乗用車新車登録台数は減少も、電動化が進展
フランス自動車動向(1)

2026年7月1日

2025年の乗用車新車登録台数は163万2,154台と、前年から5.0%減少した。重量課税の対象拡大の影響でプラグインハイブリッド車(PHEV)の登録は急減したが、バッテリー式電気自動車(BEV)と非充電式ハイブリッド車(HEV)は増加し、電動化は進展した。 前編では、電動車が存在感を増し、様変わりしたフランス自動車市場を概観する。後編では、国内生産台数の動向や、電動車に焦点を当てたフランスの自動車貿易を詳述する。

乗用車の新車登録台数は減少

フランス自動車工業会の発表(フランス語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(190KB)によると、2025年の乗用車新車登録台数は前年比5.0%減の163万2,154台となった。小型商用車(車両総重量5.1トン未満)の新車登録台数は前年比5.6%減の36万504台だった。大型トラック(車両総重量5.1トン以上)も9.9%減の4万4,119台と減少した。

乗用車のメーカー別・ブランド別新車登録台数(表1参照)を見ると、ルノー・グループはブランド間で対照的な動きとなった。主力のルノーは前年比3.0%増の28万5,531台と堅調に推移した一方、グループ傘下のルーマニアブランドのダチアは13万9,305台と3.9%減少した。ルノーは、BEVの新型モデル「R5(ルノー5 E-TECH)」が販売を牽引した。

日産は前年比0.7%増の2万8,576台と、前年の水準をほぼ維持した。2025年には、ルノーと日産が2023年に締結した新アライアンス契約を改訂し、相互株式保有比率の上限を10%まで引き下げ可能とする柔軟化に合意した。両社の関係は、より緩やかなアライアンスへと移行した。

ステランティスでは、プジョーが前年比5.0%減の22万1,001台と減少した一方、シトロエンが3.6%増の11万5,576台と増加した。フィアットは38.2%減の2万255台と大幅に落ち込み、低迷が続いた。

外国メーカーでは、最大シェアを持つフォルクスワーゲン(VW)が前年比7.0%減の11万960台と低調だった。一方、グループ傘下のチェコ・シュコダが13.8%増の5万660台と好調に伸びた。トヨタは13.7%減の11万71台と厳しい結果となった。

ドイツの高級車ブランドも総じて減少傾向となり、BMWが前年比9.3%減の6万904台、メルセデス・ベンツは11.9%減の4万5,155台だった。ただし、BMWグループ傘下のMINIとアウディは、EVモデルが販売を押し上げ、MINIは34.4%増の2万6,302台、アウディは1.8%増の4万8,756台といずれも増加した。

米国メーカーでは、フォードが前年比12.2%減の3万8,321台と前年に続き減少した。テスラは37.5%減の2万5,460台と大幅な落ち込みが続いている。現地メディアによると、テスラを率いるイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の政治的関与によるブランドイメージの悪化に加え、アフターサービスに対する不満の顕在化が影響したとされる。加えて、中古車市場では売却希望者の増加によりテスラの価格下落が進み、ルノーや中国メーカーなど競合の台頭も需要減少に拍車をかけている。

韓国メーカーでは、起亜が前年比22.5%減の3万3,988台と大きく減少した一方、現代は0.4%増の4万5,621台と微増を確保した。中国メーカーではMGが37.1%増の3万3,729台と伸長し、韓国勢に迫った。BYDも149.9%増の1万3,533台と急成長を記録した。

日本メーカーでは、ホンダが前年比15.9%増の5,063台と伸びた一方、マツダは3.0%減の8,354台、三菱自動車は43.4%減の2,351台と大きく落ち込んだ。スズキも16.3%減の2万173台となり、増減が分かれた。

表1:2025年の主要メーカー・ブランド別乗用車新車登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 登録台数 前年比
ルノー 285,531 3.0
プジョー 221,001 △ 5.0
ダチア 139,305 △ 3.9
シトロエン 115,576 3.6
フォルクスワーゲン 110,960 △ 7.0
トヨタ 110,071 △ 13.7
BMW 60,904 △ 9.3
シュコダ 50,660 13.8
アウディ 48,756 1.8
現代 45,621 0.4
メルセデス・ベンツ 45,155 △ 11.9
フォード 38,321 △ 12.2
起亜 33,988 △ 22.5
MG 33,729 37.1
オペル 32,290 △ 19.3
日産 28,576 0.7
MINI 26,302 34.4
テスラ 25,460 △ 37.5
フィアット 20,255 △ 38.2
合計(その他を含む) 1,632,154 △ 5.0

出所:フランス自動車工業会

BEVの販売が拡大、PHEVは急減速

乗用車の新車登録台数を燃料タイプ別に見ると〔フランス自動車工業会資料参照(フランス語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(441KB)〕、電動化の流れが着実に進展している。BEVとPHEVを合わせた電動化モデルの構成比は26.7%と、前年の25.4%から小幅ながら上昇した(表2参照)。中でもBEVは、前年比12.5%増の32万6,923台と再び増加に転じ、市場シェアは前年の16.9%から20.0%へと拡大した。

表2:燃料別乗用車新車登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値) 注:燃料電池、液化天然ガス、バイオエタノールなど。
燃料 2024年 2025年
登録台数 登録台数 構成比 伸び率
ガソリン 507,756 345,233 21.2 △ 32.0
ディーゼル 124,952 79,397 4.9 △ 36.5
ハイブリッド車(HEV) 588,897 716,135 43.9 21.6
プラグインハイブリッド車(PHEV) 146,392 108,627 6.7 △ 25.8
バッテリー式電気自動車(BEV) 290,614 326,923 20.0 12.5
その他(注) 59,805 55,819 3.3 △ 6.7
合計 1,718,416 1,632,134 100.0 △ 5.0

注:燃料電池、液化天然ガス、バイオエタノールなど。

出所:フランス自動車工業会(CCFA)資料を基にジェトロ作成

BEVの普及を後押ししたのは、政府による手厚い支援策だ。政府が2025年9月30日に再始動した低所得層向けの「ソーシャル・リース制度」は、市場拡大に大きく寄与した。これは、環境負荷の少ない移動手段を低所得層に提供することを目的とした施策で、設定された5万台の枠のうち、2025年10月末時点で4万1,500件の契約が成立した。最も所得の低い世帯には最大7,000ユーロの補助が適用される場合もあり、2025年末にかけてBEV需要を押し上げた(2025年10月2日付ビジネス短信参照)。

政府はまた、欧州域内で製造されたBEVへの支援を強化している。EU域内で組み立てられ、欧州経済領域(EEA)内で生産されたバッテリーを搭載するBEVを購入またはリースする場合、2025年10月1日から「個人向け電気自動車支援金」に1,000ユーロの追加補助が適用された。同制度は2025年7月、従来の環境報奨金に代わり、エネルギー節約証書(CEE)制度を財源とする「電気自動車(乗用車)導入促進プレミアム(クー・ド・プス)」に移行した。支給には、車両の環境スコアや購入者の課税所得など複数の条件を満たす必要がある。2024年末に一度縮小された個人向け補助は、こうした制度再編を通じて再び拡充されるかたちとなった。

BEVの乗用車新車登録台数をモデル別に見ると〔Automobile Propreウェブサイト参照(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕、「ルノー5」が通年で首位を維持し、最多販売モデルとなった。登録台数は3万7,997台に達し、2位以下を大きく引き離した。2位は前年まで首位だったテスラ「モデルY」で、販売台数は前年比32.8%減と大きく後退した。「モデル3」も47.3%減と低迷が続いた。3位には登録台数1万6,223台でシトロエンの電動C3が入り、「プジョー208」を上回って同社のEV戦略の成果を示した。また、ルノーは電動SUV「セニックEV」が1万6,000台超と好調だった一方、同社の「メガーヌEV」は47.9%減と落ち込んだ。

他方、PHEVの登録台数は10万8,627台と、前年(14万6,392台)から25.8%減と大幅に減少した。市場シェアも6.7%と、2024年の8.5%から低下した。PHEV急減の背景には税制の見直しがある。フランスでは2022年以降に初めて登録された乗用車を対象に重量課税(malus masse)が導入されているが、2025年1月からは、都市部で電動走行距離が50キロメートルを超える車両にも同税が適用されるようになった。バッテリー搭載により車両重量が増すPHEVは価格面で不利となり、今回の需要減につながった。

同制度では車両重量に応じて課税され、2025年は1,600~1,799キログラム(kg)部分に1kg当たり10ユーロ、2,100kg超の部分には同30ユーロが課される。2026年には基準がさらに厳格化され、1,500kg超から段階的な課税が導入される見通しだ。BEVおよび燃料電池車は免税対象となる。

充電インフラの拡充も電動車の普及を支えた。欧州電気自動車協会フランス支部AVERE France(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2025年12月末時点の公共用充電スタンドの数は18万5,501基となり、前年から20%増加した。種類別では、出力7.4~22キロワット(kW)の三相交流が9万433基と全体の48%を占め、最多となった。22kW超の三相交流は1,444基(1%)にとどまる。これに単相(出力7.4kW未満)が5万4,965基(29%)で続き、DC(直流)充電は3万9,875基と全体の21%を占めた。

HEVが急拡大

内燃機関車では、かつての主力であったディーゼル車の縮小が続いた。2016年まで市場を席巻していたディーゼル車は、2025年には前年比36.5%減の7万9,397台まで落ち込み、市場シェアも4.9%と前年の7.3%から後退した。

ガソリン車も同様に減少が続き、2025年の販売台数は前年比32.0%減の34万5,233台にとどまった。市場シェアは21.2%と、前年の29.5%から低下しており、ディーゼルとガソリンの両カテゴリーで需要が縮小し、内燃機関車の存在感は急速に薄れつつある。

こうした中で際立った伸びを示したのが、HEVだ。2024年に初めてガソリン車を上回った同カテゴリーは、2025年も21.6%増の71万6,135台と拡大を続けた。市場シェアは43.9%に達し、前年の34.3%から大幅に上昇した。高い燃費性能に加え、都市部の環境規制への適合性が評価され、市場の主流としての地位を確固たるものとした。

中古車市場も電動化が広がる

中古乗用車販売市場は0.8%増の539万6,451台となり、中古車の供給が低迷する中でも市場は緩やかな拡大を示した。

データ・統計研究局(SDES)統計(2026年2月11日発表)(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、中古車は乗用車市場における主要な選択肢となっており、市場全体の76.9%を占める。一方、新車供給の減少(特に2020年以降の半導体不足など)に伴い、車齢5年未満の比較的新しい中古車両の供給が不足している。この影響で、取引台数は2010年以降の平均値を下回る水準にとどまっている。

2025年の中古車市場における燃料タイプ別構成を見ると、依然として内燃機関車が市場の大半を占めているものの、その割合は前年の87.5%から83.8%へと低下し、電動化の進展が影響している。中でもディーゼル車は44.5%とシェアが最大となっているが、近年の環境規制強化や都市部への乗り入れ制限などの影響を受け、縮小傾向となっている。ガソリン車は39.3%となり、前年比で1.3ポイント減少した。

欧州電気自動車協会フランス支部AVERE France(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2025年の中古EVの取引台数は17万7,886台に達し、同期間の新車EV登録台数(32万6,923台)の約半分の規模に相当した。中古車市場全体に占めるEVの割合は3%となっている。2025年における車齢3年未満の中古EVの平均価格は3万2,261ユーロで、新車EVの平均価格(3万8,633ユーロ)を16%下回った。もっとも、購入補助金を考慮すると新車EVの実勢価格は3万6,904ユーロとなり、中古EVとの価格差は13%まで縮小した。EVの新車と中古車の価格差は縮小傾向にあり、価格低下の度合いは内燃機関車に近づきつつある。

執筆者紹介
ジェトロ・パリ事務所
山﨑 あき(やまさき あき)
2000年よりジェトロ・パリ事務所勤務。
フランスの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。