オーストラリアからの石炭輸入は停止状態、輸入元の多元化進む

(中国)

中国北アジア課

2021年11月09日

中国の2021年1~9月の石炭輸入量は、前年同期比14.8%減の1億4,235万トンだった(注1)。2013年から2020年まで8年連続で最大の輸入元だったオーストラリアからの輸入が、2020年秋ごろから急激に減少、(グローバル・トレードアトラスの統計上)2020年12月以降、ゼロになっていることが影響した(添付資料図参照)。なお、前年同期の中国の石炭輸入量に占めるオーストラリアの構成比は44.8%に達していた。

中国政府は、公式にはオーストラリアからの輸入を停止していると発表していない(注2)。2020年10月13日付の「環球時報」は、同年10月12日付のオーストラリア紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」の報道を引用するかたちで、「中国の国有エネルギー企業および製鉄所は、オーストラリアからの石炭輸入を暫定的に停止するよう、当局から口頭通知を受けている」と報じた。

2021年1~9月の石炭輸入量を国・地域別にみると、輸入量が最も多いのはインドネシアで、前年同期比47.9%増。構成比は前年同期(26.0%)から19.1ポイント拡大し、45.1%だった。2位はロシアで85.4%増(構成比:28.9%)。続くモンゴルは38.6%減だった(8.6%)。

オーストラリアからの輸入停止分を補うように、インドネシアやロシアからの輸入量が急増。このほか、米国やカナダからの輸入量も増加傾向にあり、輸入元の多元化が進められている(添付資料表参照)。

モンゴルからの石炭輸入の減少は、モンゴル内での新型コロナウイルス感染拡大を受け、中国の国境税関で検疫が強化されたことなどが影響したとみられる。モンゴル政府の発表によると、中国およびモンゴルの両首相は2021年10月12日、両国間の貿易額拡大に向けて取り組むことなどで合意。モンゴルの石炭の対中輸出を増やし、両国企業が石炭調達の長期契約を締結することを支援すると表明した(2021年10月26日記事参照)。

中国国内では2021年9月中旬以降、発電用石炭の供給不足や電力需給のアンバランスなどを背景とした電力制限が複数の地域で発生。国家発展改革委員会は9月29日、エネルギー供給源の多元化に向けた対応策の1つとして、「秩序ある石炭輸入の増加」に言及している。オーストラリアからの輸入が停止状況にあるとみられる中、その他の国からの輸入が今後も増加する可能性がある。

もっとも、中国国家統計局が発表した2018年の統計によれば、中国の石炭供給量のうち、輸入石炭が占める割合は7.1%にとどまり、供給の大部分を国内生産が占める。そのため、国内での石炭生産をいかに確保するかが、電力供給安定の最大の課題とみられる。中国政府が10月8日にエネルギー供給確保および産業やサプライチェーンの安定を保障するために示した6つの措置においても、主には石炭の国内での増産などが盛り込まれている(2021年10月15日記事2021年10月20日記事参照)。

(注1)HSコード2701に属する石炭のデータを抽出。

(注2)国務院新聞弁公室が2021年2月24日に開いた記者会見で、海外メディア記者が「オーストラリアがどのような対応をとれば、中国側は石炭をはじめとするオーストラリア産品の輸入禁止措置を取りやめるのか」と質問した。これに対し、商務部の王受文副部長は「信頼と協力の増大につながるオーストラリア側の行為により、両国間の経済貿易関係の安定的な発展が推進されることを期待する」とコメントしている。

(小林伶)

(中国)

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