税制
最終更新日:2022年08月17日
- 最近の制度変更
-
-
2022年12月27日
-
2022年12月23日
-
2022年12月13日
-
2022年10月18日
-
2022年9月26日
-
法人税
法人税率は、19%(一律)。
法人税率(Corporation Tax)
法人税率は2017年4月1日以降、一律19%。(※)
英国政府は、2021年度(2021年4月~2022年3月)予算案(2021年3月3日発表)で、法人税率を1974年以来、約半世紀ぶりに引き上げると発表。2023年4月から適用が開始され、年間利益が25万ポンド以上の企業を対象に、現行の19%から25%に引き上げ予定。他方、5万ポンド以下の企業は19%のまま据え置く。年間利益が5万ポンド超25万ポンド未満の企業には、25%未満の軽減税率を適用する予定。
※リングフェンス所得(英国領の油田開発事業から得られた収益)への課税率は、次項参照。
- 英国政府:法人税・概要(Corporation Tax
)
- 英国政府:法人税率・税率(Corporation Tax rates and reliefs
)
- 英国政府:法人税率・税率と控除(Rates and allowances for Corporation Tax
)
ジェトロの記事「2021年度予算案を発表、大企業向け法人税を2023年から引き上げ(英国)」(2021年3月9日付)
研究開発税控除
法人税を計算する際、研究開発費用に関する控除として、資本的支出には損金算入が認められ、適格研究開発費は減税の対象となる。
クリエイティブ産業に係る税控除
法人税を計算する際、映画、アニメーション、ハイエンドのテレビ番組、子供向けテレビ番組、ビデオゲーム、舞台芸術、オーケストラのクリエイティブ産業については、一定の条件を満たせば、制作・開発費用の一部または全額が減免対象となる。
ジェトロ:英国 税制 クリエイティブ産業優遇税制(634KB)
パテントボックス制度
英国または欧州で認められた特許、農業や医薬品の知的財産(IP)(意匠権や商標権は含まれない)から得た利益から、通常経費(人件費、土地建物費、マーケティング費など)を控除した額(関連知的財産利益 Relevant IP Profit:RIPP)に対し、10%の税率を適用する。
- 英国政府:パテントボックス制度 (Use the Patent Box to reduce your Corporation Tax on profits
)
リングフェンス所得
リングフェンス所得(英国領の油田開発事業から得られた収益)の標準税率は30%。
これに加えて、追加税(supplementary charge)10%が徴収される(いずれも2022年度税率)。
課税対象所得30万ポンド以下の場合、リングフェンス所得税率は19%の軽減税率となる。
同30万超~150万ポンド以下の場合、控除(Marginal Relief)の対象となり、控除率は11/400。
- 英国政府:リングフェンス所得税(Oil and gas: Ring Fence Corporation Tax
)
- 英国政府:法人税率(Rates and allowances for Corporation Tax
)
- 英国政府:石油とガス(追加税)(Oil and gas: supplementary charge
)
迂回利益税(Diverted Profits Tax:DPT)
英国から国外の租税回避地に利益を移転している多国籍企業を対象に、2015年4月1日より新たに導入され、税率は25%。
なお、2023年4月1日から迂回利益税率が現行の25%から31%に引き上げられる予定(2021年3月3日発表)。理由は法人税率の引き上げが行われるので、迂回利益税率と法人税率の現在の差を維持するため。
- 英国政府:迂回利益税ガイダンス(Diverted Profits Tax: contents
)
- 英国政府:2023年4月1日からの迂回利益税の税率の変更について(Change to the Diverted Profits Tax rate from 1 April 2023
)
二国間租税条約
日英租税条約により、利子は免税、配当は10%(持株比率10%以上の場合は0%)、使用料は免税。
英国は二重課税の回避を目的とした条約(租税条約)を100以上の国々と締結。
これら租税条約の主な内容には、投資所得(配当および利子)や使用料(著作権、特許権)の支払いに対する源泉地国課税の軽減・免除措置がある。
- 英国政府:二国間租税条約の締結国一覧 (Tax treaties
)
日英租税条約は1963年に原条約が発効し、1970年に第1次全面改正条約、2006年に第2次全面改正条約、2014年12月12日に新たに改正議定書を発効。
2014年の改正では、利子については原則免除など投資所得に対する減免対象を拡大し、事業利益への課税については新たな規定を導入した。
さらに、税務当局間の相互協議における仲裁制度や、相手国の租税を相互に徴収する仕組みの導入など、両国の税務当局間の協力関係が強化された。
- 英国政府:日英租税条約 (Japan: tax treaties
)(2018年11月13日付)
- 英国政府:企業向け租税条約ガイダンス(Claiming Double Taxation Relief for companies and other concerns
)(2016年8月18日付)
- 日本・外務省:日英租税条約改定議定書の発効
(2014年11月13日付)
- 日本・財務省:日英租税条約改正議定書
(158KB)(2013年12月17日付)
この改正議定書では、源泉徴収される所得への租税は、2015年1月1日以後に適用されている。
源泉徴収されない所得への租税については、日本では2015年1月1日以後に開始する各課税年度の所得に、英国では法人の場合2015年4月1日以後(個人の場合2015年4月6日以後)に開始する各課税年度の所得に、それぞれ適用されている。
租税条約を適用し、租税の減免を受けるには、税務当局への届出が必要である。
- 日本・国税庁:日英租税条約に関する解説「源泉所得税の改正のあらまし
(201KB) 」(2014年12月付)
- 日本・国税庁:No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)
- 日本・国税庁:No.2889 租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求
- 日本・国税庁:特典条項に関する付表(様式17)
その他税制
ビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税)、付加価値税(消費税)、個人所得税、カウンシル・タックス、土地印紙税、銀行税など。
ビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税)
非居住用(事業用)資産(店舗、事務所、倉庫、工場など)に対する評価額を基に課税する固定資産税。スコットランド自治政府などは近年、「非居住不動産レート(Non-domestic Rates)」という呼称を用いている。
イングランドおよびウェールズと、スコットランド、北アイルランドとでは、税額の算出方法が異なる。
イングランドとウェールズでは、中央政府の資産評価局(VOA)、スコットランドは各地方自治体の土地評価局、北アイルランドは同政府の土地・不動産局が市場の年間賃貸額に基づく課税評価額によって税額を算出する。
また、課税評価額はこれまでほぼ5年ごとに見直しが行われ、イングランド、スコットランドおよびウェールズについては、2017年4月1日に、北アイルランドについては2020年1月に改定された。政府は今後、改定頻度を上げるとしていたが、新型コロナ感染拡大に伴い、イングランド、ウェールズについては2021年としていたところ、2023年に延期した。スコットランドは2023年に改定が予定されている。北アイルランドは2021年10月1日時点での課税評価額データベースを作成済で2023年4月から改訂するとしている。
ジェトロ地域分析レポート「英国への投資にはビジネスレートに留意が必要」(2019年2月1日)
ビジネスレートについての情報
- イングランド・ウェールズ
英国政府:ビジネスレート・ガイダンス(Business rates)
- スコットランド
スコットランド自治政府:非居住不動産レート・ガイダンス(Non-domestic rates guidance)
- 北アイルランド
北アイルランド政府:ビジネスレート(Help available for business rates)
課税率と土地評価額が確認できるページ(郵便番号、住所、通りの名などで検索可能)
- イングランド
- 英国政府:ビジネスレートの試算(Estimate your business rates
)
- 英国政府:2022年度のビジネスレート(1/2022: confirmation of the multipliers for 2022 to 2023
)
- 大ロンドン市:非居住不動産レート(How your bill is calculated
)
- クロスレイル建設に伴う値上げ(Paying for Crossrail: business rate supplement
)
- ビジネスレート用土地評価額の確認(Find a business rates valuation
)
- 英国政府:ビジネスレートの試算(Estimate your business rates
- ウェールズ
- ウェールズ自治政府:ビジネスレート(Business Rates
)
- ビジネス・ウェールズ:ウェールズのビジネスレート(Business Rates in Wales
)
- ウェールズ自治政府:土地評価額の試算(Estimate your business rates
)
- ウェールズ自治政府:ビジネスレート(Business Rates
- スコットランド
スコットランド自治政府:- 非居住不動産レート・ガイダンス(Non-domestic rates guidance
)
- スコットランド査定協会:ビジネスレートと具体的な土地評価額(Scottish Assessors Association Portal
)
- 非居住不動産レート・ガイダンス(Non-domestic rates guidance
- 北アイルランド
- 北アイルランド政府:ビジネスレート(Business rates
)
- 具体的な税額の算出:北アイルランド財務省(Department of Finance)「2022年度のビジネスレートの乗数(Poundages 2022-2023
)」
- 北アイルランド政府:「どのようにして税額は算出されるか(How my rate bill is calculated
)」
- 北アイルランド政府:ビジネスレート(Business rates
(表)不動産評価額別のビジネスレート課税率(乗数、2022年度)
地域 | 課税率 | ||
---|---|---|---|
不動産評価額 5万1,000ポンド未満 |
不動産評価額 5万1,000ポンド以上 |
不動産評価額 7万ポンド超 |
|
大ロンドン市以外 | 0.499 | 0.512 | 0.512 |
大ロンドン市内:シティ(注1)以外 | 0.499 | 0.512 | 0.532 |
大ロンドン市内:シティ | 0.511 | 0.524 | 0.544 |
地域 | 課税率 | ||
---|---|---|---|
不動産評価額 5万1,000ポンド以下 |
不動産評価額 5万1,000ポンド超 9万5,000ポンド以下 |
不動産評価額 9万5,000ポンド超 |
|
スコットランド(全域) | 0.498 | 0.511 | 0.524 |
地域 | 課税率(一律) |
---|---|
ウェールズ(全域) | 0.535 |
北アイルランド(注2) | 0.50624~0.601655 |
(注1)シティはシティ・オブ・ロンドンの略。
(注2)行政区により異なる。行政区の税率+行政区が属する地方の税率。
各地域のビジネスレートの減免について
- イングランド(英国政府):Business rates relief
- スコットランド自治政府:Non-domestic rates relief
- ウェールズ自治政府:Business Rates in Wales
- 北アイルランド・ビジネスインフォ:Help available for business rates
ビジネスレートの課税対象外とされているのは、イングランドの場合、住宅用不動産、農地、農家(水産施設含む)、障がい者用訓練施設、宗教施設などに限定されている。
ビジネスレートには減免措置があり、各自治政府が独自の判断で、減免対象、免税内容を定めている。4つの行政府が共通して減免措置を設けられているのは小事業向け不動産への減免(SBRR)、空き物件への減免、チャリティ団体および地域振興に寄与するアマチュアスポーツクラブ、過疎地などへの減免である。
次の別紙PDFを参照。
ジェトロ:2022年度に実施されている主なビジネスレート減免措置(682KB)
エンタープライズ・ゾーンでのビジネスレートの減免
産業振興を目的としたエンタープライズ・ゾーン(EZ)内に移転する企業は、当該地方自治体の判断の下、ビジネスレートが減免される。
英国政府:エンタープライズ・ゾーンでのビジネスレートの減免(Business rates relief - Enterprise zones)
新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済悪化の緩和を目的とした減免措置
ジェトロ:2022年度に実施されている主なビジネスレート減免措置(682KB)参照。
付加価値税(VAT)
日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)の税率は3種類あり、税率および該当する品目は次のとおり。
区分 | 税率 | 品目 |
---|---|---|
標準税率 | 20% | ほとんどの商品やサービス |
軽減税率 | 5% | 家庭用燃料、電力、チャイルドシートなど |
ゼロ税率 | 0% | 食料品(一部除く)、子供服、水道水、新聞、医薬品、居住用建物など |
この他に、税金が免除となる非課税品目(医療、教育、郵便、金融、保険など)や、VAT対象外の不課税品目(寄付、無償福祉サービス、公的機関による通行料金など)がある。
たばこ、酒、炭化水素油等は別途、物品税の対象となる。税率は品目ごとに異なる。
また、過去12カ月の課税対象取引額が8万5,000ポンド超の場合は、歳入関税庁(HMRC)への登録が必要となる。
- 英国政府:付加価値税率(概要)(VAT rates
)
- 英国政府:付加価値税率と品目・サービス(VAT rates on different goods and services
)
- 英国政府:VAT登録(Register for VAT
)
個人所得税(Income Tax)
所得税は、英国居住者の課税年度(4月6日~翌年4月5日)内の所得と英国非居住者の英国での所得に対して、超過累進課税方式(一定額以上になった場合に、その超過金額に対してのみ、より高い税率を適用)で課せられる。
- 英国政府:個人所得税(Income Tax
)
- 英国政府:個人所得税率と控除(Income Tax rates and Personal Allowances
)
英国居住者の要件は、課税年度中に英国で過ごした日数が183日以上の場合、または主たる住居を英国内に91日以上保有し、課税年度中にその住居で過ごした日数が30日以上の場合である。
英国居住者は、英国以外の海外所得に対しても納税の義務がある。
英国の居住者でない場合は、英国で得た所得だけに課税される。
カウンシル・タックス(Council Tax)
カウンシル・タックスは、居住用資産の評価額を基に課税される。これは日本の固定資産税に似ているが、賃借人でも支払い義務があり、同時に別荘など本宅ではない場合も減免はあるものの、支払い義務が生じる。
英国では個人所得税の地方税がないため、事実上、個人所得税の地方税に相当する税である。
なお、イングランド、スコットランド、ウェールズと、北アイルランドとでは税率の算出方法が異なる。
ジェトロ:英国 その他税制 カウンシル・タックス(354KB)
土地、不動産の取得にかかる税(印紙税)
土地や不動産を購入する際には、イングランド、北アイルランドでは土地印紙税(Stamp Duty Land Tax:SDLT)が、スコットランドでは土地・建物取引税(Land and Buildings Transaction Tax)が、ウェールズでは土地取引税(Land Transaction Tax)が課税される。
不動産の取得額(the purchase price)、評価額(consideration)またはリース権取得額(the purchase price of a lease、the “lease premium”と呼ばれる)に基づき、超過累進税率方式で課税される。
ジェトロ:英国 その他税制 土地、不動産の取得にかかる税(印紙税)(367KB)
- 歳入関税庁:土地印紙税計算(Calculate Stamp Duty Land Tax (SDLT)
)
- 英国政府:土地印紙税(Stamp Duty Land Tax
)
- スコットランド自治政府:土地・建物取引税(Land and Buildings Transaction Tax
)
- ウェールズ自治政府:土地取引税(Land Transaction Tax rates and bands
)
デジタルサービス税(Digital Services Tax)
英国政府は2020年4月1日より、各種デジタルサービス事業の収益のうち、英国のユーザーから生じた収益に対し税を導入。
課税対象は、ソーシャルメディアサービス、検索エンジンやオンライン・マーケットプレイスを提供する企業で、当該事業からの収益が、世界で5億ポンドを超え、うち2,500万ポンド超が英国のユーザーからもたらされる企業。
英国ユーザーから得られた収益のうち2,500万ポンドを超えた分に対し2%が課税される。
「英国のユーザー」とは普段英国に所在する個人、もしくは英国に設立されたその他の主体とされた。税額の計算は企業グループごとで行われるものの課税は寄与分に応じてグループ内の個社に対し行われる。また、英国内に法人税を課税可能な拠点を有するかを問わない。
なお、英国政府はデジタルサービス税導入当初から、多国籍テック企業への課税は国際的な法人税改革によって解決すべきとの見解を示しており、G20、OECDなどでの協議を通じて対策が実現すれば、同税を廃止する考えを示している
- 英国政府:デジタルサービス税(Digital Services Tax:detailed information
)
- 英国政府:デジタルサービス税の導入(Digital Services Tax
)
ジェトロの記事「デジタル課税めぐる米国の対英追加関税案、英国は国際協議継続による解決主張」(2021年3月31日)
ジェトロの記事「G7財務相会合、法人税率15%以上、デジタル課税は利益率10%基準で合意」(2021年6月7日)
その他の事業関連の諸税
ビジネスに関連するその他の諸税は、英国政府ウェブサイトで確認できる。
- 英国政府:事業関連諸税(Business tax
)