaとして取り組むエネルギーや環境分野での施策は。
答え:
政府のエネルギー戦略の策定には直接的に関与しないが、ティラナ市の機関として、入居企業の要望を政府に伝え、電力供給や手続きの円滑化を図る機能を担う。
また、エコ・インダストリアル・パーク (EIP)(注8)の認証取得を目指している。認証取得のために、特区全体のエネルギーモニタリング、太陽光パネル屋上設置の標準化、照明と空調の効率化などの取り組みを行っている。その他、先行するイタリア、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)などの工業団地から運営ノウハウを採り入れている。
質問:
TEDA Tiranaとしての水素エネルギーへの見解は。
答え:
アルバニアでは水素関連法制が未整備だが、政府はEU基準と整合した法令策定に取り組んでいると承知している。周辺国では導入が進んでいることから、水素は将来的にエネルギー貯蔵と供給安定化に重要な要素になるとみている。関連法が整備されれば、積極的に参画したい。
質問:
日本企業に対する期待は。
答え:
日本はアルバニアにとって尊敬すべき戦略的パートナーだ。日本企業は技術力、組織運営、長期的なコミットメント、環境配慮に強みがあると認識している。日本企業が入居すれば、TEDA Tiranaの運営水準向上や地域産業全体への波及効果が期待できる。
TEDA Tiranaは設立から日が浅いが、EU基準の産業拠点としての整備を着実に進めている。投資企業には、行政との連携や環境対応、人材確保など多面的なサポートを提供する。日本企業とは、ノウハウ共有、視察受け入れ、オンライン面談など、どのような形式でも構わないので連携を深めていきたい。

TEDA Tirana CEOドリタン・デリヤ氏(本人提供)

注1:
外務省「アルバニア基礎データ」(最終閲覧日:2026年6月1日)。 本文に戻る
注2:
一般的に以下6カ国が西バルカンと定義される。アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、コソボ。 本文に戻る
注3:
1946年以降の共産主義政権下において、1948年にユーゴスラビアと断交、1960年代前半にソ連と対立。以降、同じくソ連と対立していた中国に接近し援助を受けるが、1970年代後半には中国とも対立。結果として国際社会から孤立した。 本文に戻る
注4:
The National Energy and Climate Plan of the Republic of Albania (2024) 本文に戻る
注5:
Law No. 9789/2007 On the Establishment and Operation of Technical and Economic Development Areas 本文に戻る
注6:
汎(はん)ヨーロッパ交通回廊の10あるうちの1つ。アルバニア最大の港湾であるデュラス港からティラナ、スコピエ、ソフィアを経由してブルガリアの二大港湾都市であるブルガスとヴァルナまでをつなぐ。 本文に戻る
注7:
中欧自由貿易協定(Central European Free Trade Agreement)。現在はEUに加盟していない南東欧7カ国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、コソボ)が加盟する。過去にはポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、ルーマニア、ブルガリア、クロアチアも加盟していたが、EU加盟に伴い脱退。 本文に戻る
注8:
資源・エネルギー・インフラ・情報などを協調的に管理・共有し、経済的価値を高めながら環境負荷と社会的リスクを低減することを目的とした工業団地。認証制度は世界銀行グループなどが整備している。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンターサステナブルビジネス課
藤嶋 哲式(ふじしま てつのり)
2024年、ジェトロ入構。海外ビジネスサポートセンタービジネス展開課(2024~2025年)を経て現職。エネルギー、インフラ、脱炭素分野の海外展開支援などを担当。