インド四輪EV市場
販売動向と今後の展望

2026年8月10日

インド市場の自動車販売は年々拡大しており、2025年の乗用車と商用車を合計した四輪車新車販売台数は550万台を記録し、過去最高を更新している。これは日本の新車販売台数を上回り、世界第3位の市場規模だ。インド政府は、2070年のカーボンニュートラル達成に向けて、化石燃料を使わず、排気ガスを一切出さない電気自動車(EV)を推奨している。昨今、インド市場で四輪EVの新モデル発表の報道を目にする機会が増えてきた。そこで、現在販売されている四輪EVの特徴や販売動向を分析し、今後の方向性と課題を整理した。

現在の四輪EV販売モデル数

2023年に公開のレポートでも、インド市場の四輪EV普及の方向性を整理した(2023年2月13日付地域・分析レポート参照)。当時、四輪EVを発売しているメーカーは多くなかった。主要6社だけで全EV販売台数の約95%を占める状況で、モデル数も限定的だった。

現在、インド市場で四輪EVを上市しているメーカー数は19社、既に発売を開始しているモデル数は51に拡大した(2026年7月執筆者にて確認)。消費者が選んで購入できる状況になってきている。さらに、販売を予告している10社を含め、合計27の新規モデルが追加される見通しだ。市場はまさに戦国時代に突入したといえる様相を呈している。

2026年2月、インド市場で四輪乗用車の販売トップシェアを維持している日系企業のマルチ・スズキが、同社初となる四輪EVの発売を開始した。発売直後は納車まで2カ月待ちの状況であったことから、消費者の関心が高いことがうかがえる。このように各メーカーから新モデルが続々と市場に投入される一方、一部メーカーでは輸入した完成車の売れ行きが芳しくなく、長期在庫が続いているとの報道もある。四輪EV市場では、「売れる車」と「売れない車」の差が明確になりつつあるようだ。

インド市場の四輪EV販売実績

2025年のインドの全四輪乗用車販売台数は448万9,717台(2026年1月30日付ビジネス短信参照)だ。他方で、四輪EVの新規登録台数(新車・中古車の合計)は19万4,034台(2026年3月25日付ビジネス短信参照)にすぎない。まだ市場初期で、新しさや流行に敏感な消費者が購入する「アーリーアダプター」の領域にある(2024年9月12日付地域・分析レポート参照)。

四輪EVメーカー別のシェアを見ると、2023年に約70%のトップシェアを獲得していたタタ・モーターズ(注1)は、2025年にシェアを39%まで落とした。2025年の成長率で見ると、タタ・モーターズは前年比111%であるのに対し、JSW・MGモーターが同237%、マヒンドラ&マヒンドラが同461%と急速に拡大している。全体では、この上位3社が約84%のシェアを占めていることが分かる(図1、2、3参照)。四輪EV市場は拡大局面にある一方、市場を先行して開拓してきたタタ・モーターズのシェア低下が示すように、競争は「EVを投入した企業が有利な段階」から「商品力やブランド力で選ばれる段階」へ移行しつつあるとみられる。

図1:四輪EVの年別メーカー別販売推移
四輪EVのメーカー別販売台数について、2022年から2025年まで暦年別に示している。2022年はTATA社が主要シェアを獲得していたが、JSW MG MOTOR社やマヒンドラ&マヒンドラ社が急成長しており、年々TATA社シェアが減少している事がわかる。

出所:VAHANサイトからジェトロ作成

図2:2025年四輪EVメーカー別販売シェア
2025年のEV四輪メーカー別シェアを円グラフで示している。図1の中で2025年のみを抽出しており、TATA社シェアは39%、JSW MG MOTOR社は27%、マヒンドラ マヒンドラ社は19%である。 この上位3社で全体の85 %を占めており、主要メーカーに集中している事がわかる。

出所:VAHANサイトからジェトロ作成

図3:四輪EVの上位メーカー年別販売推移
四輪EVの販売上位6社について、2022年から2025年まで、メーカー別の販売推移を棒グラフで示している。この中で、JSW MGMOTOR社及びマヒンドラ&マヒンドラ社の2025年の伸長率が他メーカーに比べて特出しており、赤の矢印でマークしている。

出所:VAHANサイトからジェトロ作成

2025年のモデル別の販売実績を見ると、上位5モデルで全体の約6割を占めており、売れ行きが好調なモデルが明確になってきているようだ(表参照)。これら販売上位モデルに共通する特徴は何か、各車両の諸元データを含めていくつかの角度から整理した。インドの四輪EV市場では消費者の選択肢が広がる中、売れ筋モデルの動向からも、価格や居住性、ブランド戦略などの製品競争力が重要になっていることがうかがえる。

表:2025年の四輪EV販売上位メーカーとモデル(ーは記載なし)
OEMメーカー EV モデル 販売台数(台) シェア
JSW・MGモーター WINDSOR 42,356 22%
タタ・モーターズ NEXSON 24,612 13%
マヒンドラ&マヒンドラ XEV9e 22,266 12%
タタ・モーターズ PUNCH 16,763 9%
タタ・モーターズ TIAGO 16,247 8%
その他 71,011 36%
合計 193,255 100%

出所:Cartoq「2025 EV Sales In India Report Card: Top 5 Best Selling EVs」からジェトロ作成

販売されている四輪EVの特徴:バッテリー容量と航続距離/販売価格

現在販売されている四輪EVの駆動方式は、内燃機関車同様に前輪駆動・後輪駆動・四輪駆動(AWD)が存在し、それぞれの駆動方式によって走行性能や安定性などに違いがあることは知られている。ここで、EVの性能や価格を左右する重要な要素であるバッテリー容量とショールーム価格の関係を整理した(図4参照)。図4からは、バッテリー容量が大きいほど販売価格も高くなる傾向が読み取れる。

各モデルには、バッテリー容量が異なる標準グレードと廉価グレードが設定されている。車体価格の半分を占めるともいわれる高コストのバッテリーの搭載量を減らすことで、メーカーは販売価格を下げることができる。一方で、1回の充電で走行できる航続距離はバッテリー容量に応じて短くなる(図5参照)。購入価格を優先するか、航続距離を優先するかは、購入者の選択となる。

図4:ショールーム価格とバッテリー容量の関係(販売上位5モデル+日系モデル)
四輪EVモデルに搭載されるバッテリー容量とショールーム価格の関係をグラフに整理した。各モデルには、標準バッテリー容量のグレードとバッテリー容量を少なくした廉価版グレードが存在している事がわかる。今年2月に発売開始されたマルチスズキのe VITARAとOEM供給をしているトヨタキルロスカのUrban Cruiser Ebellaを追加しているが、他社モデルと同傾向で、バッテリー容量の異なるグレードを設定している事がわかる。

出所:各メーカーのカタログからジェトロ作成

図5:バッテリー容量と航続距離(販売上位3メーカー+日系メーカー)
四輪EVに装備されている駆動用バッテリーと航続距離の関係を示している。積載されているバッテリー容量が多ければ航続距離が延び比例している。この関係はメーカーに拠らず同傾向であることがわかる。

出所:各メーカーのカタログからジェトロ作成

内燃機関車の売れ筋の車体カテゴリーは、コンパクト、ミニに加え小型SUVなどの小型車で、特に安価なモデルの人気が高い。2025年9月に改正通達された物品・サービス税(GST)で、小型車の税率が大幅に引き下げられた(2025年9月25日付ビジネス短信参照)。これを受けて販売台数は増加し、現在もその傾向が続いている。消費者にとって「価格」は重要な購入判断指標の1つであることがうかがえる。

続いて、四輪EVの価格帯について、販売上位5モデルに設定されている全グレードを含めて整理した(図6参照)。特徴は、比較的低価格帯である100万ルピー(約170万円、1ルピー=約1.7円)から149万ルピーに価格設定されたモデル・グレードが多い一方、200万ルピーを超えるモデルも支持されていることだ。購入者の所得の増加に伴い、比較的高価格帯のモデルにも一定の需要があることがうかがえる。

図6:販売上位5モデルのショールーム価格帯と各価格帯に設定されたグレード数
四輪EV販売上位5モデルに設定されている各グレードを加えた価格帯を棒グラブに整理している。横軸にショールーム価格帯、縦軸はその価格帯にあるグレード数である。一番グレード数が多い価格帯は100万から149万ルピーで4モデル12グレードを数える。99万ルピー以下の低価格帯には3グレードと設定は多くないことがわかる。一方200万ルピーを超えるモデルも設定され、値段が高くとも購入する層が存在することを示している。

出所:各メーカーカタログからジェトロ作成

販売上位四輪EVの特徴:車両寸法

2025年に四輪EV購入者に対して実施したアンケートでは、購入可否決定要因の1つとして、「車内スペースが広いので快適」との声が寄せられていた(注2)。そこで、車体寸法から車内空間の特徴を考察するため、前輪軸と後輪軸の距離を示すホイールベースと車幅(注3)の関係を、販売上位3メーカーと日系メーカーの各モデルについて整理した(図7参照)。

図7:四輪EV販売上位3メーカーと日系メーカーの各モデルの車室内広さの分布
四輪EVの車室内スペースの分布について、ホイールベースと車幅の関係をグラフに整理して示している。データは各社公表しているカタログ寸法緒言より引用し、販売上位3メーカーのモデルと、日系メーカーのモデルをプロットしている。車幅1700mm未満は日本のナンバープレート分類番号では、小型乗用自動車(5ナンバー)で、1700mm以上は普通乗用自動車(3ナンバー)に分類されることを示している。四輪EVの販売上位モデルは車幅1800㎜前後、ホイールベースで2700㎜前後に位置し、日系メーカーが今年2月に販売を開始したモデルも、この領域に位置する。小型車より比較的車室内空間の広い、ゆとりのあるモデルが多く上市され、各メーカーのモデル数が多い事がわかる。

出所:各メーカーカタログからジェトロ作成

販売上位メーカーの四輪EVラインアップからは、小型モデルよりも比較的広い車内空間を確保した領域に多くのモデルを投入していることがうかがえる。2026年2月に発売開始したマルチ・スズキの「eVITARA」や、マルチ・スズキがトヨタ・キルロスカにOEM供給している「Urban Cruiser Ebella」もこの領域に位置している。

インド市場で多人数の移動手段として利用されることが多い車両の例として、Toyota Innova Crysta(3列シート、7人乗り)を比較対象に挙げる。この車両のホイールベースは2,750mm、車幅は1,830mmで、販売上位の四輪EVと同じ領域に位置していることが分かる。販売上位の四輪EVでは、同程度の車室内空間が3列シートではなく、2列シート(5人乗り)空間と荷物スペースとして設計されている。そのため、居住空間には比較的余裕があると考えられる。

なお、車幅1,700mmは日本のナンバープレート分類番号では小型乗用自動車(5ナンバー)と普通乗用自動車(3ナンバー)の閾値(しきいち)であり、1,700mm超の車両は3ナンバーとして登録される。販売上位の四輪EVの多くはこの水準を上回っており、車内空間の広さを重視した商品設計がうかがえる。したがって、家族など後部座席の同乗者の快適性も含め、余裕のある車内空間が購入時の判断材料の1つになっている可能性がある。

販売第1位モデルの特徴

2025年のインドの四輪EV市場で、販売台数が最も多かったモデルは、JSW・MGモーターから2024年9月に発売された「WINDSOR」だ。前述のとおり、車室内空間が比較的広いことがこのモデルの特徴だが、発売以来好調な販売を維持している要因について、いくつかの角度から考察する。

「WINDSOR」の販売好調な背景には、商品力に加え、インド市場に訴求するブランド戦略にもあると考えられる。 初めに、「WINDSOR」を発売しているJSW・MGモーターは、MGモーターのブランドを保有する上海汽車集団(SAIC)にインドの大手鉄鋼メーカーであるJSWグループが資本参加した中国系合弁企業だ(注4)。図3から分かるように、同じ中国勢メーカーである比亜迪 (BYD)と比べると、成長度合いに明らかな差がある。両メーカーは、インド政府が2020年から設けている隣国からの投資規制により、インド政府の認可が得られず、投資計画が延期となっている。その状況下で、SAICがJSW・MGモーターの持ち株を相手側のJSWに譲渡するかたちで、JSWが経営権を確保する動きがあり、インド流の進め方によるかじ取りがしやすくなっているようだ。

2025年にニューデリーで開催されたインド最大級の自動車展示会「バーラト・モビリティ・グローバル・エキスポ2025」の会場では、往年人気のあったMorris Garages(MG)のスポーツカーの展示に加え、MGブランドのロゴが入った商品の販売ブースに来場者が殺到していた(写真参照)。MGブランドの根強い愛好者がインド市場にも存在していることがうかがえる。

また、車名「WINDSOR」は、英国王室の居城である「ウィンザー城」や英国王朝の名前に由来し(注5)、品格や広さ、快適性などの同モデルのイメージと重なる。さらに、かつてインドの権力の象徴として知られた「マハーラージャ(サンスクリット語で偉大な王)」も連想させる。100年を超える伝統を持つ英国ブランドMGのイメージを前面に打ち出している点も特徴的だ。

このように、JSW・MGモーターは英国由来のブランドイメージを活用しながら、インドの消費者に訴求する独自のブランド戦略を展開しているようだ。

2025年1月インドモーターショーのJSW・MGモーターのブース(ジェトロ撮影)

自動車への規制強化の動き

インド市場では、自動車メーカー各社が特徴ある四輪EVを発売しており、前述のとおり今後もモデル数は増加する見通しだ。これには、輸入に依存する化石燃料の使用を抑えることに加え、大気汚染対策として排気ガスを出さない自動車であるEVの普及をインド政府が積極的に支援していることも影響している。また、自動車メーカーにとっては、世界各地で年々厳しくなる環境規制(注6)をクリアするため、EVを販売ラインアップに加えることが重要になっていることも背景にある。

さらに、政府内では廃棄物や汚染物質から環境を保護するための法規制について活発に議論がなされ、法律や規則が制定・改正されてきた。2025年2月には環境・森林・気候変動省(MoEFCC)が「バッテリー廃棄物管理規則2022」の改正を行い、拡大生産者責任(EPR)に関するコンプライアンス体制の強化を図った。EPRの厳格化により、自動車メーカーは自社での回収や第三者事業者への委託に伴うコスト負担がさらに増加する可能性がある。特にバッテリーを多く搭載するEVについては、資源回収の強化やリサイクルを含む処理技術の開発が不可欠になるだろう。

また、インドと欧州連合(EU)や英国とのFTA発効も近づいていることから、インドで生産した製品を海外に輸出する動きが今後加速するものとみられる。これに伴い、輸出先市場で求められる規制や法令に適合するため、インドでより高度な製品技術開発を行う必要性も高まるだろう。一例として、重要自動車市場の1つである欧州市場では、主にガソリン車とディーゼル車を対象に大気汚染物質の排出規制値を定めた欧州連合(EU)の現行規定「ユーロ6」から、対象規制範囲を拡大した新基準「ユーロ7」(注7)の規制内容が既に欧州議会で合意され、施行に向けた作業が始まっている。こうした規制強化の動きを見据え、欧州自動車メーカーがインドへの投資を加速し、研究開発拠点を設置する動きも報道されている。

自動車メーカーの課題と今後の方向性

各自動車メーカーは、インドで車両を生産、販売するだけでなく、寿命を終えた車両(ELV:End of Life Vehicle)を資源として回収し、リサイクルなどを通じて環境負荷を低減する持続的な取り組みが求められる。環境・森林・気候変動省(MoEFCC)は2025年1月、「環境保護(廃車)規則2025」を通達した。この規則は、拡大生産者責任(EPR)に基づき、各自動車メーカーに廃車処理に関するEPR目標を義務付けるもので、農業用トラクター、農業用トレーラー、コンバインハーベスター、耕運機を除く、あらゆる種類の輸送用車両および非輸送用車両に適用される。各自動車メーカーは、輸送車両については15年前、非輸送車両については20年前に登録された車両を対象に、2025/2026年度(2025年4月~2026年3月)から毎年の廃車処理目標を設定した。しかし、同年度は目標未達だったことが報道されている。したがって、環境にやさしいとされるEVを生産・販売するメーカーであっても、社会・地球の持続可能な発展に貢献する方針や取り組みを明確に持ち、実行することが重要となる。そのため、今まで以上に自動車部品サプライヤーと協業しながら、高度な技術開発と、環境保全に関わる主体との連携・協力が求められていくだろう。EV市場の拡大に伴い、自動車メーカーには車両販売だけでなく、リサイクルや資源循環まで含めたライフサイクル全体での競争力が求められるようになっている。


注1:
2025年10月1日に旧タタ・モーターズは乗用車部門と商用車部門に分社化された。現タタ・モーターズは商用車部門の存続会社で、乗用車部門はタタ・モーターズ・パッセンジャー・ビークルズとなった。本稿では、タタグループ系列の登録台数を全て合計し、「タタ・モーターズ」と表記している。 本文に戻る
注2:
2025年12月2日付地域・分析レポート「関心強くも購入障壁高く 消費者視点で考えるインドEV四輪市場(2)」を参照。 本文に戻る
注3:
各社モデル別に、側面衝突対策の衝撃吸収構造やエアバッグの有無などによりドアの厚みは異なるが、車室内空間の目安としている。 本文に戻る
注4:
2023年12月7日付ビジネス短信を参照。 本文に戻る
注5:
インド商標登録局の記録によると、個人および企業による商標登録記録はあるものの、JSW・MGモーターによる商標登録は行われていないことが分かる。 本文に戻る
注6:
世界の各国・地域で適用される排気ガス規制、騒音規制、燃費規制(CAFE)、安全基準などを指す。 本文に戻る
注7:
排出物規制とも呼ばれ、従来のNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)の排出規制強化に加え、タイヤの摩耗時に発生するマイクロプラスチックや、ディスクブレーキやブレーキパッドから発生する粉じんなども新たに規制対象となる。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所 海外投資アドバイザー
淺羽 英樹(あさば ひでき)
大手自動車部品メーカーに34年間勤務。商品設計・評価、品質保証、マーケティング、代理店支援・販路拡大など、モノづくりからお客様対応までの全般業務を経験。サウジアラビア、ドイツ、タイ、ブラジルで、通算17年の勤務経験あり。2022年3月から2025年3月までジェトロ・チェンナイ事務所で勤務。2025年4月から現職。