米中が第1段階の経済・貿易協定に署名、中国は今後2年間で2,000億ドル以上の米国産品を購入

(中国、米国)

北京発

2020年01月17日

トランプ米国大統領と劉鶴・中国副首相は1月15日(米国現地時間)、ホワイトハウスで、両国の第1段階となる経済・貿易協定に署名した(2020年1月16日記事参照)。中国側が公表した合意文書(中国語版と英文版)は財政部のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる(注1)。

劉鶴副首相は署名式のスピーチで米中の第1段階合意は「中国、米国および全世界にとっても有益」と述べ、今回の合意での相互利益と平等性を強調するとともに、「中国の対外開放のドアは必ずさらに大きく開かれる」と、今後の対外開放への決意を述べた。

合意文書では、2019年12月の合意時に中国政府が言及していなかった、米国からの農産品などの購入額が明らかになった(2019年12月17日記事参照)。それによると、1月1日~2021年12月31日の2年間で中国は、2017年の輸入実績を基準とし、米国から工業製品や農産品、エネルギー、サービスを2,000億ドル以上追加購入・輸入しなくてはならないと規定しており、米国側の貿易赤字解消の要求を相当程度、中国が受け入れるかたちとなった。具体的には、中国が2020年に農産品125億ドルを含む767億ドル分、2021年に農産品195億ドルを含む1,233億ドル分の米国産品の購入を増やすとしている(添付資料表参照)。米国が中国への輸出を増加させる具体的な品目が合意文書の付録6.1の別紙でHSコード4桁レベルで示されている(注2)。

一方、中国が2,000億ドルに上る米国産品を購入する実現可能性については懐疑的な意見もある。人民大学の程大為教授は「中国政府は行政指令や補助金のような方式でこの規模の購入を実現させることはない」と指摘した上で、「中国企業がエンティティー・リストのために経営上の影響を受けて購買能力がそがれ、十分な米国製品・サービスを輸入できないのであれば、その責任は完全に米国側にある」との見方を示した。

中国国内メディアの報道は、合意内容が「平等、互恵、ウィンウィン」であることを強調している。「人民日報」(1月16日)は「合意に関する専門家の解説」と題した記事の中で、「知的財産保護の強化は中国経済のイノベーションの発展に必要であり、この分野での合意内容は全体的にバランスが取れている」「技術移転制度のさらなる改善は中国の改革開放の方向性と完全に一致している。この分野における権利と義務は平等だ」「中米の農業協力は中国の消費需要を満たし、農業の供給側の構造改革を進める上で有益」「為替レートの問題に関する合意は平等互恵的であり、決してプラザ合意のコピーではない」と論じた。

(注1)合意文書は、序言のほか、(1)知的財産権、(2)技術移転、(3)食品・農産品貿易、(4)金融サービス、(5)マクロ経済政策・為替レートの問題と透明性、(6)貿易の拡大、(7)双方の評価と紛争解決、(8)最終条項の全8章から構成される。

(注2)中国財政部が1月15日時点で発表した合意文書の中国語版にはこの別紙は含まれていない。

(藤原智生)

(中国、米国)

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