2025年の自動車生産、輸出が不調も、販売は大幅増(アルゼンチン)
中国車が勢力拡大

2026年6月23日

アルゼンチン自動車製造業者協会(ADEFA)によると、2025年のトラック・バスを除く自動車の生産台数は49万876台で、前年比3.1%減と2年連続で減少した(図1参照)。2024年の生産台数は、2023年12月に実施された大幅な通貨切り下げとそれに起因する景気後退が主な原因で減少した。2024年下半期には景気が底打ちし、2025年上半期には自動車生産台数は増加した。2025年通年の生産台数には大幅な回復が期待された。しかし、同年後半にかけて新モデルの発売や各種プロジェクトに伴う生産ラインの調整が行われたため、生産は減速した。

ADEFAのロドリゴ・ペレス・グラツィアーノ会長によると、一部の完成車メーカーは、新モデルの生産に向けて工場の調整を行い、いくつかのモデルの生産を終了させた。具体的には、フォルクスワーゲンの「VWタオス」やルノーの「アラスカン」「ステップウェイ」「サンデロ」「ロガン」などの生産を取りやめた。今後は次世代のVW「アマロック」や、ルノーのピックアップトラック「ナイアガラ」の生産に取り掛かる計画だという。また、ルノーの工場で委託生産していた日産も、2025年3月28日、2026年1月以降は「フロンティア」の生産をメキシコのCIVAC工場に集約すると発表した(注)

図1:自動車生産台数の推移
2010年は乗用車506,342台、商用車210,198台で合計716,540台、前年比は39.7%増。2011年は乗用車577,233台、商用車251,538台で合計828,771台、前年比は15.7%増。2012年は乗用車497,376台、商用車267,119台で合計764,495台、前年比は7.8%減。2013年は乗用車506,539台、商用車284,468台で合計791,007台、前年比は3.5%増。2014年は乗用車363,711台、商用車253,618台で合計617,329台、前年比は22.0%減。2015年は乗用車308,756台、商用車217,901台で合計526,657台、前年比 14.7%減。2016年は乗用車241,315台、商用車231,461台で合計472,776台、前年比10.2%減。2017年は乗用車203,694台、商用車269,714台で合計473,408台、前年比0.1%増。2018年は乗用車208,573台、商用車258,076台で合計466,649台、前年比1.4%減。2019年は乗用車108,364台、商用車206,423台で合計314,787台、前年比32.5%減。2020年は乗用車93,001台、商用車164,186台で合計257,187台、前年比18.3%減。2021年は乗用車184,106台、商用車250,647台で合計434,753台、前年比69.0%増。2022年は乗用車257,505台、商用車279,388台で合計536,893台、前年比23.5%増。2023年は乗用車304,773台、商用車305,942台で合計610,715台、前年比13.7%増。2024年は乗用車241,620台、商用車264,951台で合計506,571台、前年比17.1%減。2025年は乗用車202,589台、商用車288,287台で合計490,876台、前年比3.1%減。

出所:アルゼンチン自動車製造事業者協会(ADEFA)

輸出に対する関税(輸出税)も、生産台数を押し下げた要因の1つといえよう。ADEFAによると、2025年のトラック・バスを除く輸出台数は28万589台で、前年比10.8%減と大幅に減少した(図2参照)。ADEFAの報告書には輸出台数が大きく減少した理由への言及はないものの、ペレス会長は、競合国が輸出税を課さずに輸出している中で、輸出競争力の向上は大きな課題であり、自動車輸出にかかる税負担を軽減することが不可欠だと発言している。輸出台数の約7割はブラジル向けだが、前年比16.3%減の18万8,438台となった。増減寄与度で見ると、同国向けの減少が輸出台数全体を押し下げた(表1参照)。その他の主な輸出先では、中米諸国向けが前年比4.2%減となったが、ペルー、チリ、コロンビア向けは伸びた。

図2:自動車輸出台数の推移
2010年は乗用車320,609台、商用車115,157台で合計435,766台、前年比は39.5%増。2011年は乗用車344,918台、商用車149,096台で合計494,014台、前年比は13.4%増。2012年は乗用車253,030台、商用車150,568台で合計403,598台、前年比は18.3%減。2013年は乗用車259,016台、商用車161,862台で合計420,878台、前年比は4.3%増。2014年は乗用車190,785台、商用車155,007台で合計345,792台、前年比は17.8%減。2015年は乗用車115,036台、商用車124,979台で合計240,015台、前年比は30.6%減。2016年は乗用車70,304台、商用車119,704台で合計190,008台、前年比は20.8%減。2017年は乗用車55,355台、商用車154,232台で合計209,587台、前年比10.3%増。2018年は乗用車105,145台、商用車164,215台で合計269,360台、前年比28.5%増。2019年は乗用車68,090台、商用車156,158台で合計224,248台、前年比16.7%減。2020年は乗用車36,173台、商用車101,718台で合計137,891台、前年比38.5%減。2021年は乗用車91,965台、商用車167,322台で合計259,287台、前年比88.0%増。2022年は乗用車139,671台、商用車182,615台で合計322,286台、前年比24.3%増。2023年は乗用車146,411台、商用車179,483台で合計325,894台、前年比1.1%増。2024年は乗用車141,777台、商用車172,958台で合計314,735台、前年比3.4%減。2025年は乗用車95,297台、商用車185,292台で合計280,589台、前年比10.8%減。

出所:アルゼンチン自動車製造事業者協会(ADEFA)

表1:自動車輸出台数の推移(単位:台、%)(△はマイナス値、ーは値なし)
国・地域名 2024年 2025年
台数 台数 構成比 伸び率 増減寄与度
ブラジル 225,231 188,438 67.2 △ 16.3 △ 11.7
中米 35,487 34,007 12.1 △ 4.2 △ 0.5
ペルー 12,655 15,598 5.6 23.3 0.9
チリ 12,601 14,655 5.2 16.3 0.7
コロンビア 11,654 13,195 4.7 13.2 0.5
パラグアイ 4,656 4,847 1.7 4.1 0.1
ベネズエラ 2,742 3,226 1.1 17.7 0.2
ウルグアイ 3,498 2,493 0.9 △ 28.7 △ 0.3
メキシコ 2,235 1,846 0.7 △ 17.4 △ 0.1
エクアドル 1,044 1,352 0.5 29.5 0.1
その他米州 1,000 929 0.3 △ 7.1 △ 0.0
欧州 805 2 0.0 △ 99.8 △ 0.3
オセアニア 0 1 0.0 0.0
アフリカ 1,127 0 0.0 △ 100.0 △ 0.4
アジア 0 0 0.0 0.0
合計 314,735 280,589 100.0 △ 10.8 △ 10.8

出所:アルゼンチン自動車製造事業者協会(ADEFA)

自動車ローンやラインアップ充実で新車登録台数は急増

生産台数および輸出台数が減少する一方で、新車登録台数は大幅に増加した。アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)によると、2025年のトラック・バスを除く新車販売(登録)台数(速報値)は、前年比48.1%増の57万8,364台だった(図3参照)。2025年は10月に国会議員中間選挙が実施され、政治や経済、為替の先行き不透明感が懸念された。それでも新車登録台数は2018年以来の高い水準まで急増した。ACARAによると、金融機関および完成車メーカーが消費者にとって有利な自動車ローンを提供し始めたことや、車種のラインアップが一段と充実したこと、年末にかけて大幅な値引きや販促キャンペーンが展開されたことなどが、販売台数増加の要因となった。

また、政府が2025年1月31日に公布した政令50/2025号により、自動車やオートバイ、レジャーボートなどに課税していた内国税(Impuestos Internos:奢侈〔しゃし〕税)の税率が、2027年6月30日まで一時的に引き下げたことも、販売台数の増加を後押しした。

図3:新車販売(登録)台数の推移
2023年1月は乗用車32,636台、商用車15,313台で前年同月比は15.7%増。2月は乗用車19,325台、商用車9,376台で前年同月比は5.6%増。3月は乗用車25,338台、商用車12,342台で前年同月比は16.0%増。4月は乗用車21,729台、商用車11,093台で前年同月比は10.0%増。5月は乗用車23,916台、商用車13,869台で前年同月比は14.3%増。6月は乗用車25,051台、商用車12,893台で前年同月比は14.2%増。7月は乗用車27,995台、商用車13,979台で前年同月比は14.3%増。8月は乗用車23,390台、商用車13,631台で前年同月比は3.4%増。9月は乗用車18,844台、商用車12,871台で前年同月比は2.5%減。10月は乗用車25,620台、商用車14,313台で前年同月比は0.6%増。11月は乗用車21,580台、商用車12,428台で前年同月比は7.4%増。12月は乗用車9,302台、商用車8,172台で前年同月比は4.6%減。2024年1月は乗用車21,727台、商用車10,663台で前年同月比は32.5%減。2月は乗用車16,604台、商用車7,073台で前年同月比は17.6%減。3月は乗用車17,266台、商用車7,244台で前年同月比は34.9%減。4月は乗用車21,154台、商用車10,081台で前年同月比は5.1%減。5月は乗用車22,080台、商用車10,802台で前年同月比は12.9%減。6月は乗用車19,582台、商用車9,779台で前年同月比は22.6%減。7月は乗用車26,916台、商用車13,608台で前年同月比は2.3%減。8月は乗用車25,130台、商用車13,823台で前年同月比は5.2%増。9月は乗用車26,776台、商用車14,354台で前年同月比は30.1%増。10月は乗用車28,085台、商用車13,789台で前年同月比は5.9%増。11月は乗用車22,592台、商用車11,508台で前年同月比は0.8%増。12月は乗用車13,197台、商用車6,777台で前年同月比は16.8%増。2025年1月は乗用車46,625台、商用車19,599台で前年同月比は105.5%増。2月は乗用車29,039台、商用車12,994台で前年同月比78.1%増。3月は乗用車32,732台、商用車13,214台で前年同月比88.3%増。4月は乗用車35,701台、商用車15,262台で前年同月比64.4%増。5月は乗用車37,659台、商用車15,447台で前年同月比61.9%増。6月は乗用車36,625台、商用車13,450台で前年同月比70.7%増。7月は乗用車42,826台、商用車16,879台で前年同月比46.3%増。8月は乗用車36,518台、商用車15,203台で前年同月比32.9%増。9月は乗用車37,898台、商用車15,530台で前年同月比29.1%増。10月は乗用車35,158台、商用車14,224台で前年同月比17.5%増。11月は乗用車23,535台、商用車9,887台で前年同月比2.4%減。12月は乗用車14,993台、商用車7,366台で前年同月比10.3%増。

出所:アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)

2023年12月のハビエル・ミレイ政権発足後、輸入代金の支払い条件が段階的に緩和された。その結果、完成車の輸入も増加し、2025年は新車登録台数に占める輸入車の割合が大幅に増加した。ACARAによると、2025年の輸入車の割合は2024年の45%から15ポイント増の60%に拡大した。依然としてブラジルからの輸入車が最も多く、登録台数全体の48%を占めた。また、中国からの輸入車は4%(2万5,000台以上)を占め、存在感を高めている。残りはメキシコが3%、その他の国が5%となっている。

登録台数をブランド別に見ると、トヨタが9万7,081台で前年比14.5%増加した(表2参照)。車種別でも、トヨタ・ハイラックスが3万768台(前年比6.1%増)、小型車「ヤリス」が3万150台(同44.5%増)と、登録台数の1位と2位となった。また、登録台数の上位10車の中では、SUVのトヨタ・カローラクロスも1万8,151台(同17.7%増)を販売し、8位となった(表3参照)。

表2:ブランド別登録台数(上位40ブランド中・トップテン、日本車、中国車) (単位:台、%)(△はマイナス値、ーは値なし)
順位 ブランド 2024年 2025年
台数 台数 構成比 伸び率
1 トヨタ 84,756 97,081 16.8 14.5
2 フォルクスワーゲン 64,449 94,436 16.3 46.5
3 フィアット 47,320 74,752 12.9 58.0
4 ルノー 35,594 59,001 10.2 65.8
5 プジョー 37,102 49,911 8.6 34.5
6 フォード 35,611 49,492 8.6 39.0
7 シボレー 23,592 46,322 8.0 96.3
8 シトロエン 14,299 24,301 4.2 69.9
9 ジープ 12,925 21,989 3.8 70.1
10 日産 12,817 15,275 2.6 19.2
14 北京汽車(BAIC) 776 4,578 0.8 489.9
15 ホンダ 2,368 3,543 0.6 49.6
17 長城汽車(Haval) 280 2,628 0.5 838.6
20 奇瑞汽車(Chery) 558 944 0.2 69.2
22 東風小康汽車(DFSK) 339 801 0.1 136.3
23 福田汽車(FOTON) 416 792 0.1 90.4
24 江淮汽車(JAC) 124 784 0.1 532.3
25 比亜迪汽車(BYD) 670 0.1
27 スバル 304 497 0.1 63.5
28 捷途汽車(JETOUR) 70 426 0.1 508.6
29 三菱 86 412 0.1 379.1
31 KYC 221 318 0.1 43.9
34 スズキ 59 264 0.0 347.5
35 シャインレイ(SHINERAY) 213 246 0.0 15.5
37 城汽車(GREAT WALL) 77 117 0.0 51.9
38 東風汽車(DONGFENG) 69 0.0
39 江鈴汽車(JMC) 49 0.0
40 長安汽車(CHANGAN) 48 34 0.0 △ 29.2
その他 16,206 28,632 5.0 76.7
合計(バス・トラックを除く) 390,610 578,364 100.0 48.1

出所:アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)

表3:車種・モデル別登録台数(上位10車) (単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 ブランド モデル 2024年 2025年
台数 台数 構成比 伸び率
1 トヨタ ハイラックス 28,996 30,768 5.3 6.1
2 トヨタ ヤリス 20,867 30,150 5.2 44.5
3 フィアット クロノス 28,033 29,905 5.2 6.7
4 プジョー 208 29,687 29,092 5.0 △ 2.0
5 フォード レンジャー 23,005 24,976 4.3 8.6
6 フォルクスワーゲン アマロック 18,392 23,612 4.1 28.4
7 フォルクスワーゲン ポロ 15,908 21,324 3.7 34.0
8 トヨタ カローラクロス 15,421 18,151 3.1 17.7
9 シボレー トラッカー 10,955 17,647 3.1 61.1
10 フォルクスワーゲン タオス 13,192 16,523 2.9 25.3
その他 186,154 336,216 58.1 80.6
合計(バス・トラックを除く) 390,610 578,364 100.0 48.1

出所:アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)

環境配慮車市場はトヨタが圧倒的存在感保つ一方、中国車勢力が大幅に拡大

ACARAによると、2025年のアルゼンチンにおける環境配慮車の新車登録台数は、前年比87.9%増の2万6,632台となり、新車登録台数全体の4.6%を占めた(図4参照)。技術別に見ると、76.0%をハイブリッド自動車(HEV)が占め、次いでマイルドハイブリッド自動車(MHEV)が17.0%、電気自動車(BEV)が5.0%、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)が2.0%となっている(図5参照)。2024年に比べると、HEVの割合が9.5ポイント減少したのに対し、MHEVが8ポイント増、BEVが1.4ポイント増、PHEVが0.9ポイント増となった。

図4:環境配慮車の新車販売(登録)台数の推移
2018年は516台、2019年は1,527台、2020年は2,365台、2021年は5,903台、2022年は7,918台、2023年は9,553台、2024年は14,175台、2025年は26,632台。

出所:アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)

図5:技術別新車登録シェア
BEV5.0%、HEV76.0%、MHEV17.0%、PHEV2.0%。

出所:アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)

環境配慮車の新車登録台数をモデル別に見ると、トヨタ車は依然として圧倒的なシェアを有する。トヨタのカローラクロスとカローラのハイブリッドモデルの2車種だけで、全体の48.0%を占めた(表4参照)。完成車には35%の一般関税(MFN)が課税されるが、ブラジルで生産されているトヨタの環境配慮車は、二国間自動車協定により無税で輸入できることが最大の理由だ。しかし、アルゼンチン政府は2025年1月31日、政令49/2025号を公布した。一定の条件を満たした環境配慮車のMFN税率を引き下げるとともに、今後5年間、年間5万台の無関税輸入枠を設定した。このため、2025年には中国車の存在感が高まった。

表4:環境配慮車のブランド別登録台数(上位43モデル中・トップテン、日本車、中国車)(単位:台、%)(ーは値なし)
順位 ブランド モデル 技術 2024年 2025年
台数 台数 構成比 伸び率
1 トヨタ カローラクロス HEV 7,614 9,142 34.3 20.1
2 トヨタ カローラ HEV 3,465 3,651 13.7 5.4
3 北京汽車(BAIC) BJ30 HEV 2,246 8.4
4 ルノー ARKANA MHEV 1,165 4.4
5 長城汽車(Haval) H6 HEV 984 3.7
6 長城汽車(Haval) JOLION HEV 966 3.6
7 フォード MAVERICK HEV 530 689 2.6 30.0
8 トヨタ RAV4 HEV/PHEV 6 552 2.1 9,100.0
9 メルセデスベンツ GLC300 MHEV 337 430 1.6 27.6
10 フォード TERRITORY HEV 354 1.3
11 比亜迪汽車(BYD) SONG PRO PHEV 326 1.2
17 日産 X-TRAIL HEV 155 205 0.8 32.3
19 奇瑞汽車(Chery) TIGGO7 MHEV 200 0.8
21 比亜迪汽車(BYD) DOLPHIN MINI BEV 175 0.7
22 比亜迪汽車(BYD) YUAN PRO BEV 169 0.6
31 ホンダ シビック HEV 11 113 0.4 927.3
32 ホンダ CRV HEV 50 109 0.4 118.0
38 奇瑞汽車(Chery) TIGGO4 HEV 80 0.3
43 レクサス NX HEV 18 71 0.3 294.4
その他 105 1,452 5.5 1,282.9
合計 14,173 26,632 100.0 87.9

出所:アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)

無関税輸入枠の対象となるのは、メルコスール共通関税番号(NCM)8703.40.00、8703.50.00、8703.60.00、8703.70.00、8703.80.00に該当する完成車(CBU)、セミノックダウン(SKD)、コンプリートノックダウン(CKD)で、メルコスール域外原産のものとされている。対象となる技術は、従来の内燃機関に代わる動力技術を用いた自動車で、具体的にはハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(水素自動車)であり、FOB価格が1万6,000ドルを超えないことが条件とされている。ただし、上記の条件を満たしていても、バッテリー重量を含まない空車重量が400キロ以下、最大出力が15キロワット(kW)以下、航続距離は80キロ以下の人員輸送用EVは、今回の措置の対象外となっている。

政令49/2025号の施行規則によると、5万台の無関税輸入枠のうち2万5,000台は国内で完成車を生産する自動車メーカーに、残りの2万5,000台はそれ以外の法人・個人に割り当てる仕組みとされた。その後、アルゼンチン経済省は2025年4月16日、同年の環境配慮車の無関税輸入枠の割り当て結果を発表した。国内で生産する完成車メーカー6社に1万1,563台、それ以外の法人に2万1,464台を割り当てた。残りの1万6,973台は後に割り当てるとした。割当枠を技術別に見ると、HEVが1万9,675台、PHEVが9,670台、BEVが3,682台となった。さらに、2025年12月3日には経済省決議513/2025号が公布され、2025年分の割り当て台数が更新された(表5-1参照)。併せて、2026年分の環境配慮車の無関税輸入枠の割り当て結果も発表された(表5-2参照)。総じて、中国メーカーまたは中国ブランドを取り扱う事業者への割り当てが目立っている。特に中国車は、価格競争力と電動化技術を武器に、中長期的に市場構造を変える可能性がある。

2026年の自動車生産、輸出、販売動向に関する見通し

ADEFAによると、複数の完成車メーカー工場は、新規プロジェクトに向けた生産ライン調整の真っただ中にある。このため、1~4月の生産台数も減少が続いている。一方で、輸出台数は徐々に拡大している。多くのメーカーは、2024年に発表した新規モデルや次世代モデルの生産に向けた投資計画に取り組んでいる。

他方、ミレイ政権が2024年7月に導入した大型投資奨励制度(RIGI)は、2億ドル以上の大型投資を伴うプロジェクトを対象に、税制、関税、外国為替に関する優遇措置を投資家に付与するもので、自動車産業も対象となっている。具体的には、「新しいモータリゼーション技術によるモビリティー」が同制度の対象となっており、環境配慮車に関連する投資が優遇の対象になる。しかし、2026年5月現在、同制度下における環境配慮車の国内生産計画は発表されていない。完成車メーカーにとってRIGIの最大の魅力は、輸出関税率をゼロとする優遇措置だが、既に類似の措置が存在するため、複雑なRIGI申請に関心は低いようだ。この措置は、2022年に施行された「自動車産業振興法(法律第27686号)」に含まれている。アルゼンチン国内で新たに製造される全ての新モデルに対し、2031年まで輸出税が免除される。したがい、2022年9月以前のモデルは輸出税の支払いの対象となるが、それ以降のモデルについては、2027年12月21日までに新規プロジェクトを申請した場合、輸出税は免除される。

自動車の販売動向について、ACARAは報告書で、購買力は完全な回復に至っていないものの、インフレ率の低下や為替変動の安定により、計画的な自動車購入が可能となる好ましい環境が整いつつあるとしている。金融機関やメーカーによる自動車ローンの提供や値引きなどのキャンペーンは、今後一層重要になるとしている。また、主要ブランドの販売台数が減少を続ける中、中国車のような新規ブランドが技術だけでなく価格競争力も高めているという。2026年5月時点で、輸入車は既に市場の約70%を占めており、環境配慮車も乗用車・小型商用車市場の14.2%までシェアを拡大している。税制面での優遇措置を導入している地方州などでは、20%以上を占める地域もあるという。2026年の登録台数見通しは、60万台規模に近づきつつある。

また、5月1日からEUメルコスール自由貿易協定(FTA)の暫定貿易協定(iTA)が発効し、乗用車および小型商用車に適用されていたMFN税率35%が引き下げられた。協定発効から8年間(2034年まで)は、輸入枠5万台に対し50%の減税が適用され、EU産完成車の輸入関税率(特恵税率)は17.5%となった(内燃機関車)。5万台の内訳は、ブラジルに3万2,000台、アルゼンチンに1万5,500台、ウルグアイに1,750台、パラグアイに750台が、それぞれ年間割当として配分される。ただし、2026年の枠は約3万5,000台とされ、アルゼンチンには約1万台が割り当てられる見通しだ。また、ハイブリッド車や電気自動車については、協定発効と同時に特恵税率が25%に引き下げられた。発効から5年間(2031年まで)はこれが維持され、6年目から段階的に引き下げられ、18年目にはゼロとなる仕組みだ。

販売代理店や各種報道の分析によると、これにより、EUから輸入される同枠内の乗用車価格が約15%引き下がる可能性があり、輸入車販売はさらに増加する見通しだ。


注:
その後、2025年7月に発表された日産のグローバル経営再建計画に基づき、2026年3月末にCIVAC工場は閉鎖されたため、フロンティアの生産はメキシコのアグアスカリエンテス工場に移管されている。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ブエノスアイレス事務所
山木 シルビア(やまき しるびあ)
1999年からジェトロ・ブエノスアイレス事務所勤務。