2024年新車登録台数、前年比6%減もEV割合は初の半数超(ベルギー)

2025年6月19日

ベルギー自動車工業会(FEBIAC)の発表によると、2024年の新車登録台数は44万8,277台となった。2023年は、1995年以降で最少を記録した2022年の実績からV字回復をしたものの、2024年は前年比6.0%減、過去10年平均比では6.5%減となった(ベルギー自動車工業会プレスリリース「2024年のベルギー自動車市場の分析」参照(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

2024年のベルギー自動車市場は、2023年からの非ゼロエミッション車の税控除措置の段階的縮小に伴う駆け込み需要の反動を受け、社用車市場が低迷した(2025年1月22日付ビジネス短信参照)。社用車は前年比15.9%減の27万6,097台だった。一方、2024年に登録された中古車は、前年比0.8%増の72万7,650台で、2015年以来最多を記録した(図参照)。背景として、納車が早いことや、過去1年間で価格が約7.5%下落したことが挙げられた。

図:ベルギーの新車と中古車の新規登録台数の推移
2015年の新車新規登録台数は50万1,066台、中古車新規登録台数は71万8,104台。2016年の新車新規登録台数は53万9,519台、中古車新規登録台数は70万8,836台。2017年の新車新規登録台数は54万6,558台、中古車新規登録台数は71万7,077台。2018年の新車新規登録台数は54万9,632台、中古車新規登録台数は70万5,826台。2019年の新車新規登録台数は55万3台、中古車新規登録台数は70万213台。2020年の新車新規登録台数は43万1,491台、中古車新規登録台数は66万93台。2021年の新車新規登録台数は38万3,123台、中古車新規登録台数は70万9,605台。2022年の新車新規登録台数は36万6,303台、中古車新規登録台数は64万2,669台。2023年の新車新規登録台数は47万6,675台、中古車新規登録台数は68万9,170台。2024年の新車新規登録台数は44万8,277台、中古車新規登録台数は72万7,650台。

出所:ベルギー自動車工業会

市場傾向としては、新車登録台数に占める社用車の割合は、過去最大を記録した2023年の68.9%から縮小し、61.6%となった。社用車の内訳は、全体の34.1%がオペレーティングリースまたはレンタカー向けで、25.9%は自社購入またはファイナンスリース(注1)だった。

新車登録台数を燃料タイプ別にみると、電気自動車(EV、注2)のシェアは前年の48.4%から52.6%と、初めて半数を超えた。プラグインハイブリッド車(PHEV)のシェアは前年から縮小に転じたものの、バッテリー式電気自動車(BEV)とハイブリッド式電気自動車(HEV)はそれぞれ伸びた。ガソリン車は41.8%(前年比0.4ポイント減)と依然として最大シェアを有するが、ディーゼル車は象徴的な動きとしてついに5%を切り、4.9%となった(表1参照)。

表1 :新規登録の燃料タイプ別シェアの推移 (単位:%、ポイント)(△はマイナス値)

新車
燃料別 2023年 2024年 前年との差
ガソリン 42.2% 41.8% △ 0.4
ディーゼル 8.8% 4.9% △ 3.9
プラグインハイブリッド(PHEV) 21.1% 14.9% △ 6.2
ハイブリッド式電気自動車(HEV) 7.7% 9.2% 1.5
バッテリー式電気自動車(BEV) 19.6% 28.5% 8.9
その他 0.7% 0.8% 0.1
中古車
燃料別 2023年 2024年 前年との差
ガソリン 54.0% 55.1% 1.1
ディーゼル 35.6% 30.6% △ 5.0
プラグインハイブリッド(PHEV)
ハイブリッド式電気自動車(HEV)
8.1% 10.6% 2.5
バッテリー式電気自動車(BEV) 1.8% 3.2% 1.4
その他 0.5% 0.5% 0.1

注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。
出所:ベルギー自動車工業会

2024年は、購入者の属性による選好の違いが鮮明になった。2024年の新規登録台数のうちBEVの割合は、企業による購入では40.3%を占めたが、個人では9.6%にとどまった。PHEVについても同様で、企業による購入では22%を占めたが、個人は3.6%に過ぎなかった。一方で、HEVについては個人による購入に占める割合が多く15.1%で、企業の購入では5.5%にとどまった。内燃機関搭載車(ガソリンとディーゼル)は、個人による新車登録台数全体の70.0%を占める一方で、企業の新車登録台数では32.2%だった。

EV購入に対する優遇措置やインセンティブが今後のシェア拡大継続のカギ

ベルギーのゼロ・エミッションモビリティ連盟は、2024年はEVが市場シェアの過半数を獲得しただけでなく、充電インフラ数も前年比72%増と大きく拡大した、と評した。2025年は個人と企業にとり、EVが最も費用対効果の高い選択肢となる見込みで、手頃な価格帯で欧州のEVモデルが導入されることにより選択肢は強化される、と分析した。一方で、EV市場の拡大傾向を継続させるには、政府の一貫した政策の実施が重要な役割を果たす、と指摘した。

連邦政府は2025年4月、社用車についてPHEVに対する税控除措置の内容を一部延長することで合意した(表2参照)。現行では、2025年から75%に削減され、以降1年ごとに25%ずつ漸減され、2028年分以降は廃止される(2024年5月21日付地域・分析レポート参照)。改正案では、税控除措置の移行期間を延ばし、車両の二酸化炭素(CO2)排出量により異なるが、2027年末まで75%の税額控除が受けられることとし、以後、段階的に縮小し、2030年に廃止する計画だ。政府は、依然として30万人以上の自営業者は、5年以上経過した内燃機関搭載車を利用しているとし、税制優遇のあるBEVは、まだ全ての人にとり導入しやすい移動手段ではないとし、社用車市場への支援継続の背景を説明した。

EV導入拡大に向けた税控除措置の延長案の発表を受け、FEBIACは、同案は下院で審議・採決される必要があり、早くても2025年7月以降に施行予定である点に留意を促し、以下のように分析した。

まず、BEVは現行の控除率を維持し、引き続き社用車にとって税制上最良の選択肢であるという。ガソリン、ディーゼル、HEVは2026年1月1日以降の発注分から控除がなくなる。PHEVの税控除は2029年12月31日までの新規発注分に適用が延長される案となっているが、BEVと比べ購入控除率の段階的引き下げが早い。また、燃料控除は2028年からなくなるが、電気代はBEVと同様の控除率を維持する。これは、PHEV利用者に電気モードの利用を促進するためだ、と分析した。

ベルギーでは現在、車齢6年以上の社用車が40万台近く走行している。現状そのような利用者がBEVに乗り換える見込みは少ない。ワロン地域とブリュッセル首都圏地域では、依然として60%が内燃機関搭載車を選択している。今後、中小企業や自営業者が新車を購入する際、今回のPHEVに対する税控除の延長措置が、PHEVを新たに有効な選択肢とする可能性があるとした。FEBIACは、2025年内に社用車市場が再び拡大することへの期待をにじませた。

表2:燃料タイプ別の車両発注時期と関連費用の税控除率(2025年~2031年) PDFファイル(374KB)

一方、個人のEV車の購入に対するインセンティブは、現存しない。唯一の支援措置だった、フランダース政府(注3)による補助金制度は、既に十分な効果を発揮したとして、当初の予定より1カ月前倒し、2024年11月22日購入分までで終了した。4万ユーロ以下のBEV車両(中古車の場合は6万ユーロ以下、PHEVは対象外)の購入を対象に、最大5,000ユーロ(中古車は3,000ユーロ)を補助するものだった。

欧州でガソリンスタンドなどのエネルギー供給を手掛けるQ8の調査によれば、2024年10月時点で、ベルギーの新車市場のEVモデルは100種類以上に上り、その半数以上が4万ユーロ以下で販売されている。3万5,000ユーロ以下で購入できる小型車モデルも10数種ある。オランダでは既に、自動車メーカーがインセンティブや補助金を得るためにEVモデルの価格を引き下げている。ベルギーでも、フランダース政府の補助金制度に合わせて価格が下がる可能性を指摘していた。2024年10月時点で補助金制度の終了は決定していたが、4万ユーロを下回る価格の新しい車種も数年以内に登場する見込みとして、個人によるEV購入はさらに手頃なものになるとの予測を立てた。

今後、ベルギーにおけるEVのさらなる普及に向けた取り組みとして、ゼロ・エミッションモビリティ連盟は、大規模な双方向充電(注4)を可能にするための緊急措置が必要だと主張した。双方向充電は、充電ステーションからEVへ、EVから送電網や家庭へという2つの方向にエネルギーを流すことができるため、大規模な充電が可能になり、EVの残存価値を高め、国内需要を活性化させることが可能となる。また同連盟は、ベルギーが近隣諸国に比べて輸送分野のEVトラックの普及で遅れを取っているとし、これは中期的には産業競争力を弱め、ベルギーの物流部門に深刻な悪影響をもたらす懸念があると指摘した。

2024年に低迷した社用車市場は、連邦政府が発表した税控除の延長案により持ち直す可能性があるものの、政策が完全に適用されるまでは時間がかかる見込みだ。さらに、EV所持者に対する税制優遇措置に変化はないため、EV購入の動きがさらに拡大していくかは今のところ不透明だ。また、個人によるEV購入の際に、利用可能なインセンティブがないことから、手頃な価格のEVモデルの導入が普及のカギとなるだろう。


注1:
ファイナンスリースは、中途解約不可で、その代金をリース期間にわたって支払う。一方、オペレーティングリースは、賃貸契約となる。
注2:
本稿では、バッテリー式電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド式電気自動車(HEV)を総称して「電気自動車(EV)」と呼ぶ。
注3:
ベルギーは連邦制を採用しており、各政府で管轄が異なる。
注4:
車を充電するだけでなく、電力需要が急増した際などに、車のバッテリーからエネルギーを電力網に送ることも可能な設備。
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
大中 登紀子(おおなか ときこ)
2015年よりジェトロ・ブリュッセル事務所に勤務。