アルバニア新政権、早期のEU加盟に全力を尽くす
(アルバニア)
ウィーン発
2025年09月29日
アルバニア議会は9月18日、首相をはじめとする全閣僚を承認した。翌19日には大統領官邸で宣誓就任式が行われ、第4次エディ・ラマ政権が正式に発足した。
ラマ首相率いる社会党は、5月11日に実施された議会選挙で得票率52.2%(注1)を獲得し、定数140議席のうち83議席を占めて過半数を確保した(2025年5月22日記事参照)。
新内閣は首相を含む17人で構成されており、うち6人は前政権から同じポストで続投、6人は異なるポストに横滑りし、5人が新たに閣僚に就任した(添付資料表参照)。組閣にあわせて省庁も一部再編され、経済・文化・イノベーション省は経済・イノベーション省に、観光・環境省は環境省と観光・文化・スポーツ省に改組された。インフラ・エネルギー省も一部では改組が予想されていたがそのままとなり、ベリンダ・バルク副首相兼インフラ・エネルギー相が留任となった。
今回の組閣で最も注目を集めたのは、人工知能(AI)相「ディエラ」で、閣僚名簿には記載されていないが、エディ・ラマ首相自身がこのAI相の設置と機能に責任を持つと明言している。「ディエラ」はアルバニア語で「太陽」を意味し、これまで政府関連のウェブサイトでチャットボットとして活用されてきた。「ディエラ」は内閣において、公的調達における汚職対策を担当する。
新政権について、ウィーン比較経済研究所(WIIW)のアルバニア専門家であるイシリダ・マラ氏は、首相および多くの閣僚が続投しているため、政府のスタイルや戦略的方向性は、前政権の路線を踏襲するものと見られるとした。EU加盟については、依然として最優先事項として掲げられているが、EU法の総体系アキ(アキ・コミュノテールの略、注2)との整合には、このプロセスを支える有能な専門人材への大規模な投資が必要であり、依然として多くの課題が残されていると指摘した。
加盟交渉開始から11カ月の間に、アルバニアはアキの35章のうち28章の交渉に着手しており、他の加盟候補国と比べて速いペースで進んでいる。政府は2027年末までに全ての章を完了し、2030年の加盟を目指しているが、専門家の間ではこのスケジュールは現実的ではないとの見方が強い。
またマラ氏は、ディエラAI相について、「新政権は非常に野心的で、デジタル化やAIの導入を積極的に進めている。これらの技術は公共サービスの近代化や透明性の向上に資する可能性を秘めているが、その成功は制度的な能力や法の支配に大きく依存しているため、過度な期待は控えるべきだ」と述べている。
(注1)アルバニアでは、今回の選挙で初めて在外投票が認められた。本稿では、国内投票の得票率を基に記載。
(注2)EUは加盟候補国とアキの35の政策分野(章)ごとに交渉を行い、加盟候補国はアキを適切に適用・履行するための国内法の改正や、加盟基準を満たすために必要な司法・行政・経済の改革を実施する必要がある。
(エッカート・デアシュミット)
(アルバニア)
ビジネス短信 42905d884f79c68f