改正内容と実務の注意点
輸入自動通知を解説(メキシコ)(2)

2026年3月18日

2026年2月12日に鉄鋼輸入(確定輸入)に関する輸入自動通知(AAIPS)について、さらなる改正が公布された。AAIPSの改正における経緯と対米交渉の動向については、前編「輸入自動通知を解説(メキシコ)(1)改正経緯と国内外の交渉過程」で記載したが、本稿では、AAIPSの改正の内容および問題点を確認していく。改正内容およびその解釈や問題点は、2026年2月中旬時点のものだ。今後、改正内容のさらなる変更や実務的な改善案が出る可能性もあるため、随時連邦官報や経済省の公報、国家貿易統合システム(SNICE)のポータルサイトを参照してほしい。

不正・偽造書類に対する規制強化

メキシコ経済省は2026年2月12日、同省が貿易に関する規則・指針を定める省令(通称、経済省貿易細則)を連邦官報で公布し、翌日施行した。同改正では、輸入自動通知(AAIPS)自体に関する改正がメインではあるが、そのほかにも関連する重要な内容が改正されている。

例えば、経済省貿易細則1.3.9則(注1)では、経済省が取扱う許認可において、企業が虚偽の情報または偽造・改ざんされた書類を提出した場合、その企業の代表者に対して、新規の許可を5年間発行しないことを追加した。AAIPSの申請は、経済省が承認または拒否を判断・通知するため、この改正の対象となりうる。経済省が、企業がAAIPSで提出した書類を虚偽の情報または改ざんされた書類と捉えた場合、当該企業には5年間許可が下りなくなり、その間は鉄鋼を輸入できなくなる可能性がある。

経済省に詳細を確認したところ、「AAIPSにおいて、経済省が申請を拒否したとしても、その拒否通知は技術的要件を満たしていないという意味であり、直ちに虚偽の書類とはみなさない」との回答を得た。ただし、メキシコ国税庁(SAT)や税関庁(ANAM)においても、税関法や税務細則の改正により、偽造や不正な書類とみなした場合の罰則強化をしているため、正しく申請することを心掛ける必要性が増している。

輸入自動通知の承認期限と提出方法に関する変更

次に、AAIPSの承認期限と提出方法の変更点について確認する。経済省貿易細則2.2.30則IのdにてAAIPSの決定通知の発行期限の変更がなされた。具体的には、AAIPSの承認期限を提出から2営業日としていたが、10営業日以内に承認または拒否の決定が通知されることとなった。

AAIPSにおいて、問題の大きい分野の1つが決定通知の遅延だ。経済省は、2025年に決定通知1件につき平均15~18営業日かかっていると発言している。2営業日以内での通知がされておらず、かつ、拒否通知を受ける場合もあるため、さらなる輸入の遅延につながっていた。今回の改正で10営業日とすることで、経済省が実際に通知可能な期間と法的な期間のギャップを埋めようとしていることが見て取れる。しかし、後述するがAAIPS自体が劇的に簡素化されたわけではないため、決定通知の期限が順守されるかは疑問符がつく。輸入者は引き続き余裕をもった対応が必要だ。

また、経済省に対し、原材料の不足や緊急対応が必要な場合に決定通知を早める特別措置はあるかと質問したところ、経済省から「AAIPSの決定通知に関して特別措置を設けることはせず、法定どおり(10営業日)で対応する」との回答があった。以前から、緊急対応については明文化されておらず、経済省が対応していた形跡は見当たらないが、緊急時でも決定通知の期限は変更されないため、輸入者およびサプライチェーンにも影響が出る可能性がある。

さらに、経済省貿易細則1.3.10則では、「審査途中の申請に対する確定的な決定が下されるまでは、同一の手続きについて新たな申請を提出してはならない。仮に新たな申請が提出された場合、その申請は却下される」との文言が追加された。これは、上記のようなAAIPSの承認の遅れについて、その要因として経済省が挙げていた同一内容(製品)のAAIPSの複数申請を念頭に置いている。AAIPSを申請した企業が、その決定通知が2営業日までに来ないため、再度同じ内容のAAIPSを送るケースが相次いでいた。経済省は同一内容のAAIPSが複数ある場合、全ての通知内容を突合する必要があり確認作業の負担が増加するため、2025年6月時点で同一内容の申請をしないことを推奨していた(2025年7月3日付ビジネス短信参照)。本改正の際にこの点が明記されており、注意が必要だ。

最大の問題であるミルシートの変更規則

本改正の中で、最も議論されているのはミルシート(鋼材検査証明書)(注2)および品質証明書(注3)に関する記載事項の追加だ。特に、用語の定義が記載されている経済省貿易細則2.2.19則A(注4)の改正では、ミルシート(鋼材検査証明書)と品質証明書に記載するQRコード、署名および押印の定義が改正された。特に署名・押印については、発行者が直筆で署名および直接押印したものである必要があり、デジタル署名、デジタル印は有効でないとした。同細則2.2.19則B(注5)のIが改正され、製品情報の詳細についてもミルシートおよび品質証明書に含める必要が出てきた。さらに、2.2.19則BのIXが新たに追加され、「カルタ・レスポンシーバ(Carta responsiva)(注6)」も必要とされた。

ミルシートのフォーマット改正が必要な場合、輸入者ではなく、製鋼所(ミル)の対応が必要になり、同改正の余波はメキシコを超えて全世界の製鋼所に及ぶことになる。日本の鉄鋼業界団体にミルシートについて確認したところ、「ミルシートに記載される項目は、不正防止のために検査機器から直接記載して、人の手を加えることがないようにすることで国際規格を満たすことができる。追加事項を手書きまたは直接押印することは、国際規格に反することになる。今回の改正はむしろ不正を助長するのではないか」とコメントがあった。

また、実際にメキシコで鉄鋼製品を輸入している鉄鋼商社にもヒアリングしたところ、「経済省からミルシートにQRコード、直筆署名、直接押印のどれもない場合、今までどおりカルタ・レスポンシーバでの対応が可能と聞いた。2026年2月13日以降に輸入した鉄鋼製品においても、改正前と同じ書類でAAIPSの承認を得ることができた」との回答があった。つまり、カルタ・レスポンシーバは改正後でも注6記載の意味があり、QRコード、直筆署名、直接押印がない場合に使えることが判明した。

同細則2.2.19則BのIに記載がある製品情報の詳細については、現在でも問題になっているケースが存在する。それはミルシートおよび品質証明書での製品情報の詳細は、メキシコ貿易手続き単一窓口(VUCEM)上で申請する情報と完全一致することが求められているからだ。例えば、ミルシートでは、製品名は記号や数字で表されることが多いが、経済省はその記号では製品を判別できないとし、申請を拒否したケースが存在する。今回の改正から、この製品名についても、素材(合金、ステンレスなど)や形状(鋼板、棒材など)などの記載を求めている可能性がある。しかし、これに対応する方法については、法令・細則では記載がない。そのため、万が一指摘を受けた場合を想定し、改正で必要となった情報をミルシートおよび品質証明書に記載が可能か、輸入者が製鋼所・製造業者に確認する必要がある。

鉄を溶解・鋳造した国と異なる国で加工したケース

同細則別添2.2.2の7のII(注7)でミルシートの要否に関する基準(Criterio)の項目が追加された。この内容について、例えば、日本で溶解・鋳造した(Melt and Pour)鉄鋼製品をベトナムの鉄工所でスリット(切断)したが、HSコードが変更しない場合、改正前は日本で溶解・鋳造した鉄鋼製品のミルシートのみが必要であった。しかし、改正後はベトナムの製鋼所でスリットしたときの証明書も必要になり、VUCEMでの申請も必要と解釈できる。

注2、注3に記載のとおり、経済省はミルシートと品質証明書についてHSコードごとに区別している。同改正でいう「ミルシートが必要な製品を加工し、HSコードが変更しない」場合、ミルシートが必要な製品と同じHSコードの製品であるため、当該HSコードに対応した「ミルシート」が必要になる。一方で、経済省が同基準に追加した項目には、HSコードが変更されない場合「品質証明書が必要」と記載された。ミルシートと品質証明書は、国際的な慣習ではHSコードで分けることはなく、同じ検査証明書とみなされることが多いが、経済省がHSコードで両書類を分けたがために、問題が生じている。

この問題において重要な点は、仮にミルシートが必要になった場合、ミル登録が必要になることだ。経済省は、ミル登録の要件において、鉄を「溶解・鋳造する製鋼所」、つまり、炉(高炉、電炉はとはない)が設置されている製鋼所のみが登録可能としている。前述のケースにおいて、ベトナムの製鋼所は炉を所有していないことが想定されるため、同製鋼所のミル登録ができず、輸入自動通知の申請を行うことができなくなってしまう。そのため、経済省は2つ目の証明書(同ケースにおいて、ベトナム製鋼所が発行するもの)を、ミル登録の必要がない「品質証明書」とみなし、輸入自動通知においてVUCEM上で情報を入力できるようにしたと推察される。

ミル登録における変更点

AAIPSにおいて、ミルシートが必要な鉄鋼製品を確定輸入する場合、ミルの登録が必要だ。ミル登録は鉄を溶解・鋳造した製鋼所が対象であり、登録に必要な書類についても同改正のうち2.2.26則AのXのbおよびcが追加された。具体的には、申請者の税務義務履行証明(Opinion positiva de SAT)と、申請する当該製品のミルシート(発行から6カ月以内)が必要となった。

経済省に対して、このミルシートにおいてもスペイン語翻訳が必須か確認したところ、「基本的に当局に外国語で提出する資料はスペイン語に翻訳するべき」との回答があった。ミル登録を行う予定のある企業は、念のため登録時に当該ミルシートのスペイン語翻訳資料を添付したほうが良いだろう。

RIPSの数量拡張申請の登場

鉄鋼製品輸入業者登録(RIPS)(注8)においても複数の変更があった。特に重要な変更は、RIPSにおける輸入量の拡張(Ampliacion de volumen del Aviso)(注9)だ。RIPSの登録では、1年間の輸入実績に基づき輸入量が決められているが、実際の輸入量を上回るケースが散見されていた。経済省は承認した輸入量に達したRIPSの登録者に対して新しい規則を策定し、輸入量を拡張できるようにした。この規定では、RIPSの期限内に1度だけ、申請時に示した1年間の輸入実績分を最大値として、輸入量の拡張ができるとしている。

しかし、その要件については注意が必要だ。環境・天然資源省(SEMARNAT)が発行した「環境統一ライセンス(Licencia Ambiental Unica、LAU)」の提出を必要としている。このライセンスは本来、鉄鋼製造に関わる企業が対象となっているため、鉄鋼商社はLAUを有していない可能性がある。今回新たに追加された内容では、LAUを必須条件としているが、鉄鋼商社がどのように申請できるのかは不明であり、経済省に確認が必要だ。

AAIPSの改正に伴い、さまざまな変更点があることが確認できた。改正前のAAIPSでは承認されたケースが、改正後に拒否される可能性は十分にある。また、経済省貿易細則に記載された内容が実務と乖離する可能性もある。そのため、今後も引き続き経済省貿易細則やSNICEのポータルサイトを随時確認し、最新情報を取得していくことを推奨する。


注1:
経済省貿易細則第1.3.9則を一部抜粋すると次のとおり。特に定めがない限り、経済省は当該決定の通知から5年間、経済省またはいかなる当局に対して虚偽の情報または偽造・改ざんされた書類を提出した代表者(その法定代理人、パートナーおよび/または株主を含む)、または経済省に対して申告した目的とは異なる目的で、経済省が発行する文書または決定書(経済省が発行する文書、登録簿、プログラム、認証、認可に関連するあらゆる文書または決定書を含む)を改ざん、偽造、または使用した代表者に対して、新たな認可を発行しないものとする。 本文に戻る
注2:
ミルシートが必要な製品はHSコード7206から7216、7218から7228、および7304に分類される製品。 本文に戻る
注3:
品質証明書が必要な製品はHSコード7202、7217、7229、7301、7302、7305から7317に分類される製品。 本文に戻る
注4:
経済省貿易細則第2.2.19則Aにおける改正箇所は以下のとおり。
IV:QRコードについて。QRコード読み取ることで、原本の真正性、原本の情報を確認できるもの
V:直筆署名について。本人自らが直筆で記入した署名。デジタル署名は有効でない。
VI:印について。発行者が文書に直接押印したもの。デジタルの印は有効でない。 本文に戻る
注5:
経済省貿易細則第2.2.19則Bに追記されたのは以下の項目。
I:ミルシート・品質証明書における製品情報の詳細。寸法、技術的・化学的・冶金(やきん)的・物理的仕様(仕上げ、コーティング、鋼種、付属品、特性、形状)
IX:申請企業の法定代理人が署名したカルタ・レスポンシーバ(Carta responsiva)
なお、VIIIに製鋼所の代表者の直筆署名、または印鑑、またはQRコードと記載がある。 本文に戻る
注6:
「カルタ・レスポンシーバ(Carta responsiva)」は、経済省の輸入自動通知の判定で、ミルシートに署名・押印・QRコードがないことを理由に当該通知を却下された際に、輸入者の責任をもってミルシートが正しいものであることを宣言する書類。本来であれば、経済省からの却下通知後に再申請するものだが、輸入自動通知に迅速に対応するために、最初の申請時に添付することが推奨されていた(2025年7月3日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
注7:
経済省貿易細則別添2.2.2の7のIIで追加された項目は以下のとおり。
HSコード7206から7216、7218から7228、および7304に分類される製品で、材料が加工されたがHSコードが変更されない場合、品質証明書(Certificado de Calidad)を添付しなければならない。また、メキシコ貿易手続き単一窓口(VUCEM)の製品説明(Descripcion de la mercancia)に製品の詳細情報、品質証明書の番号、日付を登録し、製造者情報(Datos de producto)に、当該鉄鋼が溶解、鋳造された製鋼所を記載しなければならない。 本文に戻る
注8:
「鉄鋼製品輸入業者登録」は、直近12カ月間の鋼材の輸入実績など特定の要件を満たす企業が当該登録を行うことで、複数回の輸入をカバーする1年間有効な輸入自動通知番号を輸入鋼材別に取得でき、都度輸入自動通知の申請を不要とする登録制度。 本文に戻る
注9:
RIPSにおける輸入量の拡張(Ampliacion de volumen del Aviso)について、経済省貿易細則2.2.26則Bでの記載は以下のとおり(一部抜粋)。
RIPSの有効期限が残存している場合に限り、1回のみ輸入数量の拡張を可能とする。輸入量の拡張において、最初に許可された輸入数量に相当する数量まで認められる。輸入量の拡張を行うためには、輸入業者は以下の要件を満たさなければならない。
  1. 鉄鋼製品の製造プロセスを行う企業であり、環境・天然資源省が定める環境インパクト評価に関する環境平衡および環境保護の一般規則第5条Gおよび、またはLに規定されている事業、または活動を実施している企業に対して発行される「環境統一ライセンス(Licencia Ambiental Unica)」を有していること。
  2. 以下の書類を添付の上、registro.siderurgicos@economia.gob.mx宛てに申請書を提出すること。
    1. 経済省貿易細則1.3.5則の規定に基づく自由形式の文書で以下を明示すること。
      1. RIPSに基づき認可された現行の届け出の拡張を申請すること。
      2. ミルシートおよび、または品質証明書、ならびに拡張を裏付けるその他の情報および書類を経済省商業促進・貿易局(DGFCCE)が確認できるように準備し、RIPSが有効である間、要求に応じてDGFCCE局長に提出すること。
    2. SNICEで入手可能なRIPSの輸入量の拡張に関するExcelフォーマットに、必要事項を全て記入したもの。
    3. 環境・天然資源省が発行した「環境統一ライセンス」。
    承認されたRIPSの輸入量の拡張の有効期間は、許可された日から最初に申請したRIPSの有効期限までとし、いかなる場合も延長できない。本文に戻る

輸入自動通知を解説(メキシコ)

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(1)改正経緯と国内外の交渉過程

執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所
阿部 眞弘(あべ ただひろ)
2017年、ジェトロ入構。サービス産業課、商務・情報産業課、イノベーション促進課、ジェトロ山口を経て、2022年9月から現職。