税制

最終更新日:2023年08月17日

法人税

2023年4月~翌年3月の会計年度の法人税率は、19%(小企業)~25%(大企業)。

法人税率(Corporation Tax

法人税率は25%(課税対象所得が25万ポンド超)、19%(課税対象所得が5万ポンド以下)。5万ポンド超25万ポンド以下の企業には、会計期間と関連会社数に応じて19%超、25%未満の税率に減額される。

※リングフェンス所得(英国領の油田開発事業から得られた収益)への課税率は、次項参照。

ジェトロの記事「2021年度予算案を発表、大企業向け法人税を2023年から引き上げ(英国)」(2021年3月9日付)

研究開発税控除

法人税を計算する際、研究開発費用に関する控除として、資本的支出には損金算入が認められ、適格研究開発費は減税の対象となる。

ジェトロ:英国 税制 研究開発費用関連の控除PDFファイル(344KB)

クリエイティブ産業に係る税控除

法人税を計算する際、映画、アニメーション、ハイエンドのテレビ番組、子供向けテレビ番組、ビデオゲーム、舞台芸術、オーケストラのクリエイティブ産業については、一定の条件を満たせば、制作・開発費用の一部が減免対象となる。

ジェトロ:英国 税制 クリエイティブ産業優遇税制PDFファイル(656KB)

パテントボックス制度

英国または欧州で認められた特許、農業や医薬品の知的財産(IP)(意匠権や商標権は含まれない)から得た利益から、通常経費(人件費、土地建物費、マーケティング費など)を控除した額(関連知的財産利益 Relevant IP Profit:RIPP)に対し、10%の税率を適用する。

リングフェンス所得

課税対象所得が25万ポンド超の企業に対するリングフェンス所得(英国領の油田開発事業から得られた収益)の税率は30%。
これに加えて、追加税(supplementary charge)10%およびエネルギー(石油・ガス)利益税(注)25%が徴収される。

課税対象所得5万ポンド未満の場合、リングフェンス所得税率は19%。課税対象所得5万ポンド以上25万ポンド以下の企業については控除(Marginal Relief)の対象となり、控除率は11/400。

(注)エネルギー(石油・ガス)利益税は、2022年5月に発表、2022年7月に法制化された。石油・ガス会社のリングフェンス利益に対する2025年12月31日までの時限的な課税で80%の投資控除が含まれている。2023年1月1日以降、税率を35%に引き上げ、投資控除を29%まで引き下げ。期限も2028年3月31日まで延長。

迂回利益税(Diverted Profits Tax:DPT)

英国から国外の租税回避地に利益を移転している多国籍企業を対象に、2015年4月1日より新たに導入され、税率は2023年4月1日から31%。

二国間租税条約

日英租税条約により、利子は免税、配当は10%(持株比率10%以上の場合は0%)、使用料は免税。

英国は二重課税の回避を目的とした条約(租税条約)を100以上の国々と締結。
これら租税条約の主な内容には、投資所得(配当および利子)や使用料(著作権、特許権)の支払いに対する源泉地国課税の軽減・免除措置がある。

  • 英国政府:二国間租税条約の締結国一覧 (Tax treaties外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

日英租税条約は1963年に原条約が発効し、1970年に第1次全面改正条約、2006年に第2次全面改正条約、2014年12月12日に新たに改正議定書を発効。
2014年の改正では、利子については原則免除など投資所得に対する減免対象を拡大し、事業利益への課税については新たな規定を導入した。
さらに、税務当局間の相互協議における仲裁制度や、相手国の租税を相互に徴収する仕組みの導入など、両国の税務当局間の協力関係が強化された。

この改正議定書では、源泉徴収される所得への租税は、2015年1月1日以後に適用されている。
源泉徴収されない所得への租税については、日本では2015年1月1日以後に開始する各課税年度の所得に、英国では法人の場合2015年4月1日以後(個人の場合2015年4月6日以後)に開始する各課税年度の所得に、それぞれ適用されている。
租税条約を適用し、租税の減免を受けるには、税務当局への届出が必要である。

その他税制

ビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税)、付加価値税(消費税)、個人所得税、カウンシル・タックス、土地印紙税、銀行税など。

ビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税)

非居住用(事業用)資産(店舗、事務所、倉庫、工場など)に対する評価額を基に課税する固定資産税。スコットランド自治政府などは近年、「非居住不動産レート(Non-domestic Rates)」という呼称を用いている。
イングランドおよびウェールズと、スコットランド、北アイルランドとでは、税額の算出方法が異なる。
イングランドとウェールズでは、中央政府の資産評価局(VOA)、スコットランドは各地方自治体の土地評価局、北アイルランドは同政府の土地・不動産局が市場の年間賃貸額に基づく課税評価額によって税額を算出する。
また、課税評価額はこれまでほぼ5年ごとに見直しが行われ、イングランド、ウェールズ、スコットランド、および北アイルランドいずれも2023年4月1日に改定された。

ジェトロ地域分析レポート「英国への投資にはビジネスレートに留意が必要」(2019年2月1日)

ビジネスレートについての情報
  1. イングランド・ウェールズ
    英国政府:ビジネスレート・ガイダンス(Business rates外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. スコットランド
    スコットランド自治政府:非居住不動産レート・ガイダンス(Non-domestic rates guidance外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  3. 北アイルランド
    北アイルランド政府:ビジネスレート(Help available for business rates外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
課税率と土地評価額が確認できるページ(郵便番号、住所、通りの名などで検索可能)
  1. イングランド
  2. ウェールズ
  3. スコットランド
    スコットランド自治政府:
  4. 北アイルランド
    • 北アイルランド政府:ビジネスレート(Business rates外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    • 具体的な税額の算出:北アイルランド財務省(Department of Finance)「ビジネスレートの乗数(Rate Poundages外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」
    • 北アイルランド政府:「どのようにして税額は算出されるか(How my rate bill is calculated外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」
(表)不動産評価額別のビジネスレート課税率(乗数、2023年度)
イングランド
地域 課税率
不動産評価額
5万1,000ポンド未満
不動産評価額
5万1,000ポンド以上
不動産評価額
7万5,000ポンド超
大ロンドン市以外 0.499 0.512 0.512
大ロンドン市内:シティ(注1)以外 0.499 0.512 0.532
大ロンドン市内:シティ 0.513 0.526 0.546
スコットランド
地域 課税率
不動産評価額
5万1,000ポンド以下
不動産評価額
5万1,000ポンド超
10万ポンド以下
不動産評価額
10万ポンド超
スコットランド(全域) 0.498 0.511 0.524
ウェールズおよび北アイルランド
地域 課税率(一律)
ウェールズ(全域) 0.535
北アイルランド(注2) 0.52318~0.633362

(注1)シティはシティ・オブ・ロンドンの略。
(注2)行政区により異なる。行政区の税率+行政区が属する地方の税率。

各地域のビジネスレートの減免について
  1. イングランド(英国政府):Business rates relief外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. スコットランド自治政府:Non-domestic rates relief外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  3. ウェールズ自治政府:Business Rates in Wales外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  4. 北アイルランド・ビジネスインフォ:Help available for business rates外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ビジネスレートの課税対象外とされているのは、イングランドの場合、住宅用不動産、農地、農家(水産施設含む)、障がい者用訓練施設、宗教施設などに限定されている。

ビジネスレートには減免措置があり、各自治政府が独自の判断で、減免対象、免税内容を定めている。4つの行政府が共通して減免措置を設けられているのは小事業向け不動産への減免(SBRR)、空き物件への減免、チャリティ団体および地域振興に寄与するアマチュアスポーツクラブ、過疎地などへの減免である。

エンタープライズ・ゾーンでのビジネスレートの減免

産業振興を目的としたエンタープライズ・ゾーン(EZ)内に移転する企業は、当該地方自治体の判断の下、ビジネスレートが減免される。

英国政府:エンタープライズ・ゾーンでのビジネスレートの減免(Business rates relief - Enterprise zones外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ジェトロ:2023年度に実施されている主なビジネスレート減免措置PDFファイル(633KB)

付加価値税(VAT)

日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)の税率は3種類あり、税率および該当する品目は次のとおり。

区分 税率 品目
標準税率 20% ほとんどの商品やサービス
軽減税率 5% 家庭用燃料、電力、チャイルドシートなど
ゼロ税率 0% 食料品(一部除く)、子供服、水道水、新聞、医薬品、居住用建物など

この他に、税金が免除となる非課税品目(医療、教育、郵便、金融、保険など)や、VAT対象外の不課税品目(寄付、無償福祉サービス、公的機関による通行料金など)がある。
たばこ、酒、炭化水素油等は別途、物品税の対象となる。税率は品目ごとに異なる。
また、過去12カ月の課税対象取引額が8万5,000ポンド超の場合は、歳入関税庁(HMRC)への登録が必要となる。

個人所得税(Income Tax

所得税は、英国居住者の課税年度(4月6日~翌年4月5日)内の所得と英国非居住者の英国での所得に対して、超過累進課税方式(一定額以上になった場合に、その超過金額に対してのみ、より高い税率を適用)で課せられる。

ジェトロ:英国 その他税制 個人所得税PDFファイル(216KB)

英国居住者の要件は、課税年度中に英国で過ごした日数が183日以上の場合、または主たる住居を英国内に91日以上保有し、課税年度中にその住居で過ごした日数が30日以上の場合である。
英国居住者は、英国以外の海外所得に対しても納税の義務がある。
英国の居住者でない場合は、英国で得た所得だけに課税される。

カウンシル・タックス(Council Tax

カウンシル・タックスは、居住用資産の評価額を基に課税される。これは日本の固定資産税に似ているが、賃借人でも支払い義務があり、同時に別荘など本宅ではない場合も減免はあるものの、支払い義務が生じる。

英国では個人所得税の地方税がないため、事実上、個人所得税の地方税に相当する税である。
なお、イングランド、スコットランド、ウェールズと、北アイルランドとでは税率の算出方法が異なる。

ジェトロ:英国 その他税制 カウンシル・タックスPDFファイル(354KB)

土地、不動産の取得にかかる税(印紙税)

土地や不動産を購入する際には、イングランド、北アイルランドでは土地印紙税(Stamp Duty Land Tax:SDLT)が、スコットランドでは土地・建物取引税(Land and Buildings Transaction Tax)が、ウェールズでは土地取引税(Land Transaction Tax)が課税される。
不動産の取得額(the purchase price)、評価額(consideration)またはリース権取得額(the purchase price of a lease、the “lease premium”と呼ばれる)に基づき、超過累進税率方式で課税される。

ジェトロ:英国 その他税制 土地、不動産の取得にかかる税(印紙税)PDFファイル(366KB)

デジタルサービス税(Digital Services Tax

英国政府は2020年4月1日より、各種デジタルサービス事業の収益のうち、英国のユーザーから生じた収益に対し税を導入。
課税対象は、ソーシャルメディアサービス、検索エンジンやオンライン・マーケットプレイスを提供する企業で、当該事業からの収益が、世界で5億ポンドを超え、うち2,500万ポンド超が英国のユーザーからもたらされる企業。
英国ユーザーから得られた収益のうち2,500万ポンドを超えた分に対し2%が課税される。
「英国のユーザー」とは普段英国に所在する個人、もしくは英国に設立されたその他の主体とされた。税額の計算は企業グループごとで行われるものの課税は寄与分に応じてグループ内の個社に対し行われる。また、英国内に法人税を課税可能な拠点を有するかを問わない。
なお、英国政府はデジタルサービス税導入当初から、多国籍テック企業への課税は国際的な法人税改革によって解決すべきとの見解を示しており、G20、OECDなどでの協議を通じて対策が実現すれば、同税を廃止する考えを示している

ジェトロの記事「デジタル課税めぐる米国の対英追加関税案、英国は国際協議継続による解決主張」(2021年3月31日付)
ジェトロの記事「G7財務相会合、法人税率15%以上、デジタル課税は利益率10%基準で合意」(2021年6月7日付)
ジェトロの記事「米国、デジタル課税めぐり欧州5カ国と合意、USTRは発動停止中の追加関税措置の終了発表」(2021年10月22日付)

その他の事業関連の諸税

ビジネスに関連するその他の諸税は、英国政府ウェブサイトで確認できる。

インベストメント・ゾーンでの各種税の減免

「インベストメント・ゾーン」は2023年春季予算案(2023年3月15日)で発表されたもので、地域の経済活性化を目標に指定するもので、イングランドでは次の8カ所(ウェスト・ミッドランズ、グレーター・マンチェスター、ノース・イースト、サウス・ヨークシャー、ウェスト・ヨークシャー、イースト・ミッドランド、ティーズサイド、リバプール)が候補に挙げられている。政府はスコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各自治政府にも同様の地域を指定するよう支援するとしている。
イングランドは既にサウス・ヨークシャー、リバプールの2カ所をインベストメント・ゾーンとして発表している。スコットランドもグラスゴーと北東部(アバディーン周辺)をその候補として作業中である。
税の減免内容は多岐にわたるが、5年間の税制優遇措置(税務上の減価償却に関わる優遇償却率の適用、建物・構築物の償却に関わる特例措置、不動産取得にかかる印紙税、ビジネスレート、国民保険料の雇用者負担の軽減)が導入される見込み。