EPAの原産品判定基準と特恵関税:タイ向け輸出
質問
日本からタイに商品を輸出する際の日・タイ経済連携協定および日・ASEAN包括的経済連携協定、地域的な包括的経済連携協定の原産品判定基準について教えてください。
回答
日本から商品をタイに輸出する場合、2007年11月1日に発効した「日・タイ経済連携協定(JTEPA)」、2009年6月1日に発効した「日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)」、または2022年1月1日に発効した地域的な包括的経済連携協定(RCEP)に基づく特恵関税の適用を受けることができます。これらの協定は優先関係のない併存する国際協定です。輸出者および輸入者は、品目別原産地規則、関税率等を比較してどちらか有利な方を選択し、タイでの輸入通関の際に特定原産地証明書を提出します。
I. 原産地基準
EPAの特恵関税率の適用を受けるにはEPAの定める原産品であることを証明する「特定原産地証明書」の提出が必要です。
日・タイで締約しているEPAの原産品であることの原産地基準は下記に分類されます。
- 完全生産品(Wholly Obtained: WO)
協定締約国内で完全に得られ、または生産される産品 - 原産材料のみから生産される産品(Produced Entirely: PE)
協定締約国内の原材料のみから当該締約国内で完全に生産される産品 - 品目別規則(Product Specific Rules: PS)
非原産材料を用いて当該締約国において完全に生産される産品であって、EPA協定文の附属書に定める品目別規則を満たす産品。*注1- 関税分類変更基準 (Change in Tariff Classification: CTCルール)
輸入原材料の関税分類番号(HSコード)が、生産された完成品の関税分類番号と異なれば、完成品の製造国の原産品とします。品目によってどの程度(何ケタ)の番号の変更が求められるかは、附属書の品目別規則を確認してください。 - 付加価値基準 (Value Added: VAルール)
加工の結果、産品に付加された価値(原産資格割合)が特定の比率(例:40%以上)となる場合に原産品とします。 - 加工工程基準 (Specific Process Rule: SPルール)
各製品について、重要と認められた製造作業または技術的な加工作業を例示し、域内で当該加工を施されたことをもって原産品とします(繊維製品・化学品が該当)。例えば織物の場合、製織と染色が必要とされます。また、化学品は化学変化、精製、異性体分離、生物工学的工程のいずれかの工程を経る必要があります。原産品としての必要な加工工程はHSコード毎に細かく規定されていますので、確認ください。
*注1 AJCEPでは例外的な取り扱いをする品目についてのみ「品目別規則」を記載しています。品目別規則に原産地規則の規定がない品目の原産地規則は、一般規則が適用されます。輸出産品のHSコードが「品目別規則」に存在するかどうかを確認し、存在している場合はその基準を満足していることが原産品認定の条件となります。HSコードが「品目別規則」に存在しない場合は、「一般規則」が適用され、関税番号(HSコード)4ケタの変更(CTH)、または域内原産割合の40%以上を満たしていれば原産品となります。
- 関税分類変更基準 (Change in Tariff Classification: CTCルール)
II. EPAの特恵関税率、原産地基準(品目別規則)およびその他の要件
タイに輸出する産品にEPA特恵関税率が設定されているものか協定文の附属書の「関税の撤廃に関する約束の表(譲許表)」、及び産品に係る原産地基準を附属書の「品目別規則」を基に調べます。更に協定文には特恵関税率適用上の原産地手続きに関する記載もあります。
- 日・タイ経済連携協定(JTEPA)
- 日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)
- 地域的な包括的経済連携協定(RCEP)
- 積送基準
EPAの定める特恵関税の適用を受けるためには、産品は原則として直送されなければなりません。第三国を経由した輸送は、荷の積み替え、積み替えの際に荷を良好な状態に保つために保存する作業などの場合に限り認められます。この場合、船会社に「通しB/L」を準備してもらうか、もしくは当該第三国の税関または権限ある官公署が発行する「非加工証明書」を提出する必要があります。 - 仲介貿易
商品は日本から直接タイに輸送されますが、第三国の企業が一度買い取り、タイの企業に販売することがあります。本協定ではこうした仲介貿易の商流を認めています。この場合、特定原産地証明書の所定欄に第三国で発行されるインボイス番号および日付、当該インボイスの発行者の名称および住所を明記します。特定原産地証明書の発給時に第三国で発行されるインボイス番号が不明の時は、日本の輸出者が発行するインボイス番号および日付を記載します。
III. 原産地証明書発給手続き
- 発給機関およびフォーム
日本商工会議所:特定原産地証明書発給申請マニュアル
- 発給手続き
- 輸出者または製造者が、日本商工会議所に特定原産地証明書判定依頼および発給申請のための企業登録をします。
- オンライン発給システムにログインするためのID、パスワードが届きます。
- オンラインシステム上で、輸出する産品の原産性の判定依頼をします。日本商工会議所の提示要求に応じ、事前に作成した対象産品に対する原産地規則を満足していることを証明する確認書に証拠書類を添付したものを提示します。
- 判定が下りたことを確認し、システム上で特定原産地証明書発給申請をします。
AJCEP特定原産地証明書は日本商工会議所の窓口で、JTEPA、及びRCEPの特定原産地証明書は電子媒体PDFファイルによる交付となります。JTEPA特定原産地証明書に関して、日本からの輸出におけるCOの発給を現在のPDF形式での発給から2025年11月以降はデータ交換(e-CO)に切り替えるためタイ側と調整を進めています。これにより特定原産地証明書のデータが日本商工会議所からタイ税関に直接送信されるようになることから、輸出者は電子発給申請を行い、承認を受けるだけで済むようになり、これまで必要とされていた輸入者への送付が不要となります。 - 特定原産地証明書の発給に係る手数料は、1通につき基本料2,000円と品目数による加算額(20品目まで1品目500円、21品目からは1品目50円)の手数料を支払います。窓口発給の場合、郵送による受け取りも可能です。
- 仕入書、納品書、インボイス等原産地規則を満足していることを証明する証拠書類を5年間保管します。
- 有効期間
特定原産地証明書の有効期限は発給から1年です。
参考資料・情報
- 外務省:
-
日・タイ経済連携協定
:日本語 / 英語
-
日・ASEAN包括的経済連携協定
:日本語 / 英語
-
地域的な包括的経済連携協定
:日本語 / 英語
- 経済産業省:
-
EPA/FTA/投資協定
-
日タイEPAに基づく原産地証明
- 税関:
-
EPA/FTAサイト
- 日本商工会議所:
-
EPAに基づく特定原産地証明書の発給手続きについて
- ジェトロ:
- 日本・タイ経済連携協定
- 日本・ASEAN包括的経済連携協定
- 地域的な包括的経済連携協定
- 世界各国の関税率(WorldTariff)
- 貿易投資相談Q&A「事前教示制度:タイ」
調査時点:2015年7月
最終更新:2025年9月
記事番号: E-080302
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