秋季経済計画を発表、国民保険料の負担減や企業向け優遇税制恒久化

(英国)

ロンドン発

2023年11月24日

英国のジェレミー・ハント財務相は11月22日、議会下院に対し秋季経済計画を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。この発表に合わせて、予算責任局(OBR)も経済・財政見通しを発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ハント氏はまず、OBRの経済・財政見通しに触れ、リシ・スナク首相が2023年の年頭演説で掲げた5つの優先事項(2023年1月6日記事参照)のうち、インフレ率の半減、経済成長、政府債務の削減という3つの経済的事項について達成したと述べた。インフレ率については10月の発表で4.6%まで低下(2023年11月16日記事参照)しており、OBRも2024年末までに2.8%に低下し、2025年に目標の2%まで低下すると予測している。それを踏まえ、ハント氏は追加の家計支援策を発表。低所得者向け社会保障給付(ユニバーサル・クレジット)などの支給額や国家年金の支給額についても、2024年4月からそれぞれ6.7%、8.5%増額する。また、酒税は2024年8月1日まで凍結する。

政府債務も2023年3月の予測に比べて低下する見通しで、借入額についてもGDP比で2028年度にかけて低下し、目標の3%未満を達成できるとした。

経済成長率に関しては、OBRの予測に触れ、2023年に0.6%、2024年に0.7%を見通すとした。成長に向けた取り組みとして、今後2年間で5,000万ポンド(約93億5,000万円、1ポンド=約187円)を拠出し、エンジニアリングや成長セクターでの職業実習制度の拡充に向けた実証を行う。そのほか、対英直接投資の拡大に向け、投資局への資金を増やし国際的な大企業向けにコンシェルジュサービスを提供する予定。また、3月の予算発表で盛り込んだ、工場設備や機械などへの投資額の全額費用化について、2026年3月までとしていた期間を撤廃し、恒久化する(注1)。さらに、国民保険料(クラス1、注2)の従業員負担分について2024年1月6日より12%から10%へと削減するほか、個人事業主向けの国民保険料制度についても2024年4月6日より削減し簡素化する。また、国家最低賃金の11.44ポンドへの引き上げのほか、現在23歳以上としている対象年齢を21歳以上に引き下げる。

イノベーション関連では、2023年7月に発表した研究開発関連の優遇税制の簡素化などに触れた(2023年7月21日記事参照)。雇用関連では、長期疾病がある者や障がい者、長期の失業者、精神衛生などの面で問題を抱える者などへの求職者支援に向け改革を行うとしている。

(注1)詳細は英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注2)詳細は英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(山田恭之)

(英国)

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