2021年の米中貿易、輸出入額ともに過去最高、半導体の輸入も増加
2022年3月29日
ジェトロがグローバル・トレード・アトラスを基に米中貿易をまとめたところ、2021年の中国から米国への輸出額は前年比27.6%増の5,766億434万ドル、中国の米国からの輸入額は32.9%増の1,794億6,563万ドルで、輸出入額ともに過去最高となった。
輸出:巣ごもり関連品目の好調が続き前年比27.6%増
中国の米国向け輸出は、上半期に前年同期比42.7%増と大きく伸びたが、下半期は17.8%増にとどまり、通年では前年比27.6%増の5,766億434万ドルとなった(図1参照)。2014年から一貫して、米国は中国にとって最大の輸出先であるが、対世界輸出の伸びが対米輸出を上回ったため、中国の輸出額に占める米国のシェアは、前年から0.3ポイント減の17.1%となった。
金額順位 | HSコード | 品目 |
輸出額(注2) (千ドル) |
2021年シェア | 前年比伸び率 | 米国の輸入額全体に占める中国のシェア(注3) |
追加関税措置(米国) 該当品目数 (HTSコード8桁ベース)(注4) |
うち適用除外対象品目 (HTSコード 10桁ベース) |
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2017年 | 2021年 | シェアの増減 | ||||||||
1 | 847130 |
ノートパソコン (重量10キログラム以下) |
48,791,696 | 8.5 | 15.4 | 93.3 | 93.2 | △ 0.1 | 4B(未発動):1品目 | |
2 | 851712 | スマートフォンなどの携帯電話端末 | 39,533,013 | 6.9 | 21.9 | 79.7 | 79.1 | △ 0.6 | 4B(未発動):1品目 | |
3 | 950300 | 玩具(車輪付玩具、人形、その他玩具、娯楽用模型等) | 13,493,211 | 2.3 | 57.4 | 85.8 | 80.4 | △ 5.4 | 4B(未発動):1品目 | |
4 | 851762 | データ(音声、画像その他)の受信、変換、送信、再生機械 | 10,372,668 | 1.8 | △ 10.3 | 48.1 | 24.0 | △ 24.0 | リスト3、4A:1品目 | |
5 | 980400 | 一定額未満の小口貨物 | 7,929,116 | 1.4 | 58.6 | -(注5) | — | — | — | — |
6 | 854370 | その他の電気機器 | 6,814,802 | 1.2 | 74.6 | 36.0 | 17.9 | △ 18.1 |
リスト1:6品目 リスト2:2品目 リスト3:3品目 リスト4A:1品 4B(未発動):2品目 |
— |
7 | 392690 |
その他のプラスチック製品 (マスクを含む) |
6,278,557 | 1.1 | 38.8 | 38.3 | 43.4 | 5.1 |
リスト3:9品目 リスト4A:9品目 4B(未発動):6品目 |
3品目 |
8 | 950450 | ビデオゲーム用のコンソールまたは機器 | 6,055,992 | 1.1 | 62.5 | 96.2 | 90.5 | △ 5.8 | 4B(未発動):1品目 | — |
9 | 847330 | パソコン部品・付属品 | 5,916,441 | 1.0 | 18.4 | 68.4 | 19.6 | △ 48.8 |
リスト1:1品目 リスト3:3品目 |
— |
10 | 860900 | コンテナ(液体輸送用のものを含む) | 5,758,322 | 1.0 | 155.0 | 71.8 | 75.8 | 4.0 | — | — |
11 | 940540 | 電気式のランプその他の照明器具 | 5,658,292 | 1.0 | 32.5 | 70.6 | 51.1 | △ 19.6 | リスト3:4品目 | — |
12 | 950510 | クリスマス用品 | 5,462,806 | 0.9 | 96.8 | 92.0 | 91.3 | △ 0.8 | 4A:6品目 | — |
13 | 850760 | リチウム・イオン蓄電池 | 4,977,133 | 0.9 | 100.1 | 41.1 | 53.9 | 12.8 | 4A:1品目 | — |
14 | 852852 |
モニター (パソコンに接続して使用するもの) |
4,891,397 | 0.8 | 55.3 | 85.6 | 84.6 | △ 1.0 | 4B(未発動):1品目 | — |
15 | 950691 | 身体トレーニング用具、体操用具および競技用具 | 4,457,931 | 0.8 | 21.7 | 70.6 | 65.0 | △ 5.7 | 4A:1品目 | — |
注1:太字は、HSコード6ケタベースで米国の追加関税措置が発動している品目。
注2:中国側統計。
注3:米国側統計。
注4:米国の対中追加関税品目リストとして、リスト1~4Aおよび4B(未発動)が発表されている。当該品目がどのリストに何品目含まれているかを示した。
注5:HS98分類は各国で独自運用が可能な分類のため、グローバル・トレード・アトラスによる米国側の輸入統計での分類が中国側の輸出と異なり比較ができない。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成
輸出品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)をみると、8品目が追加関税措置の対象となっている(表1参照)。適用除外措置については、医療関連製品の一部81品目のみが2022年5月31日まで延長されており(2021年11月15日付ビジネス短信参照)、USTRは3月23日に、期限切れとなっていた除外品目のうち、352品目について適用除外措置を復活させると発表した(2022年3月24日付ビジネス短信参照)。上位15品目では、7位のその他プラスチック製品のうち、(米国で用いられる)HTSコード10桁ベースで3品目が医療関連製品として適用除外対象となっている。
上位15品目のうち、データ受信・変換・送信・再生機械(以下、データ受信機械、前年比10.3%減)を除いて、すべての品目が増加した。増加品目では、ノートパソコンが15.4%増の488億ドルで1位、スマートフォンなどが21.9%増の395億ドルで2位と、情報通信機器が上位を占めた。また、巣ごもり需要関連品目も引き続き好調で、越境EC(電子商取引)を含むオンラインショッピングの利用増により、一定額未満の小口貨物は58.6%増の79億ドル、ビデオゲーム用の機器は62.5%増の61億ドル、モニターは55.3%増の49億ドルとなった。
このほか、コンテナが前年比2.6倍の58億ドルと急増した。2020年下半期から、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、港湾労働者が減少したことによる港湾の混雑や、巣ごもり需要によるコンテナ取扱量の増加などから、世界的なコンテナ不足が発生している。一部の米国企業では、通常、海運会社からレンタルするコンテナを自社調達して、需要増に対応するなどの動きもあり、大きく伸びた。
一方、米国の輸入に占める中国製品のシェアを追加関税発動前の2017年と比べると、多くの品目が減少している。2017年と比べて10ポイント以上シェアが減ったのは、データの受信機械(24.0ポイント減)、その他の電気機器(18.1ポイント減)、パソコン部品・付属品(48.8ポイント減)、電気式のランプ(19.6ポイント減)の4品目で、これらの品目ではベトナムや台湾からの輸入が伸び、中国から輸入調達先を変更している様子が見て取れる。
追加関税が発動されている8品目の中でも、7位のマスクを含むその他プラスチック製品と13位のリチウム・イオン蓄電池の2品目については、中国のシェアが増加している。特に、リチウム・イオン蓄電池については、米国におけるハイブリッド車やEV(電気自動車)の販売増加を受けて、2021年の中国のシェアは53.9%と2017年と比べて12.8ポイント拡大した。
輸入:穀物、エネルギー関連、集積回路(半導体)が伸びるも米中間の協定に基づく目標達成率は57%
中国の対米輸入も輸出と同様、上半期は前年同期比55.9%増と大きく伸びたが、下半期の伸びは16.4%増にとどまり、通年では32.9%増の1,794億6,563万ドルとなった(図2参照)。中国の輸入額に占める米国のシェアは、前年(6.6%)とほぼ変わらず6.7%、順位も2020年と同様の4位であった。
2020年1月に署名し、同年2月に発効した米中間の第1段階合意となる経済・貿易協定では、中国は2020年と2021年の2年間で、2017年の輸入実績を基準とし、米国から工業製品や農産品、エネルギー、サービスを2,000億ドル以上追加購入・輸入しなくてはならないと規定されている(2020年1月17日付ビジネス短信参照)。米国ピーターソン国際経済研究所の発表(2022年3月8日)によれば、2年間(2020~2021年)の対象品目の中国の対米輸入総額は目標額の57%にとどまった。
金額順位 | HSコード | 品目 | 輸入額(千ドル) | 2021年シェア | 2017年比伸び率 | 前年比伸び率 |
追加関税措置および適用除外(注1) (HSコード8桁ベース) |
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2017年 | 2021年 | |||||||
1 | 120190 |
大豆 (播種用のものを除く) |
13,945,344 | 16,903,947 | 9.4 | 21.2 | 59.0 |
第1弾、第4弾-1 適用除外(2020.2~追加関税率引き下げ、市場化買い付け措置(注2)) |
2 | 854231 |
集積回路 (プロセッサーおよびコントローラー) |
8,228,343 | 12,767,227 | 7.1 | 55.2 | 8.1 | 該当なし |
3 | 870323 |
乗用自動車、その他の自動車 (シリンダー容積1,000cm3超、1,500cm3以下) |
10,317,636 | 9,838,256 | 5.5 | △ 4.6 | 34.8 | 第1弾、第2弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止) |
4 | 271111 | 天然ガス | 636,969 | 6,382,420 | 3.6 | 902.0 | 475.2 | 第3弾-1、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置) |
5 | 270900 |
石油および歴青油 (原油に限る) |
3,161,046 | 5,624,304 | 3.1 | 77.9 | △ 10.4 |
第4弾-1、 適用除外(2020.2~追加関税率引き下げ、市場化買い付け措置) |
6 | 100590 | とうもろこし(播種用以外のもの) | 159,882 | 5,554,400 | 3.1 | 3374.1 | 479.3 | 第1弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止) |
7 | 271112 | 液化プロパンガス | 1,762,536 | 5,104,840 | 2.8 | 189.6 | 194.2 | 第2弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止) |
8 | 848620 | 半導体デバイスまたは集積回路製造用の機器 | 1,768,978 | 3,682,970 | 2.1 | 108.2 | 53.3 | 該当なし |
9 | 848690 | 半導体ボール、半導体ウエハー、半導体デバイス、集積回路またはフラットパネルディスプレイの製造機器の部分品、附属品 | 578,740 | 2,953,262 | 1.6 | 410.3 | 10.3 | 該当なし |
10 | 270112 | 歴青炭 | 443,664 | 2,676,181 | 1.5 | 503.2 | 2272.2 | 第2弾、第4弾-1(2019.9~追加関税率引き下げ)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置) |
11 | 300215 | ワクチン等免疫産品(投与量にしたものまたは小売用の形状若しくは包装にしたものに限る。) | 889,140 | 2,165,292 | 1.2 | 143.5 | 17.9 | 該当なし |
12 | 100790 | グレイン・ソルガム(播種用以外のもの) | 956,255 | 2,118,680 | 1.2 | 121.6 | 107.5 | 第1弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置) |
13 | 880240 |
飛行機その他の航空機 (自重が1万5,000キログラムを超えるもの) |
13,177,041 | 2,117,903 | 1.2 | △ 83.9 | 10.8 | 該当なし |
14 | 841112 |
ターボジェット (推力が25キロニュートン超) |
1,731,806 | 1,967,910 | 1.1 | 13.6 | 3.5 | 該当なし |
15 | 330499 | 美容用、メーキャップ用の調製品(唇、目、マニキュア、パウダー用を除く) | 507,797 | 1,942,266 | 1.1 | 282.5 | 10.8 | 第3弾、第4弾-1(2019.9~追加関税率引き下げ)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置) |
注1:中国の対米追加関税措置として、対象品目を示す第1弾、第2弾、第3弾-1~3、第4弾-1、2のリストが発表されている。なお、リスト第4弾-2の対象品目は暫定的に追加関税の徴収が停止されている。当該品目がどのリストに含まれているかを示した。
注2:通常の適用除外措置では、措置の有効期間内は申請せずに適用除外措置を享受できるが、市場化買い付け措置の場合は買い付け計画などを申請し審査を受け、認可日から1年間は認可された輸入金額の範囲内の品目について、追加関税を付加されないことになっている。
出所:グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成
輸入品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)を前年比でみると、5位の石油および歴青油を除く、14品目全てが増加した(表2参照)。なかでも、エネルギー(天然ガス、液化プロパンガス、歴青炭)および穀物(大豆、トウモロコシ、グレイン・ソルガム)の伸びが大きかった。追加関税発動前の2017年との比較でも、自動車と飛行機を除く、13品目が増加した。集積回路(半導体)も前年比8.1%増加した。
上位15品目のうち、9品目(大豆、乗用自動車、天然ガス、石油、トウモロコシ、液化プロパンガス、歴青炭、グレイン・ソルガム、美容用調製品)が追加関税の対象とされていたが、いずれも既に適用除外(市場化買い付け措置)や暫定的追加関税徴収停止となっている。また、上位15品目は対象となっていないが、一部の適用除外措置は、2022年4月もしくは6月まで延長されている(2021年10月4日付ビジネス短信、2022年1月4日付ビジネス短信参照)。市場化買い付け措置は引き続き696品目を対象としており、2021年も多くの品目で適用除外措置が継続された。
エネルギー関連品目については、2021年9月中旬以降、石炭不足を主因として中国各地で発生した電力制限による影響が見て取れる。10位の歴青炭は石炭の中でも発電用のボイラーに使われることの多い種類だが、2021年9月以降は世界からの輸入が急増した。国別では、1位ロシア(前年比3.3倍)、2位インドネシア(2.8倍)、3位カナダ(4.2倍)、4位米国(23.7倍)となり、米国からの伸びが最も大きかった。なお、2013年から2020年まで最大の輸入元であったオーストラリアは、前年比87.2%減となった(2021年11月9日付ビジネス短信参照)。
一方、中国は2060年のカーボンニュートラル実現を目標に掲げており、炭素排出量の少ない天然ガスおよび液化プロパンガスの輸入も増やしている。天然ガスは、世界からの輸入が89.8%増で、米国からの輸入は1位のオーストラリア(前年比58.3%増)に次いで2位となり、前年比5.8倍となった。液化プロパンガスも、世界からの輸入が93.5%増と大きく増加。米国からの輸入はそれを上回る2.9倍で国別1位となった。
穀物は、豚の飼料用の需要が増加し、輸入が伸びた。2018年から中国ではASF(アフリカ豚熱)ウイルスが流行し、豚肉生産が落ち込んでいたが、2020年後半からの生産回復に伴い、飼料用穀物の需要が伸びている。
具体的には、大豆が前年比59.0%増の169億ドルと品目別の1位となった。中国の大豆輸入は、1位のブラジルと2位の米国で全体の約9割を占める。2021年1~3月は、降雨により収穫が遅れたブラジル産大豆の輸入分を補う形で米国産大豆の輸入が急増したが、4月以降は、ブラジルからの輸入が急回復し、通年の国別ではブラジルが33.3%増で1位、次いで米国となった。
トウモロコシは、前年比5.8倍の56億ドルと急増した。中国はこれまで、主にウクライナからトウモロコシを輸入してきたが、ウクライナでトウモロコシの生育期である2020年夏季に干ばつとなったこともあり、米国からの輸入が伸び、国別で1位となった。10位のグレイン・ソルガム(ソルガムきび)も2020年後半から増加し、輸入に占める米国のシェアは2021年に7割となっている。
2位の集積回路(半導体)は、前年比8.1%増となった。半導体は対米輸入の主力品目であり、中国は一貫して追加関税の対象外としている。一方、米国は、中国の半導体産業に対して制裁措置を発動しており、華為技術(ファーウェイ)や半導体製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)などをエンティティリスト(EL)に追加し、SMICへの輸出は回路線幅が10ナノ(10億分の1)メートル以下の半導体を製造するのに必要な、米国製品の同社への輸出・再輸出・国内移送(以下、輸出など)は原則不許可となっている(2020年12月23日付ビジネス短信参照)。米国側の制裁措置にもかかわらず、中国の対米半導体輸入は米中対立が激しさを増した2018年以降も一貫して伸びている。半導体の種類は多岐にわたるため、制裁措置の対象外である汎用半導体の輸入が伸びていることがうかがえる。
米中間の貿易交渉に具体的な進展は見えず
米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は2021年10月、米中による第1段階の経済・貿易協定の実施状況につき、中国との対話に着手するとしたが(2021年10月5日付ビジネス短信参照)、その後、具体的な進展の発表はない。USTRが2022年3月1日に発表した、2022年の通商課題に関する報告では、拙速な対中措置は米国自身の脆弱(ぜいじゃく)性を生むとし、中国の不公正な通商・経済慣行に対抗するには同盟・友好国との協調が重要とした(2022年3月2日付ビジネス短信参照)。
中国商務部の高峰報道官は2022年2月10日の定例記者会見で、米国からの輸入額が第1段階の経済・貿易協定に基づく目標額に到達しなかったことにつき、「中国は新型コロナ感染拡大の影響克服に努め、世界経済の落ち込みやサプライチェーンの阻害など多くの不利な要素がある中、協定の履行に努めてきた。米国はできるだけ早く追加関税と制裁措置を取り消し、米中双方の貿易協力拡大に向けて良好な条件と雰囲気を作ることを希望する」と発言した。また、米中貿易交渉の進展については、関連部門が正常にコミュニケーションを取り合っており、状況に進展があれば発表する、と述べるにとどめた。
- 執筆者紹介
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ジェトロ海外調査部中国北アジア課
江田 真由美(えだ まゆみ) - 2005年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、企画部企画課海外地域戦略班、イノベーション・知的財産部知的財産課を経て、2020年4月から現職。