社用車市場低迷で新規登録台数減も、EV割合は拡大(ベルギー)

2026年6月29日

ベルギー自動車工業会(FEBIAC)の発表によると、2025年の新車登録台数は、前年比7.5%減の41万4,771台となった(ベルギー自動車工業会プレスリリース「2025年のベルギー自動車市場の分析(フランス語)」参照)。2023年の非ゼロエミッション車の税控除措置の段階的縮小に伴う駆け込み需要の反動を受けて社用車市場が低迷した前年から、さらに減少した(2026年1月21日付ビジネス短信参照)(図1参照)。

図1:ベルギーの新車の新規登録台数の推移
2015年50万1,066台、2016年53万9,519台、2017年54万6,558台、2018年54万9,632台、2019年55万3台、2020年43万1,491台、2021年38万3,123台、2022年36万6,303台、2023年47万6,675台、2024年44万8,277台、2025年41万4,771台。

出所:ベルギー自動車工業会

ベルギーの自動車市場を牽引する社用車市場は、BtoB市場の低迷に加え、企業がより長期のリース契約を選択する傾向を背景に、リース会社による新車登録台数は前年比13%減と、厳しい年となった。新車登録台数に占める社用車の割合は、前年の61.9%から58.3%となり、6割を下回った。他方、個人向け市場は堅調で、前年比1.8%増(2,410台)だった。

なお、ベルギー連邦政府は2025年、連立協定において電気自動車(EV)(注1)と充電インフラが十分に普及していないとして、社用車のプラグインハイブリッド車(PHEV)に対する税控除措置の一部延長に合意した(2025年6月19日付地域・分析レポート参照)。しかし、財政状況を踏まえ、対象は個人所得税の対象となる一部の自営業者や団体(非営利団体など)に限定された。2026年以降に発注される社用車に対する税控除措置は、バッテリー式電気自動車(BEV)などのゼロエミッション車のみを対象とする予定だ(表1参照)。

表1:2025年末に最終的に決定された社用車の燃料タイプ別・車両発注時期と税控除率(車体)注:自営業者や団体(非営利団体など)を除く。
項目 対象車 車両の発注時期
2023年7月~2025年末 2026年以降
税控除率 非ゼロエミッション車
(ガソリン、ディーゼル、HEV、PHEV)
2025年:0~75%
2026年:0~50%、
2027年:0~25%、
2028年~:控除なし
CO2排出量に基づく
控除なし
ゼロエミッション車
(BEVなど)
100% 段階的に削減
2026 年:100%
2027年:95%
2028年:90%
2029年:82.5%
2030年:75%
2031年:67.5%

注:自営業者や団体(非営利団体など)を除く。

出所:SECUREXの発表とジェトロ資料を基にジェトロ作成

新車登録台数の割合を燃料タイプ別に見ると、EVは前年の52.6%から55.5%(23万456台)と堅調に推移した。BEVとハイブリッド式電気自動車(HEV)は、それぞれシェアを6.2ポイント、2.3ポイント伸ばした。一方、PHEVは前年比5.6ポイント減だった。ガソリン車は前年比1.2ポイント減だったものの、個人需要を背景に40.6%と依然大きなシェアを占めた。ディーゼル車のシェアは3.1%となり、前年に引き続き減少した(表2参照)。

表2:新規登録の燃料タイプ別シェアの推移 (新車)(単位:%、ポイント)(△はマイナス値、ーは値なし)注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。
燃料別 新車
2023年 2024年 2025年 前年との差(%)
ガソリン 42.2% 41.8% 40.6% △ 1.2
ディーゼル 8.8% 4.9% 3.1% △ 1.8
プラグインハイブリッド(PHEV) 21.1% 14.9% 9.3% △ 5.6
ハイブリッド式電気自動車(HEV) 7.7% 9.2% 11.5% 2.3
バッテリー式電気自動車(BEV) 19.6% 28.5% 34.7% 6.2
その他 0.7% 0.8% 0.8%

注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。

出所:ベルギー自動車工業会

新車市場を見ると、購入者の属性とEVのタイプによる違いが目立った(表3参照)。特に社用車市場では、BEVが前年比12.8ポイント増で全体の53.1%を占めた。一方、PHEVは前年比9.5ポイント減で、シェアを12.5%まで落とした。今後も社用車市場は、税控除対象のBEVを中心にEVの普及が見込まれる。

表3:購入者の属性による燃料タイプ別シェアの推移(新車) (単位:%、ポイント)(△はマイナス値)注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。
燃料別 個人 企業(社用車)
2024年 2025年 前年との差(%) 2024年 2025年 前年との差(%)
ガソリン 65.7% 62.4% △ 3.3 26.9% 25.0% △ 1.9
ディーゼル 4.3% 3.1% △ 1.2 5.3% 3.0% △ 2.3
プラグインハイブリッド(PHEV) 3.6% 4.9% 1.3 22.0% 12.5% △ 9.5
ハイブリッド式電気自動車(HEV) 15.1% 18.9% 3.8 5.5% 6.2% 0.7
バッテリー式電気自動車(BEV) 9.6% 8.9% △ 0.7 40.3% 53.1% 12.8
その他 1.9% 1.7% △ 0.2 0.1% 0.1% 0.0

注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。

出所:ベルギー自動車工業会

個人向け市場のEV普及のカギは経済性にシフト

個人向け市場は、依然としてガソリン車が全体の62.4%を占め、EVのシェアは伸び悩んでいる。個人向けのEV購入に対する財政支援がない中、比較的安価なHEVのシェアは18.9%と、EVの中では最大となった。

保険大手AG Insuranceが2025年4月に、18歳以上のベルギー人2,000人を対象に実施したモビリティーに関する調査によれば、EVの販売価格は下落しているものの、回答者の62%は「EVは価格が高すぎる」と回答した。2019年の調査で同様に回答をした人は40%で、価格を懸念点とする人は大幅に増加しており、購入費用が依然として最大の障壁になっているとした。その他の懸念事項として、充電速度の遅さ(28%)、航続距離の制約(26%)、充電インフラ不足(24%)が挙げられた。「エネルギー効率の良い、あるいは環境に配慮した移動をどの程度重要だと考えるか」という問いに対しては、環境に配慮した移動を重要視する回答の割合は、2019年の77%から、2025年は63%に低下した(図2参照)。さらに、環境に配慮した日常的な移動手段(公共交通機関、自転車、EVなど)の導入を決定もしくは検討する動機としては、思想的な理由(2019年:24%、2025年:18%)は低下し、コスト削減(2019年:29%、2025年:38%)がより重要とされる傾向にある。こうした背景には、過去数年間のインフレや金利上昇による社会的・経済的な緊張の高まりがあるとみられる。その結果、環境への配慮よりもコスト削減が重視されるようになり、環境配慮型の移動手段への移行の原動力は経済性へシフトしつつあるとした。

図2:「エネルギー効率の良い、あるいは環境に配慮した移動をどの程度
重要だと考えるか」との問いに対する回答の比較(2019年、2025年)
「とても重要である」は、2019年は25%、2025年は16%、「重要である」は、2019年は52%、2025年は47%、「どちらでもない」は、2019年は20%、2025年は26%、「重要でない」は、2019年は2%、2025年は6%、「全く重要でない」は、2019年は1%、2025年は5%。

出所:AG Insuranceのデータを基にジェトロ作成

購入価格が低く抑えられる中古車市場では、社用車としてリース契約された車両が契約終了後に潤沢に流入することで、供給が需要を上回り、価格は下落傾向にある。過去数年間、成長を続ける同市場では、購入者の90.2%を個人が占める。燃料タイプ別に見ると、スポーツ用多目的車(SUV)や都市向け小型車を中心としたガソリン車が55.6%、次いでディーゼル車が26.0%で、EVは17.9%にとどまっている(表4参照)。

表4:新規登録の燃料タイプ別シェアの推移(中古車)(単位:%、ポイント)(△はマイナス値、ーは値なし)注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。
燃料別 中古車
2023年 2024年 2025年 前年との差
(ポイント)
ガソリン 54.0% 55.1% 55.6% 0.5
ディーゼル 35.6% 30.6% 26.0% △ 4.6
プラグインハイブリッド(PHEV) 8.1% 10.6% 13.3% 2.7
ハイブリッド式電気自動車(HEV)
バッテリー式電気自動車(BEV) 1.8% 3.2% 4.6% 1.4
その他 0.5% 0.5% 0.5%

注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。

出所:ベルギー自動車工業会

FEBIACによれば、中古EVはリース契約を終了した車両の流入により、供給が増加している。しかし、国内外で需要の高いディーゼル車には買い手が存在する一方、EVは同様の状況にはない。

中古車販売時の車両走行履歴の証明書(注2)を発行する非営利団体「Car-Pass ASBL」は、2025年末、過去1年間に中古車を購入した552人と、今後1年以内に購入を検討している551人を対象に、中古EVの購入に関する調査を実施した。購入予定者の45%は「中古EVの購入を検討する」(「検討するかもしれない」を含む)と回答した。一方、54%は「中古EVの購入を希望しない」(「中古EVを購入しない可能性がある」を含む)と回答しており、中古EVの購入には消極的な姿勢がみられた。

車両保険を扱うtouringは、EVの一般市場が確立してからまだ10年ほどしか経過しておらず、現在もモデル数の増加や技術の進歩が続いていることから、中古EV市場はまだ一定の成熟段階に達していないと分析した。一方、リース契約が終了した車両の在庫処分を各社が開始していることから、中古EV全体の供給量は増加しており、質の高い車両も流通しつつあると指摘した。

FEBIACは、社用車の電動化に伴い、中古車市場にEVがさらに流入する動向に対応し、リース会社は企業・個人向けの中古EVリースといった新たなプランを提案していくと分析した。

ベルギーの経済紙エコーによれば、ガソリンやディーゼルの価格が高騰する一方、電力コストは相対的に安定していると認識されており、これらが個人のEVへの移行を後押しする可能性があるとされる。

国内のガソリン価格(スーパー95 E10、公式価格)は、2026年1月の1リットル当たり1.5765ユーロから、同年4月には1.8929ユーロまで上昇した。レギュラーガソリン(95オクタン)1リットル1.75ユーロの時点(2026年3月31日)で、ガソリン車とEVが100キロメートル(km)走行する場合の価格を比較した結果は、表5のとおりとなっている。

例えば、高速道路沿いなどに設置されている高速充電スタンドでは、30分で充電が可能だが、ガソリン車の燃料代よりも充電費用が高くなる。しかし、家庭用充電スタンドは費用が最も安価だが、充電完了までに約6時間かかる。一般の充電スタンドは、充電完了までの時間は約4時間と家庭用より短いが、充電費用は家庭用よりも高い。

表5:ガソリン車とEVが100km走行する場合の費用注:100 km当たり平均19キロワット時(kWh)を消費する車と、100km当たり6リットルのガソリンを消費する車の場合を比較。
項目 充電場所 一般家庭 一般充電スタンド 高速充電スタンド
EV (1kWh当たりの電気代) (約0.35 ユーロ) (0.51ユーロ) (0.65ユーロ)
充電時間 6時間 4時間 30分
100km当たりの費用 6.65ユーロ 9.69ユーロ 12.35ユーロ
ガソリン車
(95オクタン、注)
100km当たりの費用 10.50ユーロ 10.50ユーロ

注:100 km当たり平均19キロワット時(kWh)を消費する車と、100km当たり6リットルのガソリンを消費する車の場合を比較。

出所:RTBF

FEBIACによると、2026年第1四半期のベルギーの自動車市場では、中古市場での電動化の拡大や個人需要の緩やかな回復がみられる。同期の中古EVの販売台数は9,997台となり、限定的ながら前年同期比で38.9%増となった。また、今後は新車のEV販売価格が、バッテリー製造コストの低下や大規模生産の拡大、中国メーカーを含めた競争の激化により低下するとみられている。経済性を重視する個人市場において、走行にかかるコストの優位性がEVの普及を後押しする可能性がある。


注1:
本稿では、バッテリー式電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド式電気自動車(HEV)を総称して「電気自動車(EV)」と呼ぶ。 本文に戻る
注2:
中古車を販売する際、売り手が買い手に引き渡すことが法律で義務付けられている書類の1つ。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
大中 登紀子(おおなか ときこ)
2015年よりジェトロ・ブリュッセル事務所に勤務。