日本からの輸出に関する制度

牛肉の輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義する牛肉のHSコード

0201.10.00.001:生鮮および冷蔵の牛肉(枝肉および半丸枝肉)
0201.20.00.001:生鮮および冷蔵の牛肉(その他の骨付き肉)
0201.30.00.001:生鮮および冷蔵の牛肉(骨付きでない肉)
0202.10.00.001:冷凍の牛肉(枝肉および半丸枝肉)
0202.20.00.001:冷凍の牛肉(その他の骨付き肉)
0202.30.00.001:冷凍の牛肉(骨付きでない肉)

タイの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2021年11月

タイ国側の輸入条件については、保健省告示No.377(2016年)「牛海綿状脳症(BSE)リスクのある食品輸入規定・条件」において次のとおり規定されています。

定義

「牛肉」(Meat)とは、肉、皮、脂、内臓、骨、乳、血液、胆汁、扁桃腺など食用として利用する牛の各部分を意味する。

「生鮮牛肉」(Fresh Meat)とは、官能的、物理化学的特性を不可逆的に変化させる何らの工程または処理も経ていない牛肉を意味する。これには、冷凍牛肉、冷蔵牛肉、牛ひき肉も含む。

生鮮牛肉の輸入条件
  1. 次のと畜および解体工程による牛由来の脱骨牛肉(deboned skeletal muscle meat)〔機械的に除去された骨に付着した部分の牛肉(mechanically separated meat)は除く〕
    1. と畜前の疾病検査およびと畜後の畜産物、内臓検査(ante-and-post-mortem inspections)においてBSEではないこと、またはその疑いがないことが確認されていること。と畜前に、頭蓋腔への圧縮空気またはガスを注入する方法による気絶処理(stunning process)、または頭蓋腔に穴をあける処理(pithing process)または脳もしくは脊髄を裂傷し飛散させるその他の処理を受けていないこと。
  2. 1)以外の生鮮牛肉の場合、
    1. 反すう動物由来の肉骨粉(meat and bone meal, MBM)または脂かす(greaves)の反すう動物への給与禁止措置後に出生した牛由来であること。
    2. A)の牛は、と畜前の疾病検査およびと畜後の畜産物、内臓検査(ante-and-post-mortem inspections)においてBSEではないこと、またはその疑いがないことが確認されていること。
これらの生鮮牛肉を輸入する場合は、タイの農業協同組合省畜産局による家畜・畜産物の生産施設の認定を受けなければなりません。また、輸入者は輸入の都度、次の証拠または証明書(1および2)を食品医薬品局検査所で係官に提示しなければなりません。
  1. タイ畜産局発行の家畜・畜産物の生産施設の認定の証拠もしくは証明書、または畜産物輸入許可の証拠
  2. 前述の輸入条件1、2の詳細を記した、日本の所管官庁または所管官庁から認可を受けたほかの機関発行の畜産物の食肉衛生証明書(Health Certificate)のコピー
タイに牛肉を輸出するためには、都道府県などによる審査手続きを経て、厚生労働省による確認後、タイ政府に通知されたと畜場で処理されたものでなければなりません。タイ向けに輸出される牛肉を取り扱える処理場のリストは、農林水産省のウェブサイトで確認することができます。

また、保健省告示により次の食品は輸入が禁止されています。

  • 食品ではないものを含む食品(食品の品質維持や調理目的のもので、かつ消費者の健康被害がないものは例外とする)
  • 遺伝子組み換えまたは遺伝子工学によりCry9C DNA Sequenceを有する食品およびこの食品を成分として含有する食品
  • 次の1)〜13)およびこれを原料とする食品
    1. 臭素化植物油
    2. サリチル酸
    3. ホウ酸
    4. ホウ砂
    5. 塩素酸カリウム
    6. クマリンまたは1,2−ベンゾピロンまたは5,6−ベンゾ−α−ピロンまたはcis-O −クマル酸無水物またはo−ヒドロキシケイ皮酸ラクトン
    7. ジヒドロクマリンまたはベンゾジヒドロピロンまたは3,4-ジヒドロクマリンまたはヒドロクマリン
    8. ジエチレングリコール、ジヒドロキシジエチルエーテル、ジグリコール、2,2'−オキシビスエタノール、2,2'−オキシジエタノール
    9. ズルチンまたは4-エトキシフェニル尿素またはパラ - フェネトールカルバミド
    10. AF − 2または2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミドまたはフリルフルアミド
    11. 臭素酸カリウム
    12. ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド溶液、パラホルムアルデヒド
    13. メラミンおよびその類縁体(シアヌル酸)
  • 保健省告示No.424で指定される植物、動物、動植物の部位80種類

その他、保健省告示No.390(2018年)「販売用製造、販売用輸入、販売食品における材料使用基準、条件、方法」において、ヨウ素酸カルシウムやステビアなどの使用基準が規定されています。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2021年11月

日本側では、「タイ向け輸出牛肉の取扱要綱」に基づき対タイ輸出牛肉を取り扱うと畜場などの認定を受ける必要があります。また、日本で動物検疫所の輸出検査を受け、輸出検疫証明書を取得するにあたっては、同要綱で定められた食肉衛生証明書が必要です。同証明書は、当該牛肉の処理を行った認定と畜場などを管轄する食肉衛生検査所に申請して発行を受けます。同要綱および認定を受けた「タイ向け輸出牛肉取扱施設リスト」は、関連リンクの農林水産省「証明書や施設認定の申請」を参照してください。

日本・タイ経済連携協定(JTEPA)、日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)税率の適用を受ける場合、日本商工会議所発行の特定原産地証明書を取得する必要があります。

GMP製造基準適合証明書について

食品医薬品委員会事務局は、食品の製造方法などに関する基準を定めており、タイ国内の食品製造施設に基準の順守を求めています。輸入品については、タイ国内と同レベル以上の製造施設で製造されていることを担保するため、告示で定められる基準と同等以上の基準に基づく規格などの証明書(GMP製造基準適合証明書)を提出することが求められています。個別商品の登録を行う場合は、登録時と輸入通関時に提出することが必要となっています。個別商品の登録を行わない場合は、輸入通関時に提出が求められます。
輸入時にGMP製造基準適合証明書が求められる食品は、加工なしの生鮮水産物、アルコール飲料を除くほぼすべての食品となるため、牛肉においても必要です。特定の生鮮青果物については保健省告示第386号で指定、そのほかの食品については、2021年2月に第193号など従来の告示9本が統廃合・改正された保健省告示第420号で指定されており、牛肉は第420号の対象となります。保健省告示第420号の施行日は2021年4月11日ですが、施行日前に食品輸入許可証(Orr.7)を取得していた場合のみ、2021年10月7日から適用されます。この保健省告示第420号では、食品共通で順守することが求められる基本要求事項が定められているほか、飲料水、ミネラルウオーター、氷には個別要求事項1が、低温殺菌ミルク製品には個別要求事項2が、密閉容器に入った低酸性食品/飲料には個別要求事項3への対応がそれぞれ追加で求められます。保健省告示第420号の適用に伴う主な変更点は次のとおりです。

  • GMP製造基準適合証明書が求められる食品の範囲が拡大している。
  • ISO9001は食品製造に特化した規格ではないとしてGMP製造基準適合証明書としての使用が認められなくなる。

この証明書については、次の2つの条件を満たすことが必要です。

  1. 保健省告示第420号に定められた基準と同等以上の基準に基づく規格等の証明書であること。
  2. 保健省の認める発行主体(ア.食品製造国の政府機関、イ.食品製造国の政府が認めている認証機関、ウ.IAF(International Accreditation Forum)メンバーでIAFから認められた認定団体によって認定された認証機関、または エ.Guidelines for the Design, Operation, Assessment and Accreditation of Food Import and Export Inspection and Certification Systems (CAC/GL 26-1997)に準拠した検査および認証システムを備えた機関など、信頼性のある機関のいずれか)が発行した証明書であること。

タイ保健省からはISO22000の適合証明書などが具体例として挙げられていますが、具体例として公表されていない場合でも、法令に適合していれば使用可能なものがあります。例えば、日本の食品衛生法第55条(2021年6月の改正前は第52条)に基づく営業許可証は、従来、保健省告示第193号などの要求を満たす証明書として使用されてきており、保健省告示第420号の基本要求事項を満たす証明書として使用可能とされています。
なお、証明書がタイ語または英語でない場合は、タイ語または英語への翻訳が必要です。翻訳は(1)製造国のタイ国大使館または領事館、(2)タイ国内の食品製造国の大使館または領事館、(3)国際的水準の翻訳機関、(4)証明書に表示されている言語について学士課程以上の水準の教育を修了したタイ人、(5)その言語の高等教育機関の教師のいずれかから、正しい翻訳である旨の証明を受ける必要があります。
原本ではなく写しを使用する場合は、(1)証明書発行機関、(2)タイ国内の食品製造国の大使館、(3)食品製造国の政府機関、(4)政府機関に認められた者のいずれかから、原本と相違ない旨の証明を受ける必要があります。
また、証明書に有効期限が記載されていない場合は、証明書発行日から1年以内は使用可能となります。

表.使用できる証明書の例
食品の種類 順守が求められる規定 使用できる証明書の例 すべての食品で使用可能な証明書
大半の食品 保健省告示第420号基本要求事項
  • 食肉衛生証明書(Health Certificate)(※)
  • Good Hygiene Practices (GHPs)
  • SQF:Edition 8.1
  • SQF:Edition 9
なお、日本の食品衛生法第55条(旧第52条)に基づく営業許可証も使用可能。また、青果物の場合は、保健省告示第386号に基づく証明書も使用可能(行政機関による衛生証明書、JFS規格適合証明書、J-GAPなど)。
  • ISO22000:2005.
  • FSSC 22000
  • Global Standard for Food Safety Issue 8. British Retail Consortium.
  • SQF:Edition 9
  • International Food Standard;IFS
  • JFS-B
  • JFS-C
  • 農林水産省発行の GMP証明書 (保健省告示386号で指定される青果物を除く)
一部青果物(さつまいも、柿、桃など)
飲料水、ミネラルウオーター、氷 保健省告示第420号基本要求事項および個別要求事項1
  • CAC/RCP 48-2001.
  • CAC/RCP 33-1985.
  • SQF:Edition 8.1
  • SQF:Edition 9など
低温殺菌ミルク製品 保健省告示第420号基本要求事項および個別要求事項2
  • CAC/RCP 57-2004.
  • SQF:Edition 8.1
  • SQF:Edition 9など
密閉容器に入った低酸性・酸性化食品/飲料 保健省告示第420号基本要求事項および個別要求事項3
  • CAC/RCP 23-1979.
  • CAC/RCP 40-1993.
  • SQF:Edition 8.1
  • SQF:Edition 9など
保健省告示第386号で指定される青果物 (りんご、いちごなど) 保健省告示第386号
  • CAC/RCP 53-2003.
  • GLOBAL G.A.P. / ASIA GAP / J-GAP
  • 行政機関発行の証明書
  • JFS規格適合証明書 など

関連リンク

関係省庁
厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
タイ保健省食品医薬品委員会事務局(FDA)(タイ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
タイ財務省関税局(タイ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
1979年食品法(タイ語) PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(828 KB)(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(114KB)
保健省告示No.420(2020年)「食品の製造方法、製造におけるツール・用具及び保管」(タイ語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(473KB)(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(187KB)
(ジェトロ仮訳)
食品医薬品委員会事務局告示 「保健省告示No.420「食品の製造方法、製造におけるツール、用具及び保管」に関する説明」(タイ語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.3MB)(ジェトロ仮訳)PDFファイル(294KB)
食品医薬品委員会事務局告示「食品輸入用の製造システム規格書又は証明書」(タイ語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.5MB)(ジェトロ仮訳)PDFファイル(238KB)
保健省告示No.420の付表と同等以上の食品製造システム規格の例(タイ語・規格名は英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(123KB)
財務省告示「日本原産品の関税減免」(タイ語) PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.7MB)
財務省告示「ASEAN・日本自由貿易協定の関税減免」(タイ語) PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.3MB)
その他参考情報
日本商工会議所EPAにもとづく特定原産地証明書発給事業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「証明書や施設認定の申請」タイ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「輸出入手続き」
タイ向け輸出食品の製造施設に求められる衛生基準に係る規則への対応外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「食肉輸入に必要な証明書として衛生証明書が使用可能に(ビジネス短信)」

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2021年11月

動物検疫所で輸出検査を受け、輸出検疫証明書を取得する必要があります。
同検査を受けるにあたっては、「タイ向け輸出牛肉の取扱要綱」で定められた食肉衛生証明書(当該牛肉の処理を行った認定と畜場などを管轄する食肉衛生検査所に申請のうえで発行)が必要です。